以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明を行う。
本発明における電流出力型ソースドライバIC36の構成を図2に示す。出力数は単に1出力あたりに必要なシフトレジスタ21及びラッチ部22、電流出力段23、プリチャージ電圧印加判定部56、電流出力/プリチャージ電圧選択部25の数を出力数の増減に応じて、増減させることで実現可能であるため、任意の出力数に対応可能である(ただし、出力数が増加するとチップサイズが大きくなりすぎることと、汎用性がなくなるため600程度くらいが実用上最大である)。
本発明のドライバIC36の映像信号は制御IC28から信号線12及び13により入力される。これを分配部27により映像信号及び各種設定信号を振り分け、映像信号のみをシフトレジスタ部21に入力する。シフトレジスタ部21及び2つのラッチ部22により各出力端子に分配する。分配された映像信号は電流出力段23に入力される。電流出力段23では、映像信号と基準電流生成部26により生成された基準電流から、階調に応じた電流値を出力する。ラッチ部のうちプリチャージ判定信号データは、プリチャージ電圧印加判定部56に入力される。一方プリチャージ電圧印加判定部56では、ラッチ部22によりラッチされたプリチャージ判定信号と、プリチャージパルス52により、プリチャージ電源24から供給される電圧を出力53に出力するかどうかのスイッチを制御する信号を生成する。これによりプリチャージ電圧印加判定部56の出力信号に応じてドライバIC36の外部に階調に応じた電流を出すか、プリチャージ電源24から供給される電圧を供給するか選択する電流出力/プリチャージ電圧選択部25を介してドライバIC36外部に電流もしくは電圧が出力される。
プリチャージ電源24から出力される電圧は、表示パネルに黒を表示するために必要な電圧値となる。このプリチャージ電圧を印加する方法はアクティブマトリクス型表示装置に電流出力に応じて階調表示を行うためのドライバIC36特有の構成である。
例えば図6に示す画素構成のアクティブマトリクス型表示装置において、ソース信号線からある画素に所定電流値を書き込む場合について考える。プリチャージを行わない場合、つまりプリチャージ回路がない場合、ソースドライバIC36の出力段から画素までの電流経路に関係する回路を抜き出した回路は図12(a)のようになる。
階調に応じた電流IがドライバIC36内から、電流源122という形で引き込み電流として流れる。この電流はソース信号線60を通じて、画素67内部に取り込まれる。取り込まれた電流は駆動トランジスタ62を流れる。つまり、選択された画素67においてEL電源線64から駆動トランジスタ62、ソース信号線60を介して、ソースドライバIC36に電流Iが流れる。
映像信号が変化して電流源122の電流値が変化すると、駆動トランジスタ62及びソース信号線60に流れる電流も変化する。そのときソース信号線の電圧は駆動トランジスタ62の電流−電圧特性に応じて変化する。駆動トランジスタ62の電流電圧特性が図12(b)である場合、例えば電流源122が流す電流値がI2からI1に変化したとすると、ソース信号線の電圧はV2からV1に変化することになる。この電圧の変化は電流源122の電流によっておこる。
ソース信号線60には浮遊容量121が存在する。V2からV1までソース信号線電圧を変化させるにはこの浮遊容量の電荷を引き抜く必要がある。この引き抜きにかかる時間ΔTは、ΔQ(浮遊容量の電荷)=I(ソース信号線に流れる電流)×ΔT=C(浮遊容量値)×ΔVとなる。ここでΔV(白表示時から黒表示時間の信号線振幅)は5[V]、C=10pF、I=10nAとすると、ΔT=50ミリ秒必要となる。これはQCIF+サイズ(画素数176×220)を60Hzのフレーム周波数で駆動させるときの、1水平走査期間(75μ秒)よりもながくなるため、仮に、白表示画素の下の画素に黒表示を行おうとすると、ソース信号線電流が変化途中に画素に電流を書き込むためのスイッチトランジスタ66a、66bが閉じてしまうため、中間調が画素にメモリーされることにより白と黒の中間の輝度で画素が光ってしまうことを意味する。
階調が低くなるほどIの値が小さくなるため、浮遊容量121の電荷を引き抜きにくくなるため、所定輝度に変化する前の信号が画素内部に書き込まれてしまうという問題は、低階調表示ほど顕著に現れる。極端にいうと黒表示時は電流源122の電流は0であり、電流を流さずに浮遊容量121の電荷を引き抜くことは不可能である。
そこで、電流源122にくらべてインピーダンスの低い電圧源を用意し、必要に応じてソース信号線60に印加する構成をとることにした。この電圧源が図2のプリチャージ電源24に相当し、印加できるための機構が25である。
1つのソース信号線60に対する概略回路を図13に示す。電圧発生部24から供給される電圧をソース信号線60に印加することで、浮遊容量121の電荷を充放電できるようにした。電圧発生部24から供給される電圧は、図12(b)の特性に応じて各階調電流に対応した電圧を供給できるようにしてもよいが、電圧発生回路にもデータ54に応じたデジタルアナログ変換部が必要となるため回路規模が大きくなること、画素ごとに駆動トランジスタ62は特性ばらつきをもっているため同一階調電流に対し、対応する電圧が異なる。そのためデジタルアナログ変換部を設けて階調に応じた電圧を出しても、所定電流がかきこまれる訳でなく、そのあと所定電流まで電流源106により補正する必要がある。このようなことから、実用上は電圧発生部24で発生する電圧は最も電流値の書き込みが難しい黒階調に対応した電圧のみ発生することが費用(チップ面積)対効果の面で十分であるといえる。
従って、電圧発生部24から発生する電圧は1つでよく、データによって、電圧を出力するかどうかの判定を行い、スイッチ131の制御さえすればよくなる。つまり、ある映像信号に対応する電流出力を行う前に、電圧源24を印加するかどうかを判別する1ビットの信号線(プリチャージ判定信号)を用意する。
スイッチ251及び252の1水平走査期間内での動作タイミングを図15に示す。水平走査期間のはじめに、浮遊容量121の電荷をリセットするため電圧発生部24からのプリチャージ電圧を印加する(期間151)。電圧により電荷をリセットすることからこの期間は短くても目的を達するため最大2μ秒程度あればよい。次に期間152では、スイッチ132のみを導通状態とし、階調に応じた電流を画素67に供給する。なお期間152により所定の電流値を書き込む動作は遅いのでなるべく期間152を長くとる必要があり、期間151は最大1水平走査期間の10%程度にしておく必要がある。
このように電圧発生部24の出力期間を制御する必要があることから、プリチャージ印加期間151を示すプリチャージパルス52を入力し、プリチャージ判定信号と併せて、スイッチ131を制御する。このため、印加判定部56が設けられている。
電圧発生部24から出力される電圧値が、黒階調時の電流に対応した電圧(以降黒電圧という)のみとしたことから、例えば、階調データ54が連続した複数の水平走査期間にわたって白の階調を表示するとした場合、ソース信号線は黒、白、黒、白状態を繰り返すことになる。もし、プリチャージを行わない場合、白状態が連続して発生することになる。つまりプリチャージを行うことによりかえって、信号線の変化を激しくすることになる上、白表示時の電流によっては、白になりきらず書き込み電流不足を生じるおそれがある。
そこで、プリチャージ判定信号を用いて、電流が比較的たくさん流れる階調ではプリチャージを行わず、黒階調付近の所定電流に変化しにくい階調のみプリチャージ電源24のアシストを受けるようにすればよい。例えば階調0(黒)の時のみプリチャージ電圧を入れる期間があり、その他の階調表示時にはプリチャージ電圧を入れないようにすることが最も効果がある。最低階調時の輝度を低くすることでコントラストも上昇し、より美しい絵が表示可能となる。
例えば、図17(a)に示すように、階調データ54が0の時にのみプリチャージ判定信号55をたてることで、階調0時のみプリチャージを行うことができる。
また、階調データ54が0、1の時にプリチャージ判定信号55をたてれば、階調0、1の時にプリチャージを行うことができる(図17(b))。
ところで、全画面が黒表示といったソース信号線の変化がないパターンにおいては、1フレームのはじめのみプリチャージ電圧を印加すれば、あとは黒電流のみでも十分所定の階調が流れる。
つまり同じ黒表示時においても、前の水平走査期間でソース信号線に流した電流値によって、電流のみで所定電流値まで変化する時間が異なり、変化量が大きくなるほど、変化に時間がかかる。例えば白表示後の黒表示をするには時間がかかるが、黒表示後に黒表示を行う場合では信号線は駆動トランジスタ62のばらつき分のみの変化となるため変化に要する時間は短い。
そこで、階調データ54に同期して、プリチャージ電圧を印加するかどうかを判定する信号(プリチャージ判定信号55)を色ごとに導入することで、任意の階調で、もしくは同一階調でもプリチャージありなしを選択できるような構成を導入することも可能である。
階調データ54に対し、プリチャージ判定信号55を付加する。これに伴い、ラッチ部22もプリチャージ判定信号をラッチする必要があるため、映像信号ビット数+1ビットのラッチ部を持つようにする。
図17(c)では階調0のときでかつ、前期間での階調が0でないときにプリチャージを入れた場合(階調0の時にプリチャージするが、連続する場合には階調0でもプリチャージを行わない)を示している。
この方法では、前の方法と異なり同一階調でも、1水平走査期間前のソース信号線の状態に応じてプリチャージをしたりしなかったりを選択できる利点がある。
なお、このプリチャージ判定信号は制御IC28から供給される。制御IC28のコマンド操作により図17(a)から(c)に示したようにプリチャージ判定信号55のパターンを変更させて出力することができる。
ソース信号線の容量や、1水平走査期間の長さに応じて、ソースドライバIC36外部から柔軟にプリチャージの設定を変更させることが可能であり、汎用性がますという利点がある。
表示素子として用いる有機発光素子においては、発光色ごとに素子構成が異なり、キャリア注入効率、キャリア移動度、蛍光体の量子効率などが異なってくるため、発光開始電流が、発光色ごとに異なる可能性がある。例を図14の141から143に示す。緑色はI1以上、青色はI2以上、赤色はI3以上の電流を流すと発光する。すると画素67の駆動トランジスタ62のばらつきがないと仮定しても、図12(b)のように黒電圧が表示色ごとにV1からV3と異なってくる。低電流になるほど所定電流に変わるまでの時間がかかることから、1つの電源でプリチャージ電圧を設定しようとすると、V1の電圧をすべての素子に印加することになる。このようにすれば、黒表示時にぼやっと光る黒浮きはなくなるが、次に白を表示しようとしたときに、プリチャージが無いときに比べ、赤表示画素では(V3−V1)の電圧分これまでより余分に変化させる必要がある。そのため次に白表示を行う際に、電圧変化分が大きくなる分白まで変化しにくくなる問題が発生する。
そこで、プリチャージ電源24を表示色ごとに別に設けることとした。ブロック図を図16に示す。ここでRは赤色、Gは緑色、Bは青色発光素子への出力として説明を行う(なお、赤緑青の三原色でなくてもシアン、イエロー、マゼンダの3色でも構わない)。
電圧発生部24の出力を3つ設け、出力161はRのソース信号線へ出力を行い、162はG、163はBへ出力する。このとき161の出力電圧は画素67の駆動トランジスタ62がI3の電流を流すときのソース信号線60の電圧とほぼ等しい電圧を出力するように設定する。162、163もそれぞれI1、I2の電流が画素トランジスタ62に流れるときのソース信号線60電圧とほぼ等しい値を出力すればよい。これによって、表示色ごとに適正な電圧値を画素に直接印加することができる。
従って、電流出力時に変化させるソース信号線電位は少なくてすむため、より短い時間で所定の電流値に変化させることが可能であり、書き込み不足がおきにくい構成となる。
図8は基準電流発生回路を示した図である。基準電流は図10で示した出力段の構成において、1階調あたりの電流値を規定するものである。
図8において基準電流89は節点80の電位と、抵抗素子81の抵抗値により決まる。
さらに節点80の電位は電圧調節部85により、制御データ88により変化させることが可能である。
電流出力を行うための階調表示用電流源103のトランジスタサイズによっては端子ごとの出力電流ばらつきが発生する。トランジスタサイズ(チャネル面積)と出力電流ばらつきの関係を図11に示す。基準電流のばらつきを考慮に入れ、チップ内、チップ間の隣接端子間のばらつきを1%以内にする必要があることから図11における出力電流のばらつき(出力段での電流ばらつき)は0.5%以下にすることが望ましく、103のトランジスタサイズは30平方ミクロン以上あることがよい。
なお、チップ間での、基準電流対ある階調出力電流の比のばらつきをおさえるためには、分配用ミラートランジスタ102と、階調表示用電流源103は同一サイズ、同一レイアウトで設計することが望ましい。トランジスタの数の増減により上記の面積比を実現することがよい。これにより、複数のドライバIC36を並べて使用する表示装置でも、基準電流に対する出力電流の比のチップ間ばらつきが小さくなるためブロックむらのない表示が実現できる。
以上の方法においては、基準電流を生成するための基準電流発生部のうち抵抗素子81がドライバIC36外付けの部品で形成されることが多い。これは、抵抗素子81の値がばらつくと基準電流89がばらつくため、チップごとで異なる1階調あたりの電流を出力することになってしまう。そこで、極力ばらつきをおさえるためにばらつきが小さいチップ抵抗を用いることが多い。
しかし、実装部品点数の削減及びアレー上配線引き回しを簡略化するためには、抵抗素子の内蔵化が必要である。本発明ではこの抵抗素子81を内蔵した場合においても、基準電流89のばらつきが小さくなる構成を考案した。
図9は、抵抗81をドライバIC36に内蔵したときの基準電流発生部の構成を示したもので、このドライバIC36を2つ用いた場合の外部配線の関係を示したものを図19に示す。
抵抗素子81については2パーツに分割(11a、11b)する。
2つの抵抗素子間の接続を工夫することにより、異なるチップ間での基準電流89のばらつきを小さくすることができる。
2つのドライバIC36が接する場合、電流源の構成は図19に示した2つの電流源の構成のようになる。外部配線92により2つ必要な抵抗素子81のうち一方を異なるIC36から取り込むようにした。
抵抗素子81は隣り合うIC36の両方から1つずつ持ってきている。36aのドライバICの基準電流89aは、抵抗81cと81bの和から決められ、36bのドライバICの基準電流89bは、抵抗81aと81dの和から決められる。80a及び80bの電圧は、図8に示すように、抵抗84により基準電圧86が分圧された電圧が供給される。基準電圧86はドライバIC36に共通に入力すればばらつきがないし、さらに分圧電圧は84の抵抗分割比により決められるため、チップ間のばらつきは小さくできるため、節点80のばらつきは小さい。
従って、基準電流89aと89bの間のずれは、抵抗素子81のずれにより発生する。抵抗素子81aから81dの抵抗値をRa、Rb、Rc、Rdとし、抵抗両端にかかる電圧をVdとする。
89aの電流はVd/(Rc+Rb)となり、89bの電流はVd/(Ra+Rd)となる。
IC36内部で抵抗を作成するには、拡散抵抗とポリシリコン抵抗がある。よりばらつきの少ない抵抗を作成するには、ポリシリコン抵抗を用いるほうがよく、チップ間及びロット間を含めるとおよそ5%程度のばらつきである。しかし、同一チップ内に近接して2つの抵抗素子81を作成した場合、抵抗値のばらつきは0.1%程度となる。よって図19に示す抵抗素子81cと81d間(RcとRd)、11aと11b間(RaとRb)のばらつきは0.1%に抑えられる。従って、89aと89b間でのばらつきの要因となる(Rc+Rb)と(Ra+Rd)間のばらつきは、0.1の2乗平均である0.14%となる。
このように、電流値を決める抵抗を隣接する2つのチップから相互にとることで、チップ間及びロット間ばらつきとは無関係となり、5%程度ばらつきのあるポリシリコン抵抗でも実用可能となる。よって、内蔵抵抗、ブロックむらのできないドライバIC36が実現可能である。
このように図9に示した構成の定電流源を用いると、実装部品を削減することができるため、コストが削減可能である利点があり好ましい構成である。
さて、有機発光素子を用いた表示パネルでは、点灯画素にのみ電流がながれ、非点灯画素には電流が流れない。従って全画面白表示時に最大、全画面黒表示時に最小電流が流れる。
表示パネルに電流を供給する電源回路は、最大電流が流せるような容量を持たせる必要がでてくる。しかし、最大電流を流すような画面表示となることはきわめて少ない。このきわめて少ない機会しか発生しない最大電流のために、大きな容量の電源回路を設けることは無駄が大きい。また消費電力を下げるためにも最大電流をなるべく小さくする必要がある。
そこで、最大電流を下げる方法として、白表示画素が全体の6割以上ある場合、全画素の輝度を2〜3%程度低下させる。これによると、最大電流が2〜3%低下し、ピーク時の電力が下がる。
この方法を実現させるには、1階調あたりの電流を決める基準電流生成部26から発生する基準電流89の値を2〜3%程度変化させれば実現できる。
そのために、表示パターンに応じて制御データ88の値を変え節点80の電圧を変えることで、基準電流89を変える。
このように、表示パターンに応じて制御データの値を変えるには表示パターンを判別し、判別結果により制御データを変えるという制御をする必要がある。そのためこの判別は通常制御IC28により行われる。
このため、制御IC28からソースドライバIC36へ入力される信号線の数は映像信号線の他、電子ボリュームの制御データ線数だけある。そのため両ICの入出力端子が増加する。電子ボリュームの制御が6ビット、映像信号線が18ビット(各色6ビット)の場合、24本端子が必要となる。
さらにプリチャージ電源24が内蔵されている場合、プリチャージ電源24の出力電圧を設定するレジスタが存在する。プリチャージ電圧は表示パネルのTFT特性及び、有機発光素子のしきい値電圧により決まるため、異なるパネル毎に異なる電圧値を設定する必要があり、少なくとも1回外部から設定する必要がある。1回の設定のために外部入力端子を設けるのは非効率である。
入出力信号線数を減らすことはチップ面積縮小、外部の配線引き回しの簡略化に有効である。
そこで本発明では、データ線とアドレス線を制御ICとソースドライバIC間に接続し、映像信号と各種設定用信号を高速にシリアル転送させるようにして信号線数を減らすことにした。映像信号も、赤緑青の三原色をシリアル転送する。
図1にデータ線とアドレス線のタイミングチャートを示す。スタートパルス16が入力された後、1行分の画素データがデータ線12より転送される。その後制御用のデータが転送される。例えば電子ボリュームの設定値などである。データ線12に流れているデータが何であるか判別するために、アドレス13がデータ線12のデータに同期して転送される。この例では、アドレス線13のデータが0のとき赤色データ、1のとき緑色データ、2のとき青色データとなる。4以上の値はコマンドデータである。
シリアル転送されてきたデータを分配するため分配部27のブロック図を図18に示す。分配部は映像信号では2段の、その他のコマンドデータでは1段のレジスタもしくはラッチ回路で構成される。
1段目のレジスタもしくはラッチ回路182により、必要なデータのみを取り込み、映像信号11に対しては、次のシフトレジスタ部21のキャリーパルスが長くできるよう3色の信号のタイミングを調整している。これにより図1に示すような映像データ11が取り出される。このデータがシフトレジスタ部21により各出力に分配される。
これにより入力信号線数の少ないソースドライバIC36が実現できた。
ここまでは画素67の用いられるトランジスタがp型のトランジスタの時の例を示したが、n型トランジスタを用いても同様に実現可能である。
図20はカレントミラー型の画素構成をn型トランジスタで形成したときの1画素分の回路である。電流が流れる向きが逆になり、それに伴って電源電圧が変わる。従ってソース信号線205を流れる電流はソースドライバIC36から画素67に向かって流れる必要がある。出力段の構成はドライバIC外部に電流を吐き出すようp型トランジスタのカレントミラー構成となる。基準電流の向きも同様に反転する必要がある。
このように画素に用いるトランジスタがp、n両方において適用することが可能である。
