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JP2005154958A - フィブリル化アクリル繊維およびその製造方法並びに該繊維を含有する構造物 - Google Patents

フィブリル化アクリル繊維およびその製造方法並びに該繊維を含有する構造物 Download PDF

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JP2005154958A JP2003396451A JP2003396451A JP2005154958A JP 2005154958 A JP2005154958 A JP 2005154958A JP 2003396451 A JP2003396451 A JP 2003396451A JP 2003396451 A JP2003396451 A JP 2003396451A JP 2005154958 A JP2005154958 A JP 2005154958A
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Abstract

【課題】 原料となる繊維が安定的に紡糸でき、容易にフィブリル化できる繊維でありながら、優れた熱安定性を有するフィブリル化アクリル繊維を提供する。また、該フィブリル化アクリル繊維の製造方法並びにこの繊維を含有する構造物を提供する。
【解決手段】 80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体95〜99重量%および10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系親水性樹脂1〜5重量%の重合体混合物からなる紡糸原液を紡糸することによって得られ、吸水速度が0.15g/g以上且つ吸水率が20重量%以上である原料繊維を叩解して得られるフィブリル化アクリル繊維。
【選択図】 なし

Description

本発明はフィブリル化アクリル繊維およびその製造方法並びに該繊維を含有する構造物に関する。
極細繊維やフィブリル化繊維などの細い繊度を有する繊維は、紙や不織布の材料あるいは摩擦材やセメントの補強材などとして広く利用されている。アクリル繊維は、耐水性、耐薬品性に優れ、難融性であるという特徴を有しており、このような用途に適した素材である。このため、細い繊度を有するアクリル繊維を得るべく様々な試みがなされているが、繊維を叩解してフィブリル化する方法が最も一般的である。
しかし、汎用アクリル繊維は叩解工程を経てもフィブリル化が困難である。このため、添加物を利用する方法などが提案されている。例えば、特許文献1や2には、繊維を構成するアクリロニトリル系重合体に対して非相溶性である酢酸セルロースやアクリル樹脂を紡糸原液に添加して紡糸することで、繊維内に相分離構造を有するアクリル繊維を得た後、該繊維を叩解してフィブリル化させる方法が開示されている。しかし、これらの方法においては添加した非相溶性物質が合一し、繊維中の非相溶性物質の領域が大きくなりやすいため、紡糸時に糸切れが多発したり、繊維の分割性が悪化したりするなどの問題を有している。
また、特許文献3や4では、アクリロニトリル結合含有量の異なる2種類のアクリロニトリル系重合体からなるフィブリル化アクリル繊維が開示されている。これらの場合においては、使用される2種類のアクリロニトリル系重合体のアクリロニトリル結合含有量の差が小さく、相分離が起こりにくいため、水分率が数百%という高率の原料繊維をフィブリル化しており、かかる高水分率の原料繊維として、熱処理を施していない、いわゆるゲル状繊維を用いている。このような原料繊維を叩解して得られたフィブリル化アクリル繊維は、熱安定性に乏しく、最終製品の紙や不織布を製造する際の乾燥工程で収縮してしまうという問題を有している。
特開平10−158928号公報 特開平11−293516号公報 特開2000−73229号公報 特開2003−166118号公報
本発明はかかる現状を改善したフィブリル化アクリル繊維およびその製造方法並びに該繊維を含有する構造物を提供することを目的とする。
