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JP2005053471A - 車両の操舵装置 - Google Patents

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JP2005053471A JP2004163338A JP2004163338A JP2005053471A JP 2005053471 A JP2005053471 A JP 2005053471A JP 2004163338 A JP2004163338 A JP 2004163338A JP 2004163338 A JP2004163338 A JP 2004163338A JP 2005053471 A JP2005053471 A JP 2005053471A
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一夫 近藤
Yoshihiro Kawabe
喜裕 川辺
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Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

【課題】車輪が転舵するときに、該車輪がホイールハウスと干渉することを回避し、最大転舵角を大きく取る。
【解決手段】車輪1を回転自在に支持するナックル2は、キングピン軸が通過するエクステンションリンク6の後端7に取り付けられる。前後方向に延在するエクステンションリンク6の前端8はコントロールロッド9を介してアーム12と連結する。エクステンションリンク6は中央部10を中心に回動自在に支持される。アーム12はタイロット5を介してナックル2に設けたナックルアーム3の先端と連結する。アーム12が回動すると、コントロールロッド9を介してエクステンションリンク6の前端8を引き込み、テコの作用で後端7に取り付けられたナックル2を車幅外方へ押し出す。これと同時にアーム12はタイロッド5を介してナックル2を転舵する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車輪を転舵させる操舵装置につき、特に、ホイールハウスを拡幅することなく最大転舵角を大きくする技術に関するものである。
車輪がキングピン軸を中心に転舵する場合、一般にその車輪の前部あるいは後部のいずれか一方が車幅内方に移動するとともに、他方が車幅外方に移動するという構成になっている。このため、転舵角を大きくすると、車幅内方に移動した車輪の一部がホイールハウスと干渉する。
この干渉を回避するため、ホイールハウスを車幅内方に拡幅すれば、車輪の最大転舵角を大きく取ることができるようになるものの、今度はエンジンルームなどのためのスペースを犠牲にすることとなり、大型のエンジンやトランスミッションなどを搭載することが不可能になる。ところで、車輪の最大転舵角を大きく取ることができる車両の操舵装置としては、他にも、例えば特許文献1に記載のごときものが知られている。
特許文献1に記載の車両の操舵装置は、ナックルとラックピニオン式伝達機構11とを連節するリンクロッドの中間部に伸縮連結装置を挿置し、車両の旋回半径内側にある車輪が最大転舵角に達した場合であっても、旋回半径外側にある車輪の最大転舵角を増やすようにしたものである。
特開平6−219314号公報
しかし、特許文献1に記載の車両の操舵装置においても、旋回半径内側にある車輪の転舵角を増加させることができないため、車輪の最大転舵角が制約を受けるという問題を根本的に解決したこととはならない。
本発明は、ホイールハウスを車幅内方に拡幅することや、エンジンルームなどのスペースを犠牲にすることなく、車輪の最大転舵角を大きく取ることができる車両の操舵装置を提案することを目的とする。
この目的のため本発明による車両の操舵装置は、請求項1に記載のごとく、
車体の側面に、車輪と、該車輪を回転自在に支持するナックルとを具え、該ナックルを回動することにより前記車輪の転舵を行う請求項1に記載の車両の操舵装置において、
操舵時には、前記ナックルを前記車体側面から離れるよう車幅方向外方へ押し出すことにより、前記車輪を転舵することを特徴としたものである。
かかる本発明の構成によれば、転舵時にナックルのキングピン軸が車幅外方に移動するため、車輪がホイールハウスから離れる。したがって、車輪を大きく転舵させて、車輪の前方あるいは後方が車幅内方に大きく移動しても、車輪がホイールハウスと干渉することを回避することができ、車輪の最大転舵角を大きくすることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例になる操舵装置を、ストラット型フロントサスペンションおよびラックピニオン式前輪操舵装置と組み合わせて用いた状態を示す平面図である。
