JP2005113126A - 含リン系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
無色透明で優れた光学特性を有し、更には高い靭性とともに優れた熱安定性および成形性を併せもつ含リン系樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】
カーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、および下記一般式(2)で示される2価フェノール残基を含む含リン系樹脂の製造方法であって、第1段階目として下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、特定の比率で作用せしめ、第2段階目として残りの下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめることを特徴とする含リン系樹脂の製造方法。
一般式(1)
【化1】
一般式(2)
【化2】
【選択図】 なし
無色透明で優れた光学特性を有し、更には高い靭性とともに優れた熱安定性および成形性を併せもつ含リン系樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】
カーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、および下記一般式(2)で示される2価フェノール残基を含む含リン系樹脂の製造方法であって、第1段階目として下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、特定の比率で作用せしめ、第2段階目として残りの下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめることを特徴とする含リン系樹脂の製造方法。
一般式(1)
【化1】
一般式(2)
【化2】
【選択図】 なし
Description
本発明は、無色透明で高い靭性を有し、更には優れた熱安定性および成形性を有する含リン系樹脂の製造方法に関するものである。
無色透明材料は、光学レンズ、機能性光学フィルムあるいはディスク基板など、その多様な用途に応じて種々の材料が適用されているが、近年、ヘルスケアやエレクトロニクスなどの急速な発展に伴い、材料自体に要求される機能・性能もますます精密かつ優れたものとなってきている。
光学用材料の代表的なヘルスケア用途として眼鏡レンズが挙げられるが、この眼鏡レンズについては薄型化、軽量化あるいはファッション性等の観点から活発な材料開発が行われており、現在では耐衝撃性と軽量性等の利点から、市場の90%は樹脂レンズが占めるようになっている。
従来の眼鏡レンズ用樹脂は、CR39、アクリルおよびウレタンの3つの樹脂に大別され、低分散と高屈折を目指して多くの樹脂が開発実用化されている。これらの樹脂はすべて熱硬化性であるため、光学レンズへの成形は注型重合方法が用いられるが、この方法は重合時間が長く、その後のアニーリングプロセスなど、製造コストが高いという問題点がある。一方、ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂をレンズに適用すれば、成形性がよく、熱硬化性樹脂に比べ格段にレンズ製造コストを安くできるという利点があるが、屈折率が1.58と低いため視力矯正眼鏡用途としての性能は不十分である。また、ポリカーボネート以上の屈折率を有する熱可塑性樹脂も数多く知られているが、高分散性および着色性等の問題があり、光学レンズ用途には適用するには問題があった。
本発明者らは、高屈折率でかつ低分散な熱可塑性樹脂を見出すべく鋭意検討した結果、5価のリン原子を有する構造、中でもホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入することによって、無色透明で高屈折であり、しかも低分散な熱可塑性樹脂が得られることを見いだしている(特許文献1参照)。
ポリホスホネート系ポリマーの一般的な製造方法としては、例えば、酸ハライドと2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A. Conix, Ind. Eng. Chem., 51, 147 (1959)、特公昭37−5599号公報)、酸ハライドと2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報)、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(W. M. Eareckson, J. Poly. Sci., XL 399 (1959)、および特公昭40−1959号公報)等が挙げられる。
また、ポリホスホネート−カーボネート共重合体については、界面重縮合を用いた重合体が知られている(特許文献2と特許文献3参照)。これらは、いずれもホスホネートオリゴマーを生成させた後、ホスゲンなどでポリマー主鎖延長をはかったものである。しかしながら、本発明者らは、界面重縮合ではホスホネートの結合が切れやすく、それがためにカーボネートとホスホネートの比が正確に制御しにくかったり、分子量が向上しにくいという問題があることを確認している。実際、特許文献2記載の方法によれば、ホスホネートの含有量がカーボネートよりも多くなると、力学特性が不十分となることが示されている。また、カーボネート残基の原料としてホスゲンを用いており、環境的にも技術的に好ましい重合法とは言い難い。
また、得られたホスホネート−カーボネートランダム共重合体は、長時間加熱溶融あるいは繰り返し加熱することによって分子量低下したり、それにともない力学特性や光学特性が低下するというような熱安定性の問題がしばしば生じ、より優れた製造法の開発が望まれていた。
特開2002−167440号公報
特開昭61−285225号公報
特開昭61−238826号公報
そこで本発明は、優れた光学特性を有し、更には高い靭性とともに優れた熱安定性および成形性を併せもつ高分子量の含リン系樹脂の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の含リン系樹脂の製造方法は、カーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、および下記一般式(2)で示される2価フェノール残基を含み、該ホスホン酸残基と該カーボネート残基のモル分率が下記式(3)を満足する、数平均分子量が30,000以上の高分子化合物を主成分とし、かつ、数平均分子量が5,000以下の鎖状オリゴマーの含有率が3重量%以下である含リン系樹脂の製造方法であって、第1段階目として下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、下記式(4)を満たす比率で作用せしめ、30分以上反応をせしめた後に、第2段階目として残りの下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめることを特徴とする含リン系樹脂の製造方法である。
