しかしながら、上記特許文献1に開示される技術では、制動制御の操作フィーリングの改良がなされているが、タイヤと路面との間の摩擦力が変化した場合、例えばブレーキトルクがタイヤと路面との間の摩擦力を超えてスリップが発生した場合などを想定した閾値の設定が難しい。
また、上記特許文献2乃至5に開示される技術では、走行時における車両自体の加速度を検出し、これに基づいて車両の制動制御(ブレーキ制御)を行うという、上記特許文献1に開示される技術よりもさらに高度な制御が行われている。しかし、同じ車両であっても、タイヤと路面との間の摩擦力は車両に装着されているタイヤの種類やその空気圧によっても異なり、さらに4WD車などタイヤ毎に個別に駆動制御する車両もあるため、走行時における車両自体の加速度を考慮した制御でも高精度な制御を行えないこともある。
本発明の目的は上記の問題点に鑑み、車体の上下前後左右に生ずる加速度を高精度で容易に検出して車両の安定性制御を行う車両駆動制御システム及びそのセンサユニットを提供することである。
本発明は上記の目的を達成するために、車両の運転操作状態の検出結果に応じてエンジンスロットルやステアリング及びブレーキの各駆動用アクチュエータを駆動して、車両走行時の安定性制御を行う制御手段を備えた車両駆動制御システムにおいて、車体の前後左右のそれぞれに設けられ、車体の前後方向にかかる第1加速度と、車体の左右方向にかかる第2加速度と、車体の上下方向にかかる第3加速度とを検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を送信する複数のセンサユニットと、前記センサユニットから送信されたディジタル情報を受信して、各センサユニット毎の前記第1乃至第3加速度の検出結果を取得するモニタ装置とを備え、前記制御手段は、前記モニタ装置によって取得された第1乃至第3加速度の検出結果に基づいて、前記各駆動用アクチュエータのうちの所定の駆動用アクチュエータの駆動を補正制御する手段を有する車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記センサユニットが前記車両の前後左右のそれぞれの所定位置に設けられ、前記センサユニットにより、車両走行に伴って車体の前後方向に発生する第1加速度と、車体の左右方向に発生する第2加速度と、車体の上下方向に発生する第3加速度とが検出され、該検出結果がディジタル値に変換されて、該ディジタル値を含むディジタル情報が送信される。
さらに、前記モニタ装置によって、前記各センサユニットから送信されたディジタル情報が受信されて、前記各センサユニット毎に前記第1乃至第3加速度の検出結果が取得され、前記モニタ装置によって取得された前記第1加速度と第2加速度及び第3回速度の検出結果に基づいて、前記駆動手段により前記各駆動用アクチュエータのうちの所定の駆動用アクチュエータの駆動が補正制御される。
ここで、車両の増速及び減速よって前記第1加速度が生ずる向き及びその大きさが変化する。また、車体のステアリング操作に伴ってセンサユニットにかかる前記第2加速度が生ずる向き及び大きさが変化する。さらに、車両走行時における車体の上下方向の振動や部分的な加重或いは浮遊によってセンサユニットにかかる前記第3加速度が生ずる向き及び大きさが変化する。従って、前記第1乃至第3加速度の検出結果から車体の状態を推測することが可能であり、これら第1乃至第3加速度の検出結果を用いて所定の駆動用アクチュエータの駆動を補正制御することができる。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記各センサユニットは、車輪を除く車体の前後左右のそれぞれに設けられている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記各センサユニットが、車輪を除く車体の前後左右のそれぞれに設けられているので、ホイール及びタイヤ本体等からなるタイヤを自由に交換可能である。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記各センサユニットは、車軸を支持するアームに設けられている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記アームに生ずる3方向の加速度が前記センサユニットによって検出される。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記各センサユニットは、車体側に設けられ車輪を固定して該車輪を回転させる複数の回転体のそれぞれに設けられている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記各センサユニットが、車輪ではなく車輪を装着するために車体側に備わる回転体に設けられているので、ホイール及びタイヤ本体等からなるタイヤを自由に交換可能である。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記各センサユニットは、車軸と共に回転するブレーキディスクに設けられている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記ブレーキディスクに生ずる3方向の加速度が前記センサユニットによって検出される。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記車体の中央部に設けられ、車体の前後方向にかかる第1加速度と、車体の左右方向にかかる第2加速度と、車体の上下方向にかかる第3加速度とを検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を送信する中央センサユニットを備え、前記モニタ装置は、前記中央センサユニットから送信されたディジタル情報を受信して、前記中央センサユニットの前記第1乃至第3加速度の検出結果を取得する手段を有し、前記制御手段は、前記モニタ装置によって取得された前記中央センサユニット及び前記各センサユニットの第1乃至第3加速度の検出結果に基づいて、前記所定の駆動用アクチュエータの駆動を補正制御する手段を有する車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、車体の中央部に設けられた中央センサユニットによって検出された第1乃至第3加速度と前記車体の前後左右に設けられたセンサユニットによって検出された第1乃至第3加速度に基づいて前記所定の駆動用アクチュエータの駆動が補正制御される。