ナックル2は、転舵輪1を車幅方向外側で回転自在に支持する。また、ナックル2は前端部2fで前方に向けて突出したナックルアーム3を具え、該ナックルアーム3の先端に設けられた連結点4は、上下方向に延在する中心軸を有するピンジョイント4pを介してタイロッド5の車幅方向外側端と回動可能に連結する。
略上下方向に延在する図示しないストラット部材にはナックル2の上端を取り付ける。また、ナックル2よりも車幅内方に位置し、車体前後方向に延在するエクステンションリンク6の後端7には、上下方向に延在するキングピン軸を形成するピンジョイント7pを介して、ナックル2の下端を取り付け、これによりナックル2を転舵可能に支持する。エクステンションリンク6の前端8は、ボールジョイント8bを介してコントロールロッド9の車幅方向外側端と回動可能に連結する。エクステンションリンク6は、後端7と前端8の間に位置する取付点10で、ボールジョイント10bを介して、ストラット型サスペンションのロアリンク11の遊端に回動可能に支持される。なお、取付点10でエクステンションリンク6を折り曲げて、くの字の平面形状とすることで、後端7は、非転蛇時に前端8と取付点10を通過する直線よりも車幅方向外側になるようにする。また、図2に示すエクステンションリンク6の平面図のように、取付点10から後端7までの距離aが、取付点10から前端8までの距離bよりも大きくなるように、エクステンションリンク6を形成する。
エクステンションリンク6よりも車幅方向内側にあるアーム12は、その後端で、上下方向に延在する中心軸を有するピンジョイント13pを介して、図示せざる車体側部材に回動可能に支持される。またアーム12後端部は、ピンジョイント13pよりなる取付点13からみて車幅方向外側にある連結点14で、ボールジョイント14bを介してコントロールロッド9の車幅方向内側端と回動可能に連結する。
また、アーム12の前端には、2箇所の連結点を設ける。これらのうち車幅方向に関して外側の連結点15は、上下方向に延在する中心軸を有するピンジョイント15pを介して、タイロッド5の車幅方向内側端と回動可能に連結する。一方、車幅方向に関して内側の連結点16は、ボールジョイント16bを介して、略車幅方向に延在するリンクロッド17の車幅方向外側端と回動可能に連結する。
リンクロッド17の車幅方向内側端18は、車幅方向に延在するステアリングラック19の左端と、ボールジョイント18bを介して回動可能に連結する。一方、ステアリングラック19の図示せざる右端は、図1とは左右対称に構成した右輪用転舵装置のリンクロッド17と連結する。ステアリングラック19は、ステアリングシャフト21の一端と結合したピニオン20と噛合し、ステアリングシャフト21の他端はステアリングホイール22と結合する。運転者がステアリングホイール22を操舵すると、ステアリングホイール22の回転運動は、ステアリングラック19で車幅方向の直線運動に変換される。
図3は、同実施例の操舵装置が車輪1を左折方向に転舵した状態を示す平面図である。運転者がステアリングホイール22を左折方向に操舵すると、ラックピニオン式前輪操舵装置の作用によってステアリングラック19が車幅方向左側に移動する。ステアリングラック19とリンクロッド17を介して連結するアーム12は、取付点13を中心に左方向に回転する。アーム12とタイロッド5およびナックルアーム3を介して連結するナックル2は、ピンジョイント7pを中心に左方向に転舵する。これより、ナックル2に一体支持される車輪1は左折方向に転舵する。
この際、取付点13を支点に左回転するアーム12は、コントロールロッド9を介して、エクステンションリンク6の前端8を車幅方向内方へ引き込む。前端8が車幅方向内方へ移動すると、取付点10を挟んで位置する後端7が、テコの作用で車幅方向外方へ移動しつつ、ナックル2および車輪1を車幅方向外方へ押し出す。
以上から、車輪1およびナックル2は、左転舵の際、車体の側面から離れるよう車幅方向外方へ押し出される。図4は、この様子を、エクステンションリンク6と、コントロールロッド9とアーム12の動きの前後について比較して示す平面図である。
図5は、同実施例の操舵装置が車輪1を右折方向に転舵した状態を示す平面図である。運転者がステアリングホイール22を右折方向に操舵すると、ラックピニオン式前輪操舵装置の作用によってステアリングラック19が車幅方向右側に移動する。ステアリングラック19と、リンクロッド17を介して連結するアーム12は、右方向に回転する。アーム12とタイロッド5およびナックルアーム3を介して連節するナックル2は、右方向に転舵する。これより、ナックル2に一体支持される車輪1は右折方向に転舵する。
