JP2005312127A - 回転電機 - Google Patents
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Abstract
【課題】SRモータとSPモータの利点を有しつつ欠点を解消した全く新しい回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、1つのステータ20と、このステータ20の内周側および外周側の双方に同軸配置される2つのロータ30,40とを有しており、ステータ20の鉄心21に巻回されるコイル22へ供給される複合電流を制御することによって、2つのロータ30,40を駆動制御することができる。2つのロータ30,40は、鉄心31外周面に配設されることによって突極を形成する複数の永久磁石32を備えるとともに、ステータ20の内周側に設置されるインナーロータ30と、磁性鉄心41によって形成される複数の突極を備えるとともに、ステータ20の外周側に設置されるアウターロータ40とから構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】回転電機は、1つのステータ20と、このステータ20の内周側および外周側の双方に同軸配置される2つのロータ30,40とを有しており、ステータ20の鉄心21に巻回されるコイル22へ供給される複合電流を制御することによって、2つのロータ30,40を駆動制御することができる。2つのロータ30,40は、鉄心31外周面に配設されることによって突極を形成する複数の永久磁石32を備えるとともに、ステータ20の内周側に設置されるインナーロータ30と、磁性鉄心41によって形成される複数の突極を備えるとともに、ステータ20の外周側に設置されるアウターロータ40とから構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、二重ロータ構造を有する回転電機の改良に関するものである。
スイッチトリラクタンスモータ(以下、SRモータ)は、VR(variable reluctance)モータとも呼ばれ、1838年にダビッドソン(Davidson)により最初のモデルが製作されたモータである。原理的には、ロータに永久磁石や巻線がなく、モータ構造が簡単で安価、機械的に堅牢であって、ロータの発熱問題がないモータである。また、永久磁石の熱減磁の問題がないので高温での運転が可能といった特徴を持っているが、その実現には高度な電流制御が要求され、開発当時の電子技術では大砲の台座を駆動する程度の性能しか出なかった。1950年代には、ステップモータとして製品化されているが、振動、騒音の問題によりモータの主流とはならなかった。しかし近年は、シミュレーション技術や制御技術の進展により、極形状・ステータ巻線の最適設計、駆動電流の波形制御などによる改良提案がなされており、SRモータが大量生産に向き、低コストで信頼性に優れた性能を発揮することから、電気自動車などに用いられるモータとして注目されている。
このようなSRモータにあっては、ステータ、ロータともに突極構造を有しており、各ステータの突極に集中巻された巻線に対して、ロータの位置情報に基づいた電流を供給することによって連続的な磁気吸引力を発生させ、回転運動を作り出すようになっている。
図5は、SRモータの基本構造と作動原理を示したものである。図5では、ステータ10に6つの突極を持つ3相式の6極ステータ×4極ロータ(6/4構成)の場合を例示している。
図5の状態アにおいて、ステータ10の突極IとI'のコイルに通電すると磁力が発生し、ロータ11の突極aはステータ10の突極Iに吸引され、ロータ11の突極cはステータ10の突極I'に吸引されて時計方向にトルクが発生する。ロータ11の突極aとステータ10の突極Iが完全に重なる位置になると(状態イ)、磁気回路のリラクタンス(磁気抵抗)が最小になり、吸引力は径方向のみとなって、トルクはなくなる。ここで、ステータ10の突極IIとII'のコイルへ通電を切り換えると、ロータ11の突極dはステータ10の突極IIに吸引されて時計方向に回転する。さらにロータ11の突極dとステータ10の突極IIが重なった時に(状態ウ)ステータ10の突極IIIとIII'のコイルへ通電を切り換えると、ロータ11の突極aはステータ10の突極IIIに吸引されて時計方向に回転していく。このように、SRモータでは、ロータ11の突極が近づいてきたステータ10のコイルに通電を順次切り換えることにより、ロータ11を回転させることが可能となっている。
