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JP2005307861A - 高湿分ガスタービン発電プラント,制御装置,プログラム及び記録媒体 - Google Patents

高湿分ガスタービン発電プラント,制御装置,プログラム及び記録媒体 Download PDF

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JP2005307861A JP2004126204A JP2004126204A JP2005307861A JP 2005307861 A JP2005307861 A JP 2005307861A JP 2004126204 A JP2004126204 A JP 2004126204A JP 2004126204 A JP2004126204 A JP 2004126204A JP 2005307861 A JP2005307861 A JP 2005307861A
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Abstract

【課題】
湿分の安定した加湿空気をガスタービンに供給してプラントを安定して運転することにある。
【解決手段】
本発明の高湿分ガスタービンプラントは、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼する燃焼器と、該燃焼器で生成する燃焼ガスにより駆動されるタービンと、装置内に封入した充填材に水を噴霧し、前記充填材表面上での気液接触により前記圧縮機で圧縮された空気を加湿する増湿塔とを備えた高湿分ガスタービン発電プラントであって、
前記圧縮機で圧縮された空気の一部を直接前記増湿塔出口へと導くバイパス配管と、前記バイパス配管にスプレ噴霧による加湿手段を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスタービンに供給する気体を加湿し、出力及び効率向上を図る高湿分ガスタービン発電プラントと当該発電プラントの制御方法に関する。
ガスタービンに供給する気体(空気)に水分を注入して加湿し、出力及び効率の向上を図る高湿分ガスタービン発電プラントには、既設ガスタービン発電プラントの設備更新、あるいはコジェネ向け発電プラントとしての新規導入のニーズを受けて、従来ガスタービン発電プラントに匹敵する負荷追従性が求められている。一般的な高湿分ガスタービン発電プラントの設備系統を図6に従って説明する。
ガスタービン燃焼に使用する空気は、圧縮機2で加圧された後、加湿・昇温されたのち燃焼器3に投入する。加湿された空気をここでは加湿空気と呼ぶ。空気の加湿方法としては、濡壁塔或いは増湿塔8による加湿と、配管9へのスプレ噴霧による直接加湿の方法が知られている。
増湿塔8あるいは配管9へのスプレ噴霧により増湿した加湿空気は配管9を経て低温側再生熱交換器11及び高温側再生熱交換器12に導かれ、加熱される。低温側再生熱交換器11及び高温側再生熱交換器12の熱源はガスタービンからの排気ガスである。加熱された加湿空気は配管13を経て燃焼器3に供給する。
一方、燃料ポンプ5で加圧した燃料は、先に得られた加湿空気と混合して燃焼器3で燃焼する。燃料及び加湿空気の燃焼により発生する燃焼ガスは、ガスタービン1を駆動した後煙道14を経てタービン外へ排気する。タービン外に排気された燃焼ガス(燃焼排ガス)の熱エネルギーの一部は高温側再生熱交換器12及び低温側再生熱交換器11で回収し、加湿空気の加熱に用いられる。また、燃焼排ガス中の水分は水回収装置15で回収する。本図では、水回収の方式として煙道に水を噴霧し、ガス中の水分を凝集,落下させて回収する方式となっている。水分回収後の燃焼排ガスは煙突16を用いて大気に放風する。
ガスタービン1で得られた駆動力はシャフト20を通じて圧縮機2及び発電機4に伝えられる。駆動力の一部は圧縮機2において空気の加圧に用いられる。また、発電機4で駆動力を電力に変換する。