一般式(1)
一般式(1)
[式中、R1は有機基、Xは酸素、硫黄、セレンあるいは非共有電子対を表し、樹脂中にR1あるいはXの異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。]
一般式(2)
一般式(2)
[式中、R2は各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる。p、qはp+q=0〜8の整数。Yは分岐鎖含有アルキリデン基、シクロアルキリデン基および分岐鎖含有シクロアルキリデン基からなる群から選ばれる。樹脂中にR2あるいはYの異なる2価フェノール残基を2種以上含んでもよい。]
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 式(3)
[式中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数をそれぞれ表す。]
0.5≦(d)/{(c)−(b)}≦0.99 式(4)
[式中、(b)はカーボネート残基のモル数、(d)は一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーのモル数、(c)は2価フェノールのカーボネート多量体における2価フェノール残基のモル数と2価フェノールのモル数の合計をそれぞれ表す。]
また、本発明の好ましい形態によれば、上記の第1段階目と第2段階目の間の反応温度が、0℃以上35℃以下であることが好ましい。
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 式(3)
[式中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数をそれぞれ表す。]
0.5≦(d)/{(c)−(b)}≦0.99 式(4)
[式中、(b)はカーボネート残基のモル数、(d)は一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーのモル数、(c)は2価フェノールのカーボネート多量体における2価フェノール残基のモル数と2価フェノールのモル数の合計をそれぞれ表す。]
また、本発明の好ましい形態によれば、上記の第1段階目と第2段階目の間の反応温度が、0℃以上35℃以下であることが好ましい。
また、本発明の好ましい形態によれば、上記の一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、上記式(4)を満たす比率で作用せしめるときの2価フェノール残基の濃度が、1.0mol/L以上であることが好ましい。ここで、濃度(mol/L)とは、(2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物のモル数の合計)/(溶媒の量)を示す。
また、本発明の別の好ましい形態によれば、上記の2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物が、塩基存在下、2価フェノールのカーボネートポリマーと2価フェノールモノマーを反応させて得られたものであることが好ましい。
また、本発明の別の好ましい形態によれば、請求項1記載の製造方法で得られる樹脂の靭性値が3N/mm以上であることが好ましく、また、請求項1記載の製造方法で得られる樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に成形した際の全光線透過率が70%以上であり、かつ、黄色度(以下ΔYIと記する)が30以下であることが好ましい。
本発明によれば、無色透明で優れた光学特性を有し、更には高い靭性とともに優れた熱安定性および成形性を併せもつ高分子量の含リン系樹脂が得られる。
本発明者らは鋭意検討して熱安定性低下の原因を追及した結果、次のような知見を得るに至った。すなわち、
(1) ポリホスホネート溶液重合時には、約2〜8重量%の分子量5,000以下のオリゴマーが生成する。これは、同様の重合条件におけるポリカーボネートの重合時の2ないし4倍程度の生成量である。
(2) 重合反応中に生成するオリゴマーは環状オリゴマーであり、重合終了後の単離工程で、その溶液が弱アルカリ水溶液にさらされると容易に開環し、部分的に鎖状オリゴマーに変換される。このときの切断部位はカーボネート基である。
(3) 鎖状オリゴマーの存在下で加熱を繰り返すと樹脂全体としての平均分子量が低下し、かつ樹脂が着色する。
(1) ポリホスホネート溶液重合時には、約2〜8重量%の分子量5,000以下のオリゴマーが生成する。これは、同様の重合条件におけるポリカーボネートの重合時の2ないし4倍程度の生成量である。
(2) 重合反応中に生成するオリゴマーは環状オリゴマーであり、重合終了後の単離工程で、その溶液が弱アルカリ水溶液にさらされると容易に開環し、部分的に鎖状オリゴマーに変換される。このときの切断部位はカーボネート基である。
(3) 鎖状オリゴマーの存在下で加熱を繰り返すと樹脂全体としての平均分子量が低下し、かつ樹脂が着色する。
本発明者らはこれらの知見から、重合反応中に生成した環状オリゴマーを重合中に開環させることにより重合反応に関与させ、それにより分子量5,000以下の鎖状オリゴマーの生成を抑制する方法を見いだした。これにより、熱的安定性が顕著に向上し、それに伴って成形性と力学特性が向上し、かつ光学特性も安定化したホスホネートカーボネート共重合体を得ることができた。
本発明の含リン系樹脂の製造方法により得られる、ホスホネートカーボネート共重合体において、下記式(3)
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 式(3)
[式中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数をそれぞれ表す。]は、ホスホン酸残基の共重合分率を表す式であり、すなわち、式中(a)は下記一般式(1)
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 式(3)
[式中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数をそれぞれ表す。]は、ホスホン酸残基の共重合分率を表す式であり、すなわち、式中(a)は下記一般式(1)