図24は8ビット入力に対し、256段階に出力電流を出力するための電流出力段23を示したものである。下位2ビットの信号線に対しては、“I”の電流が流れる電流源がビットの重みに応じて用意され、上位6ビットの信号線に対しては、“4I”(“I”の4倍)の電流が流れる電流源をビットの重みに応じて用意する。これにより、階調0のとき最低電流である0の電流が流れ、階調255のとき最大電流である255Iの電流が流れる。1階調あたりIだけ電流が異なる。
電流源をトランジスタで構成するとなると、“I”の電流源のみで構成する場合、トランジスタは255個必要となる。一方図24の構成では“I”の電流源トランジスタが3個、“4I”の電流源トランジスタが63個必要となる。“4I”用のトランジスタは“I”のトランジスタに比べチャネル幅がおよそ4倍である。従ってトランジスタのチャネル面積だけ見ると“I”のみでも“I”と“4I”のトランジスタを併用した場合でも同一面積が必要である。しかし、トランジスタを形成すると、チャネル領域の他、ゲート、ソース、ドレイン各電極のコンタクト部が必要となる。これらはトランジスタ1つに付き1つずつ必要である。従って、トランジスタチャネル総面積が等しくなる2つの方法において、トランジスタ数が少ない分、“4I”と“I”を混ぜて出力する図24の方法の方が少ない面積で出力段を形成可能となる。
図24の構成をトランジスタで実現したときの例を図25に示す。入力映像信号データD[7:0]に対して、D[0]とD[1]間、D[2]からD[7]間では、ビット毎の重みを出力に接続されるトランジスタの個数を変化することで表現し、下位2ビットと上位4ビット間の重み付けはトランジスタのチャネル幅によりきめた。トランジスタ251と252では、252の方がチャネル幅がおよそ4倍となるように設計する。ただし、チャネル幅の比と出力電流の比がぴったり一致するわけではないため、3.3倍から4.7倍の間でシミュレーションや実装データを元に、トランジスタのチャネル幅の割合を決定することでより階調性の高い出力段を構成できる。
このように下位ビットと上位ビットで異なるサイズのトランジスタを電流源として用いることで、トランジスタ個数の削減によりコンタクト部の面積が少なくなることでより小さい出力段を構成することが可能である。
出力電流は各ビットに接続された電流源トランジスタの数により決まり、1つのトランジスタに流れる電流量を個数分積み重ねるような形で、出力電流を変化させる。図24及び図25の8ビット出力の場合、階調と出力電流特性は図26のようになる(なお紙面の関係上、下位64階調のみを図示)。上位6ビットのトランジスタにより262の領域で示される電流が出力され、下位2ビットのトランジスタにより261の領域で示される電流が出力される。262の電流はトランジスタの個数の違いにより電流値を変えているため、刻み幅のばらつきは1%以下にできる。出力電流の大部分は262の部分であるため、261の部分の電流に多少ばらつきが生じても階調のリニアリティに影響を与えない。また261の刻み幅が所定の値に比べ増減しても、4階調に1回のみ刻み幅が異なる部分がでるだけで、262と261の出力電流に対する割合を考慮すると実用上は問題ない。262の電流割合が小さくなる低階調領域では、人間の目の特性上輝度差を認識しにくく、刻み幅のばらつきは更に目立たなくなるため、問題ない。
もっとも近接間のばらつきが見えやすくなる中間調(8ビット表示の場合階調128付近)のときにばらつきが1%以下である必要がある。そのためには図11の関係から出力に用いるトランジスタ1つが70平方ミクロン以上であればよい。階調128のときはトランジスタ252のみを使用するため、252のみが70平方ミクロン以上の面積を持てばよい。階調127のときは、トランジスタ252により階調124分の電流を、トランジスタ251により階調3分の電流を出力する。トランジスタ251による電流は全体の2%程度であるため、仮にトランジスタ251による電流が3%程度ばらついても、全体では1%以内に納めることが可能である。トランジスタ252のチャネル面積が70平方ミクロンであるならば、251は252に対し4分の1の電流を流すことから、チャネル長を等しく設計すると、チャネル幅を4分の1とする。するとこの場合面積は17平方ミクロンである。図11の関係から、トランジスタ251のばらつきは2%程度(3σをとると)となるため、全体として階調127のときでも隣接間ばらつきを1%以内に納めることが可能である。
なお、128より階調数が増加すると出力されるトランジスタ252の数が増加するため、更にばらつきが小さくなるためばらつきによるたて筋は発生しない。
電流出力段23を図24のように、各ビットに対応した電流源を用意し、入力データに応じて、各電流源の値を積み重ねることで電流出力を得る方式では、上位ビットに用いられる電流源にくらべ、下位ビットに用いられる電流源の出力ばらつきが大きくても表示可能であるという利点がある。
下位ビットのみで出力を行う低階調領域においては人間の視覚特性から、ばらつきが大きくても表示むらを観測しにくく、最もばらつきが見えやすい中間調領域では、上位ビット側電流源からの出力が出力電流の大部分を占めるため、下位ビット側電流源が全出力電流にしめる割合が数%となり、仮に下位ビット側の電流源が3%ばらついても全体で1%以内を実現できるという利点がある。
高階調領域では図25の構成をとると、出力に用いられるトランジスタ数が増加するため、更にばらつきが小さくなるため、表示に問題がでない。
以上のことから、各ビットに対応して電流源を構成する方式において、上位Nビットと下位Mビットで異なるサイズのトランジスタを用いて電流出力を行う場合、最もばらつきに対して厳しい条件となる、(中間調−1階調)表示時のばらつきが1%以下となるように設計すればよい。
このときのばらつきは、上位Nビットの電流源出力ばらつきをp[%]とし、図11に示すように、ばらつきがトランジスタのチャネル面積の平方根に反比例することを用いると、下位Mビットの電流出力ばらつきは2(M/2)×p[%]となり、N+Mビット表示電流出力型半導体回路の(中間調−1階調)表示時のばらつきは、{(2N−1)×2M×p+(2M−1)×2(M/2)×p}/(2(M+N)−1)となる。
この式をまとめると、ばらつきの式は(1+2(M/2−N))×pで表わされる。従って、(N+M)ビット出力を持つ電流出力型半導体回路において、(1+2(M/2−N))×pが1%以内となるようなMの値をとれば、表示むらのない電流出力型半導体回路が作成可能である。このときとりうる最大のMの値がMの最大値で、最小値は1である。
よって、8ビット出力において、図24のように、N=6、M=2のドライバ以外にも、図27のようにN=7、M=1のドライバ構成もとりうることが可能である。
以上の説明においてはモノクロ出力のドライバとして説明を行ったが、マルチカラー出力のドライバにも適用可能である。表示色数倍同一回路を用意すればよい。例えば、赤、緑、青の3色出力の場合、3つの同一回路を同一IC内にいれ、それぞれを赤用、緑用、青用として使用すればよい。
以上の発明においてトランジスタはMOSトランジスタとして説明を行ったがMISトランジスタやバイポーラトランジスタでも同様に適用可能である。
またトランジスタは結晶シリコン、低温ポリシリコン、高温ポリシリコン、アモルファスシリコン、ガリウム砒素化合物などどの材質でも本発明を適用可能である。
図28は、表示領域のうち上半分(領域281)を白表示、下半分(領域283)を低階調表示(例えば階調1)とした場合の図面である。このとき走査方向は図面の上から下方向とする。
領域281から283の境目において、図12で説明したとおりソース信号線の電位が浮遊容量121により素早く変化できないことから図2及び図13において、階調に基づいた電流出力を行う電流出力段54の他にプリチャージ電源24を設け、変化に時間がかかる黒表示時にプリチャージ電圧によりソース信号線電位を黒にすばやく変化させる方法を用いたことを利用して、境目の(ア)で示した行(282)で、プリチャージ電圧24を出力するようにしたところ、図28に示すように、階調1表示を行う領域283の中で一番上の行のみが階調1よりも低い輝度で表示される問題がでた。
これは、階調1では電流値が小さいため、変化量の小さい階調0相当の電圧から階調1までの電圧変化でも時間がかかることを示す。この現象は特に、ソース信号線容量が大きくなる大型パネルにおいて、顕著に現れる。
そこで、図29に示すように、プリチャージ電圧印加判定部56の代わりにプリチャージパターン制御部292を設けた。
プリチャージパターン制御部292は、階調データ54及び、同期信号により出力を変化させ、例えば、階調0が入力された場合でも、フレームによってプリチャージ電源24を電流出力104に出力させたりさせなかったりするようなことを可能とした。
例えば3フレーム中2フレームではプリチャージを行い、1フレームではプリチャージをしないといったことが可能となり、図28の表示例ではプリチャージを行ったフレームでは、階調0と1の間の表示が、行わないフレームでは白と黒の中間レベルが表示されるようになる。この場合フレームレートコントロールと同じように282の行ではプリチャージを行った時の輝度2フレーム分と行わなかった時の輝度の1フレーム分を足して3フレームで割った値が1フレームあたりの輝度として表示されることとなる。
プリチャージありのときとなしのときでの輝度差によるフリッカを防ぐために
フレーム毎、同一フレーム内でプリチャージありの黒表示画素302とプリチャージなしの黒表示画素303を分散して配置した。このときのパターンを図30に示す。
さらに3フレーム以外でも2フレーム間でも任意のフレーム間でもよい。図31には2フレームでプリチャージありなしを制御した場合の例を示す。この場合黒表示画素の輝度はプリチャージを行った時の輝度と行わなかった時の輝度の平均となる。
これにより、同じ黒表示画素でも図30と図31では輝度が異なる。このことを利用して、表示階調毎にプリチャージを行うフレームの割合を変化させることで所定の輝度に近い表示を行えるようにした。
図32にその一例を示す。一般にプリチャージを行う割合を多くすればするほど黒になることから、低階調ほどプリチャージを挿入する割合を増加させる。例えば階調0では、全てのフレームにおいてプリチャージを行い、階調1では3フレームの内2回行い、階調2では2フレームの内1回行う。このようにすることで、プリチャージの回数により階調特性に近い輝度の関係を出すことが可能である。
更に階調性をよくするためには、図33に示すように、プリチャージ用電源24を複数個用意する方法がある。24aの出力電圧をV1、24bの出力電圧をV3とする(ここでV1>V3)。2種類の電源を用意すると、V1のみを印加する場合、V1とV3を交互に印加する場合、V3のみを印加する場合の3通りあるため、2種類の電源により数フレームで平均すると3通りのプリチャージ電圧を発生させることが可能となる。
図34に階調に応じてプリチャージ電圧の印加パターンを変えた一例を示す。
図10で示したような、電流出力部が引き込み型の電流源で構成された場合、画素の構成は図6もしくは図44のようにp型のトランジスタで構成される。画素回路にソースドライバからの電流を供給するときの等価回路を図12に示す(必要な回路構成のみを示している。そのため、図6でも図44でも等価的には図12の回路構成となる)。駆動トランジスタ62のドレイン−ゲート間電圧とドレイン電流特性を図12(b)に示す。これをゲート電位対ドレイン電流特性に書き直したものが図35となる。階調0の時には電流I1が流れるように設定され、階調1の時にはV1とV3の平均であるV2の電圧がかかっているように見えるため、I2の電流が流れるのと等価となる。また階調2ではV3に対応したI3の電流が流れる。このようにすることで、プリチャージ電源24のみでもI1からI3のように、階調に応じた電流値を流すことが可能である。また、プリチャージを印加後には階調に応じた電流を流す期間があるため、所定の電流値に対してずれがあっても所定の電流に変化させることが可能である(プリチャージ電圧は図35の関係を用いて、所定電流に対応した電圧を印加するようにするため、実際にずれがあるとすると、駆動トランジスタ62のプロセスばらつきによるものである。これは低階調領域では数nA〜十数nA程度であるため、十分電流変化させることは可能である。)。
このように複数の電圧源を用意し、フレーム毎に印加する電圧値を変化させる方法を組み合わせると、少ない電圧数で所定の電流値に対応した電圧値を数多く出せることから、小さい回路規模でより階調性のよい表示を実現させることが可能となる利点がある。
また、図33では更に、高電流領域(=高階調領域)で、十分電流が書き込めなくなる場合を想定して、嵩上げ用電流源331を用意し、所定電流+嵩上げ電流により、浮遊容量の電荷の充放電を早くする方法も併用することが可能である。
プリチャージパターン制御部292の入力を階調データではなく、プリチャージ判定信号を入力することにより、最も所定の輝度になりにくい、白表示の下の行のみフレーム毎に印加する電圧を変えてソース信号線に出力し、低階調表示の下の行では、電圧をソース信号線に出力しないといったことも可能となる。
図36は、プリチャージ電圧を3種類用意した例である。フレーム毎で印加する電圧値を変化させない場合は、3種類の電圧しか出力できないが、フレーム毎に異なる電圧を出力するようにすると、平均値として3種類よりも多い電圧値を出力することが可能となる。
例えば偶数フレームと奇数フレームで同一もしくは異なる電圧を出力するようにすると、図37に示すように6種類の電圧印加パターンが実現できる。このようにフレーム毎に異なる電圧も印加できるようにすることで少ない電源で多くの電圧値を出力できる利点がある。この例では2フレーム間の平均で電圧を異ならせているが、3フレーム以上でも適応可能である。フレームレートコントロールによる階調表示と同様フレーム数を多くするとフリッカが発生しやすくなるため多くても3フレーム程度が望ましい。
更に電圧値を多くするにはプリチャージ用電源24を多くする方法もあるが、電圧数だけスイッチ131も必要となる。特にスイッチは各ソースラインに電源数だけ必要となるため、大きな面積をしめることになる。
これは、各ソースラインにおいてデジタルデータ(階調データ)をアナログ値プリチャージ電圧)に変換するため、ソースライン毎にデジタルアナログ変換部が必要になるために、出力電圧数が増えるほど回路規模が大きくなる。
そこで図38に示すようにデジタルアナログ変換部381は、半導体回路で1つのみ用意し、シリアル転送されてきたデータをアナログ電圧に変換し、その後、各ソース信号線に分配するようにする。そのためにデジタルアナログ変換部の出力382を分配部及びホールド部383に入力し各ソース信号線に、階調データに基づいたアナログ電圧を分配し供給する。
一方階調に応じた電流を出力する方法は図2と同様に、階調データ386をシフトレジスタ及びラッチ部384で各ソース線に分配し、各ソース線にある電流出力段23により階調に応じた電流を出力するようにしている。
電流もしくは電圧のいずれかを出力するかを決める部分として電流電圧選択部385をソース信号線への出力の直前に配置した。プリチャージ判定信号383によりプリチャージ電圧印加判定部56により、電流電圧選択部385を切り替え、電流を出力するか、電圧を出力するか、電圧出力後電流を出力するかのいずれかを決める。
これにより、デジタルアナログ変換部381が階調数に応じたアナログ出力段階数を持てば、階調に応じた電圧を出力することが可能となり、ある行が選択されている期間(水平走査期間に相当する)において、まず電圧によりほぼ所定の値までソース信号線電流を変化させ、その後、各画素のトランジスタのばらつきによる電流値のずれを電流出力により補正するということが可能となる。
電流により所定電流値にまで変化させるには、特に低階調部において水平走査期間以上の時間がかかることが多いが、電圧により変化させる方法はほぼ1μ秒で変化を完了させることが可能な上、電流による補正はわずかであるため、電圧印加後電流を流す方法では水平走査期間内に所定電流まで電流を変化させることが容易となる利点がある。
特に白表示時に比べ黒表示時では、t=C×V/Iの式からソース信号線に流れる電流値が少ないため、ソース信号線の浮遊容量に蓄積された電荷を所定階調に対応した電荷量まで充放電するのに時間がかかる(tは変化に要する時間、Cはソース信号線の容量、Vはソース信号線電圧、Iはソース信号線に流れる電流)。
一方で、電流Iが多く流れる白表示時では、1水平走査期間内に所定の電流まで変化させることが可能である(例えばI=2μA、V=5V、C=10pFの時t=25μ秒。QVGAのパネルをフレーム周波数60Hzで動作させたとき水平走査期間は約65μ秒であり、十分変化可能である)。
この場合、デジタルアナログ変換部381のダイナミックレンジ及び分解能を低下させることが可能となる。
例えば256階調表示が可能な駆動用半導体回路において、上位128階調では電流のみで十分所定の電流値に変化できるなら、電圧を出力するのは下位128階調分でよい。従ってデジタルアナログ変換部381は7ビットの分解能であればよく、128種の電圧が出力できればよい。階調データ386が上位128階調のうちの1つであるときには、電圧出力を行わないように、プリチャージ判定信号383を入力する。これにより電流電圧選択部385は必ず電流のみを出力するようになる。デジタルアナログ変換部381の出力信号は駆動用半導体回路の外部に出力されないため、どのような値であっても良い。最も簡単な方法としては入力階調データ386の上位1ビットを無視して、下位7ビットの値に対応した電圧を出力しておいてよい。
階調データ386が0から127階調の間である場合には、プリチャージ判定信号383により、電流電圧選択部385を制御して、デジタルアナログ変換部381からのアナログ電圧を駆動用半導体回路外部に出力する期間を設ける。
これによりデジタルアナログ変換部の分解能を小さくした回路が形成できる。またソース信号線の電圧は一般に図6のようなp型トランジスタを用いたカレントコピアや図44のようなカレントミラーの画素構成の場合、黒表示時が最も電圧が高く、白表示になるに従って電圧が低下していく。黒から白の範囲での電圧変化幅に比べ、黒から中間調の範囲での電圧変化幅の方が小さくなる。従って、0から127階調の時のみ電圧を出力するような構成とした場合は、出力電圧のダイナミックレンジを小さくすることが可能となる。
電圧と電流を一水平走査期間内に順に出力する場合は図45のような構成とする。ここでプリチャージパルス451は、一水平走査期間のうちどの期間まで電圧を出力するかを決める信号である。またプリチャージ印加判定部56の回路構成の一例を図46に示す。また、電流のみを出力する場合、電圧のみを出力する場合、電圧出力後電流を出力する場合における入力信号波形を図47に示す。ここでプリチャージ判定信号383は2ビットの信号線とした。これは、プリチャージを行うかどうか(電圧を印加するかどうか)の判定と、プリチャージを行う場合、水平走査期間のはじめのみ行いその後電流を出力する場合と、全てプリチャージ電圧出力を行う場合の判定を行う必要があるため、区別に必要な最低ビット数として2ビット用意している。ここでは説明上、プリチャージを行うかどうかの判定を最上位ビット(383a)、電圧を印加する期間を判定する信号を最下位ビット(383b)とする。
入力階調データが、高階調データであるときに、プリチャージを行わなくとも所定電流値まで信号線が変化できるときは、1水平走査期間内で電流のみを出力するようにする。図47の471の期間がこれに相当する。このとき、プリチャージ判定信号383aをローレベルとすれば、図46の構成から、電流電圧選択部386は常に電流出力を選択する。これにより、電流のみが出力される。
一方、低階調データで、電流出力では、所定電流値までソース信号線が充分に変化できない場合、プリチャージ電圧を出力する必要がある。このときは、プリチャージ判定信号383aをハイレベルとする。図46の構成から、プリチャージパルス461とプリチャージ判定信号383bにより、電流電圧選択部386の動作が変化する。
電流により所定電流値までソース信号線の状態がほとんど変化できないような低階調部(特に電流が0となる階調0)においては、プリチャージ電圧により階調を表示する。そのため、電流出力期間が必要ないため、472の期間で示すように、常に電圧が出力されるようにする。このためには図46の回路構成の場合、プリチャージ判定信号の最下位ビットをハイレベルとして、プリチャージパルス451の状態に関わらず電圧を出力するようにする。
一方、中間調付近の表示のように、電圧により所定電流値に近い状態までソース信号線の状態を変化させれば、電流により所定電流値まで変化できる場合、まず水平走査期間のはじめに電圧出力を行うことで所定電流値近傍までソース信号線の状態を変化させる。その後所定電流値までの変化を電流により行う。このときの電圧印加期間と電流出力期間の割合を決める信号がプリチャージパルス451で、プリチャージ判定信号383bをローレベルにすることによりプリチャージパルス451の状態によって、電圧出力するか電流出力するか判定を行うようにした。