本発明者は上述の目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、アクリロニトリル系重合体の紡糸原液中に該重合体に対してある程度の相溶性を有し、且つ親水性を有するアクリロニトリル系親水性樹脂を含有せしめたものを採用して得られた原料繊維は分割性が良好であり、叩解により容易にフィブリル化できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1)80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体95〜99重量%および10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系親水性樹脂1〜5重量%の重合体混合物からなる紡糸原液を紡糸することによって得られ、吸水速度が0.15g/g以上且つ吸水率が20重量%以上である原料繊維を叩解して得られるフィブリル化アクリル繊維。
(2)原料繊維が、120重量%以下の保水率を有することを特徴とする(1)に記載のフィブリル化アクリル繊維。
(3)アクリロニトリル系親水性樹脂が親水性成分としてポリアルキレンオキシド鎖、ポリエーテルアミド鎖、ポリエーテルエステル鎖からなる群から選ばれた少なくとも一つを有することを特徴とする(1)または(2)に記載のフィブリル化アクリル繊維。
(4)アクリロニトリル系親水性樹脂が共重合成分として下記化2で示す単量体を30〜90重量%結合含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のフィブリル化アクリル繊維。
Figure 2005154958
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のフィブリル化アクリル繊維を含有する構造物。
(6)80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体95〜99重量%および10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系親水性樹脂1〜5重量%の重合体混合物からなる紡糸原液を湿式紡糸するに際し、延伸後の未乾燥繊維の水分率を50〜130重量%とし、該未乾燥繊維を105〜130℃の温度で湿熱処理して得られる繊維を叩解することを特徴とするフィブリル化アクリル繊維の製造方法。
本発明に採用される原料繊維は、特別な装置を用いずに操業性良く紡糸することができ、且つ叩解により短時間に容易にフィブリル化することのできるものであるため、本発明のフィブリル化アクリル繊維は低コストで製造することが可能である。従って、従来よりフィブリル化アクリル繊維が使用されている紙、不織布、あるいは摩擦材、補強材、さらには低廉な材料の求められることの多い産業資材用途に使用することでこれらの製品のコストダウンに寄与することができる。
また、本発明に採用される原料繊維に含有されるアクリロニトリル系親水性樹脂はバインダー的な役割を果たすことが可能である。このため、本発明のフィブリル化アクリル繊維を紙原料として使用する場合にはバインダーの量を通常よりも削減する、場合によっては不使用とすることもできる。
さらに、本発明によれば、湿熱処理を施しても原料繊維の分割性が維持され、熱的に安定なフィブリル化アクリル繊維を得ることができるので、寸法安定性の求められる用途にも好適に利用することができる。
以下、本発明を詳述する。本発明のアクリロニトリル系重合体は従来公知のアクリル繊維の製造に用いられるものであればよいが、アクリロニトリルを80重量%以上結合含有することが必要であり、より好ましくは88重量%以上である。アクリロニトリルの結合含有量が80重量%に満たない場合には、後述するアクリロニトリル系親水性樹脂のアクリロニトリルの結合含有量との差が小さく、繊維の分割性が低下する。
また、アクリロニトリル系重合体において、アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、ビニル化合物であればよく、複数種を共重合しても構わない。代表的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらのエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド又はこれらのN−アルキル置換体;酢酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル又はビニリデン類;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸又はこれらの塩類等アクリロニトリルと共重合可能な周知の単量体を挙げることができる。
なお、アクリロニトリル系重合体として、上述の組成を満たす重合体を複数種用いても構わない。