なお、水回収装置15及び増湿塔8の底部から回収した水は、水回収タンク18に貯蔵し、水回収装置15への噴霧水あるいは増湿塔8への加湿水として再利用する。煙突16から大気へ放風された水分は、補給水ポンプ17によって補われる。
高湿分ガスタービン発電プラントの出力である発電量MWは、燃料流量調整弁6の開閉により制御する。一方、空気への加湿量は増湿塔8への加湿水量、あるいは配管9へのスプレ加湿量を調整弁10あるいは調整弁24で制御する。
加湿水の絶対湿度は燃料流量,空気流量が過渡的に変化する負荷変化時において大幅に変動し、発電量MWあるいはタービン排気温度Txの変動要因となる。そのため、プラントの負荷追従性及び機器への熱ストレスの影響を考慮すると、空気中の絶対湿度の変動は最小限に抑えることが望ましい。特に絶対湿度の過渡的な低下は、負荷上げ時においては発電量MW及びタービン排気温度Txの過渡的な上昇の原因となることから、負荷変化中の絶対湿度の低下を抑制してプラントを安定に運転する必要がある。
負荷変化時に加湿空気の湿度を安定に制御する方式として、特許文献1に高湿分ガスタービンを負荷運転する際のスプレ加湿量及びバイパス配管の制御方式が述べられている。本制御方式は、負荷変化時における増湿塔の絶対湿度の遅れに着目し、プラント負荷上昇時にはスプレへの加湿量を増量し、プラント負荷を降下する場合には増湿塔をバイパスする配管への空気流量を制御してプラント負荷変化を開始する方式を提案している。
上記特許文献1に記載された高湿分ガスタービン発電プラントあるいはプラント制御装置は、負荷上昇時の加湿空気の応答遅れを増湿塔出口に設置したスプレによって補償しているが、スプレによって噴霧される液滴が確実に蒸発するという条件さえ満たすならば、上記文献に見られるように必ずしも増湿塔出口にスプレを設置するものではない。さらに、負荷変化時における増湿塔の絶対湿度の遅れを補償する場合、負荷変化時にスプレから噴霧される加湿量は増湿塔における蒸発量に比較すると少量であり、高湿分ガスタービン発電プラントにおいて上記文献に記載のプラント構成が最適であるとは限らない。
さらに、上記特許文献1に記載された高湿分ガスタービン発電プラントあるいはプラント制御装置は、負荷降下時における加湿空気中の絶対湿度の一時的な上昇を、増湿塔をバイパスする流量弁を開方向とすることにより補償しているが、大規模発電プラントにおいて主配管に流量調整弁を設置することは装置の制約上困難である。主配管の流量を制御する方法としては、ダンパの設置などが代案として考えられるが、ダンパによる流量制御は一般に応答が遅いことから、負荷降下時に発生する加湿空気の絶対湿度の変動を精度よく制御するのは難しい。
特開2000−230432
本発明が解決しようとする課題は、湿分の安定した加湿空気をガスタービンに供給してプラントを安定して運転することにある。
本発明の高湿分ガスタービンプラントは、高湿分ガスタービン発電プラント圧縮機で圧縮された空気の一部を直接増湿塔出口へと導くバイパス配管と、前記バイパス配管にスプレ噴霧による加湿手段を備えたことを特徴とする。
また、高湿分ガスタービンプラントの制御装置は、スプレ噴霧による加湿手段のスプレ加湿水量の基準値を、燃料流量弁開度指令と加湿手段のスプレ加湿水量の基準値の関係を予め定めたスプレ水量基準値設定関数に基づいて、燃料流量弁開度指令から求める機能を有する制御装置としたことを特徴とする。
また、高湿分ガスタービンプラントの制御装置は、増湿塔の出口の加湿水量について、前記増湿塔で加湿された空気とスプレ噴霧による加湿手段で加湿された空気の合流地点までの遅れを補正して加湿水量の推定値を求め、前記加湿水量の推定値とスプレ加湿水量の基準値からスプレ加湿水量の目標値を求め、前記スプレ加湿水量の目標値に基づいて、スプレ加湿水量と増湿塔への水供給量をそれぞれ計算する機能を有することを特徴とする。
また、高湿分ガスタービンプラントの増湿塔は、増湿塔出口にスプレ噴霧による加湿手段を備え、空気流れ方向に沿ってスプレ水を噴霧することを特徴とする。
本発明によれば、過渡状態における湿分の不足量を、圧縮機出口に設置したバイパス配管から導かれる圧縮空気に噴霧し、バイパス配管内で完全蒸発したのちに増湿塔からの加湿空気と混合するので、湿分の安定した加湿空気をガスタービンに供給してプラントを安定して運転することが可能となる。