図45、46の構成例、及び図47のような波形入力により、電流により階調表示を行うことも、電圧により階調表示を行うことも、電圧でまず所定階調近傍まで信号線状態を変化させてから電流による階調表示を行うことも可能なソースドライバICを実現できた。
一般にソースドライバICを使うパネルのサイズの違い(ソース線の浮遊容量が異なる)や、走査方向の画素数の違い(水平走査期間が異なる)により、電流変化のしやすさが異なる。
本構成のドライバICを用いるとプリチャージパルス451をソースドライバIC外部から入力するようにすれば、プリチャージ判定信号383及び階調データ386は図2に示すように、外部信号入力となることからパネルにあわせて、電流、電圧、両方を利用して階調表示の3通りを行う階調範囲を任意に設定できるという利点がある。階調範囲の設定は図2のように外部に形成されたコントロールICで制御することができる。またコントロールICの動作をコマンド入力により変化させられる場合は、コマンド入力により調整可能となる。なお、コントロールICは図2のようにソースドライバICの外部に構成される場合の他、液晶用ソースドライバの一部に見られるように、ソースドライバICとコントロールICを同一チップに一体化して形成しても構わない。このときは一体化されたICのコマンド入力により階調範囲を調整できるようにしておけばよい。
以上の発明により、低階調部において、ソース信号線に流れる電流が小さいことから所定時間(水平走査期間)内に電流が所定値に変化できないために、白表示を行った次の行の画素の輝度が所定値よりも高くなるという問題をプリチャージ電圧入力により解決した。
例えば図39に示すような黒表示画面内に1行の白表示領域がある画像において、プリチャージを行わない場合、図39(A)の392aに示す白表示領域391aの下の行では黒表示とならず、ぼやっと点灯した状態となってしまっていたが、392の行でプリチャージを行うことにより、図39(B)に示すように、392bの行においても黒表示が実現できた。
一方で、プリチャージ電圧の種類を少なくし高階調表示に対応した電圧値をなくし高階調部では電流のみにより階調表示を行うようにした場合ときには次のような問題が発生する。
図40に示すような、白画面の中に1行の黒表示領域(401)を表示したパターンにおいて、図40(B)に示すように401の行でプリチャージを行って黒表示を実現した場合、プリチャージを行った次の行(402)の白表示の輝度が他の白表示の輝度よりも低下する(402b)という問題がパネルの垂直解像度、サイズ、白表示時の電流値によって発生する。
これは、電流値が変化するのに必要な時間tがt=C×V/Iで表され、パネルの垂直解像度が増加すると、水平走査期間が短くなるため、必要な時間tに対し許容される時間Tの範囲が小さくなることで、t>Tとなることで所定輝度まで変化せずに、画素に電流が書き込まれてしまうこと、パネルサイズが増加すると、ソース信号線の容量が大きくなるため、tが長くなること、白表示時に必要な電流値が低下すると、tが長くなることによって、所定電流まで変化しきれなくなることから、白表示時でも所定輝度にならないという問題が発生する。
とくに図40の場合、402の行と402の下の領域である403の領域で本来同じ輝度であることから、この2つの領域で輝度が異なると、輝度ムラとして観測されてしまう。一方で黒表示行401の輝度が黒表示に比べ高かったとしても1行のみの表示であるため、ムラとはならず表示品位への影響は小さい。
一方、図39の場合では、黒表示部において392の行と393の領域で輝度が異なると輝度ムラとして観測されるが、白表示行391の輝度がプリチャージありなしで異なったとしても、白表示部はこの行しかないため、ムラとして観測されない。
この2つの画像において、図39の表示パターンの場合プリチャージを行った方が良いが、図40の表示パターンにおいてはプリチャージを行わない方がよいという結果が得られる。
つまり白表示部が多く黒表示部が少ない画面においてはプリチャージにより発生しやすくなる輝度ムラを防ぐために、黒表示画素においてもプリチャージを行わず、黒表示部が多い画面においては、所定の電流にならないことによる黒輝度の上昇(黒浮き現象と呼ぶ)による表示品位の低下の方が、白輝度が所定輝度とならない問題に比べ目立つため、プリチャージを行った方がよい。
なおこの問題は、図38や図45に示すような構成によって、各階調に対応したプリチャージ電圧が用意され、全階調に対し所定電流値までの変化が早くなる構成においては発生しない。しかし、回路規模を小さくするためプリチャージ電圧の種類を少なくした構成おいて問題となる。プリチャージ電圧が少ない場合における対策を次に示す。
パネルの点灯率によってプリチャージを行うかどうか、プリチャージを行う階調数を変える。
パネルの点灯率は1フレーム間全ての輝度データを加算することにより算出可能である。この方法で得た点灯率の値により、点灯率が高い場合プリチャージを行わないもしくは、プリチャージを行う階調の種類を削減する(例えば階調0のみ)ようにし、点灯率が低い場合にはプリチャージを行うようにすることで、低階調表示の画素の輝度を忠実に表示できるようにできる。
なおこの方法では実際にプリチャージを行う画面と、点灯率を表示した画面では1フレーム異なる。計算した画面は1フレーム前の画面となる。静止画を表示した場合にはこの2フレーム間でも点灯率は変化しないため、表示に支障はない。一方で動画を表示した場合は1フレーム間では極端に点灯率が変化することは少なくプリチャージによる図39、40のような弊害は起きにくい。急激に変化するフレームが連続した場合には、表示パターンが1/60秒ごとに変化しており、各表示パターンで図40(B)のような現象が起きたとしても、人間の目では視認できない。
それゆえ、1フレーム前の画像を元にした点灯率データを用いて、点灯率によりプリチャージを行う階調及びプリチャージを行うフレームの割合を変化させることは図39及び図40の双方のパターンでの表示ムラを防ぐために有効である。なお、表示モジュールの中でフレームメモリを用いて1フレーム間データを蓄積するようなブロックがあれば、蓄積時に点灯率を計算し、読み出されたときにこの点灯率データを付与することで、当該フレームの点灯率を用いてプリチャージを印加するパターンを変化させることができるようになるため、1フレーム前のデータである必要はない。フレームメモリなどの蓄積手段がないときに、1フレーム前のデータを用いる構成とし、点灯率計算のための記憶手段を省ける構成としている。
点灯率に応じてプリチャージを行うパターンを変える例としては、点灯率が10%以下の場合には全階調の下から2分の1の階調でプリチャージ電圧を印加し、(ここで印加するとは図47に示す、電圧のみ出力の他、電圧出力後電流出力を行う。両方を含める)10%を超えて40%以下の場合には全階調のうち下から8分の1の階調でプリチャージ電圧を印加するようにし、点灯率が40%を超え60%以下の場合には階調0(黒表示)の場合にのみプリチャージ電圧を印加し、60%を超える場合にはプリチャージを行わないとする。これにより少ないプリチャージ電圧数であっても所定電流が書き込みにくい問題から発生する表示ムラを低減することが可能である。
図39の表示パターンにおいて黒表示部にプリチャージ電圧を印加することで、図39(A)の392aに示す行で、黒浮きが発生するという問題を解決することができた(図39(B))。しかし黒表示部393全体にプリチャージ電圧を印加した場合、393の領域での画素の駆動トランジスタ62のしきい値電圧ばらつきにより、表示輝度にばらつきが発生するおそれがある。これは例えば画素の回路構成が図6に示すような構成である場合、選択行の画素では図7(a)に示す等価回路となる。プリチャージ電圧を出力した場合、プリチャージ電圧と同一電圧が駆動トランジスタ62のゲート電極つまり節点72に印加される。行によって駆動トランジスタ62のゲート電圧対ドレイン電流特性にばらつきがあると、同一プリチャージ電圧が印加された行間で輝度にばらつきが発生する。ばらつきを補償するためにその後電流を流すことでゲート電位をばらつきに応じて変化させる方法をとることが多い。
低階調部では電流変化に要する時間が長くなるためなるべく電流を流す期間を長くしたい。また、数行にわたり同一階調を表示する場合、同一階調を表示する行に対応する期間でソース信号線の変化は、ばらつきを補償する分のみであるため変化量が小さい。例えばソース信号線の状態が、白、黒、黒となる場合には白から黒になるときには変化量が大きく時間がかかるが、黒から黒へは変化量が小さいため、プリチャージを行わなくても変化させることが可能である。
このことを利用して、1行前のデータを参照し1行前のデータと当該データの階調差が大きい場合にのみプリチャージ電圧から電圧出力を行うようにする。前の例では、白から黒に変化する場合にプリチャージを行い、黒から黒への変化時にはプリチャージを行わないようにする。黒から黒へのばらつき補正に必要な変化の時間がプリチャージを行わない分長くすることが可能であり、より補正の精度を高めることが可能となった。
一般に電流値の変化は、黒から白状態の変化に比べ、白から黒状態に変化する方が難しい。1行前の画素の階調が中間調以上であるときに、当該画素の輝度が中間調以下となる場合にプリチャージを行うようにすることが効果的である。
1行前が中間調以下であれば、当該画素の輝度が中間調以下の場合でも変化量が少ない分、所定階調を表示できる。
一方で当該画素が中間調以上の場合は電流量が多いため、所定電流まで変化することが容易となるため、1行前の画素によらずプリチャージは不要となる。ただし、解像度が高い場合や、中間調でも電流量が少ない場合、パネルサイズが大きいなど変化しにくい場合は、1行前の画素が中間調以下の場合にプリチャージを行っても良い。また、図33の嵩上げ用電流源331を出力して、電流値を増加させることで変化に要する時間を短縮し、所定電流にしやすくする方法でもよい。
1フレーム間の中にどの行も選択されない垂直ブランキング期間が一般的に存在する。このときソース信号線はスイッチングトランジスタによりどの画素からも切り離され、電流の流れる経路がなくなる。ソースドライバICの電流出力段が図10のように構成された場合、垂直ブランキング期間では電流出力104の先にはソース信号線しか接続されておらず、階調表示用電流源103が電流をソース信号線から引き込もうとしても、電流経路がないため引き込めない。
階調表示用電流源103はそのため無理にでも電流を引き込もうとして電流源103を構成するトランジスタのドレイン電圧を低下させる。ソース信号線の電位も同時に低下する。
垂直ブランキング期間が終了し、1行目の画素に電流を供給しようとするときにはソース信号線電位の低下が大きくなり、通常の白表示時に比べてもソース信号線電位が低下する(ここでソース信号線の電位は白表示時が最低で、黒表示時が最高電位となる。図6もしくは図44の画素構成としたとき)。そのため、階調に対応した電流値になるまでソース信号線の電位を変化させることが他の行に比べて難しくなる(必要な変化幅が大きい)。
ソース信号線電位の低下が大きい場合、白表示時に比べて更に電位が低下し、1行目に白表示を行う場合でも変化に時間がかかる場合、所定輝度に比べて高い輝度で表示が行われてしまう。垂直ブランキング期間終了後すぐに走査を行う行に関しては表示階調によらず、プリチャージ電圧を出力することが望ましい。
そこで本発明では垂直同期信号を利用して、垂直ブランキング期間の次の行に相当するデータに対応したプリチャージ判定信号では強制的にプリチャージを行うような信号として、1行目の輝度が他行の輝度と異なる問題を解決した。
なお、ソース信号線の電位低下を少しでも和らげる方法として、垂直ブランキング期間においては階調データ54に黒表示データを入力し、スイッチ108を非導通状態とすることでソース信号線電位の低下を抑えてもよい。また、電流出力104とソース信号線の間にスイッチを設け、垂直ブランキング期間ではそのスイッチを非導通状態とするようにしてもよい。このスイッチは電流電圧選択部385と兼用にしてもよく、スイッチの状態が3値とれるようにして、電流出力、電圧出力、ソース信号線と切り離すというようにすれば、スイッチの構成数を減らすことが可能である。
以上に示したプリチャージの方法を行うためのフローチャートを図41に示す。映像信号と強制プリチャージ信号から強制プリチャージ信号が有効の場合、映像信号によらずプリチャージ電圧を出力する。出力される電圧値は電圧数が複数ある場合には映像信号に応じて変化させてもよい。ここで1行目に対応する映像信号が入力されているときのみ強制プリチャージ信号を有効にすると、1行目のデータは映像信号によらずプリチャージを行い、垂直ブランキング期間にソース信号線電圧が低下することによる電流が所定値まで変化しにくくなる現象を回避することが可能となる。
強制プリチャージ信号が無効の場合、次に入力映像信号の階調を判定する(412)。小型パネルや解像度の低いパネルでは電流量が低階調部に比べて多い高階調領域では、所定期間(1水平走査期間)内で電流のみで所定電流値まで変化させることが可能である。そこで412において所定電流を書き込むことが可能な階調においてはプリチャージを行わず、電流だけでは所定電流とならない階調ではプリチャージを行うような判定を行う。
次にプリチャージが必要な特定階調以下の場合は413に進む(ここで特定階調については表示パネルにより異なるため外部コマンドにより特定階調を設定できることが好ましい)。1行前の映像信号の状態によりプリチャージするしないを判定する。これは、黒表示後と白表示後に黒を表示する場合、黒表示後では電流のみで黒を表示可能であるが、白表示後では黒までソース信号線が十分に変化できないことに対応するもので、ソース信号線の変化量が多くなる場合にプリチャージを印加するようにする。412の過程で特定階調以下の映像信号が入ってきたときに413が実行されるため、413においてプリチャージをするのは1行前のデータがある階調以上(ここで412と413で特定階調はそれぞれ別の値を設定できる)の時で、ある階調以下の場合にはプリチャージをしない。
つぎに図39、40で示したように画面の点灯率によってプリチャージを行うかどうかを判定する(414)。図40に示したような点灯率が高い表示の場合、黒が所定階調とならないよりも、白が所定階調とならない方が問題となることから点灯率が高い画面では入力映像信号の階調によらずプリチャージをしないようにする。ここでプリチャージを行うかどうかの境界となる点灯率の設定は外部コマンドにより変更できるようにして汎用性の高い半導体回路とすることもよい。点灯率が低い場合にはプリチャージを行い415に進む。ここで、点灯率が中程度の場合には複数のフレーム間で間欠的にプリチャージを行い、低いときには必ずプリチャージを行うといったことを行う場合には414から415への信号線ビット数を複数として、点灯率毎に415の動作を異ならせるといったことを行っても良い。点灯率が徐々に変化する画面においてあるフレームに来たときに414でプリチャージするしないの判定が変わり画面の輝度が点灯率に対して急激に変化してしまったときに発生するフリッカを防ぐことに有効である。
つぎに415においてFRCフラグによってプリチャージをするかしないか判定する。これは図32に示したプリチャージ印加パターンを実現するためのものである。FRCフラグは同一画素に対応するデータに対し、図32の場合では第1のFRCフラグとして、3フレーム中2フレームでプリチャージを行うという信号を出力し、残りの1フレームではプリチャージをしないという信号を出力する。第2のFRCフラグとして2フレーム中1フレームでプリチャージし、のこり1フレームではプリチャージしないという信号を出力する。入力映像信号に対し、どのFRCフラグを用いるかの関係を決めることで、フレーム間で間欠的にプリチャージを行うことが可能となる。なお全てのフレームでプリチャージをするという場合(図32で階調0の場合)は常にFRCを行うという信号を出すFRCフラグを参照するということにすれば、毎フレームプリチャージを行うことも可能である。
なお本説明では411から415のすべての過程を順に通してプリチャージをするかどうかを判定したが、必ずしも全ての過程がなくてもよい。
プリチャージを行うかどうかの判定を行うほかに図34に示すような階調に応じてプリチャージ電圧が異なるといった場合もある。FRCフラグを用いて行う場合、プリチャージするのを電圧V2印加、プリチャージしないを電圧V1印加というように読み替えて行えば実現可能である。3値以上の場合にはFRCフラグのビット数を増やすことで実現できる。
本発明によるプリチャージの方法を実現する回路ブロックを図42に示す。映像信号410に対し各ブロックによる判定の結果としてプリチャージするかどうかの判定信号が417に出力される。映像信号410とほぼ同一タイミングで出力される判定信号417により、ソースドライバ側でプリチャージを行うかどうかが決まる。シリアルパラレル変換部427は必ず必要というわけではなく、図2の36で構成されたソースドライバICと組み合わせて実現する際に、ソースドライバ36の入力インターフェースにあわせるために必要なものである。
映像信号410はプリチャージ判定部1(421)及びプリチャージ判定部2(423)、FRC挿入手段(424)に入力される。
プリチャージ判定部1(421)は、図41の1行前データにより判定(413)を行うためのブロックである。映像信号410と1行前階調設定信号428により、映像信号410の値が1行前階調設定信号428より大きければプリチャージをせよという信号を記憶手段422に出力し、小さければプリチャージしないという信号を記憶手段422に出力する。記憶手段422において1垂直走査期間値を保持することにより、1行前のデータとなる。1垂直走査期間値を保持する必要があるため、記憶手段422は水平方向の画素数分だけのビット数が必要である。このとき記憶手段422に蓄積されているデータはプリチャージするもしくはしないのどちらかが記憶されている。
なお、記憶手段422とプリチャージ判定部1(421)は順序が逆となっても良い。つまり映像信号410を記憶手段422に1垂直走査期間保持することで、1行前のデータとし、このデータからプリチャージ判定部1によりプリチャージを行うかどうかを決めることも可能である。この方法では映像信号410を保持する必要があるため(映像信号410のビット数)×(水平方向の画素数)分のビット数が必要となるため、回路規模削減の点からは図42の構成が望ましい。ただし、プリチャージ以外の機能ブロック部で1行分の映像信号を蓄積することがある場合には、この機能ブロック中の記憶手段422を用いて行うことも可能であるため、421と422の順序が逆の場合でもよい。
映像信号410は同時にプリチャージ判定部2(423)にも入力される。プリチャージ判定部2(423)では、421のブロックと同様に、映像信号410とプリチャージ印加階調設定信号429により入力映像信号の階調によってプリチャージを行うか行わないかを判定する(図41の412の処理に相当する)。
プリチャージ判定部2(423)の出力に対し、1行前データ選択部400で階調によりプリチャージをするか判断後に1行前データの判定結果である記憶手段422の出力を参照し、階調によってプリチャージをするときにさらに1行前データによってするかどうかを判定する。
この動作のために1行前データ選択部400は423出力と422出力の論理積をとるようにする。階調データとして白データが入力された場合で、プリチャージ印加階調設定信号429で中間調以下でのみプリチャージをするとすれば、423の出力は“L”レベルとなる(“L”レベルはプリチャージなしとする)。このとき1行前のデータがどうであれ、400の出力は“L”レベルとなり図41の条件を満たす。
一方黒データが入力され信号429が同じであるとすると423の出力は“H”レベルとなり、400の出力は1行前データの判定結果である422の出力次第で変化する。1行前階調設定信号428が中間調とした場合で、1行前のデータが白であれば421の出力は“H”レベルで、記憶手段422から出力される信号も“H”レベルとなり、400の出力も“H”となる。1行前のデータが黒であれば、421の出力は“L”レベルとなり同様に考えると400の出力は“L”レベルとなる。
つまり1行前データ参照部400の出力は、映像信号410がプリチャージ印加階調設定信号429で示す階調以下で、1行前の映像信号410が1行前階調設定信号428で示す階調以上の場合にのみプリチャージを行うことを示す“H”レベル信号を出力し、その他の場合にはプリチャージを行わないとなる。これにより図41の412及び413の処理が実現した。