[式中、R1は有機基、Xは酸素、硫黄、セレンあるいは非共有電子対を表し、樹脂中にR1あるいはXの異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。]に示すホスホン酸残基のモル数であり、式中(b)はカーボネート残基のモル数を示す。上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基のモル分率が0.05未満である場合には、ポリマーの高屈折性が発現し難い。さらに、ホスホン酸残基のモル分率{(a)/{(a)+(b)}の値は、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは0.75以上である。
その分子量は、力学特性的に30,000以上が好ましく、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは80,000以上である。
また、得られる含リン系樹脂に含まれる分子量5,000以下の鎖状オリゴマー成分の含有量としては0重量%以上5重量%以下が好ましく、より好ましくは0重量%以上4重量%以下であり、更に好ましくは0重量%以上1重量%以下である。
以下、本発明の含リン系樹脂の製造方法について具体的に述べる。
本発明においては、分子量5,000以下の鎖状オリゴマーの生成を抑制するため、上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを、2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールの混合物に対して、段階的に作用させる。つまり、第1段階目に上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを式(4)
0.5≦(d)/{(c)−(b)}≦0.99 式(4)
[式中、(b)はカーボネート残基のモル数、(d)は一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーのモル数、(c)は2価フェノールのカーボネート多量体における2価フェノール残基のモル数と2価フェノールのモル数の合計をそれぞれ表す。]を満たすように作用せしめ、第2段階目に残りの上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめる。上記式(4)は、第1段階目に作用させる上記一般式(1)の残基を与えるモノマーの量的な関係を表す式である。すなわち、式中の(b)はカーボネート残基のモル数であり、(c)は上記2価フェノール残基の合計モル数であり、(d)は上記一般式(1)の残基を与えるモノマーのモル数を示す。第1段階において、ホスホン酸残基のモル分率が上記式(4)の下限である0.5未満である場合は、生成した環状オリゴマーの開環反応が十分進行せず、本発明の効果が得られ難い。モル分率(d)/{(c)−(b)}の値としては好ましくは0.70以上1.0未満であり、より好ましくは0.90以上0.99以下である。
0.5≦(d)/{(c)−(b)}≦0.99 式(4)
[式中、(b)はカーボネート残基のモル数、(d)は一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーのモル数、(c)は2価フェノールのカーボネート多量体における2価フェノール残基のモル数と2価フェノールのモル数の合計をそれぞれ表す。]を満たすように作用せしめ、第2段階目に残りの上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめる。上記式(4)は、第1段階目に作用させる上記一般式(1)の残基を与えるモノマーの量的な関係を表す式である。すなわち、式中の(b)はカーボネート残基のモル数であり、(c)は上記2価フェノール残基の合計モル数であり、(d)は上記一般式(1)の残基を与えるモノマーのモル数を示す。第1段階において、ホスホン酸残基のモル分率が上記式(4)の下限である0.5未満である場合は、生成した環状オリゴマーの開環反応が十分進行せず、本発明の効果が得られ難い。モル分率(d)/{(c)−(b)}の値としては好ましくは0.70以上1.0未満であり、より好ましくは0.90以上0.99以下である。
また、第1段階と第2段階の反応は、30分以上48時間以内間隔をあけることが好適であり、より好ましくは60分以上48時間以内、さらに好ましくは120分以上48時間以内である。
また、上記一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーを多段階に作用させる際、その段階の間の反応温度は0℃以上35℃以下が好適である。その反応温度が0℃未満では、生成した環状オリゴマーを開環反応が十分に進まない虞があり、また35℃を超える温度では、得られる樹脂が着色する場合がある。より好ましい反応温度は10℃以上30℃以下であり、さらに好ましくは15℃以上25℃以下である。
さらに、上記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含んだ混合物に対して、上記式(4)を満たす比率で作用せしめるときの2価フェノール残基の濃度については、高濃度であることが環状オリゴマーの開環反応を促進する上で有利であり、1.0mol/L以上であることが好ましい。濃度は、より好ましくは1.5mol/L以上であり、更に好ましくは2.0mol/L以上である。
また、本発明中、共重合成分としてカーボネート基を導入する場合、ホスゲンやトリホスゲンなどのホスゲン誘導体を用いるのが一般的であるが、ホスゲンやホスゲン誘導体は、大気中で不安定であるため、取扱いが容易ではない。また、これらの化合物は不安定な化合物であるため、分解して不純物が生成することもあり、この不純物が該樹脂の着色原因であったり、該樹脂の高分子量化を妨げることもある。
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいはオリゴマーをカーボネート残基の原料とし、それがトリエチルアミンなどの塩基存在下2価フェノールモノマーにより容易に結合のクラッキングが進行することを見出し、カーボネート基の導入にホスゲンやホスゲン誘導体を用いることなく、2価フェノール類のカーボネートポリマーあるいはオリゴマーを用いることによって、より安定して、高分子量体を得ることが可能となった。また、ホスゲン誘導体の不純物が存在しないため、全光線透過率が高く、黄色度の低い該樹脂を得ることに成功した。
本発明の含リン系樹脂の製造方法で得られる含リン系樹脂は、その板状成形体(幅10mm、長さ25mm、厚さ3mm)として成形したときの靱性値が、好ましくは3N/mm以上であり、より好ましくは5N/mm以上である。
ここで、靱性値は以下のように定義される。試料を、オリエンテック(株)社製テンシロンを用い、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行い、曲げ応力と破談変位を求めた。評価パラメーターは脆さの指標である靱性値で算出した。
靱性値(N/mm)=曲げ応力×破断変位