この際、取付点13を支点に右回転するアーム12は、コントロールロッド9を介して、エクステンションリンク6の前端8を車幅方向内方へ引き込む。前端8が車幅方向内方へ移動すると、取付点10を挟んで対向する後端7が、テコの作用で車幅方向外方へ移動しつつ、ナックル2および車輪1を車幅方向外方へ押し出す。
以上から、車輪1およびナックル2は、右転舵の際にも、車体の側面から離れるよう車幅方向外方へ押し出される。図6は、この様子を、エクステンションリンク6と、コントロールロッド9とアーム12の動きの前後について比較して示す平面図である。
運転者がステアリングホイール22を切り戻す操作を行うと、車輪1は上述した動作と反対の手順で動作し、車幅内方へ移動するとともに、転舵角が減少する。運転者が車両の旋回走行を終了させるため、ステアリングホイール22を完全に切り戻すと、図3〜6に示す転舵した状態から、操舵装置の各部材である車輪1と、ナックル2と、タイロッド5と、コントロールロッド9と、アーム12は、図1に示した直進状態の姿勢に復帰する。
このように本実施例の操舵装置によれば、操舵時には、車体の側面にあって車輪1と隣接する図示せざるホイールハウスから車幅方向外方へ離れるよう車輪1を押し出すとともに、車輪1を左折方向または右折方向に転舵するため、転舵角を大きくしても車輪1が、図示せざるホイールハウスと干渉することを回避できる。
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図7は本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図であり、上述のアーム12をステアリングギアおよびピットマンアームを介してステアリングシャフトと連結して用いるものである。
上述の実施例と共通する部分については、同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分について新たに符号を付して説明すると、ステアリングシャフト21の前端は、ギアボックス27と機械的に連結し、後端はステアリングホイール22と結合する。また、ギアボックス27はピットマンアーム28と機械的に連結する。ピットマンアーム28は、前記実施例におけるアーム12と共通する形状および役割を果たし、連結点16で、車幅方向右側へ延在するステアリングリンケージ29の左端とボールジョイント16bを介して連結する。一方、ステアリングリンケージ29の図示せざる右端は、左右対称に構成した右輪用転舵装置のアーム12と連結する。
運転者がステアリングホイール22を左折あるいは右折方向に操舵すると、ステアリングシャフト21の回転運動により、ピットマンアーム28が回動する。ピットマンアーム28が、図7中、左あるいは右方向に回動すると、上記で説明したのと同様に、ピットマンアーム28とタイロッド5およびナックル2を介して連結する車輪1は、左あるいは右転舵すると同時に、コントロールロッド9およびエクステンションリンク6を介して車幅外方へ押し出される。
このため、図示せざるホイールハウスと干渉することなく、車輪1の転舵角を大きくすることができる。
なお、本実施例は、ギアボックス27、ピットマンアーム28、ステアリングリンケージ29を用いて、操舵する構成であるが、図8に示すように、代わりにステアリングバイワイヤ機構を用いても同様の効果を得ることができる。
図8に示す本発明のさらに他の実施例について、上述の実施例と共通する部分については、同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分について新たに符号を付して説明すると、舵角センサ31はステアリングホイール22の操舵角を検知し、ボールジョイント18bを介してリンクロッド17と連結するアクチュエータ32に、検知した操舵角を送信する。アクチュエータ32は受信した操舵角の信号に基づき、リンクロッド17を車幅方向右側あるいは左側に進退動させる。これより、アーム12は左あるいは右方向に回動し、上記で説明したのと同様に、タイロッド5およびナックル2を介して連結する車輪1は、右あるいは左転舵すると同時に、コントロールロッド9およびエクステンションリンク6を介して車幅外方へ押し出される。
図9は、上述した各実施例の操舵装置を模式的に示す線図的斜視図であり、上述した各実施例の操舵装置はいずれも、ナックル2を車幅方向に移動させるエクステンションリンク6と、エクステンションリンク6を回動させるコントロールロッド9と、ナックル2を上下方向揺動可能に懸架するロアリンク11とを、各車輪1につきそれぞれ1個ずつ具え、ストラット型フロントサスペンションと組み合わせたものである。
この他にも、本発明になる操舵装置を、後述および図18に示すダブルウィッシュボーン型サスペンションと組み合わせて用いることができる。
次に、本発明の別の実施例について説明する。