次に、本発明のアクリロニトリル系親水性樹脂としては、10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有することが必要であり、より好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。アクリロニトリルの結合含有量が10〜70重量%の範囲であれば、上述したアクリロニトリル系重合体に対してある程度の相溶性を有するものとすることができる。すなわち、該範囲を外れる場合には、アクリロニトリル系重合体に対する相溶性が低すぎる、あるいは、高すぎる状態となり、紡糸工程で糸切れが多発したり、繊維の分割性が低下したりすることがある。
また、紡糸原液作成にあたっては、使用する重合体全量に対して、アクリロニトリル系重合体を95〜99重量%、アクリロニトリル系親水性樹脂を1〜5重量%となるようにする。この範囲を外れる場合には、紡糸時におけるノズル詰まり、糸切れ等の製造上の問題や十分な分割性を得られない等の特性上の問題が発生する。
本発明の原料繊維は、後述する条件で測定したときの吸水速度が0.15g/g以上且つ吸水率が20重量%以上であるものである。原料繊維がこれらの特性を有する場合には、繊維の分割性を維持しながら、熱安定性の良好なフィブリル化アクリル繊維を得ることができる。
本発明に採用する原料繊維としては、上述した特徴を有することに加え、保水率が120重量%以下、好ましくは70重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下であることが望ましい。上述した特徴を有した上で、保水率が120重量%以下であれば、繊維の分割性を維持しながら、得られるフィブリル化アクリル繊維の熱安定性を向上させることが可能となる。
本発明のアクリロニトリル系親水性樹脂の有する親水性成分としては、親水性を有するものであれば特に限定は無く、例えば水酸基やアミノ基などを挙げることができるが、特にポリアルキレンオキシド鎖、ポリエーテルアミド鎖、ポリエーテルエステル鎖などを採用した場合には樹脂の熱可塑性が増し、バインダー的な役割を果たせるようになるので、最終的に得られるフィブリル化アクリル繊維は紙原料に適したものとなる。
上記親水性成分を組み込む方法としては、側鎖上に親水性成分が組み込まれたビニル単量体をアクリロニトリルと共重合させる方法や反応性官能基を有するビニル単量体をアクリロニトリルと共重合させた後、親水性成分を含有する反応性化合物をグラフト反応させる方法などが挙げられる。
前者の方法において、側鎖上に親水性成分が組み込まれたビニル単量体としては、上述の化2で示される単量体が扱いやすく、代表的なものである。該単量体の結合含有量としては、30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは70〜85重量%であることが望ましい。30〜90重量%であれば、繊維の機械的強度を保ちつつ、分割性の良好な原料繊維が得られやすくなる。なお、この化2でいう低級アルキル基とは、大概炭素数5以下、さらに実用的には3以下のものを指す。またアクリロニトリルとの共重合に際しては、上記のビニル単量体に加えて他のビニル化合物を共重合しても構わない。
側鎖上に親水性成分が組み込まれたビニル単量体の好適な例としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとポリエチレングリコールモノメチルエーテルの反応生成物などが挙げられ、化2で示される単量体の好適な例としては、メトキシポリエチレングリコール(30モル)メタアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(30モル)アクリレート、ポリエチレングリコール−2,4,6−トリス−1−フェニルエチルフェニルエーテルメタアクリレート(数平均分子量約1600)などが挙げられる。また、後者の方法であるグラフト反応させる場合において、反応性官能基を有するビニル単量体の好適な例としては、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられ、親水性成分を含有する反応性化合物の好適な例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
本発明のアクリロニトリル系親水性樹脂のその他の性質としては、10〜300g/g、好ましくは20〜150g/gの水膨潤度を有することが望ましい。水膨潤度が300g/gを超えると、紡糸工程において糸切れなどのトラブルが起こりやすくなる。また、水膨潤度の調整には色々な方法を用いうるが、架橋性単量体を共重合するとか、化2で示される単量体のlあるいはmの大きさを変更するなどの方法が例示できる。