また、本発明で得られる含リン系樹脂を光学用樹脂として用いる場合には、その樹脂から得られる幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率が、好ましくは70%以上、かつ黄色度30位以下であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上、かつ黄色度30以下、さらに好ましくは10以下である。
また、本発明で得られる含リン系樹脂を光学用樹脂として用いる場合には、その樹脂から得られる幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率が、好ましくは70%以上、かつ黄色度30位以下であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上、かつ黄色度30以下、さらに好ましくは10以下である。
なお、全光線透過率と黄色度は以下に定義される。試料をデジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。なお、全光線透過率はYの値として定義される。黄色度(△YI)は、試料を装着して(X、Y、Z)を求め、下記式(5)によりYI値(YI2)を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YI1を求め、下記式(6)より算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y 式(5)
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
△YI=YI2−YI1 式(6)
△YI:黄色度
YI1:リファレンス値
YI2:試料の測定値
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成型体の全光線透過率に換算可能である。
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
△YI=YI2−YI1 式(6)
△YI:黄色度
YI1:リファレンス値
YI2:試料の測定値
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成型体の全光線透過率に換算可能である。
本発明で用いられる上記一般式(1)で表される化合物のリン原子上の置換基R1の具体例としては、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロアルキル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキルおよびアルキルサルファイド基等が挙げられる。このようなホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示すると、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、n−ペンチルホスホン酸、ネオペンチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、クロロメチルホスホン酸、ジクロロメチルホスホン酸、ブロモメチルホスホン酸、ジブロモメチルホスホン酸、2−クロロエチルホスホン酸、1,2−ジクロロエチルホスホン酸、2−ブロモエチルホスホン酸、1,2−ジブロモエチルホスホン酸、3−クロロプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロプロピルホスホン酸3−ブロモプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモプロピルホスホン酸、2−クロロー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジクロロー1−メチルエチルホスホン酸、2−ブロモー1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジブロモー1−メチルエチルホスホン酸、4−クロロブチルホスホン酸、3,4−ジクロロブチルホスホン酸、4−ブロモブチルホスホン酸、3,4−ジブロモブチルホスホン酸、3−クロロー1−メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、3−ブロモ−1メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモ−1−メチルホスホン酸、1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−クロロー1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、5−クロロペンチルホスホン酸、4,5−ジクロロペンチルホスホン酸、5−ブロモペンチルホスホン酸、4,5−ジブロモペンチルホスホン酸、1−ヒドロキシメチルホスホン酸、2−ヒドロキシエチルホスホン酸、3−ヒドロキシプロピルホスホン酸、4−ヒドロキシブチルホスホン酸、5−ヒドロキシペンチルホスホン酸、1−アミノメチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、5−アミノペンチルホスホン酸、メチルチオメチルホスホン酸、メチルチオエチルホスホン酸、メチルチオプロピルホスホン酸、メチルチオブチルホスホン酸、エチルチオメチルホスホン酸、エチルチオエチルホスホン酸、エチルチオプロピルホスホン酸、プロピルチオメチルホスホン酸、プロピルチオエチルホスホン酸、ブチルチオメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3,4−ジクロロフェニルホスホン酸、3,5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3,4−ブロモフェニルホスホン酸、3,5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3,4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1−ナフチルホスホン酸、2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3,4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3,5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、2−ピリジルホスホン酸、3−ピリジルホスホン酸、4−ピリジルホスホン酸、1−ピロリジノメチルホスホン酸、1−ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、ピロール−1−ホスホン酸、ピロール−2−ホスホン酸、ピロール−3−ホスホン酸、チオフェン−2−ホスホン酸、チオフェン−3−ホスホン酸、ジチアン−2−ホスホン酸、トリチアン−2−ホスホン酸、フラン−2−ホスホン酸、フラン−3−ホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−ノルボルニルホスホン酸およびビシクロ[2,2,2]オクチルホスホン酸などが挙げられ、また、これらのリン原子に2重結合で結合している酸素原子が硫黄原子に置換されたチオホスホン酸も同様に挙げられる。これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。また、これらホスホン酸は、その酸塩化物、エステルおよびアミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。