さらに、本発明によれば、一定運転及び負荷変化運転時における加湿空気の湿分添加を主として増湿塔が担当し、過渡状態における湿分の不足量をスプレが担当するので、燃焼器における燃焼条件が安定し、再生熱交換器の熱負荷を最小としてプラントを安全に運転することが可能となる。
さらに、本発明によれば、増湿塔とスプレの両方の加湿水量を合わせて考慮したスプレ加湿水量の目標値に基づいてスプレ加湿水量と増湿塔への水供給量をそれぞれ計算するので、圧縮機と燃焼器の間で増湿塔とスプレを並列に配置しても、加湿空気が合流することを加味して加湿水量の制御を行うことができる。
さらに、本発明の増湿塔は、増湿塔内に設置したスプレノズルからスプレ水を噴霧することにより、負荷運転などの過渡状態における増湿塔の加湿性能の低下を防止するので、フラッディングなどの異常発生時においても常に加湿空気の品質を維持することが可能な増湿塔が提供できる。
本発明の高湿分ガスタービンプラントの制御装置は、増湿塔出口における加湿空気の絶対湿度を推定し、定常運転時及び負荷運転時の低温再生熱交換器入口の加湿空気の絶対湿度が目標値に一致するようスプレ加湿量を一定制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
本発明による制御装置を高湿分ガスタービン発電プラントへ適用した場合の第1の実施例を図1に示す。
図1の高湿分ガスタービン発電プラントは、増湿塔8の入口にダンパ26を設置し、ダンパ26から増湿塔8をバイパスする増湿塔バイパス配管27を追加設置する。また、増湿塔バイパス配管27に加湿水を投入して空気を加湿する。増湿塔8への加湿水流量は調整弁10で、また配管13への加湿水流量は調整弁19で制御する。調整弁10の開度指令Cwat及び調整弁19の開度指令Csprはそれぞれ制御装置30で計算する。このとき、調整弁19の開度指令は増湿塔出口の温度Tto,圧力Pto及び増湿塔入口の空気流量Gtiから決定する。増湿塔8及び配管13に供給する加湿水は水回収タンク18に貯留した水を用い、給水ポンプ21で昇圧した後それぞれの配管に供給する。増湿塔8の底部に貯留したドレンは、配管22からポンプ23を用いて抜き出し、水回収タンク18に還流する。
バイパス配管にスプレを投入するメリットとしては、加湿空気中の湿分の安定性が高い点が挙げられる。増湿塔からの加湿空気にスプレ噴霧を行う従来の高湿分ガスタービンプラントの増湿方法では、スプレから噴霧した液滴が増湿塔出口からの液滴と接触した場合により大きな液滴へと成長する場合がある。このとき、液滴は配管内で凝縮してドレンを生じるため、全体としての増湿性能が低下する場合がある。本発明ではスプレでの加湿を増湿塔による加湿と別配管とすることにより、過渡的な湿分変動を最小限に抑えてより安定した加湿が可能となる。つまり、圧縮機2と燃焼器3の間で、増湿塔8と調整弁19によるスプレを並列に配置することで、加湿されていない状態の圧縮された空気に対して、増湿塔8と調整弁19によりそれぞれ加湿することができるものである。
前記プラントで負荷を上昇する場合、制御装置30は発電量指令MWDの上昇に対して発電出力MWが追従するよう燃料流量調整弁6の開度信号Cgovを増加する。Cgov増加により燃焼器3への燃料流量が増加し、ガスタービン1の出力が上昇する。ガスタービン1の出力はシャフト20を通じて発電機4を駆動し、発電量MWが上昇する。さらに圧縮機2の負荷が上昇するため、圧縮機2の出口空気流量,増湿塔8の入口空気流量Gti,増湿塔8の出口空気流量,低温側再生熱交換器11の入口及び出口加湿空気流量,高温側再生熱交換器12の入口及び出口空気流量が増加してプラント全体の負荷が上昇する。
なお、本発明においてダンパ26の開度信号Cdmp は負荷に応じてプログラム的に変化し、フィードバック制御を実施しない。これは、CdmpとCsprとの間の干渉を防止するためのものである。Cdmp の変化によっても加湿空気中の絶対湿度は変動するが、本発明では加湿空気中の絶対湿度をCspr が制御する。このとき、圧力計測点Pto及び温度計測点Ttoは増湿塔8の下流、増湿塔バイパス配管27との合流部よりも上流に設置し、スプレ噴霧による温度・圧力の変動をCsprが検出しない構成とする。