図10は本発明の別の実施例になる操舵装置を、ストラット型フロントサスペンションおよびラックピニオン式前輪操舵装置と組み合わせて用いた状態を示す平面図である。基本構造は上述の図1,3,5で示した実施例と同様であるが、ナックルアーム43がナックル2の後端2rから後方へ突出し、かつ、エクステンションリンク46およびアーム42が前後対称(裏返した状態)となるよう車体側部材に取り付けられていることを特徴とする。
即ち、エクステンションリンクの前端7は、ナックル2を転舵可能に支持し、後端8はコントロールロッド9と回動可能に連結する。アーム42は、その前端13で、上下方向に延在する中心軸を有するピンジョイント13pを介して、図示せざる車体側部材によって回動可能に支持される。このピンジョイント13pよりなる取付点13からみて車幅方向外側にある端部14は、ボールジョイント14bを介してコントロールロッド9の車幅方向内側端と回動可能に連結する。
また、アーム42の後端には、2箇所の連結点15,16を設ける。これらのうち車幅方向に関して外側の連結点15は、上下方向の中心軸を有するピンジョイント15pを介して、タイロッド5の車幅方向内側端と回動可能に連結する。一方、車幅方向に関して内側の連結点16は、ボールジョイント16bを介して、略車幅方向に延在するリンクロッド17の車幅方向外側端と回動可能に連結する。
運転者がステアリングホイール22を左あるいは右方向に操舵すると、このステアリングホイール22とステアリングシャフト21を介して結合するピニオン40が、一体に回転する。ピニオン40はステアリングラック19と噛合し、ピニオン40が回転すると、ステアリングラック19を車幅方向右方あるいは左方へ移動させる。ステアリングラック19と連節するアーム42は、取付点13を支点に右あるいは左方向に回動する。そして、上記で説明したのと同様に、アーム42とタイロッド5およびナックルアーム43を介して連節する車輪1は、左あるいは右転舵すると同時に、コントロールロッド9およびエクステンションリンク46を介して車幅外方へ押し出される。
本実施例の操舵装置においても、前記実施例と同様に、車輪1は、右あるいは左転舵しつつ、車幅外方へ押し出される。この結果、大舵角時に車輪1の前部あるいは後部のいずれか一方が車幅内方に大きく移動しても、図示せざるホイールハウスと干渉するのを回避することができ、車両の最小回転半径を小さくすることが可能になる。
なお、以上に説明した実施例では、ナックルアーム43の突出方向が後方であれば、アーム42も取付点13から後方へ延在するが、アーム42を取付点13から前方へ向けて配置して(つまり、アーム12を用いて)も、連結点14,15および取付点13の位置関係を適切とすることで、車輪1を、右あるいは左転舵しつつ、車幅外方へ押し出すことが可能である。
次に、本発明の他の実施例になる操舵装置について説明する。
図11は本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。本実施例は、車両前部に搭載されたエンジンおよびトランスミッション23により、ステアリングラック19と、リンクロッド17と、アーム12とが上述の実施例よりも前方へ配置されたものである。つまり、ナックルアーム3の先端の連結点4よりもステアリングラック19とリンクロッド17とタイロッド5のアーム12側の連結点15が、車両前方に配置されている。
このように、アーム12とタイロッド5の連結点15と、アーム12とリンクロッド17との連結点16を、図1に示した操舵装置のアーム12の寸法を変えることなく単に前方へ移設した場合、車両前後方向に延在するナックルアーム3と、タイロッド5との交差角αが、非転舵時(直進時)では図11に示すように鈍角となる。交差角αが鈍角の場合、旋回方向内輪の転舵角が旋回方向外輪の転舵角よりも大きくなるアッカーマン特性を得ることができず、旋回性能が悪化する。
旋回性能の悪化を回避するためには、図12に平面図で示すような実施例が考えられる。図1に示した操舵装置と対比すると本実施例では、ステアリングラック19を前方へ移設した場合、ナックルアーム3とタイロッド5との連結点4より、タイロッド5とアーム12との連結点15を車両前後方向後方側に配置することにより、交差角αを鋭角にすることができる。しかしナックルアーム3とタイロッド5との連結点4より、タイロッド5とアーム12との連結点15を車両前後方向後方側に配置することにより、アーム12とリンクロッド17との連結点16は、エンジンおよびトランスミッション23の前端部より車両後方側に配置されることとなる。このとき、図12に示すように、ステアリングラック19とエンジンおよびトランスミッション23とが隣接し、かつ、エンジンおよびトランスミッション23の左端部より、ステアリングラック19の左端部が車両内側に配置されていると、リンクロッド17とエンジンおよびトランスミッション23間の距離kを充分確保することができず、ステアリングラック19が車両幅方向右側へ移動すると、リンクロッド17がエンジンおよびトランスミッション23と干渉する恐れがあり、操舵角を大きくすることができない。