また、これらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい(X=非共有電子対)。これにより樹脂の耐酸化性を付与することができる。ホスホン酸残基をホスホナイト残基に一部置き換えた場合、上記式(3)における、〔(a)/{(a)+(b)}〕のなかの(a)にその置換されたホスホナイト残基を含むものとするが、光学特性等の特性安定性を考慮すると、その置換比率は50%以下が好ましく、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
また、上記一般式(2)で表される2価フェノール残基を構成する2価フェノールを具体的に例示すると、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。これら2価フェノールは得られるポリマーの性能に応じて用いることができる。
これら2価フェノールの中でも光学特性および力学特性的には、一般式(2)
[式中、R2は各々独立に水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる。p、qはp+q=0〜8の整数。Yは分岐鎖含有アルキリデン基、シクロアルキリデン基および分岐鎖含有シクロアルキリデン基からなる群から選ばれる。樹脂中にR2あるいはYの異なる2価フェノール残基を2種以上含んでもよい。]で示されるYが、分岐鎖含有アルキリデン基、シクロアルキリデン基および分岐鎖含有シクロアルキリデン基であることが特に好適であり、特に好ましくは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシル)シクロドデカンである。
また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができる。これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノンおよび1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
また、本発明の含リン系製造方法で得られる樹脂は、必ずしも直鎖状である必要はなく、得られるポリマーの性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノールおよび1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種含まれていてもよい。
分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライドおよびフェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられる。
また、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系および燐系の各種抗酸化剤を添加することができる。
また、本発明の製造方法は、用いるモノマーの溶解性に応じて、有機溶媒を用いることができる。溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、ベンジルアルコール、イソホロン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン等が挙げられる。
本発明の含リン系樹脂の製造方法により得られる樹脂を用いて、例えば、レンズなどの成形体を得る方法については、公知の方法が採用することができ、特に限定されないが、例えば、射出成形法、プレス成形法、圧縮成形法、トランスファ成成形、積層成形法および押し出し成形法などが挙げられる。
また、本発明で得られる含リン系樹脂をフィルム状に成形する方法としては、溶液製膜法や溶融押し出し製膜法などが挙げられ、特に溶液製膜が好適に採用される。溶液製膜法においては前記有機溶媒を適宜用いることができるが、好ましくはハロゲン含有溶媒であり、特に好ましくは塩化メチレンである。
本発明の具体的実施態様を以下に実施例をもって述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。樹脂の評価は、以下の方法により行った。
〔分子量、オリゴマー含有量および熱安定性の測定〕
樹脂1gを試験管に封入し、1mmHg以下の減圧下、300℃の温度で20分加熱し、加熱前後の平均分子量およびオリゴマーの含有量を測定した。測定は、樹脂の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔東ソー(株)製、GPC8020〕により行い、数平均分子量(Mn)を求めた。なお、測定値は、標準ポリスチレン換算の値である。
樹脂1gを試験管に封入し、1mmHg以下の減圧下、300℃の温度で20分加熱し、加熱前後の平均分子量およびオリゴマーの含有量を測定した。測定は、樹脂の0.2重量%クロロホルム溶液を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)〔東ソー(株)製、GPC8020〕により行い、数平均分子量(Mn)を求めた。なお、測定値は、標準ポリスチレン換算の値である。
〔力学特性〕
樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に加熱プレス成形し、オリエンテック(株)社製テンシロン(型式RTM−100)を用いて、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行った。評価パラメーターは、脆さの指標である靭性値(曲げ応力×破断変位)とした。
樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に加熱プレス成形し、オリエンテック(株)社製テンシロン(型式RTM−100)を用いて、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/分にて曲げ試験を行った。評価パラメーターは、脆さの指標である靭性値(曲げ応力×破断変位)とした。