なお、従来ガスタービンプラントでは圧縮機出口が燃焼器入口に直結する構成となることから、燃料流量の増加と圧縮機出口空気流量の増加のタイミングはほぼ同時である。そのため、燃料と空気の混合比(燃空比)は負荷運転中もほぼ安定である。
これに対して、従来の高湿分ガスタービンプラントでは、圧縮機出口に増湿塔,再生熱交換器などが体積要素を有することから、燃料流量の増加に対して加湿空気流量の増加タイミングは遅れる傾向にある。また、増湿塔内における加湿水の蒸発遅れによって、加湿空気中の水分についてはさらに遅れる傾向にある。
加湿空気流量の遅れ、あるいは加湿空気中の水分の遅れは、タービン排気温度Txとして観測が可能である。燃空比が増大した場合、あるいは加湿空気中の水分が低下した場合には、タービン排気温度Txは計画値に対して上昇の傾向を示す。
そこで、本発明の高湿分ガスタービン制御装置30は、負荷上昇中の加湿空気中の水分の低下に対し増湿塔バイパス配管27へのスプレ噴霧を用いてこれを補償する。
本実施例による高湿分ガスタービンプラント運転制御結果を図4を用いて説明する。図4は、高湿分ガスタービンプラントの負荷を上昇させた場合の各プロセス量のトレンドグラフである。図において破線(A)は従来のプラント特性、実線(B)は本発明を適用した場合のプラント特性を示す。
図では、中給からの発電量指令MWDを50%から100%へと増加している。制御装置は発電量MWがMWDに追従するよう燃料流量Gfuelを増加する。
負荷上昇時に増湿塔入口空気流量Gtiが増加すると、増湿塔出口における乾き空気の成分量が増湿塔からの加湿水蒸発量に先行して過渡的に増加する。増湿塔内部での加湿水蒸発が負荷に対して遅れた結果、再生熱交換器入口における加湿空気の絶対湿度xtoは一時的に低下する。図中xto(A)が従来高湿分ガスタービンプラントにおける増湿塔出口絶対湿度、xto(B)が本発明による高湿分ガスタービンプラントの増湿塔出口絶対湿度である。従来プラントの制御装置では配管13への加湿水量Gspr(A) を制御するが、負荷変化開始時における湿分の蒸発量の遅れを補償することはできない。そのため、負荷変化後一定時間後には加湿空気中の絶対湿度が回復するが、前述の温度,圧力等の要因、また空気量の過渡的な変動により加湿水の蒸発量の増加は空気流量の増加に対して遅れることから、加湿空気の絶対湿度xto(A)は過渡的に低下し、発電量指令MWDに対して発電出力MWが遅れる特性となる。
これに対して本発明の高湿分ガスタービンプラントでは、増湿塔8への加湿水量Gwatおよび配管13への加湿水量Gspr0をベースとして、前記加湿水量Gspr0を修正するよう増湿塔バイパス配管27への加湿水量Gspr(B) を一時的に増減することにより、加湿空気の絶対湿度xto(B)の過渡的な低下を抑える。
発電量指令MWD及び燃料流量Gfuel(A)に伴う加湿空気絶対湿度の一時的な低下は、タービン排気温度Tx及び発電量MWの過渡的な温度変動(位相の遅れ)として観測される。増湿塔出口加湿空気絶対湿度の過渡的な低下を受け、従来高湿分ガスタービンプラントでは燃焼温度が過渡的に上昇する。図中では、燃焼温度の上昇をタービン排気温度
Tx(A)の過渡的な上昇として観測している。また、タービン排気温度Tx(A)の上昇に対して制御装置は、燃料流量Gfuel(A)を低く抑えることから、増湿塔入口空気流量
Gti(A),発電量MW(A)を含むプラント全体の位相が遅れている。
これに対して本発明を適用した高湿分ガスタービンプラントでは、増湿塔バイパス配管27へのスプレ噴霧量をGspr(B) の通り制御して、加湿空気絶対湿度の過渡的な低下を抑制する。その結果負荷変化時の燃空比(燃料流量,加湿空気中の空気量,水分量)が安定し、負荷上昇時の発電量MW(B),タービン排気温度Tx(B)を安定に制御可能となる。