そこで、図13に平面図で示すような実施例が考えられる。図1に示した操舵装置と対比すると本実施例では、ステアリングラック19を前方へ移設し、アーム12自身を移設することなくアーム12のリンクロッド17とアーム12との連結点16をタイロッド5とアーム12との連結点15より前方へ距離gだけ大きく突出させて、アーム12の連結点16を、エンジンおよびトランスミッション23よりも前方へ移設したものである。
本実施例によれば、交差角αを鋭角にすることが可能となる。したがって、エンジンおよびトランスミッション23を車両前部に搭載する前輪駆動車や四輪駆動車においても、アッカーマン特性を得て、旋回走行時には車輪1の横滑りを防止してスムーズな旋回を実現することができる。また、ステアリングラック19が車幅方向に移動する操舵時において、リンクロッド17がエンジンおよびトランスミッション23と干渉することもないので操舵角を大きくすることもできる。
しかし本実施例の場合、取付点13から連結点16までの距離が、取付点13から連結点15までの距離と比べて過大となり、連結点15,16同士が距離gだけ大きく離れてしまう。
このため操舵時には、テコの原理より、ステアリングラック19を従来の操舵装置よりも大きく移動させねばならず、今度はステアリングラック19の全体長が不足して車輪1を大転舵させることができない。
そこで、図14に平面図で示すような実施例が考えられる。図1に示した操舵装置と対比すると本実施例では、ステアリングラック19を前方へ移設するとともに、ステアリングラック19の両端を車幅外方へ延長し、両端の連結点18を非転舵時ではアーム12よりも車幅外方となるように設け、連結部材であるリンクロッド17を介してステアリングラック19の先端とアーム12の先端とを連結する。またアーム12の前部をやや前方へ突出させて、連結点16を連結点15よりもやや前方へ移設したものである。
本実施例によれば、ステアリングラック19の両端をアーム12よりも車幅外方となるよう延在させ、これら両端に設けた連結点18とアーム12の連結点16とをリンクロッド17を介して連結したことから、
リンクロッド17がエンジンおよびトランスミッション23と干渉することなく、かつ、連結点15,16同士が離れることなく、交差角αが鋭角となるようアーム12を設けることができる。したがって、上記干渉の問題およびステアリングラック19の長さの問題を解消して、車両前部に搭載されたエンジンおよびトランスミッション23によりステアリングラック19がナックルアーム3とタイロッド5との連結点4より車両前後方向前側へ配置された場合においても、アッカーマン特性を得て、旋回走行時には車輪1の横滑りを防止してスムーズな旋回を実現することができる。
図15は、上述および図14に示した実施例になる操舵装置を、ストラット型フロントサスペンションと組み合わせて用いた状態を示す平面図である。また図16は、同操舵装置が左折方向に転舵した状態を示す平面図であり、図17は、同操舵装置が右折方向に転舵した状態を示す平面図である。
図15〜17に示すように、本実施例では、操舵装置の各部材がエンジンおよびトランスミッション23と干渉することなく、車輪1を車幅外方へ押し出すとともに、大転舵させることができる。
上述した各実施例の操舵装置はいずれも、ストラット型フロントサスペンションと組み合わせて用いるものであるが、本発明の操舵装置は、上述した各実施例に限定されるものではない。
すなわち、本発明になる操舵装置は、図18に示すように、ダブルウィッシュボーン型サスペンションと組み合わせることが可能である。本実施例の操舵装置も、基本構造は上述の各実施例と同様であるため、共通する部分については、同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分について新たに符号を付して説明すると、ロアリンク11の上方には、図示しない車輪を上下方向揺動可能に懸架するアッパーリンク51を設ける。アッパーリンク51もロアリンク11と同様に、車幅方向内側端で図示しない車体側部材に枢支され、車幅方向外側端でエクステンションリンク56と連結する。エクステンションリンク56もエクステンションリンク6と同様に、前端でコントロールロッド59の車幅方向外側端と連結し、後端でナックル2の上端と連結する。
アーム12の取付点13の近傍には、上下方向に延在する腕部52,53を設ける。下方にむけて突出する腕部52の下端14には、ボールジョイント14bを介してコントロールロッド9の車幅方向内側端と連結する。同様に、上方にむけて突出する腕部53の上端54には、ボールジョイント54bを介してコントロールロッド59の車幅方向内側端と連結する。