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記センサユニットは、第1周波数の電磁波を受波する手段と、前記受波した第1周波数の電磁波のエネルギーを駆動用の電気エネルギーに変換する手段と、前記電気エネルギーによって動作し、前記ディジタル情報を第2周波数の電磁波を用いて送信する手段とを備え、前記モニタ装置は、前記第1周波数の電磁波を輻射する手段と、前記第2周波数の電磁波を受波する手段と、前記受波した第2周波数の電磁波から前記ディジタル情報を抽出する手段とを備えている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、センサユニットへ向けてモニタ装置から第1周波数の電磁波が輻射されると、この第1周波数の電磁波を受波したセンサユニットは、受波した第1周波数の電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換する。さらに、センサユニットは前記電気エネルギーによって動作して、各加速度を検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を第2周波数の電磁波を用いて送信する。
センサユニットから送信された第2周波数の電磁波は、モニタ装置によって受波され、この受波した第2周波数の電磁波から前記各加速度の検出結果のディジタル値が抽出される。従って、センサユニットに電源を設ける必要がない。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記第1周波数と前記第2周波数とが同一周波数である車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記第1周波数と前記第2周波数として同一周波数が用いられ、時分割で送受信が行われる。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記センサユニットは、ケーブルを用いて供給された電気エネルギーによって動作し、前記ディジタル情報を前記ケーブルを用いて送信する手段を備え、前記モニタ装置は、送信された前記ディジタル情報を前記ケーブルを用いて受信する手段を備えている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、センサユニットはケーブルを用いて供給された電気エネルギーによって動作して、各加速度を検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を前記ケーブルを用いて送信する。
モニタ装置は前記各加速度の検出結果のディジタル値を前記ケーブルを用いて受信する。従って、センサユニットに電源を設ける必要がない。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記センサユニットは、自己に固有の識別情報が格納されている記憶手段と、前記識別情報を前記ディジタル情報に含めて送信する手段とを有し、前記モニタ装置は、前記識別情報によって前記センサユニットを識別する手段を有している車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、各センサユニットの記憶手段に格納されているセンサユニットに固有の識別情報が前記検出結果と共にセンサユニットから送信されるので、モニタ装置はセンサユニットから受信した識別情報によって何れのセンサユニットから送信されたディジタル情報であるかを判定することができる。これにより、1つのモニタ装置によって複数のセンサユニットのそれぞれから送信されたディジタル情報を判別可能になる。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記センサユニットは、互いに直交する方向の加速度を検出するシリコンピエゾ型のダイアフラムを有する半導体加速度センサを備えている車両駆動制御しステムシステムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、前記センサユニットは、シリコンピエゾ型のダイアフラムを有する半導体加速度センサを備え、該半導体加速度センサによって互いに直交する方向の前記加速度を検出する。
また、本発明は上記構成の車両駆動制御システムにおいて、前記各センサユニットは、車体の前後左右の4隅のそれぞれに設けられている車両駆動制御システムを提案する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、車体の4隅に生ずる3方向の加速度が前記センサユニットによって検出される。
また、本発明は上記の目的を達成するために、車体の前後左右のそれぞれ或いは車体の中央部に設けられ、車両走行に伴って発生する加速度を検出するセンサユニットであって、車体の前後方向にかかる第1加速度と、車体の左右方向にかかる第2加速度と、車体の上下方向にかかる第3加速度とを検出する手段と、前記第1乃至第3加速度の検出結果をディジタル値に変換する手段と、前記ディジタル値を含むディジタル情報を送信する手段とを備えているセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、車両走行に伴って車体の前後方向に発生する第1加速度と、車体の左右方向に発生する第2加速度と、車体の上下方向に発生する第3加速度とが検出され、該検出結果がディジタル値に変換されて、該ディジタル値を含むディジタル情報が送信される。