ところが、従来のSRモータは、ステータおよびロータとも突極性があるために振動やトルクリップル(一時的に発生するトルクの急激な落ち込み)が大きく、回転トルクに脈動が発生するという問題を有していた。また、可聴周波数帯域での振動も大きいために、駆動時に騒音が発生するという問題をも有していた。これらの問題への対応としては、これまで加工精度の向上や取り付け精度の向上といった製造技術の高度化や、駆動電流の制御方法の改善などによる取り組みが行われていた(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
以上のようなSRモータに対して、磁石埋め込み型同期モータ(以下、SPモータ)ではロータ側に大きな突極がないので、振動やトルクリップル、騒音などといったSRモータ特有の短所はみられない。しかし一方で、SPモータは、磁石が埋め込まれている構造であることからモータ構造が複雑であり、メンテナンス性やコストの面でSRモータに劣るところがある。
現在、電気自動車などの登場によるモータ使用範囲の拡大によって、モータのさらなる高効率化、高性能化が求められている状況にある。このような状況下において、SRモータとSPモータの利点を有しつつ欠点を解消した、全く新しいモータの実現が求められていた。
本発明は、かかる要請に基づいて発明者が鋭意努力して創案したものであって、その目的は、SRモータとSPモータの利点を有しつつ欠点を解消した全く新しい回転電機を提供することにある。この目的は、特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また、従属項は、本発明の更なる有利な具体例を規定するものである。
本発明に係る回転電機は、1つのステータの内周側および外周側の双方に同軸配置される2つのロータを有し、前記ステータの鉄心に巻回されるコイルへ供給される複合電流を制御することによって、前記2つのロータを駆動制御するようにした回転電機であって、前記2つのロータは、鉄心外周面に配設されることによって突極を形成する複数の永久磁石を備えるとともに、前記ステータの内周側に設置されるインナーロータと、磁性鉄心によって形成される複数の突極を備えるとともに、前記ステータの外周側に設置されるアウターロータと、から構成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、インナーロータ側には永久磁石が設置されており、この永久磁石付きインナーロータが、SPモータと同様の機能であるマグネットトルクを発生させる。一方、アウターロータ側には磁性鉄心による突極が形成されているので、アウターロータは、SRモータと同様の機能であるリラクタンストルクを発生させる。このような構成を採用することによって、SPモータとSRモータの長所を上手に利用することが可能となる。
また、本発明に係る回転電機のアウターロータには永久磁石が設置されていないので、メンテナンス性が良好である。
本発明に係る回転電機において、前記アウターロータの突極を形成する磁性鉄心は、電磁鋼板を複数積層して形成されていることが好適である。
すなわち、アウターロータの突極である磁性鉄心が、方向性を有する積層電磁鋼板で構成されることにより、トルクアップが実現する。
また、本発明に係る回転電機は、前記ステータの鉄心に巻回されるコイルによって形成されるステータの突極に対して、前記インナーロータの突極が対向してから次に突極同士が対向するまでの間に、前記アウターロータの突極が前記ステータの突極と対向するように構成されていることが好適である。
このようにステータ、インナーロータ、アウターロータを配置することによって、SRモータに特有であったトルクの脈動が低減され、モータ効率を向上することができる。
さらに、本発明に係る回転電機において、前記アウターロータの突極は、前記インナーロータの突極に対して遅れ方向に位置するように設置されており、ステータの極数をm、インナーロータとアウターロータの極数をn、としたとき、インナーロータの突極に対するアウターロータの突極の遅れ方向の機械角φは、0°<φ≦((360/n)−(360/m))°という関係を有していることが好適である。
本発明によれば、SRモータとSPモータの利点を有しつつ欠点を解消した全く新しい回転電機を提供することができる。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書においては、本発明がモータに適用される場合を例示して説明するが、特許請求の範囲に記載の「回転電機」は、モータの他、発電機をも含む概念である。
図1は、本実施形態に係るモータの構造を説明するための概略図である。また、図2は、図1で示したモータの(A−A)断面を示す図である。さらに、図3は、図2で示したモータの(B−B)断面を示す図である。