さらに、アクリロニトリル系親水性樹脂は水およびアクリロニトリル系重合体の溶剤に対して可溶であっても構わないが、好ましくは、水およびアクリロニトリル系重合体の溶剤に不溶であり且つ左記溶剤中で安定に分散するという性質を有するものであることが望ましい。水およびアクリロニトリル系重合体の溶剤に不溶であることは、紡糸工程において繊維中からアクリロニトリル系親水性樹脂が溶出することを抑制するため、最終的に得られるフィブリル化アクリル繊維に上述したバインダー的な機能を持たせることを可能とし、また、安定に分散するという性質は、紡糸工程におけるノズル詰まりや糸切れなどのトラブルを抑制するため、安定的な紡糸に寄与するものである。
以上に述べてきた、アクリロニトリル系重合体を合成する方法としては、特に制限はなく、周知の重合手段である懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを利用することができる。また、アクリロニトリル系親水性樹脂を合成する方法としても上記重合方法が利用でき、場合によっては、上述のごとく、親水性成分を導入するためにグラフト反応を利用することもできる。
次に、本発明のフィブリル化アクリル繊維の製造方法について述べる。本発明のフィブリル化アクリル繊維の原料繊維は、叩解によるフィブリル化を容易とするために、繊維内部においてアクリロニトリル系重合体中にアクリロニトリル系親水性樹脂が分散され、且つアクリロニトリル系重合体とアクリロニトリル系親水性樹脂との境界の少なくとも一部にミクロボイドが形成され、各々のミクロボイドが連結している構造となっていることが望ましい。かかる構造の原料繊維とするためには、下記の手段を選択することが好ましい。
即ち、チオシアン酸ナトリウム等の無機塩水溶液を溶剤に用いて湿式紡糸する場合で説明すれば以下のようになる。まず、チオシアン酸ナトリウム等の無機塩水溶液に上述のアクリロニトリル系重合体を溶解した後に、上述のアクリロニトリル系親水性樹脂を直接あるいは水または溶剤に溶解または分散させた状態として添加混合した紡糸原液を作製し、ノズルから紡出後、凝固、水洗、延伸の各工程を経て、延伸後の未乾燥繊維の水分率を50〜130重量%、好ましくは60〜120重量%とする。続いて湿熱処理を105℃〜130℃、好ましくは110℃〜125℃で行う。
ここで、延伸後の未乾燥繊維の水分率が50重量%未満の場合には、繊維内部に形成されるミクロボイドが連結しないため、繊維の分割性が低下し、また、130重量%を超える場合には繊維内部に多数の大きなボイドが形成され、可紡性が低下し好ましくない。なお、延伸後の未乾燥繊維の水分率を制御する方法は多数あるが、上記範囲内に制御するには、凝固浴温度としては5〜15℃程度、延伸倍率としては7〜15倍程度が望ましい。
また、湿熱処理については105℃に満たない場合は熱安定性に劣り、130℃を越えるとミクロボイドの閉塞が起こるため好ましくない。なお、ここでいう湿熱処理とは、飽和水蒸気や過熱水蒸気の雰囲気下で加熱を行う処理を意味する。
本発明のフィブリル化アクリル繊維は、上述のようにして得られた湿熱処理後の原料繊維を乾燥させることなく、適当な長さにカットし、水に分散させた状態で叩解することで得ることもできるが、該原料繊維を乾燥させてから叩解処理を行ってもよいことは言うまでもない。ただし、この場合、乾燥温度は湿熱処理時の温度を超えないようにすることが望ましい。乾燥温度が湿熱処理時の温度を超えてしまうとミクロボイドが閉塞してしまうため、繊維の分割性が低下し、目的のフィブリル化アクリル繊維が得られないことがある。
以上、チオシアン酸ナトリウム等の無機塩を溶剤に用いた場合について説明してきたが、有機溶剤を用いる場合でも上記条件は同じである。ただし、溶剤の種類が異なっているので、延伸後の未乾燥繊維の水分率を上記範囲内に制御するには凝固浴温度を40℃以上とするのが望ましい。なお、延伸後の未乾燥繊維の水分率の評価方法については後述する。
上述のようにして得られた原料繊維は、繊維内部においてアクリロニトリル系重合体中にアクリロニトリル系親水性樹脂が分散され、且つアクリロニトリル系重合体とアクリロニトリル系親水性樹脂との境界の少なくとも一部にミクロボイドが形成され、各々のミクロボイドが連結している構造を有し、後述する条件において、吸水速度0.15g/g以上および吸水率20重量%以上の特性を有するものである。該構造は、繊維の機械的強度を維持することができ、また、熱安定性を向上させるために湿熱処理を施し、保水率を120重量%以下程度まで低下させても、叩解処理により容易にフィブリル化することを可能とするものである。