本実施例の操舵装置も図1,9に示した操舵装置と同様に、操舵時にはアーム12が、取付点13を中心に回動し、アーム12とタイロッド5およびナックルアーム3を介して連結するナックル2が転舵する。また、アーム12は、腕部52,53およびコントロールロッド9,59を介して、エクステンションリンク6,56の前端を車幅方向内方へ引き込む。前端が車幅方向内方へ移動すると、エクステンションリンク6,56の後端がテコの作用で車幅方向外方へ移動しつつ、ナックル2を車幅方向外方へ押し出す。
次に、本発明の他の実施例になる操舵装置について説明する。
図19は本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。本実施例の操舵装置も、基本構造は上述の各実施例と同様であるため、共通する部分については、同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分について新たに符号を付して説明すると、アーム12をロアリンク11に取り付けることを特徴とする。
ロアリンク11の基端は軸線Oを形成し、ロアリンク11は軸線Oを中心として上下方向に揺動する。このため、アーム12を軸線Oに沿って配置し、非転舵時(直進時)のアーム12の姿勢において、アーム12に設けた連結点15,16が軸線Oと略一致するようそれぞれ配置する。
ここで、アーム12を軸線Oの近傍に配置する理由について説明すると、車輪1がバウンドリバウンドすると、ロアリンク11も上下方向に揺動するため、ロアリンク11に取り付けたアーム12も、軸線Oを中心に揺動する。
この際、アーム12と連結するリンクロッド17が車幅内方へ引き込まれたり、車幅外方へ押し出されたりすると、これと機械的に連節するステアリングホイールが連れ回されて、運転者に負担をかけるという問題が生じる。
あるいは車輪1がバウンドリバウンドする際、アーム12が上下方向に揺動するロアリンク11に対して取付点13を中心に相対回転し、タイロッド5やコントロールロッド9が車幅内方へ引き込まれたり、車幅外方へ押し出されたりして、車輪1が転舵することとなり、走行方向が不安定になるという問題が生じる。
アーム12を軸線Oの近傍に配置し、非転舵時のアーム12の姿勢において、リンクロッドとの連結点16が軸線Oと略一致させることにより、このような問題を回避して 不整路等での直進性を確保することができる。
図20は、同操舵装置が左折方向に転舵した状態を示す平面図であり、図21は、同操舵装置が右折方向に転舵した状態を示す平面図である。本実施例においても、上述した各実施例と同様に、操舵時には車輪1が車幅方向外方へ押し出されるとともに転舵する。
さらに、本実施例では、アーム12を車体側部材に取り付けた場合と比べて、操舵安定性を向上させることができる。
この点について説明すると、旋回走行中等、車輪1に車幅方向の横力Fが作用した場合、図22に示すように本実施例では、エクステンションリンク6と、コントロールロッド9と、アーム12と、ロアリング11とが1つの閉じた応力伝達経路を構成するため、車体25およびロアリンク11間の取付箇所24a、24bに作用する力は、合わせて横力Fと等価の反力Fが作用する。
これに対し、アーム12を車体25に取り付けた場合、図23に示すように1つの閉じた応力伝達経路を構成せず、テコの原理にしたがって取付箇所24a,24bには2倍の反力2Fが作用する。
上述のとおり本実施例によれば、図23の構成に対し取付箇所24a,24bに作用する反力を半分にすることが可能になる。したがって、路面側からの振動伝達防止の理由から、取付箇所24a,24bは弾性ブッシュよりなるところ、この弾性ブッシュの変形を半分にすることが可能となり、操舵安定性の悪化を低減することができる。
ところで本発明になる上記実施例においては、車体側面に取り付けた図示しないホイールハウス内に、車輪1を転舵可能に設け、操舵時には、エクステンションリンク6がナックル2を図示しないホイールハウスの側面から車幅方向外方へ離れるよう押し出すとともに、タイロッド5が車輪1を転舵することから、
車輪1がホイールハウスと干渉することを回避しつつ、車輪1を大きく転舵させることが可能となり、車輪1の最大転舵角を大きくすることができる。
なお本実施例の他、図には示さなかったが、エクステンションリンク6の代わりに車幅方向に進退動移動可能な電動アクチュエータまたは油圧アクチュエータ等を用いて、車輪1を車幅外方に押し出してもよい。
また上記実施例においては、図1に示すように、車輪1より車幅内方へ、ナックル2、エクステンションリンク6、アーム12の順で略1列に設け、
車体前後方向に延在するエクステンションリンク6は、後端7でナックル2を回動可能に支持するとともに、前端8で、ボールジョイント8b,14b、コントロールロッド9を介してアーム12と連結し、両端7,8の中間部にある取付点10でサスペンションアームのロアリンク11に回動可能に支持され、