〔核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定〕
カーボネートオリゴマーの重合度は、重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からその平均値を算出した。また、鎖状オリゴマーの割合については、末端を示すNMRピークの強度と、すべてが鎖状オリゴマーと仮定した場合に推定されるピーク強度の比とした。
カーボネートオリゴマーの重合度は、重水素化クロロホルムにて核磁気共鳴装置(日本電子株式会社:EX270型)を用い、末端を示すスペクトルとポリマーユニットを示すスペクトルの積分比からその平均値を算出した。また、鎖状オリゴマーの割合については、末端を示すNMRピークの強度と、すべてが鎖状オリゴマーと仮定した場合に推定されるピーク強度の比とした。
〔光学特性〕
上記樹脂成形品をサンドペーパー、バフにて互いに直行する2面を鏡面仕上げになるように研磨し、デジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。全光線透過率は、Yの値をそのまま採用した。ΔYIは、試料を装着した状態でX、Y、Zを求め、下記式(5)によりYI値(YI2 )を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YI1を求め、下記式(6)より算出した。
上記樹脂成形品をサンドペーパー、バフにて互いに直行する2面を鏡面仕上げになるように研磨し、デジタルカラーコンピューター(スガ試験機(株)社製:SM−7CH)を用いて透過法により3刺激値(X、Y、Z)を求めた。全光線透過率は、Yの値をそのまま採用した。ΔYIは、試料を装着した状態でX、Y、Zを求め、下記式(5)によりYI値(YI2 )を求めた後、試料を外した状態で同様にX、Y、Zを求め、同様にリファレンス値YI1を求め、下記式(6)より算出した。
YI=100×(1.28X−1.06Z)/Y 式(5)
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
ΔYI=YI2−YI1 式(6)
ΔYI:黄色度
YI1:リファレンス値
YI2:試料の測定値
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率に換算可能である。
X、Y、Z:標準光Cにおける試料の三刺激値
ΔYI=YI2−YI1 式(6)
ΔYI:黄色度
YI1:リファレンス値
YI2:試料の測定値
なお、全光線透過率は、ランベルト・ベールの法則を適用することで、幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状の成形体の全光線透過率に換算可能である。
実施例1
〔カーボネートオリゴマー原料の調製:溶融法〕
ガラス製ナスフラスコ(1L)に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(0.67mol:180g)と炭酸ジフェニル(120g)、およびナトリウムフェノラート(1g)を秤りとった。窒素パージ後、220℃の温度にまで加熱し、内容物の融解させ、220℃の温度のまま1時間かけて減圧し約60mmHgとした。さらに約0.4mmHgまで減圧し、そのまま2時間加熱した。冷却後、窒素パージしオリゴマーをDPC転化率で93%で得た。得られたカーボネートオリゴマーは、NMRにより、平均でビスフェノール/カーボネート=4/3のオリゴマーであった。
〔カーボネートオリゴマー原料の調製:溶融法〕
ガラス製ナスフラスコ(1L)に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(0.67mol:180g)と炭酸ジフェニル(120g)、およびナトリウムフェノラート(1g)を秤りとった。窒素パージ後、220℃の温度にまで加熱し、内容物の融解させ、220℃の温度のまま1時間かけて減圧し約60mmHgとした。さらに約0.4mmHgまで減圧し、そのまま2時間加熱した。冷却後、窒素パージしオリゴマーをDPC転化率で93%で得た。得られたカーボネートオリゴマーは、NMRにより、平均でビスフェノール/カーボネート=4/3のオリゴマーであった。
〔溶液重合〕
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に、第1段階目として、氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.6ml:18.8mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃の温度で2時間撹拌した後、第2段階目として、氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.3ml:2.1mmol)を20分かけて滴下し、溶液粘度の向上と、GPCにて数平均分子量30,000以上を確認した後、反応を停止、すなわち反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に、第1段階目として、氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.6ml:18.8mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃の温度で2時間撹拌した後、第2段階目として、氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.3ml:2.1mmol)を20分かけて滴下し、溶液粘度の向上と、GPCにて数平均分子量30,000以上を確認した後、反応を停止、すなわち反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例2
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例3
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例4
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率92%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率92%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例5