なお、上記構造を形成させるためには、上述した特徴を有するアクリロニトリル系重合体およびアクリロニトリル系親水性樹脂を上述した範囲内の割合で使用しなければならないことは言うまでもない。
このような原料繊維の構造は、以下のような理由によりもたらされるものであると考えられる。まず、原料繊維の構成として、アクリロニトリル系重合体に対してある程度の相溶性を有するアクリロニトリル系親水性樹脂を分散含有せしめているが、この「ある程度の相溶性」を有することで、アクリロニトリル系重合体とアクリロニトリル系親水性樹脂の界面では相分離によりボイドが形成されるものの該相分離は部分的にしか起きないため、大きなボイドではなくミクロボイドとなる。加えて、「分散含有せしめている」ことで、形成されたミクロボイドも繊維中に分散した状態となる。さらに、延伸後の未乾燥繊維の水分率を制御したことによって各ミクロボイドは連結されると考えられる。
本発明のフィブリル化アクリル繊維を得るためには、叩解処理を行うが、該叩解処理の方法としては特に制限はなく、通常の叩解方法を採用することができる。代表的な例としては、ビーターやリファイナーなどの叩解機を用いてフィブリル化する方法が挙げられる。
本発明のフィブリル化アクリル繊維を含有する構造物としては、不織布、紙、シート状物、積層体、綿状体(球状や塊状のものを含む)などを挙げることができる。また、該構造物形成にあたっては、本発明のフィブリル化アクリル繊維を単独で使用してもよいし、必要に応じて天然繊維、有機繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維、ガラス繊維などの繊維、熱硬化性樹脂、ゴムなどを併用してもよい。なお、構造物中に本発明のフィブリル化アクリル繊維が占める割合については、該構造物の用途において求められる機械的特性などを満足するよう適宜選択すればよい。
また、本発明のフィブリル化アクリル繊維は、コンクリートや樹脂板の補強材、クラッチ板やブレーキシューなどの摩擦材などにも使用することができる。特に、アクリロニトリル系親水性樹脂として化2で示される単量体を共重合したものなどを使用した場合には、バインダー的な能力が高くなるため、紙原料として大変有用である。
さらに、原料繊維として、保水率が120重量%以下である繊維を使用した場合には、熱的に安定な本発明のフィブリル化アクリル繊維が得られ、加熱による変形の度合が小さいため、上述した用途の中において特に寸法安定性の求められる用途に好適に利用することができる。
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例中、部および百分率は特に断りのない限り重量基準で示す。また、実施例において記述するアクリロニトリル系親水性樹脂の水膨潤度、延伸後の未乾燥繊維の水分率並びに原料繊維の吸水速度、吸水率および保水率は下記の方法で測定したものである。
(1)水膨潤度
アクリロニトリル系親水性樹脂約0.5gを純水中に浸漬し、25℃で24時間経過後、水膨潤状態のアクリロニトリル系親水性樹脂を濾紙の間にはさみ樹脂間の水を除去する。このようにして調製した試料の重量(W1とする)を測定する。次に該試料を80℃の真空乾燥機中で恒量になるまで乾燥して重量(W0とする)を測定する。以上の結果より、次式に従って水膨潤度を計算する。
水膨潤度(g/g)=(W1−W0)/W0
(2)延伸後の未乾燥繊維の水分率
延伸後の未乾燥繊維をイオン交換水中に浸漬した後、遠心脱水機(国産遠心機(株)社製TYPE H−770A)で遠心加速度1100G(Gは重力加速度を示す)下2.5分間脱水する。脱水後重量を測定(W3とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W2とする)し、次式により計算する。
延伸後の未乾燥繊維の水分率(%)=(W3−W2)/W2×100
(3)吸水速度
105℃で乾燥させた原料繊維約5gを解繊した後、ガーゼに包み、30℃に調整したイオン交換水に30秒間浸漬する。浸漬後、ガーゼに包んだ状態のまま、直ちに遠心脱水機(同上)で遠心加速度1100G下2分間脱水する。脱水後ガーゼから繊維を取り出し、重量を測定(W5とする)後、80℃にて乾燥して重量を測定(W4とする)して次式により計算する。
吸水速度(g/g)=(W5−W4)/W4
(4)吸水率
105℃で乾燥させた原料繊維約10gをガーゼに包み、25℃のイオン交換水に24時間浸漬した後、遠心脱水機(同上)を用い、遠心加速度1100G下2分間脱水し、繊維間の水を除去する。脱水後の繊維重量を測定(W7とする)後、80℃真空乾燥機中で恒量になるまで乾燥して重量を測定(W6とする)し、次式により計算する。