アーム12は、その取付点13からみて車幅方向外側にある連結点14で、エクステンションリンク6の前端8と連結するとともに、取付点13からみて前方にある連結点15で、ピンジョイント4p,15p、タイロッド5を介してナックルアーム3と連結したため、
アーム12が右回転すると、車輪1が右転舵しつつ、車幅外方へ押し出される。一方、アーム12が左回転すると、車輪1が左転舵しつつ、車幅外方へ押し出される。この結果、大舵角時に車輪1の前部または後部が車幅内方に大きく移動しても、図示せざるホイールハウスと干渉するのを回避することができ、車輪1の最大転舵角を大きくして、車両の最小回転半径を小さくすることできる。
あるいは、ホイールハウスの必要設計領域を少なくすることができるため、エンジンルームの容積を犠牲にすることがなく、横幅の狭い車両であっても、大型のエンジンやトランスミッション等をエンジンルームに搭載することができる。
また、エクステンションリンク6の取付点10からナックル2との連結点7までの距離aが、取付点10からコントロールロッド9との連結点8までの距離bよりも大きいため、連結点8の車幅内方への移動量が少なくても、テコの比率から連結点7を大きく車幅外方へ押し出すことができる。このため、大舵角時に車輪1の一部が車幅内方に大きく移動しても、車輪1がホイールハウスと干渉するのを確実に回避することができる。
なお、上記の押し出し効果を得るにあたっては、大きな力でコントロールロッド9を車幅内方へ引き込むことが必要であるが、取付点13から連結点14までの距離cを、取付点13から連結点16までの距離dよりも小さくすることで、コントロールロッド9を大きな力で引き込むことが可能である。また、上記の押し出し効果を得つつ、車輪1を大舵角で転舵するために、図4上、取付点13から連結点14までの距離cを、取付点13から連結点15までの距離eよりも小さくすることが望ましい。あるいは、エクステンションリンク6の前記距離a,bや、ナックルアーム3の長さを適切に選定することとする。
また上記実施例においては図12〜14に示すように、車輪1の非転舵時(直進時)におけるナックルアーム3およびタイロッド5の交差角αが鋭角となるよう、ナックル2およびタイロッド3を連結したことから、
旋回走行時には、旋回方向内輪の転舵角が旋回方向外輪の転舵角よりも大きくなるアッカーマン特性を得て、車輪1の横滑りを防止しスムーズな旋回を実現することができる。
また上記実施例においては図15〜17に示すように、車幅方向に進退動するステアリングラック19の先端18が非転舵時ではアーム12よりも車幅方向外方となるようこれを延在させ、先端18とアーム12とを、リンクロッド17を介して連節したことから、
エンジンおよびトランスミッション23を車体前部に搭載し得て、操舵装置の各部材がエンジンおよびトランスミッション23と干渉することなく、車輪1を車幅外方へ押し出すとともに、大転舵させることができる。
また上記実施例においては図22に示すように、車輪1を上下方向揺動可能に懸架するロアリンク11に、アーム12を取り付けたことから、
車輪1に車幅方向の横力Fが作用した場合には、アーム12を車体25に取り付けた場合(図23)と比べて、弾性ブッシュよりなる取付箇所24に大きな反力が作用することを防止できる。したがって、アーム12を車体25に取り付けた場合と比べて、操舵安定性を向上させることができる。
また、路面からの入力される振動を、弾性ブッシュよりなる取付箇所24で遮断し、ロードノイズが車体25に伝達することを防止して、乗り心地性能が向上する。
そして図19〜21に示すように、アーム12を、ロアリンク11の基端の軸線Oに沿って設けたことから、
ロアリングが上下に揺動する際、アーム12と連結するタイロッド5やリンクロッド17が車幅内方へ引き込まれたり、車幅外方へ押し出されたりして、車輪1が転舵したり、ステアリングホイールが連れ回されたりする不都合を回避することができる。
本発明の一実施例になる操舵装置を示す平面図である。 同操舵装置のエクステンションリンクを拡大して示す平面図である。 同操舵装置が左折方向に転舵した状態を示す平面図である。 図3に示した操舵装置の動作状態を示す作用説明図である。 同操舵装置が右折方向に転舵した状態を示す平面図である。 図5に示した操舵装置の動作状態を示す作用説明図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 同操舵装置を示す線図的斜視図である。 本発明の別の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 同操舵装置が左折方向に転舵した状態を示す平面図である。 同操舵装置が右折方向に転舵した状態を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す線図的斜視図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置を示す平面図である。 同操舵装置が左折方向に転舵した状態を示す平面図である。 同操舵装置が右折方向に転舵した状態を示す平面図である。 本発明の実施例になる操舵装置に横力が入力された場合に、各部材に作用する力を示す平面図である。 本発明の他の実施例になる操舵装置に横力が入力された場合に、各部材に作用する力を示す平面図である。