なお、1行前のデータによらず入力映像信号によってプリチャージをするかどうかを判定する場合(413のステップをなくす場合)には記憶手段422の出力を常に“H”レベルとすればよく、例えば1行前階調設定信号428を0(黒)と設定するか、1行前データ参照部400において、1行前データ有効無効信号を入力し、この信号と422の出力の論理和の出力を423の出力と論理積をとるという方法をとってもよい。
これにより例えば全面黒表示の場合に、はじめの1行のみプリチャージを行うこと、全画素でプリチャージを行うことのいずれのプリチャージの方法も実現可能となる。
FRCレジスタ選択部424は映像信号410の階調によってFRCを行うかもしくはプリチャージを行うフレームの割合を選択するためのブロックである(図32の表を実現するためのブロック)。
FRC生成部425には、FRCレジスタ433からなる。クロック、水平走査信号、垂直走査信号ごとにFRCレジスタ433をシフト処理することにより、フレーム毎にプリチャージするかしないかを判定できるようになっている。
FRCレジスタ433の動作を図43に示す。このFRCレジスタは3ビットからなり、1が2個、0が1個からなっている。1の時にプリチャージあり0の時はプリチャージなしの状態とする。またFRCレジスタ選択部424へは太線で囲んだビット(433c)の値を出力する。
初期状態では433aから433cの状態でレジスタ値が保管されている。これを映像信号1データごとに1ビットシフト処理を行う。これを最終列のデータまで順に行うことで3回に2回プリチャージありの信号が出力されるため、図49(A)の1行目のようなプリチャージありなしパターンが形成される。
2行目のはじめのデータは、1行目の1列目の状態のレジスタからシフト処理を行ったものを用いる。このときのシフト処理をラインシフト432と呼ぶ。この場合のラインシフトの量は左に1である。なおこのシフト量は1でも2でも構わないがこの場合は1の例で説明を行う。また便宜上左シフトの量で説明を行う。2行目のデータに対しても順に1ビットシフト処理を行う。また3行目、4行目と順に行が変わる際には同様にラインシフトを行う。このラインシフトの値は1フレーム内では全て同一値である。
このようにして図49(A)に示す1フレームでのプリチャージオンオフパターンが形成される。
フレームが変わる際には、前フレームの1行1列目のFRCレジスタの値からシフト処理を行った値を1行1列目に用いる。このときのシフト量をフレームシフト431と定義する。
フレームシフトさせたレジスタを1行1列目のデータとし、1フレーム目と同様のシフト処理を行うことで、図49(B)のプリチャージパターンが形成される。さらに次のフレームでも同様にフレームシフト431を行うと図49(C)のパターンとなる。さらに次のフレームでフレームシフト処理を行うと、図43の第1行第1列目のFRCレジスタ値となる。この走査を順に行う。
図49に示した3フレーム間で各画素とも3フレームに2回プリチャージがかかるようになる。またプリチャージがかかる画素のパターンを均一にすることでプリチャージのありなしによる輝度差が原因となるフリッカを低減することが可能となる。
このことからFRCレジスタ433はプリチャージを行うフレームの割合を示しており一般にNビットのFRCレジスタに対しM個の1がある場合、Nフレームの内Mフレームでプリチャージを行うことを示している。
また図49では単色の表示装置におけるオンオフパターンを示した。カラーの表示装置では一般に赤、緑、青の三原色の画素をあわせて1画素として表示を行っている。
映像信号410は一般的には赤、緑、青の三原色が同一タイミングで送られてくることが多く、色ごとに図42の処理が並列に行われる。
全ての色に対し、同一FRCレジスタ出力を参照しても良いが、フリッカの低減のためには色ごとにFRCを行うパターンを変えることが好ましい。色ごとにFRCレジスタ433を用意することも可能であるが、回路規模が大きくなる。そこで、FRCレジスタ433のどのビットを出力するかを色ごとに変えることで、プリチャージパターンが変化する。図43の例では赤が433cを参照するならば、緑は例えば433b、青は433cを参照するようにする。このときの緑、青の参照位置が赤とどれだけ異なるかをGシフト、Bシフトとして表現し、1つ異なっていた緑ではGシフトが1、2つ異なっていた青ではBシフトが2ということになる。よって図42でFRCレジスタ433からFRCレジスタ選択部424への信号線426は表示色数のビットで構成される。
図42のFRCレジスタ1は図43のようなレジスタからなり、FRCレジスタ2は、2ビット中1ビットが1で1ビットが0のレジスタからなる。この2つのレジスタを用いれば、3フレームに2回プリチャージをかける、2フレームに1回プリチャージをかけることが可能となる。
次にFRCレジスタ選択部424について説明する。FRCプリチャージ設定信号419は映像信号410の階調に対し、どの割合でプリチャージを行うのかを決める信号で、例えば図32のような関係にするといった設定を行う信号である。419の信号によっては例えば、階調10以下では3フレーム中2回プリチャージを印加、10以上ではプリチャージしない。などの設定が可能となる。
また図42には記載されていないが、全フレームでプリチャージをするや全フレームでプリチャージしないといった場合もある。このときは、FRCレジスタ433の出力のうちの1つを選択するのではなく、1(全フレームでプリチャージする時)や0(全フレームでプリチャージしない時)を選択することで実現可能である。
点灯率設定信号418と、点灯率データ420が入力されているが、これは点灯率によってFRCパターンを変える場合があるために入力される。
例えば点灯率が高い場合は図41からプリチャージをしないため、FRC選択部の出力は常に“L”レベル(プリチャージしない)となる。点灯率が低い場合には図50のような映像信号410の階調とプリチャージパターンの関係、点灯率が中程度の場合には図32の関係となるようにするといったことを行うためである。点灯率設定信号418は、この点灯率の高中低のしきい値の設定を行うための信号である。点灯率高、中、低それぞれで、プリチャージパターンと階調の関係(例えば図32)を定めるのがFRCプリチャージ設定信号419である。
点灯率によってプリチャージのパターンを変化する必要がなければ、各点灯率でのFRCプリチャージ設定信号419の値を同一にしておけばよい。
また、FRCプリチャージを行わない場合(全フレームでプリチャージありまたはなしの場合)にはFRCプリチャージ設定信号419により、映像信号410によらずFRCレジスタ426の値を出力しないようにすればよい。
図51にFRCプリチャージ設定信号419と点灯率設定信号418による設定例を示す。点灯率により図51(a)、(b)、(c)のどの図を選ぶかを点灯率設定信号418により決める。例えば図51(a)は点灯率5%以下。さらに各図において階調とプリチャージするフレームの割合の関係を示す線511を決めるのがFRCプリチャージ設定信号419である。
このようにして作成したFRCレジスタ選択部424の出力をFRC挿入手段409に入力する。FRC挿入手段409には1行前データ参照部400の出力も入力される。つまり入力階調及び1行前のデータからプリチャージするかどうかの信号と、点灯率及び入力階調からプリチャージするフレームの割合を決めた信号が入力される。両方の信号ともプリチャージを行うとなった場合にのみプリチャージを行うようにすれば、図41のフローチャートの412から415の部分が実現できる。
次にFRC挿入手段409の出力を強制プリチャージ入力手段408に入力し、強制プリチャージ信号416との演算を行う。図41の411にもあるように強制プリチャージ信号が有効な場合には階調によらずプリチャージを行う。従って、408のブロックでは強制プリチャージ信号416が有効状態(プリチャージせよ状態)の時には409の出力によらず出力417はプリチャージをするという信号を出力する。
映像信号410が1行目のデータに対応したときのみ強制プリチャージ信号416が有効状態となるようにすれば、垂直ブランキング期間による所定電流値への変化が遅くなる1行目にプリチャージを行うということが実現可能である。
映像信号410に対する出力417の値を同時にソースドライバへ転送することで、図41のようなプリチャージ電圧印加パターンをソース信号線へ印加することが可能となる。
シリアルパラレル変換部427は図3のソースドライバ36の入力インターフェースにあわせるために必要なのであり、各色の映像信号及びプリチャージ出力417(色ごとにある)がパラレル転送される場合には不要である(そのままソースドライバへ出力する)。
なお図2の構成では制御IC28とソースドライバ36が別のチップで構成された例を示しているが、同一チップで構成した一体型のチップでも構わない。この場合、図41や図42の構成はソースドライバ36に内蔵される。
プリチャージ電源24の出力電圧値は電子ボリュームなどで制御できることが好ましい。所定電流を流すためのプリチャージの電圧はEL電源線64の電圧を基準に決められるためである。図12においてソース信号線60に電流I2を流そうとするとトランジスタ62のドレイン電流−ドレインゲート間電圧の関係(図12(b))からソース信号線60の電位は(EL電源線64の電圧)−V2となる。
一方でEL電源線64は図48に示す表示パネルにおいて483、484の配線で各画素に供給されている。全ての画素が白表示の時には最大電流が483に流れ、黒表示の時には最小電流が483に流れる。このとき483の配線抵抗により白表示時には485と486の点で電位が異なる。一方で黒表示時には485と486ではほぼ等しい電位となる。つまり白表示時と黒表示時でEL電源線64の電位が配線483の電圧降下により異なる。つまり同じI2の電流を流すにしても、配線483の電圧降下量の違いによってソース信号線60の電圧が異なる。そのため483の電圧降下量によってプリチャージ電源24の電圧値を変化させなければ、ソース信号線の電流が変化しその結果輝度が変化するという問題が発生する。
EL電源線64の電圧が異なればソース信号線60に印加する電圧も異ならせる必要がある。1フレーム内での点灯率データを用いて電圧を変更するようにすればよい。点灯率が高いときはEL電源線483に流れる電流が多くなるため、電圧降下が大きくプリチャージ電源24の電圧値を低くするように電子ボリュームを制御する。一方で点灯率が低いときはEL電源線483の電圧降下が小さいため電子ボリュームによりプリチャージ電源24の電圧値を高くするようにすることでEL電源線483の配線抵抗が原因となる輝度ムラをなくすことが可能となる。
ソースドライバIC36において、図25のような8ビットデジタル信号をアナログ電流出力に変換するブロックをトランジスタで形成した場合、出力電流ばらつきは、1トランジスタあたりのチャネル面積と、出力に用いるトランジスタの個数により変化する(チャネル面積またはトランジスタ個数の平方根に反比例する)。
同一サイズのトランジスタを(表示階調数−1)だけならべ、トランジスタの個数により階調を表示する場合、高階調部ほどばらつきが小さくなる。つまりある階調Aでばらつきが1%以下となる場合、階調Aよりも高階調側では必ずばらつきが1%以下となる(図52の523の点線で示すような関係となる)。
ばらつきの許容値は1%であり、図52の523の点線では階調10以上でばらつきが1%以下となる。このときのトランジスタの構成を図53に示す。また各ビットのトランジスタサイズを図54(b)に示す。
階調数が増えると出力に用いるトランジスタ群531及び532の数が増加するためばらつきが小さくなる。
ここで階調30以上に注目するとばらつきは0.6%以下であり1%に対し40%以上の余裕がある。つまり階調30以上ではトランジスタの面積を1/2としてもばらつきが1%以内となる(面積1/2の場合、ばらつきは40%増しとなる。図11参照)。
そこで本発明では、ソースドライバICのチップ面積を小さくするために、高階調側のトランジスタ534のみチャネル面積を小さくすることを考えた。
階調30以上のときに小さいサイズのトランジスタを用いるようにするため、8ビット信号の内下位5ビットのデータに対する電流出力を行うトランジスタのサイズは変更せず、階調32以上の時に出力される上位3ビットのデータに対応するトランジスタのチャネルサイズをゲート電圧に対するドレイン電流値が変わらないように小さくした。方法としては、チャネル長を短くした割合と同一割合でチャネル幅も短くすることで実現した。このときの各ビットに対するトランジスタのサイズの関係を図54(a)に示す。階調に対する出力電流ばらつきの関係を図52の実線522に示した。
図54(a)に示すように、下位5ビット分と上位3ビット分で異なるサイズのトランジスタが用いられている。
図54(b)でもサイズが異なっているが、これは531eのトランジスタ群は16個のトランジスタで構成され、532aのトランジスタ群は8個のトランジスタで構成され、トランジスタ数が少ないことからその分トランジスタ1つあたりの電流量を増加させる必要があるからである。この場合、そもそも532aの方が531eに比べ2倍の電流を出力できなければならない上にトランジスタ数が半分であることから、532aのトランジスタ群を構成するトランジスタ534はチャネル長をおよそ4倍する必要がある。これによりサイズが異なっている。
これに対し本発明では図54(b)から更に高階調部のトランジスタのチャネル面積を小さくした(図54(a))。同一ゲート電圧に対する電流値を維持するため、チャネル長、チャネル幅の削減率をそろえた。チャネル面積が小さくなる分ばらつきは大きくなる。この例ではチャネル幅、チャネル長とも(1/2)1/2としたので、面積は1/2となり、ばらつきは図52に示すように階調32以上において約1.4倍となり522で示すようなばらつきの関係となる。階調32以上でばらつきが増加しているが許容範囲内である1%以下となるため表示に影響しない。
図2にソースドライバIC36の概要を示した。図53のトランジスタ群531及び531の並びは電流出力段23の中に含まれる。トランジスタ群はドライバIC36の全面積の内の30%を占めている。本発明の形態による図54(a)の構成では図54(b)の構成に対し、チャネル総面積が44%削減された。これはチップ全体の13%に相当し、チップサイズが13%削減できる。これによりチップのコストが13%削減できる可能性ができ、ドライバICの単価が安くなる効果がある。
なお、トランジスタ1個に流れる電流はチャネル幅に理論的には比例するが、実際にはずれが生じる。図54(b)の構成でもこの表の通りであれば、531のトランジスタ群の電流がやや小さくなる傾向がある。階調に対する電流値の増加が比例関係とならずランプ画像を表示するとところどころで段差が発生する(この場合32階調おきに発生)。そこで、実際には出力電流のシミュレーションを行い、階調に対する電流の増加が一様になるようにする。例えば531のトランジスタ群に用いたトランジスタのチャネル幅を1.5から1.7にすることで増加の割合が一定になるようにした。なおこのような調整は仕様プロセスにより異なるため、本発明においては理論値でチャネルサイズを記載した。図54(b)でも同様にチャネルサイズの調整が必要である。また調整の際にはトランジスタが大きくなるように調整することが好ましい。低階調部の電流が少ない場合には、低階調部トランジスタ533のチャネル幅を長くするか、高階調部のトランジスタ534のチャネル長を長くする。低階調部電流が多い場合には、高階調部トランジスタ534のチャネル幅を長くするか、低階調部トランジスタ533のチャネル長を長くする。これは、調整によりトランジスタのチャネル面積が小さくなることによるばらつきの増加を防ぐためである。理論上ばらつきが1%以内に納まっていても、このトランジスタサイズの調整で1%を超えてはならないためである。
さらにチップサイズを小さくするには、532b、532cのトランジスタ群のチャネルサイズを小さくすることで実現できる。この場合もチャネルサイズを小さくする方法として、チャネル長及びチャネル幅の縮小率を同一にして小さくする。小さくする限度は、当該トランジスタ群を構成するトランジスタ全てから電流を供給した場合における出力電流のばらつきが1%以上にならない値である。532b及び532cのトランジスタサイズをそれぞれ小さくした場合の階調に対する出力電流ばらつきの関係を図55に示す。
このように、入力信号の各ビットに対応するトランジスタ群の出力電流は変えずに、さらに当該トランジスタ群のみ出力した場合の出力電流ばらつきが1%以内となる範囲でトランジスタ群を構成するトランジスタのチャネル面積を小さくすることで、出力電流のずれによる輝度ムラがない極力小さなソースドライバICを実現することができた。
なお、図55では階調10以下で出力電流ばらつきが1%を超えているが低輝度領域であるため、視認性が低く1%以上であっても表示ムラが発生しない。また階調が1つ変化するのに必要な電流のずれは階調10以下では10%以下であれば所定階調から上下1階調ずつの階調まで変化することはないため、輝度ムラが見えないため、このような低階調部で1%を超えてもよい。
この例では下位5ビットと上位3ビットでトランジスタサイズを変えた例で説明を行ったが、これによらず、例えば下位4ビットと上位4ビットなどでもかまわない。任意のビットごとにトランジスタ群のサイズを変えることができる。
以上のようにビットに応じてトランジスタのチャネルサイズを変更してビット毎の重み付けに応じた電流源を形成した場合に、トランジスタのチャネル幅と出力電流値が正確に比例しないことからシミュレーションによりチャネルサイズを調整しチャネル幅の設計を行う。この時シミュレーションと実測が一致しない場合に設計値に比べ電流が増減し、下位ビット側のトランジスタの電流が設計値より大きくなると、図56に示すように中間調表示時に電流の大小関係が逆となる階調反転が発生する(なおこの説明ではI127>I128となっているが、I127=I128となっても実質1階調減ることから問題である。従って階調反転というのは128階調目の電流が127階調目の電流以下となることとする)。
階調反転は中間調表示時に最も発生しやすい。
中間調表示時の最も発生しやすいことを8ビット表示時の場合において説明をする。図58に示すように階調127と階調128の間では電流の差は階調128を基準とすると0.79%しか違いがない。従ってこの2つの階調を出力する電流源のばらつきが0.79%以上あると階調反転が発生する。例えば階調128の電流出力がばらつきにより0.9%小さくなった場合(591が減った部分)、図59に示すように電流の大小関係が反転する。更に下位2ビットのトランジスタの電流が所定値より大きくなると更に輝度差が小さくなり例えば下位2ビットの出力が20%大きいときには632の電流出力となり輝度差は0.31%となる。
一方低階調表示時、図66に示すように例えば階調3と4の間では33%の輝度差となる。出力ばらつきは2.9%(この時中間調表示時のばらつきが0.9%であることとばらつきの面積依存性から)であり、(輝度差)>(ばらつき)となり階調反転が発生しない。下位2ビットのトランジスタの出力が20%増加したとしても輝度差は10%となりばらつき2.9%に対し大きくなるので階調反転しない。
中間調以上では輝度差は小さくなるもののどの階調でも常に階調128に対応した電流出力を持つため、128を超えた階調分の出力ばらつきのみに気をつければよい。階調128の電流は出力電流全体の少なくとも66%を占めるため、128を超えた階調分の出力ばらつきは、全出力電流に対しては0.34倍以下となる。これにより輝度差が小さくてもばらつきが小さくなるため階調反転が起こりにくくなる。階調131と階調132の場合を図67に示す。
階調131と132では差が0.75%となる。従って131の電流に対し132の電流が0.75%ばらつくと階調反転が発生することになる。全出力のうち階調128分の出力は両階調ともに存在する(672)ことからこの出力分に関してはばらつきを無視できる。671の部分においてばらつきが発生し、階調4の出力はトランジスタのサイズ比から2.9%のばらつきを持っている。しかし、671の部分は全出力に対し3%であるため、全出力に対する出力ばらつきは0.09%となる。階調差0.75%に比べて小さいため階調反転は起こらない。下位2ビットに対応する出力が20%大きくなった場合でも輝度差が0.30%となり、ばらつき0.09%に比べ大きいため階調反転しない。
128階調以上では、出力ばらつきは(2階調間で共通しないトランジスタの出力ばらつき)×(全出力に対する非共通出力トランジスタの割合)から求められ、(全出力に対する非共通出力トランジスタの割合)が最大0.33であることから輝度差に比べばらつきが小さくなる要因である。