ここで、車両の増速及び減速よって前記第1加速度が生ずる向き及びその大きさが変化する。また、車体のステアリング操作に伴ってセンサユニットにかかる左右方向の加速度の向き及び大きさが変化する。さらに、車両走行時における車体の上下方向の振動や部分的な加重或いは浮遊によってセンサユニットにかかる上下方向の加速度の向き及び大きさが変化する。従って、各センサユニットの前記第1乃至第3加速度の検出結果から車体の状態を推測することが可能であり、これら第1乃至第3加速度の検出結果を用いて、車両のエンジンスロットルやステアリング及びブレーキ等の各駆動用アクチュエータの駆動を補正制御することができる。
また、本発明は上記構成のセンサユニットにおいて、第1周波数の電磁波を受波する手段と、前記受波した第1周波数の電磁波のエネルギーを駆動用の電気エネルギーに変換する手段と、前記電気エネルギーによって動作し、前記ディジタル情報を第2周波数の電磁波を用いて送信する手段とを備えているセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、センサユニットへ向けて外部から第1周波数の電磁波が輻射されると、この第1周波数の電磁波を受波したセンサユニットは、受波した第1周波数の電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換する。さらに、センサユニットは前記電気エネルギーによって動作して、各加速度を検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を第2周波数の電磁波を用いて送信する。
センサユニットから送信された第2周波数の電磁波を外部装置によって受波し、この受波した第2周波数の電磁波から前記各加速度の検出結果のディジタル値を抽出することができるので、センサユニットに電源を設ける必要がない。
また、本発明は上記構成のセンサユニットにおいて、前記第1周波数と前記第2周波数とが同一周波数であるセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、前記第1周波数と前記第2周波数として同一周波数が用いられ、時分割で送受信が行われる。
また、本発明は上記構成のセンサユニットにおいて、ケーブルを用いて供給された電気エネルギーによって動作し、前記ディジタル情報を前記ケーブルを用いて送信する手段を備えているセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、センサユニットへ向けて外部からケーブルを用いて供給された電気エネルギーによって動作して、各加速度を検出し、該検出結果をディジタル値に変換して、該ディジタル値を含むディジタル情報を前記ケーブルを用いて送信する。
外部装置は、前記各加速度の検出結果のディジタル値を前記ケーブルを用いて受信することができるので、センサユニットに電源を設ける必要がない。
また、本発明は上記構成のセンサユニットにおいて、自己に固有の識別情報が格納されている記憶手段と、前記識別情報を前記ディジタル情報に含めて送信する手段とを備えているセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、各センサユニットの記憶手段に格納されているセンサユニットに固有の識別情報が前記検出結果と共にセンサユニットから送信されるので、外部装置はセンサユニットから受信した識別情報によって何れのセンサユニットから送信されたディジタル情報であるかを判定することができる。これにより、1つの外部装置によって複数のセンサユニットのそれぞれから送信されたディジタル情報を判別可能になる。
また、本発明は上記構成のセンサユニットにおいて、互いに直交する方向の加速度を検出するシリコンピエゾ型のダイアフラムを有する半導体加速度センサを備えているセンサユニットを提案する。
本発明のセンサユニットによれば、前記センサユニットは、シリコンピエゾ型のダイアフラムを有する半導体加速度センサを備え、該半導体加速度センサによって互いに直交する方向の前記加速度を検出する。
本発明の車両駆動制御システムによれば、車体の前後左右のそれぞれに設けられたセンサユニットによって、互いに直交する3方向の加速度を高精度で検出し、該検出した加速度に基づいて所定のアクチュエータを駆動を補正制御しているので、車両走行時において適切な制御を行うことが可能になり、走行時の安定性を高めることができる。また、上記加速度からタイヤの歪み量や車体の横滑り、車輪の空転、タイヤのグリップ等を推定できるので、これらを車両の制動制御に用いることにより、さらに高精度な制御を行うことができる。さらに、センサユニットが検出した3方向の加速度の情報を有線で送信することで、より簡単な構成・動作で同様の効果が得られる。
本発明のセンサユニットによれば、車体の前後左右の所定位置に設けるだけで、前記前後左右のそれぞれに生じる加速度を高精度で容易に検出することができる。また、センサユニットを車体側に備わるそれぞれの回転体に設けることで、前記回転体のそれぞれに生じる加速度を高精度で容易に検出することができる。
本発明の前記目的、構成、特徴及び作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態の車両駆動制御システムを説明する。
図1は本発明の第1実施形態における車両へのセンサユニットの配置を示す外観図、図2は本発明の第1実施形態における車両へのセンサユニットの配置を示す平面図、図3は本発明の第1実施形態における車両へのセンサユニットの設置場所を説明する図、図4は本発明の第1実施形態における車両駆動制御システムを示す構成図である。本実施形態では4輪車両の駆動制御システムを一例として説明する。
図1及び図2において、1は車両、2はタイヤ(車輪)、100はセンサユニット、200はモニタユニットである。本実施形態では4つのセンサユニット100のそれぞれを車両1のタイヤ2を除く車体側のタイヤ2の近傍に配置している。
詳しくは、図3に示すように車体側の部材であり、タイヤ2の動きに合わせて互いに直行するX軸、Y軸、Z軸方向に動くようにロワーアーム5のタイヤ側にセンサユニット100を固定している。尚、本実施形態では、車両1の前後方向にX軸を設定し、車両1の左右方向にY軸を設定し、車両1の上下方向にZ軸を設定している。
図3において、2はタイヤ、3は車軸、4はハブキャリア、5はロワーアーム、6は懸架装置である。