負荷降下時は、負荷上昇時の逆の特性が見られ、再生熱交換器入口の絶対湿度xtoが増加し、加湿空気は一時的に過飽和状態となる。ただし、増湿塔8の内部の充填物と過飽和の加湿空気の接触により加湿空気中の水分の一部が回収されることから絶対湿度xtoの変動幅は低下幅よりも小さいと予想される。従来の高湿分ガスタービンプラントでは、蒸発量の遅れにともなう再生熱交換器入口の絶対湿度の上昇を補償することができないため、タービン排気温度が位相遅れを伴って低下する、これに対して本発明による制御装置では、再生熱交換器入口絶対湿度xtoの過渡的な増加に対してスプレ加湿水流量
Gspr(B)を減量して絶対湿度を安定に制御する。
本発明を適用した高湿分ガスタービンプラントでは、定常状態においてもスプレから加湿水を一定量噴霧しており、負荷降下時にスプレ加湿水流量Gspr を減量して再生熱交換器入口絶対湿度xtoの過渡的な低下に対応する。定常時における加湿水のスプレ水量基準値Gspr0は燃焼器入口における加湿空気の絶対湿度,加湿水を完全に蒸発させるために必要となる配管径,配管長から求められる。定常時の加湿水の噴霧量が負荷降下時におけるプラントの制御マージンとなる。
次に、高湿分ガスタービンプラント制御装置30の実施例を図2に示す。
図2において、制御装置30は従来ガスタービン制御回路40を含む。従来ガスタービン制御回路40は、減算器41において発電量指令MWDと発電量MWとの差DMWを求め、DMWが0になるよう制御器42において燃料流量調整弁開度指令Cgov1を計算する。また排ガス温度設定関数44では圧縮機出口圧力Pcdからタービン排気温度制限値TxDを計算し、減算器45において前記TxDとタービン排気温度Txとの差DTxを求める。さらに、前記DTxが0となるよう制御器46において燃料流量調整弁開度指令Cgov2を計算する。低値選択43では前記Cgov1と前記Cgov2を比較し、2種類の信号のうち低い値を燃料流量調整弁開度指令Cgovとして燃料流量調整弁6を制御する。
次に、本発明の加湿水流量の計算方法について説明する。加湿水量はプラントの負荷に対応するため、加湿水量設定関数32では燃料流量弁開度指令Cgov から増湿塔に噴霧する加湿水量の計画値GwatDを計算する。なお、加湿水量設定関数32の入力は、燃料流量の計測値Gfuelとしても良い。算術演算器33では現在の加湿水量Gwat ,計画値GwatD,加湿水量バイアスGwatBから、加湿水量偏差DGwatを計算する。また、前記DGwatが0となるよう制御器34で加湿水流量弁開度指令Cwatを計算する。
加湿水量バイアスGwatBは、経年変化などによって増湿塔内の蒸発量が変化した際に、その変化量を補正値として加算するものである。GwatBについては後述する。
スプレ水量設定手段31では、増湿塔入口空気流量Gti,増湿塔出口加湿空気圧力Pto,増湿塔加湿空気出口温度Ttoを計測し、増湿塔出口加湿空気の湿度を目標絶対湿度
φsprDとするために必要な配管13におけるスプレ加湿水量の推定値GsprDを計算する。スプレ水量設定手段31の構成については後述する。
スプレ水量基準値設定関数38により、燃料流量弁開度指令Cgov からスプレ加湿水量の基準値Gspr0を求める。このスプレ水量基準値設定関数38は、タービン排気温度Txを観察しながら、増湿塔の調整弁10の開度指令Cwat 及びスプレの調整弁19の開度指令Csprを調整し、最適な加湿水量となる値を実験により求めて、燃料流量弁開度指令
Cgovとスプレ加湿水量の基準値Gspr0 の対応関係を、予め定めた設計情報として記憶したものである。この予め求めた対応関係から、燃料流量弁開度指令Cgov に対応するスプレ加湿水量の基準値Gspr0を求めることができる。また、算術演算器35では、前記
Gspr0と前記GsprDからスプレ加湿水量の目標流量を計算し、さらに現在のスプレの加湿水量Gsprを減じてスプレ加湿水量の偏差DGsprを求める。さらに、前記DGspr が0となるよう制御器37において加湿水流量弁開度指令Csprを計算する。
さらに、本発明では、DGspr が0となるよう制御器36を用いて加湿水量バイアス