図65にいくつかの階調間での輝度差と出力ばらつきの関係を示した。127階調目と128階調目の間が最も厳しい条件である。
低階調側では輝度差が大きいため反転しにくく、高階調側では隣接間で同一トランジスタを用いて出力する割合が大きくばらつきが全体から見ると小さくなるため輝度差が小さいにも関わらず反転しにくい。
出力するトランジスタが全て異なる(最上位ビットのみが出力)と(最上位ビット以外が全て出力)の間が一番問題である。
そこで本発明では階調反転をなくすため、図57に示すように最上位ビットに対応する電流源241hに加え、嵩上げ用電流源572を切り替え部571を介して接続し、階調反転が発生したときには切り替え部571により嵩上げ用電流源572と電流源241hを併せて出力することで128階調目の電流を増加させ階調反転を防ぐ。階調反転していない場合には切り替え部571はグランド電位と接続され電流源241hの出力のみが出力されるようにした。
嵩上げ用電流源572のトランジスタは、階調1の電流源251aの10分の1以上2分の1以下の電流出力能力を持つようにサイズを設計する。これにより階調128の電流は嵩上げ用電流源572により0.1%〜0.5%の電流嵩上げを実現することが可能である。0.5%以上の嵩上げを行う場合は全ての出力で嵩上げを行われない場合に、隣接輝度差が1%以上となるため表示に不具合が発生する。このため図57の構成では0.5%以下とすることが好ましい。一方嵩上げ電流の最低値は次のようなことから決まる。隣接輝度差0.79%及びばらつき実力0.9%の関係から階調127に比べ階調128の電流は最大0.1%分小さくなる。この時でも階調反転をしないようにする必要があることから0.1%分の嵩上げが必要である。このことから最低でも0.1%の嵩上げを行える必要があり電流源の最小値は0.1%必要となる。
一般にNビット表示の場合においては、嵩上げトランジスタの最小値は中間調電流値の(中間調表示時の隣接輝度ばらつき[%])−(中間調隣接輝度差[%])[%]以上0.5%以下の電流を出力できるように設計する。
切り替え部571の接続は、半導体回路各出力の電流出力を検査後、検査結果に応じて階調反転した端子では572の出力を241hの出力と接続し、階調反転していない端子ではそのままグランドに接続することで実現する。
このようにすることで図56のような階調反転をなくし図60のような階調輝度特性を実現した。また図63の633に示すように嵩上げ電流源を用いることで下位2ビットの電流が20%増加したとしても階調127と128で差が0.31%から0.77%まで拡大でき、トランジスタの電流出力ばらつきによる階調反転を防止することが可能となった。
下位ビットの電流源の電流値が規定より大きくなった場合、図63の632で示したように127階調目と128階調目の電流(輝度)差が小さくなり階調反転が起こりやすくなる。輝度差0.31%に比べばらつきが0.9%であると半数程度の端子で階調反転が発生する可能性がある。この場合端子毎に切り替え部571の接続作業を行うと手間がかかり生産性が低下する。
そこで、図61に示すように嵩上げ用電流源572と電流源241hの接続を切り替え手段611を介して行い、嵩上げ信号612により切り替え部571を制御することで外部コマンド入力により嵩上げ信号612を用いて128階調目の電流を容易に嵩上げできる構成を考えた。
嵩上げ信号612は出力ごとに設定できればよいが、この場合図69に示すように信号線ごとの嵩上げ信号612の値を保持するラッチ691が必要である。各ラッチへの信号の分配は映像信号を分配するために用いるシフトレジスタを共用すれば1ビットの信号入力692により可能である。しかしラッチを信号線分設けるため回路規模が大きくなる問題がある。回路規模が大きくなっても良い場合もしくは微細プロセスを用いて、全体に占めるラッチ部691の面積が小さい場合には出力毎に嵩上げ信号を制御して嵩上げするしないを決めてもよい。なおこの信号は通常検査後には嵩上げ必要、不要の端子がわかる上、常に同じ状態にする必要があることから、出荷時にラッチ部691のラッチデータを決める必要がある。そのため嵩上げ信号を入力するコマンドは通常ユーザには隠しておく。更に電源投入毎に信号を入れなくてもよいよう、ラッチ部は不揮発性のメモリで構成されることが望ましい。
そこで下位ビットに対応する電流源の電流値が大きくなってしまったことよる階調反転を救済する目的として、嵩上げ信号線612は全出力共通とし全出力を嵩上げすることにより階調反転を簡便に防止する。
このときのブロック図を図62に示す。入力信号12、13によりドライバICに嵩上げするかどうかのコマンドを入力する。これを分配部27により分配し、嵩上げ信号線612に嵩上げするかどうかの信号を印加する。この嵩上げ信号線612は各出力段に分岐してつながっているため全ての出力で嵩上げをするもしくは、しないの選択が可能である。なおこのコマンドは通常IC検査後にICの階調反転による不良を回避するために入力するためのものであるため通常は隠しコマンドとして持っておく。この場合嵩上げ用電流源572も図57と同様のサイズで作成する。
更に細かな調整を行うには、嵩上げ用電流源572を複数個設け出力する電流源の数を変更することで更に細かく電流の嵩上げ率が調整できる。図64に2個の嵩上げ電流源を用いた場合を示す。642に比べ641の電流出力量を半分とするようなトランジスタを設計しておけば、例えば下位ビットの電流が20%大きくなったときには642のみを嵩上げ出力し、10%大きいときには641のみを嵩上げ出力するなど下位ビットのトランジスタの電流能力に応じた嵩上げをすることができ階調反転がなく、かつ階調飛びの少ない電流出力段を実現することができる。
更に図57の配線修正による切り替え部571による嵩上げと、図61の切り替え手段による一括嵩上げを併用する方法もある。この時の出力段の構成を図68に示す。
下位ビットのトランジスタの電流が大きめにでてきた場合には、大部分の出力端子で階調反転がおきやすくなるため全ての出力で階調128の電流を嵩上げし階調反転を防ぐ。そのため嵩上げ信号612により切り替え手段611を導通状態とする。
一方、各電流源241のばらつきにより階調反転する場合には(中間調ばらつきが0.9%で隣接階調間の輝度差が0.78%である場合には起こりうる)、端子毎に調整を行う。反転する端子数は少ないため検査後該当する端子のみ配線修正をレーザーなどにより行う。この修正は切り替え部571で行い嵩上げ電流源572aを接続するかどうか修正により決める。これにより端子毎に細かい階調電流の設定をすることが可能である。
トランジスタの電流能力が大きくなった場合(全端子に影響)とトランジスタのばらつきの場合(端子毎に異なる)で嵩上げの仕方が異なるため、図68のように端子毎に調整できる機能と、全端子に対して調整できる機能を設けることにより検査後のリペアを短い時間ででき、作業効率を高めることでコスト低減することが可能である。またより多くのICがリペアにより合格となることで歩留まりが上昇しコストが下がる利点がある。
図70は電流出力段を図73の736に示すようなカレントコピア構成により形成した場合のドライバICの概略構成を示したものである。
カレントコピア回路では、入力電流をスイッチ734及び735を介して駆動トランジスタ731に流し、流れた電流量に応じて節点742の電圧が決まる。この電圧を保持するために蓄積容量732を設け電荷を蓄積することにより電圧を保持する。入力電流を記憶した後スイッチ734及び735を非導通状態とする事で、入力電流をためておく。電流を出力する際には733のトランジスタを導通状態とすることにより、732の蓄積容量に蓄えられた電荷量に応じた電流が731に流れ出力される。同一駆動トランジスタ731のドレイン電流−ゲート電圧特性を用いて入力電流を記憶し、出力するためトランジスタの特性ばらつきのよらず入力電流と同じ電流を出力できる利点がある。
更にカレントコピア回路では入力電流を一度蓄積容量732に記憶してから出力を行うため、メモリ機能を有する。そのため入力データをかく出力端子に分配した後、データの出力タイミングをそろえるラッチ部の機能をカレントコピア回路に持たせることが可能である。これにより図70の構成においてシリアルに転送されてくる映像信号はラッチ部を使わずに各出力に分配可能となる。
カレントコピア回路ではアナログ電流を保持することが可能であるため、映像信号をあらかじめデジタル−アナログ変換部706で階調に応じたアナログ電流である階調電流信号730に変換し、シフトレジスタ21の出力信号に応じて各出力に分配するようにしている。分配された電流を保持するための電流保持手段702に、カレントコピア回路を形成している。
カレントコピア回路では先に述べたように入力電流を一度保持した後に入力電流に応じた電流を出力するという動作を行うことから、入力電流を記憶している期間では電流出力ができず、また電流出力を行う際には階調電流信号730を取り込むことができない。
表示部への電流出力は画素回路において所定電流への変化に時間がかかるという問題があることから水平走査期間内においてはなるべく長い期間電流を出力し続けることが望ましい。そのためソースドライバICから電流は常に出力されることが好ましい。
そこでカレントコピア回路構成の出力段でも常に電流を出力し続けるために、同一出力端子にカレントコピア回路を2つ設け、一方が階調電流信号730を記憶している際には、他方が電流をドライバIC外部に電流を出力する構成とした。
出力段の回路を図73に示す。736aと736bの2つの保持回路がカレントコピア構成となっている。2つの保持回路のうちどちらを出力にし、どちらが階調電流信号730を記憶するかを決めるための信号がセレクト信号738である。セレクト信号738は1水平走査期間毎に変化し、1水平走査期間ごとに保持回路736を変えることにより映像信号に応じた電流出力が可能となる。セレクト信号738に応じて保持回路736の電流出力用トランジスタ733の状態を変えるようにすることで、出力に用いる保持回路を決めることが可能となる。
両保持回路736とも出力を行わないようにする場合には、セレクト信号738及びセレクト信号の反転出力739ともローレベルとすることで実現する。738及び739は必ずしも逆相に入る必要はないが、両信号ともハイレベルにしてはならない。他の方法として738と739は常に逆相とし、別途イネーブル信号を設け、738及び739との論理積の結果をスイッチ733を制御する信号に入力することにより同様な動作を行うことが可能である。
シフトレジスタ21及び電流保持手段702により階調電流信号730が各出力に分配できた。次に階調電流信号730を生成する回路について説明を行う。ロジック信号である映像信号をアナログ信号である階調電流信号730に変換するためにデジタル−アナログ変換部706を設け、映像信号に応じた電流を出力するようにした。デジタル−アナログ変換部706の回路例を図71に示す。
映像信号の各ビットに対応した電流を外部から入力し、対応した電流(階調基準電流1〜階調基準電流8)に対し、電流値に対応して階調信号711によりスイッチ712を制御することにより、階調信号711に応じた階調電流信号730を出力するような構成とした。階調信号1(711a)から順に階調信号8(711h)まで最下位ビットから最上位ビットに対応させた場合、階調基準電流1(700c)の2倍が階調基準電流2(700d)、一般に階調基準電流nの2倍が階調基準電流(n+1)となるように、電流値を設定し入力する(ここでnは1以上ビット数未満の整数)。
これによりスイッチ712が導通状態となっている階調基準電流700の和を階調電流信号730として出力する。
次に階調基準電流700を作成し、デジタル−アナログ変換部706に入力する方法について説明する。
図78に示すように階調基準電流700は階調基準電流生成部704により生成する。1階調あたりの電流をどのくらいにするかを設定する基準電流781を元にカレントミラー構成などにより、映像信号のビットに応じた階調基準電流700を出力する。ここでは8ビット出力の場合で、階調基準電流700は8出力存在する。(階調基準電流nの電流値)×2=(階調基準電流(n+1)の電流値)となるような電流を正確に出力する必要があることから、ミラーを行うトランジスタ782の数を変えることで出力電流を変化させることが好ましい。この方法の場合、階調性は高いが回路面積が大きくなる欠点がある。一方で各階調基準電流700を生成するトランジスタ782は、各期順電流に対し1つずつとし、チャネル幅を変えることにより階調基準電流1から8を変化させることも可能であるが、電流がチャネル幅に正確に一致するわけでないためシミュレーションによりチャネル幅をプロセスに応じて変更する必要がある。このため、個数分だけ並べる方法に比べ階調性が低下するおそれがある。そこで、図78に示すように低階調部と高階調部に階調基準電流をグループ分けし、低階調部と高階調部の間ではチャネル幅を変更することで電流値を変え、低階調部間及び高階調部間ではトランジスタの個数を変更することで電流を変えるようにする。
図78では、低階調部を下位2ビット、高階調部を上位6ビットとし、783で示す点線に囲まれたトランジスタは784で示す点線に囲まれたトランジスタに比べておよそ1/4のチャネル幅(プロセスにより上下する−10%以上+50%未満)で形成することにより、階調性を維持し回路規模の小さい階調基準電流生成部704を実現することができる。
ドライバICに対し1回路であるため、階調性を高めたいときは図80に示すようにトランジスタ数により電流を変化させてもよい(全体に対する回路面積が10%以下であるため)。
基準電流781は図81に示すように抵抗、演算増幅器などにより定電流源を構成することで実現可能である。88の制御データにより基準電流781の電流値を変えることも可能である。この基準電流781の制御は、電力抑制、焼き付き防止、コントラストの向上に役立つ。
以上のようにして形成された階調基準電流700をデジタル−アナログ変換部706に入力すればよいが、直接接続すると複数のソースドライバIC36を接続したときに、全てのチップで1%以下の誤差で階調基準電流700を供給することが難しくなる。
チップ毎に、基準電流生成部703と階調基準電流生成部704を設けると、図81の基準電流生成部703でのばらつきと、図78もしくは図80でのカレントミラーでのばらつきの2乗平均のばらつきが階調基準電流700で発生するため、チップによってある階調の電流値が異なるおそれがあり、チップ毎に輝度ムラが発生する。カレントミラーのミラー比ずれによるばらつきを小さくするには782、801のトランジスタサイズを大きくすることにより実現できるが、ばらつきを1%以下にしようとするには10,000平方ミクロン以上のチャネルサイズが必要となる。
小さいサイズでばらつきなく各チップに階調基準電流700を供給するには1つの表示部に対し、1ヶ所の基準電流生成部703から1ヶ所の階調基準電流生成704を用いて階調基準電流700を発生させ、各チップに分配する方法である。この概念を図72に示す。
ソースドライバ36aにより発生した階調基準電流704を、36aを含めた全てのチップに供給することにより、各チップでばらつきのない電流が供給される。ここで、階調基準電流700は2つ以上のソースドライバIC36に同時に供給されないようにする必要がある。電圧と異なり電流の場合複数のドライバに接続すると分流され、1つのドライバICに流れる階調基準電流値が異なってしまう。そこで、複数のドライバIC36が同時に階調基準電流700を取り込まないようにデジタルアナログ変換部706が持つスイッチ712を利用して、ある1つのICが映像信号に応じた階調電流信号730を生成しているときには他のICではスイッチ712全てが非導通状態となるような構成にすることを考えた。
階調電流信号730が必要なのは、電流保持手段702に電流を供給するときでシフトレジスタ21の出力のうちの1つに対し取り込むように信号を出している時である。つまりスタートパルス16が入力され、カスケード接続された次段IC36に対しキャリー出力701からパルスを出力するまでの期間が、階調電流信号730を必要とする期間である。
そこで、シフトレジスタ21が出力を行っている期間以外ではデジタル−アナログ変換部706のスイッチ712は階調信号711によらず常に非導通状態とする。これを実現するためにチップイネーブル信号生成部707を設け、シフトレジスタ動作時以外ではスイッチ712は常に非導通状態とするようにする。チップイネーブル信号生成部707は、スタートパルス16が入力されて、キャリー出力701が行われるまでの間のみパルスを出力し映像信号をアナログ電流に変換することを許可するようにする。正確にはシフトレジスタ出力719が同一チップ内で出力されている期間である。スタートパルス16とシフトレジスタ出力719、キャリー出力701とシフトレジスタ出力719の関係は入力データとスタートパルス16の関係やシフトレジスタの構成21によって変わる可能性があるため、スタートパルス16とキャリー出力701から期間を調整してイネーブル信号821を出力するようにする。イネーブル信号に対応したデジタル−アナログ変換部706の回路図を図82に示す。チップイネーブル信号821はスタートパルス16が入力されてからキャリー出力710を行うまでの間、ハイレベル状態となり、階調信号711に応じて階調基準電流700が階調電流信号730に出力される。それ以外の期間ではチップイネーブル信号821がローレベル信号となるため、常にスイッチ712が非導通状態となり電流は供給されない。
1水平走査期間でのあるドライバIC(チップ1)のチップイネーブル信号821、セレクト信号738、階調電流信号738、階調信号711のタイミングチャートを図83に示す。
セレクト信号738はタイミングパルス29により1水平走査期間毎に変化し、1出力に対し2つある保持回路736のどちらに階調電流信号738を記憶させ、他方が記憶された電流を出力するかを決める。期間831aでは保持回路A(736a)から電流を出力し、保持回路B(736b)に階調電流信号730を記憶させている。
階調電流信号730への記憶は1出力ずつ順に行い、シフトレジスタ出力719によりどの出力へ記憶させるかを決めている。更に複数のドライバICに基準電流を分配できる配線としていることから、分流されることを防ぐためシフトレジスタが動作している期間のみチップイネーブル信号821により、デジタルアナログ変換部706が動作し、階調電流信号738が流れる。チップ1のチップイネーブル信号821はシフトレジスタがチップ1で動作している期間である832aの期間でのみハイレベルの信号となり、階調電流信号738が流れている。832bの期間(チップ1以外のシフトレジスタが動作中)のときは、チップイネーブル信号821がローレベルとなり階調電流信号738は流れない。そのため階調基準電流信号700は常に1つのドライバICにしか入力されないため、図72のように複数のドライバICに分岐して配線することが可能となる。カレントミラーなどによる分配に比べ、時間で区切って分配するため正確に同一電流を供給できる。
カレントコピアを各出力に設け階調電流を各出力に分配する方法では、駆動トランジスタ731の特性ばらつきによらず、記憶した電流と同じ電流を出力することが可能であるため、出力ばらつきが起こりにくい。しかし、「突き抜け」と呼ばれる現象により出力電流がばらつくおそれがある。
図73の保持回路においてゲート信号線741の信号をハイレベルにすると、階調電流を記憶する。例えば白階調の電流を記憶するとすると、図74に示すように、駆動トランジスタ731にドレイン電流は白階調電流(ここでIwとする)となる。そのとき駆動トランジスタ731の電流−電圧特性(図75)から節点742の電圧はVwとなる(期間747)。
期間747が終了し、保持回路736に電流を記憶するのを終えるためゲート信号線741はローレベルに変化する。この時ゲート信号線741電圧の低下がトランジスタ735aのゲート容量を介して容量結合により節点742の電圧もVGだけ低下する。これにより駆動トランジスタ731のドレイン電流もIwからIG分だけ低下する。
この「突き抜け」により、出力電流が端子により変化するおそれがある。例えば図76の765、766に示すような電流―電圧特性を持つ駆動トランジスタ731があるとする。節点742の電圧つまり駆動トランジスタ731のゲート電圧が突抜によりVG変化すると、765の駆動トランジスタではドレイン電流がIw1となり、766の駆動トランジスタではドレイン電流がIw2となり、この電流が出力信号線737を介して外部に流れ、出力電流にばらつきが発生する。Iw2とIw1の差が2つの平均電流に対し1%以上になると輝度ムラとして表示品位に影響を与える。
節点742の電圧変化量VGはトランジスタ735のゲート容量をCgs、蓄積容量732の容量をCs、ゲート信号線741の振幅をVgaとすると、VG=Vga×Cgs/(Cgs+Cs)で表される。