本実施形態に係るモータは、1つのステータ20と、このステータ20の内周側および外周側の双方に同軸配置される2つのロータ30,40とを有している。また、2つのロータ30,40は、ステータ20の内周側に設置されるインナーロータ30と、ステータ20の外周側に設置されるアウターロータ40とで構成されている。
ステータ20は、複数の突極23を有するステータ鉄心21にコイル22が巻回されることによって構成されており、このコイル22へ複合電流を供給することによって回転磁界を発生させ、2つのロータ30,40を駆動制御できるようになっている。
インナーロータ30は、インナーロータ鉄心31と、その鉄心外周面に配設されることによって突極を形成する複数の永久磁石32とから構成されており、永久磁石32の効果によって界磁束発生源としての機能を発揮することができる。したがって、ちょうどSPモータのように、ステータ20の突極23に巻回されたコイル22に対して、インナーロータ30に設置される永久磁石32の位置に応じた電流を供給することによって、ステータ20との間に連続的な磁気吸引力を発生させ、さらに永久磁石32の効果によるマグネットトルクを利用して、インナーロータ30を回転させることが可能となっている。
一方、アウターロータ40は、複数の突極を備える磁性鉄心41によって形成されている。したがって、ちょうどSRモータのように、ステータ20の突極23に巻回されたコイル22に対して、アウターロータ40の突極(磁性鉄心)41の位置に応じた電流を供給することによって、ステータ20との間に連続的な磁気吸引力を発生させ、さらに磁性鉄心41のリラクタンストルクを利用して、アウターロータ40を回転させることが可能となっている。
アウターロータ40の突極を形成する磁性鉄心41については、電磁鋼板を複数積層して形成されていることが好適である。これは、アウターロータ40の突極である磁性鉄心41が方向性を有する積層電磁鋼板で構成されることにより、トルクがアップするという効果が発揮されるからである。
以上のような構造を有する本実施形態に係るモータにおいて、インナーロータ30とアウターロータ40は同軸上に設置されており、ステータ20から及ぼされる回転磁界に基づいて、2つのロータ30,40が一体的に回転することになるのであるが、さらに、本実施形態に係るモータで特徴的なこととして、ステータ20に対するインナーロータ30とアウターロータ40の設置位置が挙げられる。
図3を用いて、ステータ20と2つのロータ30,40との位置関係をより詳細に説明する。ステータ20に対するインナーロータ30とアウターロータ40の設置位置については、ステータ20の鉄心21に巻回されるコイル22によって形成されるステータ20の突極23に対して、インナーロータ30の突極(永久磁石)32が対向してから次に突極同士23,32が対向するまでの間に、アウターロータ40の突極(磁性鉄心)41がステータ20の突極23と対向するように構成されている。
このような関係でステータ20、インナーロータ30、アウターロータ40を配置することによって、SRモータに特有であったトルクの脈動が低減され、モータ効率を向上することができる。これは、インナーロータ30の突極(永久磁石)32が、ステータ20の磁気的な吸引力によって順次引き寄せられることで発生していたトルクリップルを、アウターロータ40の発生するリラクタンストルクで低減するものであり、2つのロータ30,40が存在することによって、従来のSRモータと比較してなめらかな回転駆動を実現することができるのである。
このステータ20と2つのロータ30,40との位置関係をより定量化して表すと次のような関係式で表現できる。すなわち、
・m:ステータの極数
・n:インナーロータとアウターロータの極数
・φ:インナーロータの突極に対するアウターロータの突極の遅れ方向の機械角[°]
とし、アウターロータの突極は、インナーロータの突極に対して遅れ方向に位置するとしたとき、機械角φは、
0°<φ≦((360/n)−(360/m))°
という関係を有している。
・m:ステータの極数
・n:インナーロータとアウターロータの極数
・φ:インナーロータの突極に対するアウターロータの突極の遅れ方向の機械角[°]
とし、アウターロータの突極は、インナーロータの突極に対して遅れ方向に位置するとしたとき、機械角φは、
0°<φ≦((360/n)−(360/m))°
という関係を有している。
この関係式を、図3に示すステータ20に6つの突極を持つ3相式の6極ステータ×4極ロータ(6/4構成)のモータの場合に当てはめてみると、
・ステータ20の極数:m=6
・インナーロータ30とアウターロータ40の極数:n=4
であり、インナーロータ30の突極(永久磁石)32に対するアウターロータ40の突極(磁性鉄心)41の遅れ方向の機械角φは、
0°<φ≦30°