懸架装置6は、アッパーマウント部61と、スプリングアッパーシート62、コイルばね63、ゴム部材64、油圧式のダンパ65、ダンパ連結部材66とから構成されている。尚、本実施形態では、上記スプリングアッパーシート62と、コイルばね63、ゴム部材64、油圧式のダンパ65によって懸架装置本体が構成される。
車体に対するダンパ65の角度の変化を吸収するためのアッパーマウント部61の上面は車体(図示せず)に連結され、アッパーマウント部61の底面にスプリングアッパーシート62が装着されている。また、スプリングアッパーシート62と円柱状のダンパ65に設けられた円環受け皿型のガイド66との間にコイルばね63が装着されている。また、コイルばね63の内側には略円筒形状のゴム部材64が設けられている。
ダンパ65の下端はダンパ連結部材66に固定され、ダンパ連結部材66はハブキャリア4に接続され、ハブキャリア4によって車軸3が支持されている。さらに、ハブキャリア4はロワーアーム5を介して車体(図示せず)に連結されている。
図4において、2はタイヤ、3は車軸、100はセンサユニット、200はモニタ装置、410はエンジン、411はアクセルペダル、412はサブスロットルアクチュエータ、413はメインスロットルポジションセンサ、414はサブスロットルポジションセンサ、421はハンドル、422は舵角センサ、510,520はタイヤの回転数を検知するセンサ、610はブレーキペダル、620はブレーキ用のマスターシリンダ、630はブレーキ用の油圧を制御する圧力制御弁、640はブレーキ駆動用のアクチュエータ、700はスタビリティ制御ユニットである。
また、スタビリティ制御ユニット700は、周知のCPUを備えた制御回路からなり、車両1に装着されている各タイヤ2の回転数を検知する回転数センサ510,520から出力される検知結果と、スロットルポジションセンサ413,414、舵角センサ422及びモニタ装置200から出力される検知結果を取り込んでスタビリティ制御を行っている。
即ち、加速時には、アクセルペダル411を踏み込むことによってメインスロットルを開いてエンジン410に燃料を送り込み、エンジン410の回転数を増加させる。
また、制動時には、ブレーキペダル610を踏み込むことによってマスターシリンダ620内の油圧が上昇し、この油圧が圧力制御弁を介して各タイヤ2のブレーキ駆動用アクチュエータ640に伝達され、これによって各タイヤ2の回転に制動力が加えられる。
上記スタビリティ制御ユニット700は、各タイヤ2の回転数を検知する回転数センサ510,520から出力される検知結果と舵角センサ422の検知結果及びモニタ装置200から出力される検知結果とに基づいて、サブスロットルアクチュエータ412の動作状態を電気的に制御すると共に、各圧力制御弁630の動作状態を電気的に制御することによって、車体の安定性を保つと共にタイヤ2がロックしてスリップが生じたりしないように自動的に制御する。
センサユニット100は、前述したようにロワーアーム5の所定位置に固定されており、このセンサユニット100内に設けられている後述する加速度センサによって車両1の前後左右4隅におけるX,Y,Z軸方向の加速度を検出し、該検出した加速度をディジタル値に変換する。さらに、検出結果の加速度のディジタル値を含むディジタル情報を生成して送信する。このディジタル情報には、上記加速度のディジタル値の他に各センサユニット100に固有の識別情報が含まれる。
尚、各ロワーアーム5に設けられるセンサユニット100の数は1つに限定されることはなく、補助用などとして2個以上設けても良い。また、本実施形態ではロワーアーム5にセンサユニット100を固定しているが、車両1の4隅のX,Y,Z軸方向の加速度を検出できる位置であるならばロワーアーム5以外の場所に固定しても良い。その際は、コイルバネ63の動きによる加速度の影響を避けるため、コイルバネ63より下方でありタイヤ2と一続きの剛体とみなせる範囲内に固定することが望ましい。
センサユニット100の電気系回路の一具体例としては、図5に示す回路が挙げられる。すなわち、図5に示す一具体例では、センサユニット100は、アンテナ110と、アンテナ切替器120、整流回路130、中央処理部140、検波部150、発信部160、センサ部170から構成されている。
アンテナ110は、モニター装置200との間で電磁波を用いて通信するためのもので、例えば2.4GHz帯の所定の周波数(第1周波数)に整合されている。
アンテナ切替器120は、例えば電子スイッチ等から構成され、中央処理部140の制御によってアンテナ110と整流回路130及び検波部150との接続と、アンテナ110と発信部160との接続とを切り替える。
整流回路130は、ダイオード131,132と、コンデンサ133、抵抗器134から構成され、周知の全波整流回路を形成している。この整流回路130の入力側にはアンテナ切替器120を介してアンテナ110が接続されている。整流回路130は、アンテナ110に誘起した高周波電流を整流して直流電流に変換し、これを中央処理部140、検波部150、発信部160、センサ部170の駆動電源として出力するものである。
中央処理部140は、周知のCPU141と、ディジタル/アナログ(以下、D/Aと称する)変換回路142、記憶部143から構成されている。
CPU141は、記憶部143の半導体メモリに格納されているプログラムに基づいて動作し、電気エネルギーが供給されて駆動すると、センサ部170から取得した加速度検出結果のディジタル値及び後述する識別情報を含むディジタル情報を生成して、このディジタル情報をモニター装置200に対して送信する処理を行う。また、記憶部143にはセンサユニット100に固有の上記識別情報が予め記憶されている。
記憶部143は、CPU141を動作させるプログラムが記録されたROMと、例えばEEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)等の電気的に書き換え可能な不揮発性の半導体メモリとからなり、個々のセンサユニット100に固有の上記識別情報が、製造時に記憶部143内の書き換え不可に指定された領域に予め記憶されている。