吸水率(%)=(W7−W6)/W6×100
(5)保水率
原料繊維をイオン交換水中に浸漬した後、遠心脱水機(同上)で遠心加速度1100G下2.5分間脱水する。脱水後重量を測定(W9とする)後、該未乾燥繊維を120℃で15分間乾燥して重量を測定(W8とする)し、次式により計算する。
保水率(%)=(W9−W8)/W8×100
<アクリロニトリル系重合体およびアクリロニトリル系親水性樹脂の製造>
表1に示す組成で水系懸濁重合を行い、アクリロニトリル系重合体(a1〜a4)およびアクリロニトリル系親水性樹脂(b1〜b4)を作成した。また、アクリロニトリル系親水性樹脂b2については、まずポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量750)と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを窒素雰囲気下、トルエン中において60℃で反応させてマクロモノマーを合成した後、得られたマクロモノマーとアクリロニトリルを水系懸濁重合させることによって作成した。なお、表中の略号はそれぞれ、AN:アクリロニトリル、MA:アクリル酸メチル、SMAS:メタアリルスルホン酸ナトリウム、VAc:酢酸ビニル、M30:メトキシポリエチレングリコール(30モル)メタアクリレート、MOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、PEGME:ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを示している。また、アクリロニトリル系親水性樹脂については上記測定方法より求めた水膨潤度を併記した。
Figure 2005154958
<実施例1〜3、比較例1>
50%チオシアン酸ナトリウム水溶液900部に対して、表2に示す割合でアクリロニトリル系重合体を溶解させた後、水に分散させたアクリロニトリル系親水性樹脂を添加混合する方法で紡糸原液を作成した。得られた紡糸原液を紡出し、5℃の12%チオシアン酸ナトリウム水溶液中で凝固を行い、次いで水洗、12倍延伸を施し、得られた未乾燥繊維を116℃×10分間の条件でスチームを用いて湿熱処理を行い、乾燥工程を行わず、原料繊維を作成した。次いで、得られた原料繊維を5mmにカットした後、絶乾繊維重量として50gになるように量り採り、これに水を加えて5リットルとし水温を20℃に調整した後、熊谷理機工業(株)製ナイヤガラ式ビーター(タイプBE−10)を用い2kg荷重で30分間叩解した。得られた繊維のフィブリル化状態を光学顕微鏡で観察し、以下に示す基準で分割性を3段階評価した。
○:フィブリル化している
△:繊維表面が毛羽立つ程度
×:ほとんどフィブリル化していない
フィブリル化状態の評価結果、延伸後の未乾燥繊維の水分率の測定結果、並びに原料繊維の吸水速度、吸水率および保水率の測定結果を表2に示す。
Figure 2005154958
実施例1〜3については、いずれも容易にフィブリル化アクリル繊維を得ることができた。これらに対して、比較例1では、吸水速度および吸水率が低く、分割性も繊維表面が毛羽立つ程度であった。これは、アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル結合含有量が少ないことで、アクリロニトリル系親水性樹脂のアクリロニトリル結合含有量との差が小さくなったため、相分離が起こりにくくなり、ミクロボイドが十分に形成されなかったためと考えられる。
<実施例4、5、比較例2、3>
実施例1のアクリロニトリル系重合体とアクリロニトリル系親水性樹脂の割合を表3のように変える以外は実施例1と同様にして紡糸原液の作成、原料繊維の作成、叩解および評価を行った。表3に結果を示す。
Figure 2005154958
実施例4、5についてはいずれもフィブリル化アクリル繊維を得ることができた。比較例2ではアクリロニトリル系親水性樹脂が多すぎるため、紡糸時にノズル詰まりや糸切れが発生し、繊維を得ることができなかった。また、比較例3は、アクリロニトリル系親水性樹脂を全く使用していないためにミクロボイドの形成が少なく、分割性に乏しいものになったと考えられる。
<実施例6〜8、比較例4>
実施例1のアクリロニトリル系重合体とアクリロニトリル系親水性樹脂の割合を表4のように変える以外は実施例1と同様にして紡糸原液の作成、原料繊維の作成、叩解および評価を行った。表4に結果を示す。
Figure 2005154958