GwatB を計算する。制御器36は一定運転時におけるスプレからの加湿水量が0となるよう調整するもので、経年変化などによる増湿塔性能の劣化を補償する機能をもつ。制御器36の感度は制御器37と比較して感度を低く設定し、CwatとCsprの干渉を回避している。
スプレ水量設定手段31の実施例を図3に示す。
増湿塔出口における加湿空気を一定湿度に制御するためには、増湿塔出口に湿度計を設置する方法が最も簡便であるが、配管内の湿分の計測遅れ及び配管内の質分分布を考慮するとより安定かつ高精度な計測手段が必要となる。そこで、スプレ水量設定手段31では、湿度計を用いず増湿塔出口湿度を制御する構成とすることもできる。
加湿空気エンタルピ計算手段311では、増湿塔出口加湿空気圧力Pto,増湿塔出口加湿空気温度Tto 及び絶対湿度目標値xsprDを入力し、加湿空気エンタルピ目標値HtoDを計算する。加湿空気のエンタルピは乾燥空気エンタルピと蒸気エンタルピの密度による加重平均で次式で表される。
Figure 2005307861
ここで、air,stmはそれぞれ乾燥空気と蒸気を表す添字である。乾燥空気エンタルピHair,乾燥空気密度ρairは増湿塔出口加湿空気圧力Ptoの空気分圧及び加湿空気温度Ttoから数表を用いて求められる、蒸気エンタルピHstm,蒸気密度ρstmは増湿塔出口加湿空気圧力Ptoの蒸気分圧及び加湿空気温度Ttoから蒸気表を用いて求められる。これらの計算方法は化学工学便覧(丸善),蒸気表(日本機械学会編)などに詳しいためここでは省略する。
加湿空気エンタルピ計算手段312では、増湿塔出口加湿空気圧力Pto,増湿塔出口加湿空気温度Tto及び絶対湿度推定値x′を入力し、加湿空気エンタルピ推定値Hto′を計算する。エンタルピの計算方法は加湿空気エンタルピ計算手段311と同様とする。減算器313では、加湿空気エンタルピ目標値HtoD と加湿空気エンタルピ推定値Hto′とから加湿空気エンタルピ誤差DHtoを計算する。
絶対湿度推定値x′は積分器314において加湿空気エンタルピ誤差DHtoが0となるよう絶対湿度推定値x′の前回値を逐次修正したものである。加湿空気中の水分が蒸気である場合、加湿空気エンタルピに対して絶対湿度xは一意に求まる。そのため、加湿空気エンタルピ誤差DHtoが0に近似した場合の絶対湿度推定値x′は絶対湿度の真値xに一致する。絶対湿度推定値x′に増湿塔入口空気流量Gtiを乗じた値が増湿塔出口における加湿水量の推定値GsprD′である。本実施例では、加湿水量の推定値GsprD′について増湿塔8の出口からスプレまでの湿分の無駄時間又は遅れを遅れ要素316で補正し、増湿塔8で加湿された空気とスプレで加湿された空気の合流地点における加湿水量のGsprDを推定した。図1で説明すると、配管9と増湿塔バイパス配管27の合流地点まで、増湿塔8の出口における加湿水量の推定値を遅れ要素316で補正したものである。この湿分の無駄時間又は遅れを考慮することは、増湿塔出口から合流地点までの配管が長い場合に特に効果がある。
上記実施例では、増湿塔出口の加湿水量の推定値GsprD′を用いたが、増湿塔出口に湿度計を設置した場合は、増湿塔出口の絶対湿度と増湿塔入口空気流量Gtiから増湿塔出口における加湿流量を乗じることで、増湿塔出口における加湿水量GsprD′を計算することもできる。
なお、本実施例では増湿塔出口における絶対湿度目標値を一定としたが、プラント負荷一定運転時においても補助スプレからの加湿水流量を常時噴霧する構成として、増湿塔出口における絶対湿度目標値を任意に制御してもよい。
上記実施例の様に、増湿塔とスプレの両方の加湿水量を合わせて考慮したスプレ加湿水量の目標値に基づいてスプレ加湿水量と増湿塔への水供給量をそれぞれ計算するので、圧縮機と燃焼器の間で増湿塔とスプレを並列に配置しても、加湿空気が合流することを加味して加湿水量の制御を行うことができ、湿分の安定した加湿空気をガスタービンに供給できる。
本発明の第2の実施例を図5に示す。本実施例では、増湿塔8上部に配管85を設置し、スプレノズル87によって加湿空気に補助的に湿分を増湿する構成とした。