検波部150は、ダイオード151とA/D変換器152からなり、ダイオード151のアノードはアンテナ110に接続され、カソードはA/D変換器152を介して中央処理部140のCPU141に接続されている。これにより、アンテナ110によって受波された電磁波は検波部150によって検波されると共に、検波されて得られた信号はディジタル信号に変換されてCPU141に入力される。
発信部160は、発振回路161、変調回路162及び高周波増幅回路163から構成され、周知のPLL回路などを用いて構成され発振回路161によって発振された2.45GHz帯の周波数の搬送波を、中央処理部140から入力した情報信号に基づいて変調回路162で変調し、これを高周波増幅回路163及びアンテナ切替器120を介して2.45GHz帯の周波数(第2周波数)の高周波電流としてアンテナ110に供給する。尚、本実施形態では前記第1周波数と第2周波数と同じ周波数に設定しているが、第1周波数と第2周波数が異なる周波数であっても良い。
センサ部170は、加速度センサ10とA/D変換回路171から構成されている。
加速度センサ10は、図6乃至図9に示すような半導体加速度センサによって構成されている。
図6は本発明の第1実施形態における半導体加速度センサを示す外観斜視図、図7は図6におけるB−B線矢視方向断面図、図8は図6におけるC−C線矢視方向断面図、図9は分解斜視図である。
図において、10は半導体加速度センサで、台座11と、シリコン基板12、支持体19A,19Bとから構成されている。
台座11は矩形の枠型をなし、台座11の一開口面上にシリコン基板(シリコンウェハ)12が取り付けられている。また、台座11の外周部には支持体19a,19Bの外枠部191が固定されている。
台座11の開口部にシリコン基板12が設けられ、ウェハ外周枠部12a内の中央部には十字形状をなす薄膜のダイアフラム13が形成されており、各ダイアフラム片13a〜13dの上面にピエゾ抵抗体(拡散抵抗体)Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4が形成されている。
詳細には、一直線上に配置されたダイアフラム片13a,13bのうちの一方のダイアフラム片13aにはピエゾ抵抗体Rx1,Rx2,Rz1,Rz2が形成され、他方のダイアフラム片13bにはピエゾ抵抗体Rx3,Rx4,Rz3,Rz4が形成されている。また、ダイアフラム片13a,13bに直交する一直線上に配置されたダイアフラム片13c,13dのうちの一方のダイアフラム片13cにはピエゾ抵抗体Ry1,Ry2が形成され、他方のダイアフラム片13dにはピエゾ抵抗体Ry3,Ry4が形成されている。さらに、これらのピエゾ抵抗体Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を検出するための抵抗ブリッジ回路を構成できるように、図10に示すように接続され、シリコン基板12の外周部表面に設けられた接続用の電極191に接続されている。
さらに、ダイアフラム片13a〜13dの交差部には、ダイアフラム13の中央部の一方の面側に厚膜部14が形成され、この厚膜部14の表面には例えばガラス等からなる直方体形状の重錘15が取り付けられている。
一方、上記支持体18A,18Bは、矩形の枠型をなした外枠部181と、固定部の4隅に立設された4つの支柱182、各支柱の先端部を連結するように設けられた十字形状の梁部183、梁部183の中央交差部分に設けられた円錐形状をなす突起部184とから構成されている。
外枠部181は、突起部184がダイアフラム13の他面側すなわち重錘15が存在しない側に位置するように、台座11の外周部に嵌合して固定されている。ここで、突起部184の先端184aがダイアフラム13或いは重錘15の表面から距離D1の位置になるように設定されている。この距離D1は、ダイアフラム13の面に垂直な方向に加速度が生じ、この加速度によりダイアフラム13の双方の面の側に所定値以上の力が加わった場合においても、各ダイアフラム片13a〜13dが伸びきらないように、その変位が突起部184によって制限できる値に設定されている。
上記構成の半導体加速度センサ10を用いる場合は、図11乃至図13に示すように3つの抵抗ブリッジ回路を構成する。即ち、X軸方向の加速度を検出するためのブリッジ回路としては、図11に示すように、ピエゾ抵抗体Rx1の一端とピエゾ抵抗体Rx2の一端との接続点に直流電源32Aの正極を接続し、ピエゾ抵抗体Rx3の一端とピエゾ抵抗体Rx4の一端との接続点に直流電源32Aの負極を接続する。さらに、ピエゾ抵抗体Rx1の他端とピエゾ抵抗体Rx4の他端との接続点に電圧検出器31Aの一端を接続し、ピエゾ抵抗体Rx2の他端とピエゾ抵抗体Rx3の他端との接続点に電圧検出器31Aの他端を接続する。
また、Y軸方向の加速度を検出するためのブリッジ回路としては、図12に示すように、ピエゾ抵抗体Ry1の一端とピエゾ抵抗体Ry2の一端との接続点に直流電源32Bの正極を接続し、ピエゾ抵抗体Ry3の一端とピエゾ抵抗体Ry4の一端との接続点に直流電源32Bの負極を接続する。さらに、ピエゾ抵抗体Ry1の他端とピエゾ抵抗体Ry4の他端との接続点に電圧検出器31Bの一端を接続し、ピエゾ抵抗体Ry2の他端とピエゾ抵抗体Ry3の他端との接続点に電圧検出器31Bの他端を接続する。
また、Z軸方向の加速度を検出するためのブリッジ回路としては、図13に示すように、ピエゾ抵抗体Rz1の一端とピエゾ抵抗体Rz2の一端との接続点に直流電源32Cの正極を接続し、ピエゾ抵抗体Rz3の一端とピエゾ抵抗体Rz4の一端との接続点に直流電源32Cの負極を接続する。さらに、ピエゾ抵抗体Rz1の他端とピエゾ抵抗体Rz3の他端との接続点に電圧検出器31Cの一端を接続し、ピエゾ抵抗体Rz2の他端とピエゾ抵抗体Rz4の他端との接続点に電圧検出器31Cの他端を接続する。
上記構成の半導体加速度センサ10によれば、センサ10に加わる加速度に伴って発生する力が重錘15に加わると、各ダイアフラム片13a〜13dに歪みが生じ、これによってピエゾ抵抗体Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4の抵抗値が変化する。従って、各ダイアフラム片13a〜13dに設けられたピエゾ抵抗体Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4によって抵抗ブリッジ回路を形成することにより、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸方向の加速度を検出することができる。