実施例6、7については、いずれも容易にフィブリル化アクリル繊維を得ることができ、実施例8についてもフィブリル化アクリル繊維が得られた。これらに対して、比較例4は、吸水速度が低く、繊維の分割性の不十分なものであった。これは、アクリロニトリル系親水性樹脂中のアクリロニトリル結合含有量が多いことで、該樹脂中の親水性成分が少なくなり、アクリロニトリル系重合体に対するアクリロニトリル結合含有量の差も小さくなるため、ミクロボイドの形成や連結が起こりにくくなったと考えられる。
<実施例9、比較例5>
実施例3と同じ紡糸原液を使用して、実施例3の紡糸条件に対し、表5に示すような条件の変更を加えて、原料繊維の作成、叩解および評価を行った。表5に結果を示す。
Figure 2005154958
実施例9については、実施例3に比べ操業性は若干劣るものの、より容易にフィブリル化アクリル繊維を得ることができた。比較例5では、凝固浴温度を低くしたことで、繊維の緻密化が進み、ミクロボイドとなるべき空間が減少した結果、吸水速度および吸水率が低く、分割性が低下したものと考えられる。
<実施例10〜12、比較例6〜8>
実施例1と同じ紡糸原液を使用して、実施例1の紡糸条件に対し、表6に示すような条件の変更を加えて、原料繊維の作成、叩解および評価を行った。表6に結果を示す。
Figure 2005154958
実施例10、11は、いずれもフィブリル化アクリル繊維が得られた。比較例7は、吸水速度および吸水性が低く、熱安定性の低いものであると考えられる。また比較例6、8、9は、いずれも分割性に劣るものであった。これは、変更した条件により繊維中のミクロボイドが閉塞もしくは減少してしまったことが原因と考えられる。なお、比較例9については、湿熱処理温度よりも高温で乾燥したため、ミクロボイドが閉塞したものと考えられる。
<実施例12>
実施例1で得られたフィブリル化アクリル繊維の水分散液から熊谷理機工業(株)製角型シートマシンを用いて、シートを作成した。該シートを濾紙の間に挟み、熊谷理機工業(株)製ロータリードライヤーを用いて、130℃で乾燥させ、本発明のフィブリル化アクリル繊維からなる紙を作成した。得られた紙は、寸法安定性に優れたものであった。
<比較例10>
比較例7で得られた原料繊維を用いる以外は実施例12と同様の方法で紙を作成した。得られた紙は収縮が激しく、寸法安定性に劣るものであった。これは、比較例7で得られた原料繊維が熱安定性の低いものであるため、該繊維を叩解して得られたフィブリル化アクリル繊維の熱安定性も低く、加熱により収縮してしまったことが原因と考えられる。

Claims (6)

  1. 80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体95〜99重量%および10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系親水性樹脂1〜5重量%の重合体混合物からなる紡糸原液を紡糸することによって得られ、吸水速度が0.15g/g以上且つ吸水率が20重量%以上である原料繊維を叩解して得られるフィブリル化アクリル繊維。
  2. 原料繊維が、120重量%以下の保水率を有することを特徴とする請求項1に記載のフィブリル化アクリル繊維。
  3. アクリロニトリル系親水性樹脂が親水性成分としてポリアルキレンオキシド鎖、ポリエーテルアミド鎖、ポリエーテルエステル鎖からなる群から選ばれた少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィブリル化アクリル繊維。
  4. アクリロニトリル系親水性樹脂が共重合成分として下記化1で示す単量体を30〜90重量%結合含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィブリル化アクリル繊維。
    Figure 2005154958
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のフィブリル化アクリル繊維を含有する構造物。
  6. 80重量%以上のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系重合体95〜99重量%および10〜70重量%のアクリロニトリルを結合含有するアクリロニトリル系親水性樹脂1〜5重量%の重合体混合物からなる紡糸原液を湿式紡糸するに際し、延伸後の未乾燥繊維の水分率を50〜130重量%とし、該未乾燥繊維を105〜130℃の温度で湿熱処理して得られる繊維を叩解することを特徴とするフィブリル化アクリル繊維の製造方法。
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