という関係を有することになる。
・ステータ20の極数:m=6
・インナーロータ30とアウターロータ40の極数:n=4
であり、インナーロータ30の突極(永久磁石)32に対するアウターロータ40の突極(磁性鉄心)41の遅れ方向の機械角φは、
0°<φ≦30°
という関係を有することになる。
つまり、アウターロータ40の突極(磁性鉄心)41は、インナーロータ30の突極(永久磁石)32よりもロータの回転方向に対して遅れ方向に位置しなければならず、機械角φは0(ゼロ)°より大きくなければならない。これは、φが0(ゼロ)°ではトルクアップという効果は得られるものの、トルクリップルなどによって発生するトルクの脈動を低減してなめらかな回転を得ることができないからである。
一方、ステータ20の突極23に対して、インナーロータ30の突極(永久磁石)32が対向してから次の突極(永久磁石)32がステータ20の突極23に対向するまでの間に、アウターロータ40の突極(磁性鉄心)41がステータ20の突極23と対向する必要がある。そこで、機械角φは、インナーロータ30の突極(永久磁石)32がステータ20の突極23に対向したときに、次に対向するインナーロータ30の突極(永久磁石)32とステータ20の突極23との角度であるψ(=(360/n)−(360/m))以下であることが必要である。これは、φがψよりも大きいとアウターロータ40の効果が全く無くなってしまうからである。
以上のような構成を採用することによって、SPモータとSRモータの長所を上手に利用したモータを得ることができる。また、本実施形態に係るモータは、アウターロータ40に永久磁石が設置されていないので、メンテナンス性が良好である。
図4は、本実施形態に係るモータの効果を説明するための図であり、ステータ20への駆動電流に対するトルクの状況を示すものである。図4からも明らかな通り、符号(α)で示される従来のモータのトルクと比較して、符号(β)で示される本実施形態に係るモータのトルクの方が脈動低減され、スムーズなロータ回転が実現されている。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
10 従来のステータ、11 従来のロータ、20 ステータ、21 ステータ鉄心、22 コイル、23 突極、30 インナーロータ、31 インナーロータ鉄心、32 永久磁石(突極)、40 アウターロータ、41 磁性鉄心(突極)、m ステータの極数、n インナーロータとアウターロータの極数、φ インナーロータの突極に対するアウターロータの突極の遅れ方向の機械角。
Claims (4)
- 1つのステータの内周側および外周側の双方に同軸配置される2つのロータを有し、前記ステータの鉄心に巻回されるコイルへ供給される複合電流を制御することによって、前記2つのロータを駆動制御するようにした回転電機であって、
前記2つのロータは、
鉄心外周面に配設されることによって突極を形成する複数の永久磁石を備えるとともに、前記ステータの内周側に設置されるインナーロータと、
磁性鉄心によって形成される複数の突極を備えるとともに、前記ステータの外周側に設置されるアウターロータと、
から構成されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1に記載の回転電機において、
前記アウターロータの突極を形成する磁性鉄心は、電磁鋼板を複数積層して形成されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記ステータの鉄心に巻回されるコイルによって形成されるステータの突極に対して、
前記インナーロータの突極が対向してから次に突極同士が対向するまでの間に、前記アウターロータの突極が前記ステータの突極と対向するように構成されていることを特徴とする回転電機。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記アウターロータの突極は、前記インナーロータの突極に対して遅れ方向に位置するように設置されており、
ステータの極数をm、
インナーロータとアウターロータの極数をn、
としたとき、インナーロータの突極に対するアウターロータの突極の遅れ方向の機械角φは、0°<φ≦((360/n)−(360/m))°という関係を有していることを特徴とする回転電機。
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- 2004-04-19 JP JP2004123074A patent/JP2005312127A/ja active Pending
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