さらに、図14及び図15に示すように、ダイアフラム13の面に垂直な方向の力成分を含む力41,42が働くような加速度が加わった場合、ダイアフラム13の他方の面の側に所定値以上の力が加わったとき、ダイアフラム13は力41,42の働く方向に歪んで伸びるが、その変位は突起部184の頂点184aによって支持されて制限されるため、各ダイアフラム片13a〜13dが最大限に伸びきることがない。これにより、ダイアフラム13の他方の面の側に所定値以上の力が加わった場合も、突起部184の頂点184aが支点となって重錘15の位置が変位するので、ダイアフラム13の面に平行な方向の加速度を検出することができる。
上記の半導体加速度センサ10によって、図2に示すように、車両が走行している際に、車両の4隅のそれぞれに発生する互いに直行するX,Y,Z軸方向の加速度を検出することができる。また、Z軸方向の加速度からタイヤ2のグリップを推定することが可能である。
一方、A/D変換回路171は、加速度センサ10から出力されたアナログ電気信号をディジタル信号に変換してCPU141に出力する。このディジタル信号は上記X,Y,Z軸方向の加速度の値に対応する。
尚、各X,Y,Z軸方向に生ずる加速度としては、正方向の加速度と負方向の加速度とが存在するが、本実施形態では双方の加速度を検出することができる。
また、本実施形態では、前述したように2.45GHz帯の周波数を上記第1及び第2周波数として用いることによって金属の影響を受け難くしている。このように金属の影響を受け難くするためには、1GHz以上の周波数を上記第1及び第2周波数として用いることが好ましい。
モニタ装置200はケーブルによってスタビリティ制御ユニット700に接続され、スタビリティ制御ユニット700から送られる電気エネルギーによって動作する。
モニタ装置200の電気系回路は、図16に示すように、輻射ユニット210と、受波ユニット220、制御部230、演算部240によって構成されている。ここで、制御部230及び演算部240は、周知のCPUと、このCPUを動作させるプログラムが記憶されているROM及び演算処理を行うために必要なRAMなどからなるメモリ回路から構成されている。
輻射ユニット210は、2.45GHz帯の所定周波数(上記第1周波数)の電磁波を輻射するためのアンテナ211と発信部212とから構成され、制御部230からの指示に基づいて、アンテナ211から上記第1周波数の電磁波を輻射する。
発信部212の一例としては、センサユニット100の発信部160と同様に、発振回路161と変調回路162、高周波増幅回路163から構成を挙げることができる。これにより、アンテナ211から2.45GHzの電磁波が輻射される。尚、発信部212から出力される高周波電力は、モニタ装置200の電磁波輻射用のアンテナ211からセンサユニット100に対して電気エネルギーを供給できる程度の値に設定されている。
受波ユニット220は、2.45GHz帯の所定周波数(上記第2周波数)の電磁波を受波するためのアンテナ221と検波部222とから構成され、制御部230からの指示に基づいて、アンテナ221によって受波した上記第2周波数の電磁波を検波し、検波して得られた信号をディジタル信号に変換して演算部250に出力する。検波部222の一例としては、センサユニット100の検波部150と同様の回路が挙げられる。
制御部230は、スタビリティ制御ユニット700から電気エネルギーが供給されて動作を開始すると、発信部212を駆動して所定時間t3の間だけ電磁波を輻射させ、その後、所定時間t4の間、検波部222を駆動し、検波部222から演算部240にディジタル信号を出力させる。演算部240は、このディジタル信号に基づいて上記加速度を算出してスタビリティ制御ユニット700に出力する。この後、制御部230は、上記と同様の処理を繰り返す。
尚、本実施形態では、モニタ装置200における上記輻射時間t3を0.15ms、上記受波時間t4を0.30msにそれぞれ設定している。本実施形態では、時間t3だけ輻射ユニット210から電磁波を輻射することにより、センサユニット100を駆動するのに十分な電気エネルギーとして3V以上の電圧を蓄電することができる。
スタビリティ制御ユニット700には、モニタ装置200から得られる上記X,Y,Z軸方向の加速度とタイヤ2の歪み量との関係を表す歪み特性情報が予め実験などの実測によって求められて記憶されている。さらに、スタビリティ制御ユニット700は、加速度の検知結果と歪み特性情報とに基づいて、各タイヤ2の歪み量を推定し、この推定したタイヤ2の歪み量に基づいてサブスロットルアクチュエータ412を駆動すると共に圧力制御弁630を制御し、ブレーキ駆動用アクチュエータ640を駆動する。
従って、前述した車両駆動制御システムによれば、車両が走行している際に、車両の4隅のそれぞれに発生する互いに直行するX,Y,Z軸方向の加速度を検出することができ、さらに、Z軸方向の加速度からタイヤ2のグリップや浮き上がりを推定することが可能であるので、車両走行時に生ずるタイヤ2の歪み量や車体の横滑り状態、タイヤ2の空転状態、等を推定することができ、これらに基づいて安定して走行できるように前述した各アクチュエータを制御することができる。
また、センサユニット100をタイヤ2ではなく車体に装着しているので、種類のことなるタイヤ2に交換し、タイヤ2と路面との間の摩擦力が変わっても高精度な制御が可能になる。さらに、4WD車などタイヤ2毎に個別に駆動制御する車両であっても高精度な制御を行うことができる。
前述したように、本実施形態では、センサユニット100はモニタ装置200から輻射された電磁波を受波して電気エネルギーを得たときに検知結果を送信するようにしたので、検波部150を設けなくとも上記効果を得ることができる。また、センサユニット100に検波部150を備えた構成で、モニタ装置200から自己の識別情報を受信したときにセンサユニット100から検知結果を送信するようにプログラム等を設定することによって、外部からの不要なノイズによって検知結果を送信することがなく、これにより不要な電磁波の輻射を防止することができる。