VGを小さくするには、CgsもしくはVgaを小さくするか、Csを大きくする。Csを大きくする方法はチップサイズが大きくなることから現実的には難しい。またVgaは基本的にアナログ電源電圧分の振幅を持つ。この電圧を下げると、出力端子の電圧振幅が低下するため、出力可能な電流のダイナミックレンジが低下する。またゲート信号線741のみハイレベル電圧を低下させると、このゲート信号線741のための電源が必要となるため電源数が増加する。電源数の増加は電源回路の増加につながるためこの方法も実現することが難しい。
そこで本発明ではトランジスタ735のゲート容量Cgsを小さくすることを考えた。単にトランジスタ735のサイズを小さくした場合では、オフ時のリーク電流が増大し蓄積容量732に保持された電荷がトランジスタ735を介して移動することにより、節点742の電位が変化し所定電流を流せなくなる問題が発生する。
トランジスタ735を少なくとも2つ以上に分割し、そのうちの蓄積容量732に最も近いトランジスタを小さくすることを考えた。図77に2つに分割したときの電流保持手段702の回路を示す。
トランジスタ735を2つに分割し、775と772の2つの構成とした。トランジスタ775に比べ772はチャネルサイズが小さくなっている。またそれぞれのゲート電極につながる信号線は別になっており、ゲートイネーブル信号771の制御により、トランジスタ772の方が775に比べて早く非導通状態となるようにしている。タイミングチャートを図79に示す。
複数個のトランジスタにすることの利点は、2つのトランジスタのゲート信号線の波形を異ならせ、蓄積容量732に近いトランジスタ772をまず非導通状態とし、その後775を非導通状態とすることで、「突き抜け」はトランジスタ772のゲート容量Cg1と蓄積容量Cs、ゲート振幅Vgateによることとなり、Cgs>Cg1となることからVG自体を小さくすることができる。さらに、蓄積容量732の電荷を保持するために772が完全に非導通状態となった後、775が非導通状態となるようにゲート信号線741をローレベルに変化させる。775はリーク電流を小さくするためトランジスタのチャネル幅/チャネル長の値が大きくなるように設計される。2つのトランジスタを直列に接続することでリーク電流が少なくなる利点がある。更にトランジスタ775と蓄積容量732に間にトランジスタ772が非導通状態となって挿入されているため、775aのゲート信号による、節点742への「突き抜け」が発生しないという利点がある。
このように、駆動トランジスタ731のゲート及びドレイン電極間に接続されるトランジスタを複数個に分割し、最も蓄積容量732に近いトランジスタはチャネルサイズを小さく作成した上に他のトランジスタに比べ早く非導通状態とすることで、電荷のリークなどの問題がなく突き抜け量を減らすことを実現できる。
更に駆動トランジスタ731の(チャネル幅)/(チャネル長)(以降W/Lとする)に関してもW/Lの値が小さくなることが好ましい。
図84に電流−電圧特性を示す。W/Lの値が小さくなればなるほど傾きが小さくなり、階調電流信号730を記憶させた後「突き抜け」によりVGだけ駆動トランジスタ731のゲート電圧が低下したときの電流量の低下は841の曲線の方が842の曲線に比べて大きい。そのため「突き抜け」によるドレイン電流の低下を抑えるため、駆動トランジスタのW/Lを0.5以下とすることが好ましい。この場合、低下量は設定電流(Iw)に対し1%以下となる。下限値はチャネル幅の最小作成寸法、チャネル長を延ばすことによるチップ面積の増大の影響から0.002以上である必要がある。
以上のようにカレントコピア回路を用いた出力段を形成することにより出力ばらつきの小さいドライバICを実現させた。
大画面パネル向けのソースドライバにおいては、映像信号が高速に転送される必要があるため信号線周波数が高くなり、その結果電磁波ノイズが放出される問題がある。また、テレビ向けなどでは入力される信号線ビット数も増加するため、信号線が多数になるという問題もある。
そこで映像信号を小振幅信号伝送することとした。図85にその時のソースドライバ852、ゲートドライバ851、コントローラ854と電源モジュール853の接続を示す。このうち小振幅信号伝送を行うのは信号線周波数の高いクロック858、同期信号857、映像信号線856である。
映像信号線856の伝送形式を図86に示す。1水平走査期間864内に画素に出力されるデータが転送される期間(データ転送期間865)とブランキング期間(866)を形成する。なおブランキング期間は必ずしも存在する必要はない。
データ転送期間865は、パネルのソース信号線数(カラーパネルの場合は信号線数/色数(一般には3色))に分割される。分割された期間を期間862とする。この期間862内で赤緑青の各色データ(861)及び階調に応じた電圧印加を水平期間のはじめに挿入するかどうかを決める1ビットのプリチャージフラグ(862)が映像信号線856を介して転送される。映像信号データ861及びプリチャージフラグ862は、転送信号レートや、信号線数の制約により全ビットを一斉にパラレル転送する場合から1ビットずつシリアルに転送する場合まで任意の方法で転送することが可能である。
また大型用電流ドライバにおいては、パネルサイズが大きいことによるソース信号線浮遊容量の増加や、画素数の増加による水平走査期間の短縮ということにより1水平走査期間内で電流が所定の値まで変化できない問題が顕著となる。そのため電流により所定階調を表示する前に一度電圧により所定階調付近までソース信号線の状態を変化させてから、電流により所定電流にまで変化させることが必須となる。
ソースドライバの構成例を図89に示す。ここでのソースドライバは図85のソースドライバ852を示している。映像信号はクロック及び同期信号と共に小振幅信号伝送されるため、ソースドライバ側でレベル変換するための差動入力レシーバ893に入力される。映像信号をCMOSもしくはTTLレベルの階調データ386に変換する。階調データ386はシフトレジスタ及びラッチ部384とプリチャージ電圧変換部884に入力される。階調データ386はシフトレジスタ及びラッチ部384により各出力に分配され、分配された階調データは電流出力段23により階調に応じた電流量に変換される。これにより階調に応じた電流出力を行うことが可能となる。一方、階調データは同時にプリチャージ電圧変換部884に入力される。プリチャージ電圧変換部884では図88に示すような回路構成により、階調データに応じた電圧が信号885により出力される。プリチャージ値変換部882の変換マトリクスと抵抗素子883の値により出力される電圧を変化させることが可能となる。
電流書き込みを行う期間における画素とソースドライバ間の等価回路は図12(a)に示す回路であった。このとき白表示時の電流をI3、黒表示時の電流をI1とすると、プリチャージ電圧出力の変動範囲は図12(b)からV3からV1までの範囲となる。V3及びV1の値は画素の駆動トランジスタ62のチャネルサイズにより変化し、例えばチャネル幅が狭くなるほどV3とV1の差が大きくなる。パネル(画素トランジスタの構成)によって異なる電圧値が出力できるように本発明では図88の883に示す抵抗素子を2つ外付けで配置し、抵抗値を任意に設定できるようにすることで、様々なパネルに対する電圧出力を可能とした。一般に赤、緑、青で有機発光素子の電流−輝度特性が異なることから、I1、I3の値が色ごとに異なり、その結果としてV1、V3も色ごとに異なる。従って図88に示すプリチャージ電圧変換部884は3回路分ソースドライバに必要である。外付けの抵抗値が色ごとに異なる。図85及び図89では1回路の記載であるが、実際には赤緑青の3回路分が存在する。
以上のように階調に応じて出力される電圧はつぎに分配部及びホールド部383により各出力に分配される。これにより各出力には階調に応じた電流と階調に応じた電流が分配された。電流と電圧のいずれを出力するかを電流電圧選択部385により選択する。
電流電圧のいずれを選択するかはプリチャージ電圧印加判定部56により決められる。プリチャージ電圧印加判定部56はプリチャージパルス451とプリチャージイネーブル895により判定を行い、プリチャージパルス451が入力され、プリチャージイネーブル895がプリチャージを行う信号を出力した場合にのみ電圧を印加するようにする。
これにより、図90の出力901に示すように、階調データDn(nは自然数)に対応する電圧をVDn、対応する電流をIDnとすると、プリチャージ判定信号383がハイレベルとなりプリチャージをするというときには、1水平走査期間内でVDnが出力された後、IDnが出力される(VDn印加期間はプリチャージパルス451のパルス幅による)。一方でローレベルの時には、VDnは出力されず、IDnのみが1水平走査期間の間出力される(電流出力か電圧出力かの大まかなタイムチャートを図47に示す)。プリチャージ判定信号383を利用することで、所定階調値に対応する電流まで変化しにくい低階調部では、電圧によりまず大まかにソース信号線の状態を変化させた後に、電流により所定電流値までソース信号線を変化させる。一方で、高階調部や、複数行同じ階調が連続して表示される場合の2行目以降の行においては、高階調部ではソース信号線が所定電流値にまで容易に変化できること、複数行連続の場合にはソース信号線の状態が変化する必要がないため、電圧により所定階調値まで変化させる必要がないため、プリチャージ判定信号383によりプリチャージを行わないようにするという制御が可能となる(この状態で電圧により変化させると、画素回路の駆動トランジスタ62の特性ばらつきによる輝度ムラが発生するおそれがあるため電圧を印加しない方がよい)。プリチャージ判定信号383はこのようにソース信号線の状況に応じてプリチャージを行うかどうかを決められる利点がある。そのため映像信号線856で送るデータ量が各色で1ビットずつ多くなっても転送する必要がある。
プリチャージパルス451はプリチャージ期間をコマンド線847によりソースドライバに入力し、プリチャージ期間設定値に応じてプリチャージパルス451のパルス幅を変更できるようにしている。これにより、画面サイズに応じてプリチャージに必要最低限の時間で電圧出力を行い、所定輝度にする電流出力期間をなるべく長くすることで、電圧による設定で発生する駆動トランジスタ62による特性ばらつきの輝度ムラ補正をしやすくする。コマンド線847の信号線数を少なくするため図87に示すように、1ビットのデータをシリアル転送によりソースドライバに送る構成とした。ソースドライバに必要なコマンドは、プリチャージ期間設定872の他、基準電流値を変更するための基準電流設定871とドライバ出力イネーブル信号のみである。これらの信号は頻繁に書き換えれられることはなく、頻繁に行っても1水平走査期間内で1回の書き換えでよい。図87の例では全部で15ビットであり、ソースドライバのシフトレジスタ用のクロック871が1水平走査期間内に変化する時間に比べてもゆっくりでよいため、電磁波ノイズの影響もなく信号伝送が可能である。そのため信号線数は1本でよい。また、コマンド線847に流れるデータの判別も、例えばタイミングパルス849の次のクロックから8ビット分上位から下位ビットの順で基準電流設定871、次にプリチャージ期間設定872、最後に出力イネーブル信号とすることでコマンドの判別線(アドレス設定)も不要である。これにより少ない信号線数で、ソースドライバの設定が可能である。なお基準電流設定信号が入力される基準電流生成部891は電子ボリュームにより基準電流が変更できるような構成となっており、設定信号により、電子ボリューム値が変化することで基準電流が変化する(図8に構成例を示す)。
映像信号が各色偶数ビットで構成される場合(例えば各色10ビットの計30ビット)には、各色にプリチャージフラグ862が1ビットずつ足されるため全ビット数の合計は必ず奇数ビットとなる(例の場合33ビット)。低振幅信号伝送を行う場合にはたいがい配線はツイストペア線で送られる。33ビットの信号線を送る場合、転送速度がドライバと同じであるときには66本の線が必要となる。これでは配線数が多いため、通常転送速度を、ドライバのクロックに対し一定倍で転送し、その分配線数を削減している。例えば2倍速で送る場合、1回の転送で17ビットずつ転送すると34ビットを転送できる。このうち33ビットにデータを入れることでデータを2倍速転送でいる。しかしながら実際の転送能力34ビットに比べ1ビット分ブランクのデータを送っていることになる。同様に偶数倍速で転送する場合には奇数ビットのデータでは必ず1ビット分ブランクのデータが送られることとなり、信号線の利用効率が低いことがわかる。つまり1ビット分データが増加しても、転送レート(クロックの倍速)、信号線数に影響を及ぼすことはない。
そこで、本発明では、赤緑青の各映像信号とプリチャージフラグにデータ/コマンドフラグ911を足すことにし、このデータ/コマンドフラグ911の値が、例えば1のときには映像信号とプリチャージフラグが転送され、0のときにはソースドライバの各種レジスタ設定を行うというようなことをすることが可能である。図91(a)にデータ転送、図91(b)各種レジスタ設定時の各ビットの構成を、図92に、データ転送及び各種レジスタ設定の転送タイミングを示す。1水平走査期間ないで、各色の映像信号及びプリチャージフラグを全て転送した後のブランキング期間を利用して、データ/コマンドフラグ911によりソースドライバの各種レジスタ設定を行うようにした。ここでは、図91(b)に示すように、基準電流の設定とプリチャージ電圧を印加する期間を設定することとしている。
このようにすることで、図85のコマンド線847は不要となり信号線数を削減することが可能となる。
ソースドライバのブロック図を図93に示す。映像信号線856からコマンドデータと映像信号を分離するため、低振幅信号をCMOSレベルに変換するための回路である映像信号・コマンド分離部931が入ることが図89の構成と異なる点である。
以上のようにすることで映像信号線と同期してプリチャージフラグを転送し、かつ各種レジスタ設定を行う必要があるソースドライバICにおいて、映像信号線とプリチャージフラグもしくは映像信号線、プリチャージフラグと各種レジスタ設定を同一信号線を用いて低振幅信号により高速転送を可能とした。これにより、プリチャージフラグに必要な配線、各種レジスタ設定用の配線数を削減することが可能となるうえ、高速転送時の電磁波ノイズ低減することが可能となった。
小型用途の表示パネルにおいては、モジュール配置の空間的な制約が発生し、パネル外部へ引き出す信号線数を極力少なくする必要がある。大型パネルにくらべ表示ドット数が少ないことから映像信号線の転送レートは低い。そこで図94及び図95に示すように映像信号線856に階調表示用のデータ(赤緑青の各色データ、ここではRデータ、Gデータ、Bデータとする)とその階調表示データに対し、プリチャージを行うかどうかを判定するプリチャージフラグ862を多重するのに加えて、さらにゲートドライバ制御用データ951を送信する。ゲートドライバA(851a)とゲートドライバB(851b)両方の制御に必要な信号線を送信する。送信する信号は、シフトレジスタ動作用のクロック、スタートパルス、出力イネーブル信号、及びシフト方向を決める信号である。出力イネーブル信号は数μ秒単位で信号線状態を変化させることがあるため、図96においてデータ転送期間962ばかりでなく、ブランキング期間963でもゲートドライバ制御用データ951を送信する。そのため図95(b)に示すようにソースドライバの設定信号に加えて、ゲートドライバ制御データ951を転送するようにした。これによりパネルから引き出される信号線は、電源線の他、最小で2ペアのツイスト線と、3本の信号線にて構成することが可能となる。
信号線数を減らすと、転送レートが上がるため、送信側コントローラ854につけられるクロック発生部の消費電力が増大する。一般に小振幅伝送を行う場合の電力はほとんどが、クロック発生部で消費される電力である。そこで、低電力化が要求される機器では、映像信号線856に用いられるツイスト線の本数を多くして、転送レートを下げることで消費電力を低下させる(信号線で消費される電力はクロック発生部で消費される電力の10分の1から20分の1程度である)。図96の964で示される期間に送る図95(a)のデータ列を、シリアルで順に送るか、映像信号線856の本数に応じて一部もしくは全てをパラレルで転送するようにすればよい。
このようにして、小振幅伝送された映像信号線856のデータをソースドライバ852にて分離する。ソースドライバ852の内部ブロックを図98に示す。クロック858と映像信号線856、スタートパルス848からクロック858から作成したソースドライバクロック871に同期した階調データ386、プリチャージ判定信号383及びゲートドライバ制御線941を出力するための映像信号・コマンド分離部931を持つことが特徴となる。ゲートドライバ制御信号は図95に示すように映像信号及びコマンドに対応して必ず送信されているため図97の様にソースドライバクロック871に同期した信号に復調することが可能である。このようにすることで、ゲート信号線をパネル外部に引き出す必要がなくなり、信号線数が少ない表示パネルが実現可能である。またソースドライバクロック871に同期して出力することで、ソースドライバとゲートドライバのタイミングがあわせやすくなる利点がある。またコントローラ854からゲートドライバ851への制御線が不要となることからコントローラ854の出力端子数が少なくなり、より小さなパッケージでコントローラ851を作成できるようになる。
図98の構成は図93の構成に比べ、プリチャージ電圧を発生出力するブロックが異なる。図93では映像信号に応じた電圧を生成しアナログラッチを用いて各出力に分配したが、図98では、電圧設定線986により決められるプリチャージ電圧発生部981の複数の電圧出力を各出力段に分配し、プリチャージ電圧選択及び印加判定部982により複数の電圧のうちどれを出力するか、もしくは電流のみの出力を行うかを判定するようにする。これにより分配部及びホールド部383は不要となる。大型パネルにくらべ、小型パネルにおいては1水平走査期間が長いこと、ソース信号線の浮遊容量が小さいことから、所定電流値が書き込みやすい。そこで、本ソースドライバでは電流のみでも書き込みが可能な高階調部では電圧を印加しないことを前提に発生電圧値の数を少なくし回路規模の低減をはかった。この例では3値の電圧出力とした。必要に応じて電圧値の数は1から7程度まで変えてもよい。
映像信号のデータに応じたプリチャージ電圧出力の方法を説明する。映像信号線856から図95(a)の方法により映像信号とプリチャージフラグが対になって送信される。カラーパネルの場合には赤緑青それぞれ1対ずつ送信される。それぞれ同一の方法によりプリチャージを行うためここでは赤の信号で説明を行う。対になって送信されるRプリチャージフラグ862aとRデータ861aは映像信号・コマンド分離部931に入力される。ここでCMOSレベルに変換され、それぞれプリチャージ判定信号383及び階調データ386となる。1画素ずつ順に送られてきた信号を各出力に分配するためシフトレジスタ及びラッチ部384に入力される。分配後、階調データ386は階調データ線985を介し電流出力段23に入力され、階調に応じた電流を104から出力する。一方、プリチャージ判定信号383はプリチャージ判定線984に出力される。プリチャージ電圧選択及び印加判定部982では図100に示すようにプリチャージ判定線984及びプリチャージパルス451によりデコード部1001及び選択部1004を制御し、階調電流104を出力するか、プリチャージ電圧983のいずれか1つを出力するか判定する。ここでは4つの入力のうちから1つの信号を選ぶことから、プリチャージ判定線984は2ビット幅が必要である。一般にプリチャージ判定線984のビット数をN(N:自然数)とすると、2Nの値が(プリチャージ電圧数+1)以上となるようなビット数が必要となる。
プリチャージパルス451は図47の473に示すように、1水平走査期間内で電圧出力期間を決めるための信号である。従って、プリチャージ判定線984によりいずれかのプリチャージ電圧983を出力する際でもプリチャージパルス451入力期間のみ電圧が出力される。
図101にプリチャージパルス451及びプリチャージ判定線984と出力1005の関係を示す。これによりプリチャージ判定線984に入力する信号をコントローラから制御することにより、映像信号に対応したプリチャージ電圧を出力する期間を設けることが可能となる。