符号の説明
1 車輪
2 ナックル
3 ナックルアーム
5 タイロッド
6 エクステンションリンク
9 コントロールロッド
10 エクステンションリンク取付点
11 サスペンション装置のロアリンク
12 アーム
13 アーム取付点
17 リンクロッド
19 ステアリングラック
20 ピニオン
21 ステアリングシャフト
22 ステアリングホイール
23 エンジンおよびトランスミッション
27 ステアリングギアボックス
28 ピットマンアーム
29 ステアリングリンケージ
31 舵角センサ
32 アクチュエータ
40 ピニオン
42 アーム
43 ナックルアーム
46 エクステンションリンク
51 アッパーリンク

Claims (7)

  1. 車体の側面に、車輪と、該車輪を回転自在に支持するナックルとを具え、該ナックルを回動することにより前記車輪の転舵を行う請求項1に記載の車両の操舵装置において、
    操舵時には、前記ナックルを前記車体側面から離れるよう車幅方向外方へ押し出すことにより、前記車輪を転舵することを特徴とする車両の操舵装置。
  2. 前記ナックルと連結するタイロッドとを具え、該タイロッドの進退動により前記車輪の転舵を行う請求項1に記載の車両の操舵装置において、
    前記ナックルからみて車体側にある車体側部材に回動自在に取り付けられ、前記タイロッドと連結するアーム部材と、
    該アーム部材と連結し、前記タイロッドとともに前記車輪の転蛇を行うコントロールロッドと、
    一端が前記ナックルと連結し、他端が前記コントロールロッドを介して前記アーム部材と連結し、該両端の間に設けた車体側取付点で前記ナックルからみて車体側にある車体側部材に回動自在に取り付けたリンク部材とをさらに具え、
    操舵時には前記アーム部材が回転することにより、前記タイロッドが進退動するとともに、前記コントロールロッドが前記リンク部材を介して前記ナックルを車幅方向外方に押し出すよう構成したことを特徴とする車両の操舵装置。
  3. 請求項2に記載の車両の操舵装置において、
    前記リンク部材がナックルと連結する一端から車体側取付点までの距離を、コントロールロッドと連結する他端から車体側取付点までの距離よりも長くしたことを特徴とする車両の操舵装置。
  4. 請求項2または3に記載の車両の操舵装置において、
    前記ナックルおよび前記タイロッドの連結点から車幅方向内方へ延在する該タイロッドの非転舵時における延在方向が、前記連結点から前記車輪のアクスル軸に向けて車両前後方向に延在させた仮想直線に対し鋭角で交差するよう、前記ナックルおよび前記タイロッドを連結したことを特徴とする車両の操舵装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両の操舵装置において、
    車幅方向に延在するステアリングラックを具え、非転舵時における該ステアリングラックの先端が前記アーム部材よりも車幅方向外方となるようこれを延在させ、該先端と前記アーム部材とを連結部材を介して連節し、該ステアリングラックの車幅方向の進退動により前記アーム部材を回動するよう構成したことを特徴とする車両の操舵装置。
  6. 前記ナックルを上下方向揺動可能に懸架するサスペンションリンクを具えた請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両の操舵装置において、
    該サスペンションリンクの基端を該サスペンションよりも車体側に設けられた車体側部材に取り付け、該サスペンションリンクの遊端には前記リンク部材を回動自在に取り付け、前記アーム部材を該サスペンションリンクに回動自在に取り付けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  7. 請求項6に記載の車両の操舵装置において、前記アーム部材と前記連結部材の連結点、及び、前記アームと前記タイロッドの連結点の位置が前記基端を通って延在する前記サスペンションリンクの揺動中心の軸線に略一致するよう該連結点を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
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