また、本実施形態では、前記第1及び第2周波数の双方を2.45GHzとしたが、これに限定されることはなく、前述したように1GHz以上の周波数であればタイヤや車体の金属による電磁波の反射や遮断などの影響を極めて低減して、高精度にセンサユニット100による検知データを得ることができ、これらの第1及び第2周波数が異なる周波数であっても良い。これら第1及び第2周波数は設計時に適宜設定することが好ましい。
尚、本発明の目的の為には車両1の4隅のそれぞれに発生する互いに直行するX,Y,Z軸方向の加速度を検出することが最も好ましいが、各センサユニット100の一部或いは全てを車両の4隅以外の場所に設けても、センサユニットの数が4つ以上は言うまでもなく4つ未満であっても、各アクチュエータを制御することは可能である。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図17は本発明の第2実施形態における車両へのセンサユニットの配置を示す外観図、図18は本発明の第2実施形態における車両へのセンサユニットの配置を示す平面図、図19は本発明の第2実施形態における車両駆動制御システムを示す構成図、図20は本発明の第2実施形態におけるモニタ装置とセンサユニットとの通信を説明する図である。
図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表しその説明を省略する。また、第2実施形態と第1実施形態との相違点は、第2実施形態では車両1の中央部にもセンサユニット100Aを設け、スタビリティ制御ユニット700はセンサユニット100Aによって検出した加速度も考慮して各アクチュエータを制御するようにしたことである。
センサユニット100Aは、第1実施形態のセンサユニット100と同様の構成を有するものであり、図18に示すように車両1の中心点FPよりも距離L1だけ後方に配置されている。この様に、中心点FPからずらした位置にセンサユニット100Aを設けることにより、車両1の中心位置の変化を高精度で検出することができる。尚、距離L1は車種によって適宜設定することが好ましい。
上記構成によれば1つのモニタ装置200によって車両の中央部に配置されたセンサユニット100Aによって検出された加速度も考慮して、スタビリティ制御ユニット700により各アクチュエータが駆動制御されるので、さらに高精度な制御を行うことができ、車両走行時の安定性をさらに高めることができる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図21は本発明の第3実施形態における車両駆動制御システムを示す構成図、図22は本発明の第3実施形態におけるセンサユニットの電気系回路を示す構成図、図23は本発明の第3実施形態におけるモニタ装置とセンサユニットとの通信を説明する図である。
図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表しその説明を省略する。また、第3実施形態と第1実施形態との相違点は、第3実施形態ではモニタ装置200Bと各センサユニット100Bとをケーブルによって接続し、電気エネルギーの供給及び検知結果を含むディジタル情報の送信を、ケーブルを用いて行うようにしたことである。
センサユニット100Bは、アンテナに誘起した高周波電流からではなくモニタ装置200Bからケーブルを介して送られる電気エネルギーによって動作するためアンテナ、整流回路が不要となる。また、アンテナから輻射する電磁波ではなくケーブルを介してディジタル情報を送信するため発信部が不要となると共に、CPU141が生成したディジタル情報をそのまま送信するためD/A変換回路も不要となる。
さらに、モニタ装置200Bは電磁波によって電気エネルギーを供給していた輻射部が不要となり、ケーブル介して各センサユニット100Bと接続する。尚、本実施形態ではモニタ装置200Bから各センサユニット100Bに電気エネルギーを送っていいるが、モニタ装置200Bに限定されずケーブルを介して接続される他の装置であってもよい。
この様に、電気エネルギーの供給及びディジタル情報の送信をケーブルを用いて行うことによって、より簡単な構成・動作で第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図24は本発明の第4実施形態におけるセンサユニットの装着状態を説明する図、図25は本発明の第4実施形態におけるセンサユニットの他の装着状態を説明する図、図26は本発明の第4実施形態におけるセンサユニットが検出するX,Y,Z軸方向の加速度に関して説明する図、図27は本発明の第4実施形態における車両駆動制御システムを示す構成図である。
図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表しその説明を省略する。また、第4実施形態と第1実施形態との相違点は、第4実施形態では車輪を装着するために車体側に備わる回転体に各センサユニット100Cを設け、スタビリティ制御ユニット700はセンサユニット100Cによって検出した加速度によって各アクチュエータを制御するようにしたことである。
センサユニット100Cは、第1実施形態のセンサユニット100と同様の構成を有するものであり、タイヤ2と共に回転するブレーキディスク530の所定位置に固定されている。
尚、本実施形態ではセンサユニット100Cをブレーキディスク530に固定したが、これに限定されることはなく、回転体であれば車軸3やローター(図示せず)等に固定してもよい。例えば図25に示すように、リム306に固定しても良い。図において、タイヤ2は例えば周知のチューブレスラジアルタイヤであり、タイヤ本体305とリム306及びホイール(図示せず)から構成され、タイヤ本体305は周知のキャップトレッド301、アンダートレッド302、ベルト303A,303B、カーカス304等から構成されている。
ここで、センサユニット100Cは、図26に示すようにタイヤ2の回転方向にX軸が対応し、回転軸方向にY軸が対応し、回転軸に直行する方向にZ軸が対応するように設けられ、タイヤ2が回転して車両が走行している際に、タイヤ2の回転に伴って発生する互いに直行するX,Y,Z軸方向の加速度を検出することができる。