プリチャージ電圧は、プリチャージ電圧発生部981により生成される。内部回路の構成例を図99に示す。各電圧は抵抗分割により生成される(983出力には一般的にはオペアンプが接続される)。Vp1は抵抗素子992a及び992bにより決められる。一方Vp3は発光色により必要な電流値が異なることから色ごとに電圧が変化できる構成とした。抵抗素子997及び電圧選択部994を用いて、Vs1からVs4のいずれかの電圧が選択できるようにしている。これは図6のような画素回路を持つ表示装置において、ソース信号線電流(=EL素子63に流れる電流)とソース信号線60の電圧の関係は、図102の駆動トランジスタ62の電流−電圧特性上に一致するため、緑と青でEL素子の発光効率が異なることによる1階調あたりの電流ずれは、ソース信号線電圧のずれとしてあらわれる。プリチャージ電圧を必要とする0から2階調で考えると、青は緑に比べ発光効率が低いことからたくさんの電流が必要となり、同じ2階調目でも青は1021の点、緑は1022の点となる。これにより電圧値も異なる。電圧設定線986により電圧選択部994を制御し、例えば994cはVs4(995c)を選択し、994bはVs1(995a)を選択することで、図102のような色によってプリチャージ電圧値を変更させることが可能である。駆動トランジスタ62の特性に合うような997、998の抵抗値を決めることで所定の電圧を発生させることが可能である。電圧設定線986は外部から値を設定でき、図95(b)に示すようにコマンド期間でプリチャージ電圧設定953を入力し、映像信号・コマンド分離部931により映像信号と分離して電圧設定線986を取り出せるようにした。これにより色ごとに異なる電圧設定を行うのに際し、新たに外部信号線の数を増やさなくても実現できるようにした。図98ではプリチャージ電圧983は3本のみ記載されているが、これは単色での例を示したものでマルチカラーの場合にはプリチャージ電圧983は色ごとに3本、計9本必要となる。プリチャージ電圧選択及び印加判定部982の電圧入力は3本である。出力毎に表示色はきまっているため、出力する色に対応した電圧3本を入力すればよいためである。
なお8つ以上の電圧値が必要な場合では、図100のデコード部1001と選択部1004の回路規模が大きくなることから、図89の回路構成の方がよい。
図95、図98もしくは図91、図93の構成にするかはパネルサイズ及び画素数からどちらを選択するか決めればよい。
これにより、電流及び電圧出力が可能なソースドライバICを少ない信号線数で実現可能である。
電流ドライバICでは特に低階調部で出力電流値が少ないことによるソース信号線浮遊容量の充放電不足から画素に書き込まれる電流の変化が遅いことが問題である。電流が変化するのに必要な時間ΔtはΔt=C×ΔV/I(ここでCはソース線容量、ΔVはソース線電圧変化量、Iはソース信号線に流れる電流である)で表されるため特に低階調ほど変化に時間がかかることがわかる。また白から黒、黒から白への変化では黒から白への変化の方が時間がかかることがわかった。
例えば白表示時10nAのソース信号線電流を流し、黒表示時には0nAのソース信号線電流とすると、白から黒へのソース信号線電流の変化の様子は図104に示される波形となり、黒から白へのソース信号線電流の変化は図105に示される波形となった。
QCIF+(176×220画素)のパネルで1フレームを60Hzで走査する場合には、1水平走査期間はおよそ70μ秒である。初期状態から70μ秒での変化は、白から黒では図104に示すように目標に対し94%まで変化しているのに対し、黒から白では図105に示すように目標に対し5%しか変化できていない。
10nAと0nA間での変化にこれほどまでの差がでるのは、ソース信号線電流に対するソース信号線電圧の値の変化が非線形変化となるためである。ソース信号線電流と電圧の関係を図106に示す。電流電圧の関係は駆動トランジスタ62の電流電圧特性(1063)により決まり、ソース信号線の電流に応じて、1063の曲線に対応する電圧がソース信号線電圧値となる。電流変化に要する時間の式Δt=C×ΔV/Iにおいて、黒から白への変化時にはI=10nA、白から黒への変化時にはソースドライバの電流は0であるが、駆動トランジスタが10nAの電流を供給しようとするため初期状態では同様にI=10nAとなる。するとΔtが70μ秒と同じであるときには必然的にΔVがほぼ等しくなることがわかる。10nAの状態からΔVだけソース電位が上昇する場合と、0nAの状態からΔVだけソース電位がさがる場合では、曲線1063の特性から電流変化量が全く異なる。電位が上昇する方向では1061に示すように10nAから0.6nAまで低下するのに対し、電位がさがる方向では0nAから0.5nAまでしか変化しない。その結果として、図104及び図105に示すような電流変化となる。
ここでは10nAと0nAの間の変化を例として説明を行ったが、任意の階調の組み合わせにおいても、同様に高階調から低階調への変化の方が、低階調から高階調への変化よりも早い。
そこで本発明では、変化速度が遅い低階調から高階調への変化を早くするための方法を考案した。
変化を早くするためには、ソース信号線容量を小さくするか、電圧変化量を小さくするか、電流を大きくする必要がある。ソース信号線容量はパネルサイズにより決まるため変化できない。また電圧変化量を小さくするには駆動トランジスタの電流電圧特性を変更するしかなく、具体的にはトランジスタのチャネル幅を長くするかチャネル長を短くするしかない。チャネル幅を長くすると、トランジスタサイズが増大し、1画素分の面積が小さい小型高精細パネルでは対策できない。一方、チャネル長を短くするとアーリー効果がより大きく発生し、書き込み時とEL発光時(図7(a)と図7(b)の期間)で駆動トランジスタ62のドレイン電圧が異なると、アーリー効果によりそれぞれの場合においてドレイン電流値が変化するという問題が発生するため、チャネル長を短くすることができない。そこで、ソース信号線電流を大きくすることを考えた。
図108に、ある1画素に電流Iを書き込むときの本発明によるソースドライバ電流出力波形を示した。水平走査期間のはじめ10μ秒にわたって所定電流の10倍の電流を流す期間を設けたことが特徴である。10倍の電流を流すことで例えば図107に示すように電流の変化は従来の1072から1071の様に変化するようになり、70μ秒での所定電流書き込みが可能となった。このようにソース信号線に流す電流を増加させる期間を1水平走査期間のはじめに設けることで電流値の変化が早くなり所定電流を書けるようになった。
電流を所定値の10倍して出力するとなると、所定電流の10倍の値を計算する必要がある上、ソースドライバ側でも10倍の電流が流せるような機能を設ける必要がある。これには演算回路が必要になったり、ソースドライバの電流出力段の電流源を10倍分増加させなければならず回路規模が大きくなるという問題が発生する。また、表示色によって1階調あたりの電流値が異なる場合には階調毎に倍率を変化させるということも必要となってくる。そのため処理が複雑となる。
そこで本発明では、低階調から高階調への変化時が変化しにくく、さらに低階調でも階調0が最も変化がゆっくりとなることから、階調0から次の階調へ変化させるのにどれだけの電流があれば1水平走査期間内に変化可能であるかを調査し、その電流値(ここでIp1とする)を1水平走査期間のはじめに印加した後所定電流を印加することにより1水平走査期間内で所定電流値に変化できるような構成とした。所定階調値がIp1よりも大きい場合には、Ip1の電流を流す期間でも所定階調電流を流すようにすることで、全階調領域にわたって、階調0から所定階調までの電流を1水平走査期間内に書き込むことが可能となった。この場合には、映像信号がある階調未満の場合にのみIp1を挿入する期間を設けるとすればよいため、乗算器は不要である。また出力段においてもIp1を出力する電流源を1つ各出力に設けるだけでよい。概念を図103に示す。階調表示用電流源に加え電流出力104にプリチャージ用の電流源Ip1(1033)を設ければ実現できる。この電流Ip1は所定階調まで変化する速度を速めるだけの目的で使われるため隣接端子間でばらつきがあってもよく、そのため階調表示に用いられる電流源を構成するトランジスタに比べて同じ電流を出力するにもトランジスタ総面積を小さく実現することが可能である。
また、この電流Ip1はソース線容量、画素トランジスタの電流電圧特性により最適値が決まり、EL素子63の発光効率には依存しない。そのため各色とも共通の電流値が入ればよく、色ごとに個別調整する必要がなく、小さな回路で構成可能となる。
図109に水平走査期間のはじめにIp1を出力する機能を設ける場合におけるソースドライバICの構成を示す。ここで水平走査期間のはじめに出力するIp1の電流をプリチャージ電流と呼ぶこととする。プリチャージ電流を発生するためのプリチャージ基準電流発生部1092及びソース信号線に出力するかどうかを判定するプリチャージ電流出力段1094、プリチャージ電流の期間を設定するパルス発生部1097を設けたことが特徴である。
プリチャージ電流を出力するかどうかはプリチャージ判定信号383により決められる。プリチャージ判定信号383は階調データ386に同期して送信されるため、1画素毎にプリチャージ電流を出力する期間を設けるかどうか、複数個のプリチャージ電流を設けた場合には、そのうちのどれを選択するかを設定することが可能である。各出力に分配されるように、階調データ386と共にシフトレジスタ及びラッチ部384により各出力に分配される。階調データは階調データ線985として、各出力に設けられた電流出力段23に入力される。電流出力段23では階調データ線985、基準電流生成部891で作成された基準電流値に応じた電流量を1093に出力する。図110にはマルチカラー対応のドライバの時の基準電流生成部891及び電流出力段23の構成を階調データ線985が3ビットの例で示している。基準電流設定線934により1101の信号線電位が変化し、オペアンプ1103、抵抗1102とトランジスタからなる定電流回路の電流値が変化する。これにより基準電流設定線934の値に応じて電流が変わることがわかる。階調データ線985により出力1093の電流が変わるのは、階調データ線985の値により、出力に接続される電流源トランジスタ103の個数が変わることにより変化させている。一般に有機EL素子は発光色ごとに発光効率が異なるため、発光色ごとに1階調あたりの電流を異ならせる必要がある。本発明では抵抗1102をIC外部の素子として構成することで、抵抗1102の調整を容易とし、抵抗値で1階調あたりの電流値を変化させ、ホワイトバランスを取れるようにしている。一方各出力に分配されたプリチャージ判定線984はプリチャージ電流出力段に入力される。更にプリチャージ電流出力段1094はプリチャージ基準電流発生部1092及びプリチャージパルス1098からも信号入力がある。
プリチャージパルス1098のパルス幅はパルス発生部1097により決められる。パルス発生部1097では電流プリチャージ期間設定線1096の値及びタイミングパルス、クロックによりカウンタ回路などを用いて、タイミングパルス出力からプリチャージ期間設定線1096の値に基づいてプリチャージパルス1098を出力するようにしている。
プリチャージ電流の値を決めるプリチャージ基準電流発生部1092はプリチャージ電流設定線1091入力によりプリチャージ電流を変化させる。
これら2つの外部設定値(電流プリチャージ期間設定線1096及びプリチャージ電流設定線1091)は、ソースドライバの入力信号線削減のため映像信号線856に、映像信号のブランキング期間を利用してブランキング期間中に設定信号を送るようにした。そのため、映像信号線856から映像信号・コマンド分離部931を介して、電流プリチャージ期間設定線1096及びプリチャージ電流設定線1091を取り出すようにしている。
図111にプリチャージ電流出力段1094及びプリチャージ基準電流発生部1092の回路構成を示す(マルチカラー3色の組が2つの例)。
プリチャージ電流出力段1094では、プリチャージ判定線984及びプリチャージパルス1098が入力される判定信号デコード部1111によりプリチャージ電流源トランジスタ1112から1114もしくは階調電流1093のうちの1つを出力104に接続するようにすることで、プリチャージ電流を出力するかどうかを選択する。
これによりプリチャージパルス1098がハイレベルのときに、プリチャージ判定線984の値によって、プリチャージ電流源のうちのどれを出力するか、もしくは、プリチャージ電流なしで、階調電流を出力するかを決めることができる。
なおプリチャージ電流は1値でもよいが、パネルサイズつまり容量値の違いによって必要な電流値が異なることから、ICドライバを任意サイズで汎用的に使う際に、大型向け、小型向けに電流を調整して複数個出せるようにすることで汎用性を高めることが可能である。
プリチャージパルス1098のパルス幅は、パネルサイズ及び水平走査期間の長さにもよるが、5μ秒以上水平走査期間の50%以下が好ましい。この範囲で所定階調を書き込めない場合にはプリチャージ電流を増加させることで対応する。プリチャージ電流を挿入する期間を設ける階調データ386の値は階調データ386により電流出力段23から出力される電流がプリチャージ電流未満の場合に印加するようにプリチャージ判定信号383を制御すればよい。プリチャージ判定信号383は入力信号線数の削減及び電磁波対策のため図95に示すような形式で小振幅差動入力しても良い。
このようにすることで、1行前のデータに比べて、次の行のデータが高階調となる場合にでもプリチャージ電流を入力することで所望の電流が書き込めるようになった。
高階調から低階調に変化するときには図104に示すようにほぼ目標の電流値を書き込めるため、このままでも構わないが、階調0(黒)に関してはきっちりと黒を表示できるようにした方が、コントラストの向上、自発光素子の特徴である黒が表示できるという利点を強調することが可能である。
そのため、0以外の階調から0階調に変化する際には、水平走査期間のはじめに電圧により黒を表示する電圧を印加するようにすることで、きちっとした黒を実現するようにした。ソース信号線に黒電流に対応する電圧を印加した場合、印加電圧によっては、駆動トランジスタ62の電流電圧特性のばらつきにより画素によって、黒が浮く(微発光する)現象が観測される。これを防ぐために、印加電圧は、電流電圧特性のばらつきを考慮し、最もよく電流が流れる駆動トランジスタ62でも電流が流れない電圧(プリチャージ電圧)を印加するようにすることで、駆動トランジスタのばらつきによる輝度ばらつきを防止できる。
プリチャージ電流もしくはプリチャージ電圧を水平走査期間内に印加できるようにしたソースドライバの構成を図112に示す。プリチャージ電圧が供給できるように、プリチャージ電圧発生部981、電圧プリチャージを行う期間を指定する電圧プリチャージパルス451が入ることが特徴である。
電圧でプリチャージを行う場合には、電圧印加期間が0.8μ秒以上3μ秒以下で十分にソース信号線をプリチャージすることが可能である。そのため電流プリチャージに比べ短い期間のみの印加となるため、電流プリチャージパルス1098とは別の信号線電圧プリチャージパルス451を入力している。電流プリチャージと期間を共有してもよいが、この場合、階調に応じた電流を流す期間が短くなるため、電流による駆動トランジスタのばらつき補正が十分行われず黒表示の電圧値が変化した場合に輝度ムラが発生する可能性がある。そのため、電圧印加期間は極力短くし、階調電流出力の期間を長くするようにしている(個々のパネルではプリチャージ電圧を駆動トランジスタ62のばらつきに応じて調整することが可能であるが、実際にはパネル間、ロット間で駆動トランジスタ62の特性が大きくずれる可能性がある。これに対し、プリチャージ電圧を調整すれば、共用することも可能であるが、調整工程が必要となるため実用的ではない。この調整機能を電流により行わせるため、階調電流出力期間が長い方が良い。なお小型パネルにおいてはソース線容量が比較的小さいこと、水平走査期間が長いことから共用としても十分に補正可能であるため、チップサイズ優先で2つのプリチャージパルスを共用する。)。
1098及び451の2つのプリチャージパルスは開始位置が同じ(水平走査期間のはじめ)でパルス幅が異なるのみであるため、ソースドライバクロック871及びタイミングパルス849から作成されるカウンタにより作成することが可能である。パルス幅はそれぞれ電流プリチャージ期間設定線1096、電圧プリチャージ期間設定線933により定められる。図109の構成と同様にソースドライバの入出力信号線数の削減のため、映像信号線856のブランキング期間を利用して送信される。2つのパルスは1水平走査期間で1回の出力であることから、設定の書き換えは最もよく書き換えても1水平走査期間で1回であるためこのようにブランキング期間に設定する信号を挿入すればよい。
印加するプリチャージ電圧値であるが、プリチャージ電圧発生部981により発生する。プリチャージ電流電圧出力段112へ出力する電圧が各色複数個ある場合には図99と同様な構成を用いればよいが、階調0に対応する電圧各色1値のみである場合には、3つの電圧をそれぞれ電子ボリュームとオペアンプで構成し、電子ボリュームにより電圧値を調整するような構成でもよい。どちらの構成でも、電圧値の調整はプリチャージ電圧設定線986により行う。プリチャージパルスと同様、設定線は映像信号856のブランキング期間により行う。
プリチャージ電圧、プリチャージ電流、階調電流のいずれを出力するかをプリチャージ電流電圧出力段1121で選択する。図113にプリチャージ電流電圧出力段1121の回路構成を示す。この例では電流プリチャージ電流源が1112及び1113の2つ、プリチャージ電圧線983が1つの合計3つと、階調電流1093との選択を行うことから、プリチャージ判定線984は2ビットとなっている。判定線984及びプリチャージパルス1098及び451から判定信号デコード部1131により、4つのうちのどれを出力するかをデコードする。切り替え部1132、1133、1134、1135の状態と入力信号の関係を図114に示す。プリチャージ判定線984によりプリチャージを行うか、行う場合には電流でするか電圧でするかを決める。さらにプリチャージを行う場合には電流もしくは電圧プリチャージパルスの期間のみプリチャージを行い、そのほかの期間では階調電流を出力するように設計する。これにより、電流もしくは電圧プリチャージ機能を有するソースドライバICを実現した。なお図112から図114では、電圧プリチャージの電圧数が各色1種類、電流プリチャージの電流数が各色2種類で説明を行ったが、任意の種類でも実現可能である。
プリチャージ判定線の元となるプリチャージフラグ生成のフローチャートを図115に示す。
ここでプリチャージを行う条件を考える。電圧プリチャージは階調0となるときにのみ行う。更に1行前も階調0であるときには、信号線がこの2水平走査期間では変化しないため、電圧プリチャージを行う必要がないため、プリチャージをしないようにする。次に電流プリチャージであるが、ある一定階調以上である場合には、1行前のデータがどういうデータであろうと階調電流により十分に書き込むことが可能となるため、電流プリチャージは不要である。一般的には電流プリチャージ用電流源の電流値Ipよりも大きな階調電流を出力する階調では電流プリチャージは不要である。図115の例では、3.5型QVGAパネルにおけるフローチャートを記載している。この場合には32階調以上では、所定階調に変化できるため電流プリチャージは不要である。電流プリチャージが必要となるのは1から31階調表示行で、かつ1行前のデータが表示階調よりも大きい場合に電流プリチャージを行う。1行前データよりも当該行データのほうが小さい場合もしくは同一階調の場合には電流プリチャージは不要である。なお1行前データが階調0の場合、プリチャージ電圧が印加されていることが多く、電圧による輝度ばらつきを防ぐため、所定階調より高い電圧が印加される。そのためソース信号線の電位変化量がおおくなり、所定階調が書き込みにくくなる。そこで1行前データが0のときには、電流プリチャージの電流値がIpよりも大きなIp0を用意し、階調0の後にはこの電流を出力するようにするということも可能である。
このようなプリチャージを実現するため図115に示すように、まず1151に示すフローで映像信号データを調べ、プリチャージが不要な階調32以上と、電圧プリチャージとなる階調0、その他の階調に分岐させる。階調32以上ではプリチャージ不要となるため1157の判定により、プリチャージフラグ値を0とする(図114の判定信号デコード部1131真理値表を用いた場合)。
階調0の場合には、1152のフローにより1行前のデータを参照する。階調0のときには不要であるため階調0とそれ以外に分け、階調0では1157のプリチャージなしとなり、フラグは0とし、階調0以外では電圧プリチャージするという1154の判定となり、プリチャージフラグは1とする。