実施例1において1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(6.94g:25.7mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(0.54g)およびトリエチルアミン(7.8ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例1において1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(6.94g:25.7mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(0.54g)およびトリエチルアミン(7.8ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例6
実施例1において1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(3.5g:13.0mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(4.3g)およびトリエチルアミン(5.1ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが12%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例1において1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(3.5g:13.0mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(4.3g)およびトリエチルアミン(5.1ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率91%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は5%で、そのうち鎖状オリゴマーが12%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例7
実施例1における1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマーについて、炭酸ジフェニルの仕込量を129gとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、平均でビスフェノール/カーボネート=8/7(8量体)のオリゴマーを得た。このオリゴマー7.8gおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(1.07g:3.99mmol)、およびトリエチルアミン(1.9ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は3%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例1における1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマーについて、炭酸ジフェニルの仕込量を129gとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、平均でビスフェノール/カーボネート=8/7(8量体)のオリゴマーを得た。このオリゴマー7.8gおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(1.07g:3.99mmol)、およびトリエチルアミン(1.9ml)を用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーを収率93%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は3%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
実施例8
フェニルホスホン酸ジクロライドの代わりに、フェニルチオホスホン酸ジクロライドを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーが合計収率94%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
フェニルホスホン酸ジクロライドの代わりに、フェニルチオホスホン酸ジクロライドを用いたこと以外は、実施例1と同様に重合しポリマーが合計収率94%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は4%で、そのうち鎖状オリゴマーが10%以下であった。さらに得られた樹脂の熱安定性、光学特性および力学特性を前記のごとく評価した。
比較例1
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.9ml:20.9mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、室温で120分撹拌した。反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は11%で、そのうち鎖状オリゴマーが60%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が13,000に低下した。
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.9ml:20.9mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、室温で120分撹拌した。反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は11%で、そのうち鎖状オリゴマーが60%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が13,000に低下した。
比較例2
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.87ml:6.27mmol)の塩化メチレン0.9ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃の温度で3時間撹拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.03ml:14.63mmol)を20分かけて滴下し、室温で120分間撹拌した。反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は10%で、そのうち鎖状オリゴマーが55%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が15000に低下した。