増湿塔の加湿噴霧性能が低下する原因としては、先に述べた空気増量時における絶対湿度の過渡的な低下のほか、増湿塔内におけるフラッディング現象による過渡的,定常的な性能低下が考えられる。本実施例では、増湿塔上部に、空気の流れ方向に沿って加湿水を噴霧するスプレを設置し、このスプレを用いて過渡的,定常的な性能の低下を補償する。
図5において、圧縮機出口からの空気88は、配管7に設けた開口部80から増湿塔8の内部に流入する。前記開口部80から増湿塔8内部へと流入した空気は、充填材83の内部を通過した後、配管13を経て加湿空気92として下流側の機器へと流出する。
このとき、増湿塔内の空気には加湿水90及び加湿水91によって湿分が添加される。加湿水91は配管84を経てスプレノズル86から充填材83に向けて噴霧される。加湿水91は充填材83の表面に水膜を形成しつつ重力方向に流下する一方、水膜界面において一部が空気中に蒸発する。充填材83は加湿水と空気との接触面積を増大し、界面における加湿水の蒸発を促進する効果がある。
本実施例では、塔の上部にスプレノズル87を設け、増湿塔における絶対湿度の変動をスプレノズル87からの加湿水噴霧で補償することにより、低温側再生熱交換器入口における加湿空気の絶対湿度を安定に制御する。スプレノズル87のスプレ水流量及びスプレノズル86からの噴霧水流量は、実施例1と同様に制御装置30を用いて制御可能である。先に述べたスプレ水量設定手段31では加湿空気の絶対湿度の推定に増湿塔出口の圧力Pto及び温度Ttoを用いたが、本実施例ではスプレ噴霧により増湿塔出口の温度が変動することから、スプレ噴霧の影響がより小さいと考えられる低温側再生熱交換器11入口、あるいは低温側再生熱交換器11出口の圧力及び温度を計測してスプレ水量設定手段31の入力とする。
本実施例では、スプレノズル87及びスプレノズル86を接して設置し、スプレノズル87を上に、スプレノズル86を下に向ける構成としている。これは、スプレノズル87から噴霧された液滴を増湿塔上部の空間を利用して拡散・蒸発させるためである。また、同時にスプレノズルを近接して設置することにより、水配管,操作端などを集約して配置し、系統を簡素化する効果もある。この様に、増湿塔出口側にスプレ噴霧による加湿手段を備え、気体の流れ方向に水を噴霧することにより、増湿塔出口側の空間を利用して噴霧された液滴を拡散・蒸発させることができる。
これに対して、スプレノズル87及び配管85を充填材83の下部に設置する構成も考えられるが、この方法は充填材内部の圧力損失,増湿塔内の水流量が増大するためフラッディング現象の原因となる可能性がある。スプレノズル87を充填材83の下部に設置する場合には、スプレ水流量及び圧力損失を監視し、これらの計測値がフラッディング条件に入らないよう加湿水量に上限を設定する。フラッディング条件を回避するための加湿水量の上限に関しては、(社)化学工学会編 実用化学装置設計ガイド(1991)pp210−212に詳しい。本図書では、加湿水量及び加湿空気量からフラッディング条件を回避するための塔仕様(塔径,塔高)を求めているが、塔仕様が既に決定されている場合には、本図書に記載の式から加湿水量を逆算することによって加湿水量の上限値を決定する。
スプレノズル87を塔の上部に設置する構成ではフラッディングが発生しないほか、増湿塔出口における加湿空気の絶対湿度を飽和,過飽和を含む任意の条件としてプラントが運用可能である。
上記実施の形態で説明した制御装置は、コンピュータ及びプログラムによって実現することができる。そのプログラムをコンピュータによる読み取り可能な記憶媒体に記憶して提供することが可能である。また、そのプログラムを、ネットワークを通じて提供することも可能である。
本発明の第1の実施例における高湿分ガスタービンプラント。 本発明の第1の実施例における高湿分ガスタービンプラント制御装置の制御ブロック図。 本発明の第1の実施例における高湿分ガスタービンプラント制御装置の制御ブロック図。 本発明の第1の実施例における高湿分ガスタービンプラントの運転特性。 本発明の第2の実施例における増湿塔の構造図。 従来技術の高湿分ガスタービンプラントを説明する図。
符号の説明