残る階調1以上31以下では、1行前の映像信号データの方が大きい場合には、プリチャージ不要のため1157のプリチャージなしとなりフラグは0となる。階調0のときはIp0の電流をプリチャージ電流として必要とするため1155の電流プリチャージ(電流源1113)となる。よってフラグ値は3となる。それ以外の場合には通常の電流プリチャージ(電流値Ip)を用いるため1156の電流プリチャージ(電流源1112)となりプリチャージフラグは2を出力する(ここで電流源1112はIpの電流源、電流源1113はIp0の電流源と仮定する)。
なおパネルによってはIpの値が大きくなり、それに伴いプリチャージが必要な階調数が増加することがある。この時に備え、1151の分岐命令は条件分岐の条件を外部コマンドなどにより変更できるようにしてもよい。また、プリチャージ電流源及び電圧源数が増えたときなどは同様に適宜フローチャートを作成し、回路実現することが可能である。
このフローチャートを実現するプリチャージフラグ生成部1162は、通常コントローラ854内部にて、図116に示すように、映像信号1161及び1行前のデータを蓄積するラインメモリ1164の出力を入力とし、映像信号1161と同期して小振幅差動信号変換部1163に入力される。ここで、信号線数の削減及び電磁波ノイズ対策のため小振幅差動信号に変換され、更にブランキング期間にソースドライバの制御信号を挿入し、映像信号線856及びクロック858をソースドライバに対し出力する。なお、コントローラとソースドライバが1つのICで構成される場合には小振幅差動信号変換部1163は不要でそのまま、この信号をシフトレジスタ及びラッチ部384に入力すればよい。
また図109及び図112において、ゲートドライバ制御線941が出力されているがこの信号は、コントローラ出力信号線数削減のため用いられたものであり、コントローラの出力信号線数に制約がない場合には不要である。
必要な電流プリチャージの電流量は、同一階調表示を行う場合でも、1行前の表示階調により異なることがわかった。例えば、階調16を表示する場合には、1行前の階調が0のときには64階調相当のプリチャージ電流が必要で、1行前階調が1のときには26階調相当のプリチャージ電流、1行前階調が2のときには16階調相当のプリチャージ電流(=なくてもよい)となった。このため、プリチャージ電流を決める際には1行前のデータも参照し、1行前のデータと当該行データの値から最適なプリチャージ電流を設定する必要がある。
1行前データと当該行データとプリチャージ電流値の関係をマトリクステーブルなど用意してプリチャージ電流を制御する方法もあるが、階調数が多くなるとテーブルが大きくなり、IC設計時回路規模が大きくなってしまうという問題がある。
マトリクステーブルを用意してプリチャージ電流を決めなくてはならないのは、ソース信号線がはじめにどの状態となっているかで、変化時間に大きな差がでるためである。電流変化に要する時間は(ソース信号線の容量)×(1行前と当該行でのソース信号線電位差)/(ソース信号線電流)で表される。ソース信号線の電流と電圧の関係は図106に示すように、駆動トランジスタ62の特性に従うため、非線形な曲線で表される。低階調表示ほど1階調あたりの電位差が大きくなっている。このため階調差が同じであっても所定電流にまで変化するのに大きく時間が異なる。例えば0階調から2階調に比べ2階調から4階調では電位差は1/2となっているため、ソース信号線電流が2倍になっていることとあわせると、書き込み時間が1/4となる(階調差が2で同じの場合)。単に階調差を検出するばかりでなく、階調差および表示階調からプリチャージを決める必要があり、少なくとも1行前のデータと、当該行のデータを参照する必要がでてくる。
階調差がソース電位差と比例関係にあれば、階調差1に対するソース電位差が一義にきまり、階調差1あたりの必要電流分が決まる。これを元に任意の階調差に対し必要な電流量を計算により求めることができるため、階調差の計算結果から必要が電流値がきまるため、1行前データと、階調差1あたりの必要電流さえ記憶できる手段があれば、プリチャージ電流が決められる。
しかしながら、本発明の表示装置においては、階調差とソース電位差は比例関係とならず、階調差が同じであってもソース電位差が異なる場合が発生するため、プリチャージ電流値は、1行前のデータと当該行データを参照し、そこからまずソース信号線電位差を計算する。ソース信号線電位差を元にプリチャージ電流を決めるという必要がでる。1行前のデータと当該行データとソース信号線電位差の関係を計算で求めることは不可能もしくは回路規模が非常に大きくなる計算が必要となるため実際には不可能であり、あらかじめテーブルを用意し、1行前データと当該行データから必要な電流値がわかるように、全ての階調の組み合わせにおいて、プリチャージ電流値を記録させておく必要がある。
256階調の場合には6万5千通りあまりの全ての組み合わせについて記憶させる必要があり、この場合でも実際に回路を作成するのはかなり難しい(実際に作成する場合には、電流プリチャージが不要となる階調の組み合わせは記憶させないようにして回路規模を削減する。これにより1万通り程度の記憶量で実現できる)。
そこで、本発明ではさらにプリチャージ電流値を判断する回路の回路規模を小さくするために、水平走査期間のはじめに電圧により階調0に相当する電圧を印加することとした。電圧によりソース信号線の状態を階調0に変化することは1〜3μ秒程度で実現可能である。水平走査期間の10%以内の期間で変化させるため書き込みに必要な時間を大きく犠牲にする必要がなく、階調0の状態にソース信号線を変化させることができる。
この階調0に相当する電圧を印加する期間(電圧リセット期間とする)を設けることで常にソース信号線の状態は階調0の状態から変化させることとなり、1行前の状態を記憶する必要がなくなる(常に0であるため)。表示階調に対応したプリチャージ電流を記憶するのみであるため、記憶量は激減し、多くても70通り程度でよくなる。
電圧リセット期間の後、所定電流に素早く変化させるためにプリチャージ電流出力期間を設け、所定階調付近にまで電流を変化させた後、所定階調に対応する電流を出力することで電流変化速度が遅い低階調領域でも素早く変化させることができる。
表示階調に応じてプリチャージ電流を最適な値にして出力する方法では、最適プリチャージ電流値に応じた電流源を必要な電流値の種類だけ各出力に必要となる。階調表示用電流源241に加え、電流プリチャージ用電流源を配置するとソースドライバの回路が大きくなり、チップサイズが増大してしまう。また電流変化に要する時間はソース信号線の容量により変化することから、異なるサイズのパネルでは電流プリチャージの電流値が異なる可能性がある。回路形成されたドライバICでプリチャージ電流を変化させることはできないため、例えば必要な電流源数よりも少ない電流値及び多い電流値を余分に作ることで、階調に対応する電流値の選択パターンを変化して対応させることも可能であるが、更に回路規模が大きくなる問題がある。
そこで本発明では、外部からのコマンド操作などにて複数のパネルサイズに応じた最適な電流プリチャージが行えるように、電流値を階調に応じて変化させるのではなく、プリチャージ電流を印加する期間を階調に応じて変化させるようにした。
具体的にはプリチャージ電流は、最大階調表示時の電流に対応する電流とし、このプリチャージ電流を印加する時間が変化すると、時間が短い場合にはプリチャージ電流による変化量が小さいため低階調程度の電流となるし、時間が長い場合にはプリチャージ電流による変化量が多くなるため高階調電流にできる。
これを実現するソースドライバ構成を図117に示す。またプリチャージ電流及び階調に応じた電流を出力する電流出力部1171の回路構成例を図118に示す。
図118において、階調表示用電流源241は階調データ線985により制御される切り替え手段1183に応じて出力104に接続されるかどうか決まる。なおこの電流源は階調データ線985のビットの重みに応じて電流量が異なるように設計されている。具体的には図25のようにトランジスタで電流源を形成し、電流の重み付けは個数により決めると正確に電流を出力できる。
プリチャージ電流を同一電流源から出力できるようにすることで電流源部の回路規模を小さくした。そのために、電流源241を出力104に接続するかどうかの切り替え手段1184を1183と並列に接続し、切り替え手段1184を電流プリチャージ制御線1181により制御するようにしたことで、電流源を共通とし回路規模を小さくした。このように1つの電流源241に対し、切り替え手段1183と1184を並列に配置するだけで実現できたのは、プリチャージ電流が最大電流(白表示電流)であることから実現できた。並列に切り替え手段が接続されているが、いずれか一方が導通状態となれば、接続された電流源の電流は出力される。従って、この2つのスイッチは論理和回路を実現していることとなり、電流プリチャージ出力期間は電流プリチャージ制御線1181はハイレベル、出力しないときはローレベルとすると、出力しないときには階調データ985により電流が出力され、出力する際には全ての241が電流プリチャージ制御線241により出力されることから階調データ985によらず、プリチャージ電流が出力できる。なお最大電流値を用いることで電流変化が早くなりプリチャージ電流出力期間1203をなるべく小さくすることができ、階調表示を正確に行うための階調電流出力期間1204を長く取れるという利点もある。
2つの並列接続された切り替え部1183、1184を設けることで、論理演算用の素子が不要となるため、回路規模が小さくすることができる。
プリチャージ電流出力期間を階調により制御するためには、この電流プリチャージ制御線1181のハイレベルの期間を階調により変化させれば良い。そこで本発明では、パルス選択部1175、複数の電流プリチャージパルスを設け、プリチャージ判定線984の値に応じて電流プリチャージパルス群1174のうちの1つを選択するようにすること、各電流プリチャージパルス1174はあらかじめコマンド設定によりハイレベルの期間を異ならせた信号とすることで、プリチャージ期間を変化させることができる。
このパルス選択部1175の入出力関係を図119に示す。プリチャージ判定線984の値により、電流プリチャージ制御線1181及び電圧プリチャージ制御線1182の状態が変化する。同じ階調が連続した行表示される場合などソース信号線の状態が変化しない場合には電圧及び電流プリチャージが不要であるため、この例ではプリチャージ判定線984が0のときには階調に応じた電流出力のみを行うようにしている。また、階調0の時は電圧プリチャージにより階調0が表示されているため電流プリチャージのみが不要であるため、プリチャージ判定線984が7のときには電流プリチャージ制御線のみ常にローレベルとしたモードを設けている。他の判定値の場合には異なるパルス幅である複数の電流プリチャージパルスのうちの1つを選択できるようにしている。
これにより図120に示すように、プリチャージ判定線984、電圧プリチャージパルス451、電流プリチャージパルス1174から出力104に出力される信号が決められる。図119の関係に従った場合、出力ははじめの水平走査期間では電圧プリチャージをした後、1174dの電流プリチャージパルスに応じた期間のプリチャージ電流出力期間1203を持ち、最後に階調電流出力期間1204となる。次の1水平走査期間では階調電流出力期間1204のみが存在する。このようにすることで、プリチャージ判定線984により電流プリチャージを行う期間を変化させることが可能となるし、各電流プリチャージパルス1174のハイレベルの期間を外部入力により変化させるように設計すれば、パネルサイズ、水平走査期間に応じて最適な電流プリチャージが行え、任意のパネルサイズ、画素数に対応したソースドライバを実現することが可能である。
本発明では、図117に示すようにパルス発生部1122により電流プリチャージパルス群1174及び電圧プリチャージパルス451を発生させている。パルス発生部1122には電流プリチャージ期間設定線1096、電圧プリチャージ期間設定933が映像信号・コマンド分離部931を介して外部から入力されることにより、外部のコマンドにて任意のパルス幅を持つプリチャージパルスが実現できるようになっている。
また、有機発光素子を用いた表示装置では、各表示色で発光効率が異なることから色ごとに1階調あたりの電流値が異なり、これによりプリチャージ電流値が変化してしまう問題がある。最も効率がよい表示色では白表示電流値が小さいため十分に所定階調まで電流が変化しきらない可能性がある。そこで本発明では電流プリチャージパルス群1174は1174g、1174h、1174iと色ごとに用意することで、電流を印加する期間を調整することにより上記問題点を解決した。具体的には最も効率が良い色では電流が少ない分、プリチャージパルスの幅を全体に長くしている。
階調に応じてプリチャージパルス1174の長さを変化させることで所定電流となるようにできることを図124の電流変化の様子を用いて説明する(この場合ではドライバ出力は8ビット、256階調出力が行えるものとして説明を行う。階調数に関しては実際に使用するビット数に応じて置き換えて考えれば任意のビット数のドライバでも同様に説明が可能である)。
電流プリチャージパルスの期間が例えば1174aであるとすると、プリチャージ電流出力期間1242により電流が素早く変化した後、所定電流が出力されるためゆっくりと変化し、図124(b)に示すような曲線で示される電流変化となる。
一方、より長く電流プリチャージを出力した場合、例えば1174cの期間プリチャージ電流を出力した場合には1243の期間素早く変化し、その後階調30にまで所定電流によりゆっくりと変化する(曲線図124(c))。
さらに電流プリチャージパルスを常に印加した場合では図124(d)に示すような変化となる。
図124(d)の電流変化曲線に対し、所定階調値となる付近に近くなるまで電流プリチャージを行い、その後所定階調電流を出力すれば最も早く電流が変化できることがわかる。高階調ほど、プリチャージ電流出力期間を長くし、低階調になるにつれ短くすることでプリチャージ電流値そのものを変化しなくても印加期間のみで所定階調まで変化させることができる。
図123に3.5型QVGAパネルにおける、必要なプリチャージ電流期間と階調の関係を示す。階調が高くなるにつれ、プリチャージ電流期間は長く必要となっている。また36階調以上ではプリチャージ電流期間は不要であることがわかっている。そこで、必要な電流期間と電流プリチャージパルスを図123のように対応づけて、それぞれの電流プリチャージパルスのハイレベルの期間を外部コマンドにより図123に示す期間に指定することで1つのプリチャージ電流源により、外部コマンド操作により、全ての階調変化に対して、次の行もきちんと所定階調が表示できるようになった。
なお階調と電流プリチャージパルスの対応は、プリチャージ判定線984と電流プリチャージパルスの対応に置き換えられる。表示階調に対し、所望のプリチャージパルスが選択されるようコントロールICなどにより階調データに対応するプリチャージ判定信号を生成し、供給することで階調と、電流プリチャージパルスの対応がとれる。
これは、階調と電流プリチャージパルスの対応が変化したときにコントロールICの制御により、階調に対する電流プリチャージパルスを変化させることができるという点で有利である。
1階調あたりの電流値が大きい場合には、より低階調でも電流プリチャージなしで所定階調が表示できる。例えば図123の場合に比べ1階調あたり2倍の電流となった場合には、理論上18階調以上は電流プリチャージなしで書き込みが可能である。この場合には、階調とプリチャージ判定線984の関係を制御しているコントロールICでの処理を変更し、関係を書き換えることで対応することが可能となる。
そのため、このようにプリチャージ判定線を階調信号とは別途用意し、このプリチャージ判定線により電流プリチャージパルスを選択することで、有機発光素子の発光効率が変化したときでも同一ソースドライバを用いて表示することが可能となった。
複数のパルス幅を持つプリチャージパルス1174のうちの1つをプリチャージ判定線984の値に応じて選択する方法において、複数のプリチャージパルス1174のパルス幅を全て外部からコマンドで制御できるようにするには多数のパルス幅を規定する信号が必要となる。この信号をすべて直接ドライバIC36外部から入力するようにするとたくさんの入力ピンが必要となるため、実用的ではない。そこで本発明では映像信号のブランキング期間を利用して、ブランキング期間内に映像信号線856により、全ての設定値をシリアルに転送することで外部信号線数を増やさずにプリチャージパルス幅を設定できる。
図121に映像信号線856を利用してコマンド入力するための信号入力方法を示す。映像信号が送信される間は図121(a)のように各表示色データ861(ここでは赤緑青を想定している。なお、この3色に限らず表示装置に応じて任意の色のデータであってもよい。例えばシアン、イエロー、マゼンダの3色など)と、各データ861に対しプリチャージを行うかどうかを判定するための信号であるプリチャージフラグ862が対応して入力される。映像信号であることを判別するためのデータ/コマンドフラグ950が併せて送信される。例えばデータのときは1、コマンドの時な0とすれば、このビットを参照することで送られてくる信号が映像信号かコマンドかを識別できる。
次に、ブランキング期間においてはコマンドを送信するようにする。データ/コマンドフラグ950を0として、コマンドであることを識別できるようにする。1回の転送で全てのコマンド設定が可能であれば不要であるが、本発明においてはコマンド数が多いことから、いくつかのビットをアドレスとして用いることとし、アドレスの値に応じてデータがどのコマンドに対応するかを判定するようにする。図121の例ではアドレスA1211において、電流プリチャージ設定信号か、それ以外の信号かを判定するようにしている。図121(b)は電流プリチャージ期間の設定以外に必要な信号の設定を行っており、プリチャージ電圧値や電圧プリチャージ期間、1階調あたりの電流を規定する基準電流設定信号912を送信している。図121(c)では、電流プリチャージ出力期間を色ごと、各色6つの設定を行う必要があることから、更にアドレスB1212を設け、アドレスB1212の値に応じて、どの電流プリチャージパルスのパルス幅を設定するかを決める。
電流プリチャージパルスのパルス幅は図123からおよそ0.4μ秒刻みであることから、刻み幅としては0.2μ秒もしくは0.4μ秒で行い、可変範囲は6.4μ秒程度あれば任意のパネルに対し調整が可能である。32もしくは16段階の設定ができればよい。1174aから1174fが同じパルス幅を持つ必要はないためそれぞれ異なる値に設定できるようにするべきであり、更に1174aがパルス幅最小で、1174fがパルス幅最大となるように各パルスの役割を分担するようにすれば、例えば1174aの調整範囲は0.2μ秒から6.6μ秒(32段階調整)、1174fの範囲は2.0μ秒から8.4μ秒(32段階調整)といったように、最小0.2μ秒から、最大8.4μ秒までのパルス幅を設定できるような構成にできる。このように、各パルスのパルス幅の可変範囲をパルス毎に少しずつずらして設定することで可変範囲を小さくすることが可能で設定用の信号線幅を少なくし、回路規模の小さいものが実現することができる。
このように、外部入力コマンドにより様々な値を設定できるようにしたことで任意のパネルサイズ及び解像度における表示装置の階調に応じた電流出力が素早くできるソースドライバIC36を実現した。
なお本発明による電流出力部1171は図118のように1つの電流源241に対し複数の切り替え部を並列に接続したものの他に、図122に示すように階調データ線985の各ビットと電流プリチャージ制御線1181の論理和を電流源241に接続された切り替え部1221の制御に用いる方法でも実現できる。切り替え部1183及び1184が小さく形成できるプロセスでは図118が回路規模が小さくなるが、小さくできない場合はロジック信号のルールで作成できる論理和回路を付加した方が小さくなる場合がある。
この2つの回路のいずれをとるかはプロセスルールを考慮して小さくなる方を採用すればよい。
電圧プリチャージパルス451はこの例では表示色によらず同一のパルスを入力しているがこれは、電圧でソース信号線の状態を変化させるのには出力のオペアンプの駆動能力により状態変化の速度が決まるのであって、1階調あたりの電流など表示色ごとに異なる信号による影響はないため、回路規模を小さくするために電圧プリチャージパルス451を1つとしている。回路規模が問題にならない場合には、各色個別指定ができるように3つのパルスを持ってもよい。
なお本発明では表示素子として、有機発光素子で説明を行ったが、無機エレクトロルミネッセンス素子、発光ダイオードなど電流と輝度が比例関係となる表示素子ならどのような素子を用いても実施可能である。