また、後述するように、X軸方向の加速度から車輪の回転数を求めることができるので、センサユニット100Cにおいて単位時間あたりの車輪の回転数を算出してディジタル情報に含めて送信することにより、回転数センサが不要となる。
次に上記構成よりなるシステムの動作を図28乃至図37を参照して説明する。図28乃至図30はZ軸方向の加速度の実測結果、図31乃至図33はX軸方向の加速度の実測結果、図34及び図35はY軸方向の加速度の実測結果、図36はブレーキをかけたときのX軸方向の加速度の実測結果、図37はブレーキをかけたときのZ軸方向の加速度の実測結果をそれぞれ表している。
図28乃至図30において、図28は時速2.5kmでの走行時のZ軸方向の加速度の実測値、図29は時速20kmでの走行時のZ軸方向の加速度の実測値、図30は時速40kmでの走行時のZ軸方向の加速度の実測値である。このように、走行速度が増すにつれて車輪の遠心力が増加するので、Z軸方向の加速度も増加する。従って、Z軸方向の加速度から走行速度を求めることが可能である。尚、図中において、実測値がサイン波形状になるのは重力加速度の影響を受けているためである。
図31乃至図33において、図31は時速2.5kmでの走行時のX軸方向の加速度の実測値、図32は時速20kmでの走行時のX軸方向の加速度の実測値、図33は時速40kmでの走行時のX軸方向の加速度の実測値である。このように、走行速度が増すにつれて車輪の回転数が増加するので、X軸方向の加速度が変化する周期が短くなる。従って、X軸方向の加速度から車輪の回転数を求めることが可能である。尚、図中において、実測値がサイン波形状になるのは上記と同様に重力加速度の影響を受けているためである。
図34は走行時にハンドルを右に切ったときのY軸方向の加速度の実測値、図35は走行時にハンドルを左に切ったときのY軸方向の加速度の実測値である。このようにハンドルを切って車輪を左右に振ったときY軸方向の加速度が顕著に現れる。また、車体が横滑りしたときにも同様にY軸方向の加速度が発生することはいうまでもない。尚、上記Y軸方向の加速度のそれぞれの実測値において逆方向の加速度が生じるのは、運転者が無意識のうちに逆方向にハンドルを少し切ってしまうためである。
また、図36及び図37に示すように、ブレーキをかけたとき(ブレーキON時:ブレーキペダルを踏み込んだ時)から車輪の回転が停止するまでの時間が約0.2秒であることも正確に検出することができた。
従って上記構成によれば、車輪等の回転によって発生する加速度を検出することにより、この加速度によって生ずるタイヤ2の歪み量や車体の横滑り状態、タイヤの空転状態、等を推定することができ、第1実施形態と同様、これらに基づいて安定して走行できるように前述した各アクチュエータを制御することができる。
また、センサユニット100Cを車輪ではなく車輪を装着するために車体側に備わる回転体に装着しているので、車両に装着されているタイヤ2の種類が異なり、タイヤ2と路面との間の摩擦力が変わっても高精度な制御が可能になる。さらに、4WD車などタイヤ2毎に個別に駆動制御する車両であっても高精度な制御を行うことができる。
尚、上記各実施形態の構成を組み合わせたり或いは一部の構成部分を入れ替えたりしたシステムを構成してもよい。
また、上記各実施形態では4輪車両の車両駆動制御システムを一例として説明したが、4輪以外の車両、例えば2輪車や6輪以上の車両であっても同様の効果を得ることができることは言うまでもないことである。
また、スタビリティ制御ユニット700が駆動制御するアクチュエータとして電動パワーステアリングのアクチュエータや電動サスペンションのアクチュエータの駆動制御を行うようにしても良い。
また、車両の走行速度をセンサによって検出し、この検出結果をスタビリティ制御ユニット700に取り込み、走行速度をも考慮して各アクチュエータを制御するようにしても良い。
尚、本発明の構成は前述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
1…車両、2…タイヤ、3…車軸、4…ハブキャリア、5…ロワーアーム、6…懸架装置、61…アッパーマウント部、62…スプリングアッパーシート、63…コイルばね、64…ゴム部材、65…油圧式のダンパ、66…ダンパ連結部材、100,100A,100B,100C…センサユニット、110…アンテナ、120…アンテナ切替器、130…整流回路、131,132…ダイオード、133…コンデンサ、134…抵抗器、140…中央処理部、141…CPU、142…D/A変換回路、143…記憶部、150…検波部、151…ダイオード、152…A/D変換回路、160…発信部、161…発振回路、162…変調回路、163…高周波増幅回路、170,170B…センサ部、171…加速度センサ、172…A/D変換回路、173…圧力センサ、174…A/D変換回路、200,200B…モニタ装置、210…輻射ユニット、211…アンテナ、212…発信部、220…受波ユニット、221…アンテナ、222…検波部、230…制御部、240…演算部、250…操作部、301…キャップトレッド、302…アンダートレッド、303A,303B…ベルト、304…カーカス、305…タイヤ本体、306…リム、410…エンジン、411…アクセルペダル、412…サブスロットルアクチュエータ、413…メインスロットルポジションセンサ、414…サブスロットルポジションセンサ、421…ハンドル、422…舵角センサ、510,520…回転数センサ、530…ブレーキディスク、610…ブレーキペダル、620…マスターシリンダ、630…圧力制御弁、640…ブレーキ駆動用アクチュエータ、700…スタビリティ制御ユニット、10…半導体加速度センサ、11…台座、12…シリコン基板、13…ダイアフラム、13a〜13d…ダイアフラム片、14…厚膜部、15…重錘、18A,18B…支持体、181…外枠部、182…支柱、183…梁部、184…突起部、184a…突起部先端、31A〜31C…電圧検出器、32A〜32C…直流電源、Rx1〜Rx4,Ry1〜Ry4,Rz1〜Rz4…ピエゾ抵抗体(拡散抵抗体)。