1…ガスタービン、2…圧縮機、3…燃焼器、4…発電機、5…燃料ポンプ、6…燃料流量調整弁、7,9,13,22,84,85…配管、8…増湿塔、10,19,24…調整弁、11…低温側再生熱交換器、12…高温側再生熱交換器、14…煙道、15…水回収装置、16…煙突、17…補給水ポンプ、18…水回収タンク、20…シャフト、
21…給水ポンプ、23…ポンプ、26…ダンパ、27…増湿塔バイパス配管、30…制御装置、31…スプレ水量設定手段、32…加湿水量設定関数、33,35…算術演算器、34,36,37,42,46…制御器、38…スプレ水量基準値設定関数、40…ガスタービン制御回路、41,45,313…減算器、43…低値選択、44…排ガス温度設定関数、80…開口部、81…加湿水ドレン、82…塔脚、83…充填材、86,87…スプレノズル、88…空気、89…ドレン水、90,91…加湿水、92…加湿空気、311,312…加湿空気エンタルピ計算手段、314…積分器、316…遅れ要素。


Claims (7)

  1. 空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼する燃焼器と、該燃焼器で生成する燃焼ガスにより駆動されるタービンと、装置内に封入した充填材に水を噴霧し、前記充填材表面上での気液接触により前記圧縮機で圧縮された空気を加湿する増湿塔とを備えた高湿分ガスタービン発電プラントであって、
    前記圧縮機で圧縮された空気の一部を直接前記増湿塔出口へと導くバイパス配管と、前記バイパス配管にスプレ噴霧による加湿手段を備えたことを特徴とする高湿分ガスタービン発電プラント。
  2. 請求項1に記載の高湿分ガスタービン発電プラントであって、
    前記スプレ噴霧による加湿手段のスプレ加湿水量の基準値を、燃料流量弁開度指令と加湿手段のスプレ加湿水量の基準値の関係を予め定めたスプレ水量基準値設定関数に基づいて、燃料流量弁開度指令から求める機能を有する制御装置を有することを特徴とする高湿分ガスタービン発電プラント。
  3. 請求項2に記載の高湿分ガスタービン発電プラントであって、
    前記制御装置は、前記増湿塔の出口の加湿水量について、前記増湿塔で加湿された空気と前記スプレ噴霧による加湿手段で加湿された空気の合流地点までの遅れを補正して加湿水量の推定値を求め、前記加湿水量の推定値と前記スプレ加湿水量の基準値からスプレ加湿水量の目標値を求め、前記スプレ加湿水量の目標値に基づいて、スプレ加湿水量と増湿塔への水供給量をそれぞれ計算する機能を有することを特徴とする高湿分ガスタービン発電プラント。
  4. 請求項1に記載の高湿分ガスタービン発電プラントであって、
    前記増湿塔は、増湿塔出口側にスプレ噴霧による加湿手段を備え、気体の流れ方向に水を噴霧することを特徴とする高湿分ガスタービン発電プラント。
  5. 高湿分ガスタービン発電プラントを制御する制御装置において、
    圧縮機で圧縮された空気の一部を直接増湿塔出口へと導くバイパス配管に備えられたスプレ噴霧による加湿手段のスプレ加湿水量の基準値を、燃料流量弁開度指令と加湿手段のスプレ加湿水量の基準値の関係を予め定めたスプレ水量基準値設定関数に基づいて、燃料流量弁開度指令から求めるスプレ水量基準値設定関数を備えた制御装置。
  6. コンピュータに、圧縮機で圧縮された空気の一部を直接増湿塔出口へと導くバイパス配管に備えられたスプレ噴霧による加湿手段のスプレ加湿水量の基準値を、燃料流量弁開度指令と加湿手段のスプレ加湿水量の基準値の関係を予め定めたスプレ水量基準値設定関数に基づいて、燃料流量弁開度指令から求めさせるためのプログラム。
  7. コンピュータに、圧縮機で圧縮された空気の一部を直接増湿塔出口へと導くバイパス配管に備えられたスプレ噴霧による加湿手段のスプレ加湿水量の基準値を、燃料流量弁開度指令と加湿手段のスプレ加湿水量の基準値の関係を予め定めたスプレ水量基準値設定関数に基づいて、燃料流量弁開度指令から求めさせるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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