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.87ml:6.27mmol)の塩化メチレン0.9ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃の温度で3時間撹拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.03ml:14.63mmol)を20分かけて滴下し、室温で120分間撹拌した。反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5,000以下のオリゴマー含有量は10%で、そのうち鎖状オリゴマーが55%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が15000に低下した。
比較例3
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.6ml:18.8mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃で10分撹拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.3ml:2.1mmol)を20分かけて滴下し、溶液粘度の向上と、GPCにて数平均分子量30,000以上を確認したのち、反応を停止、すなわち反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は9%で、そのうち鎖状オリゴマーが50%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が17,000に低下した。
窒素雰囲気下、塩化メチレン(10ml)中に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(5.0g:18.6mmol)、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンカーボネートオリゴマー(4量体)(2.7g)およびトリエチルアミン(6.4ml)を混合し、室温で攪拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(2.6ml:18.8mmol)の塩化メチレン3ml溶液を20分間かけて滴下し、20℃で10分撹拌した。この溶液に氷冷下でフェニルホスホン酸ジクロライド(0.3ml:2.1mmol)を20分かけて滴下し、溶液粘度の向上と、GPCにて数平均分子量30,000以上を確認したのち、反応を停止、すなわち反応溶液に塩酸(0.15g:4.17mmol)および蒸留水を注ぎ、水溶液層のpHを4.5付近にして有機層を脱塩洗浄した。その後、塩化メチレン20mlを注入して塩化メチレン溶液層を分離し、得られたポリマー溶液を70℃の温度の蒸留水に投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、70℃の温度で20時間乾燥して目的の樹脂粉末を合計収率90%で得た。得られた樹脂の分子量5000以下のオリゴマー含有量は9%で、そのうち鎖状オリゴマーが50%以下であった。得られた樹脂を同様に加熱試験したところ数平均分子量が17,000に低下した。
実施例1〜8と比較例1〜3で作成した樹脂の評価結果を表1、表2に示す。
比較例から従来の方法で製造したポリホスホネート−カーボネートは、鎖状オリゴマーの含有率が高く加熱試験により熱分解するため、力学特性が不十分で、さらに全光線透過率が低く黄色度が大きいため、光学特性も不十分で実用に耐える成形体を得ることはできないことがわかる。
本発明で得られる含リン系樹脂は無色透明材料で、光学レンズ、機能性光学フィルムあるいはディスク基板など、多様な用途に応じて種々の材料として適用される。また、眼鏡レンズ等のヘルスケア用途やエレクトロニクスなど分野にも適用することができる。
Claims (6)
- カーボネート残基、下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基、および下記一般式(2)で示される2価フェノール残基を含み、該ホスホン酸残基と該カーボネート残基のモル分率が下記式(3)を満足する、数平均分子量が30,000以上の高分子化合物を主成分とし、かつ、数平均分子量が5,000以下の鎖状オリゴマーの含有率が3重量%以下である含リン系樹脂の製造方法であって、第1段階目として下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、下記式(4)を満たす比率で作用せしめ、30分以上反応をせしめた後に、第2段階目として残りの下記一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを作用せしめることを特徴とする含リン系樹脂の製造方法。
一般式(1)
一般式(2)
1≧(a)/{(a)+(b)}≧0.05 式(3)
[式中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数をそれぞれ表す。]
0.5≦(d)/{(c)−(b)}≦0.99 式(4)
[式中、(b)はカーボネート残基のモル数、(d)は一般式(1)のホスホン酸残基を与えるモノマーのモル数、(c)は2価フェノールのカーボネート多量体における2価フェノール残基のモル数と2価フェノールのモル数の合計をそれぞれ表す。] - 第1段階目と第2段階目の間の反応温度が、0℃以上35℃以下であることを特徴とする請求項1記載の含リン系樹脂の製造方法。
- 一般式(1)で示されるホスホン酸残基を与えるモノマーを2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物に対して、式(4)を満たす比率で作用せしめるときの2価フェノール残基の濃度が、1.0mol/L以上であることを特徴とする請求項1または2記載の含リン系樹脂の製造方法。
- 2価フェノールのカーボネート多量体と2価フェノールを含む混合物が、塩基存在下、2価フェノールのカーボネートポリマーと2価フェノールモノマーを反応させて得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の含リン系樹脂の製造方法。
- 靭性値が3N/mm以上である請求項1記載の含リン系樹脂の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法で得られる樹脂を幅10mm、長さ25mm、厚さ3mmの板状に成形した際の全光線透過率が70%以上であり、かつ、黄色度(以下ΔYIと記する)が30以下である請求項1記載の含リン系樹脂の製造方法。
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