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JP2004358683A - 加熱殺菌処理食品包装用フィルム - Google Patents

加熱殺菌処理食品包装用フィルム Download PDF

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JP2004358683A JP2003156455A JP2003156455A JP2004358683A JP 2004358683 A JP2004358683 A JP 2004358683A JP 2003156455 A JP2003156455 A JP 2003156455A JP 2003156455 A JP2003156455 A JP 2003156455A JP 2004358683 A JP2004358683 A JP 2004358683A
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Abstract

【課題】透明性、耐衝撃性、食品衛生性、ヒートシール性、耐熱性に優れた加熱殺菌処理食品包装用フィルムの提供。
【解決手段】メタロセン触媒を用いて重合されたMFRが1〜30g/10分、融解ピーク温度が120〜145℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体70〜95重量%と、密度が0.86〜0.90g/cm、MFRが0.5〜10g/10分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー30〜5重量%とを含有するプロピレンランダム共重合体樹脂組成物からなるA層と、アンチブロッキング剤を含有するMFRが1.0〜30g/10分、融解ピーク温度が130〜145℃のポリプロピレン樹脂組成物からなる少なくとも一層のB層を含み、A層が全フィルム厚みの50%以上であることを特徴とする加熱殺菌処理食品包装用フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、耐衝撃性、ヒートシール性、耐熱性、食品衛生性に優れる加熱殺菌処理食品包装用フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の生活様式の変化、外食産業の発達によりいわゆるボイル処理、レトルト処理等の加熱殺菌済み食品の需要はますます増大している。その包装用フィルムにはヒートシール性、加熱殺菌時にフィルム内面同士が融着しない程度の耐熱性等の必須性能に加え、低温下での輸送時に包装用フィルムが破れない程度の耐衝撃性、内容物を確認するための透明性や、食品衛生性の観点からフィルム由来成分の内容物への移行が少ないことが求められている。
これまでにもこれらの要求を満たすために種々の方法が検討されているが、高度な市場要求を満たすには至っていない。
【0003】
例えば、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用い、耐熱性、耐衝撃性等をバランスさせたレトルト食品包装用フィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)が、いずれもフィルムの透明性が不十分であった。
また、結晶性ポリプロピレンに特定の中和剤と特定の無機系不活性微粒子を配合し、透明性、アンチブロッキング性、滑り性を改良したレトルト用ポリプロピレン樹脂組成物およびレトルト用ポリプロピレンフィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)が、耐熱性、ヒートシール性、耐衝撃性、食品衛生性に関する記述は無く、レトルト用ポリプロピレンフィルムとしての適性が不明なものであった。
さらに、従来耐衝撃性と透明性が必要な用途では、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体をブレンドすることにより耐衝撃性を付与した材料が指摘されている(例えば、特許文献4参照。)が、しかし、十分な耐衝撃性を付与するため、多くの低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体を結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体にブレンドすると食品衛生性の悪化を招き、一方、低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体のブレンド量が少ないと十分な耐衝撃性が得られないという問題があった。
【0004】
特許文献4では結晶性プロピレンランダム共重合体または該共重合体を含有する樹脂組成物よりなる層と特定のプロピレン系ブロック共重合体または該共重合体を含有する樹脂組成物からなる層から構成される複層のレトルト食品包装用フィルムが提案されており、透明性、耐衝撃性、食品衛生性の改善がなされている。しかし、透明性についてはまだ不十分なレベルにあり、耐熱性に関する記述は無く、レトルト食品包装用フィルムとしての適性が不明なものであった。更には食品衛生性については常により一層の向上が求められている。
上述のように従来公知の方法では、透明性、耐衝撃性、食品衛生性、ヒートシール性、耐熱性を高度にバランスよく満たした加熱殺菌処理食品包装用フィルムは得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−93062号公報
【特許文献2】
特開2000−186159号公報
【特許文献3】
特開平9−20846号公報
【特許文献4】
特開平11−179866号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、透明性、耐衝撃性、食品衛生性、ヒートシール性、耐熱性に優れた加熱殺菌処理食品包装用フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、メタロセン触媒で重合された特定の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と特定のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーとを含有する組成物からなる層とアンチブロッキング剤を含有する特定のポリプロピレン樹脂組成物からなる層を含む積層フィルムが透明性、耐衝撃性、食品衛生性、ヒートシール性、耐熱性に優れ、加熱殺菌処理食品包装用フィルムとして用いることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタロセン触媒を用いて重合された、メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm1)が120〜145℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体70〜95重量%と、密度が0.86〜0.90g/cm、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.5〜10g/10分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー30〜5重量%とを含有するプロピレンランダム共重合体樹脂組成物からなる層(A層)と、アンチブロッキング剤を含有するメルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1.0〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm2)が130〜145℃のポリプロピレン樹脂組成物からなる少なくとも一層の表面層(B層)を含み、A層が全フィルム厚みの50%以上であることを特徴とする加熱殺菌処理食品包装用フィルムが提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、プロピレン・エチレンランダム共重合体であることを特徴とする加熱殺菌処理食品包装用フィルムが提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の加熱殺菌処理食品包装用フィルムは、特定の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーを含有するポリプロピレンランダム共重合体樹脂組成物からなる基材層(A層)とアンチブロッキング剤を含有する特定のプロピレン樹脂組成物からなる表面層(B層)とからなる積層フィルムである。以下に、各層構成及び層を形成する成分について詳細に説明する。なお、本発明において、「とからなる」とは、必須の2層の他に本発明の効果を損なわない範囲において他の層を含み得ることを意味する。
【0011】
1.A層(基材層)
本発明の加熱殺菌処理食品包装用フィルムを構成するA層は、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーとを含有し、さらに必要に応じて、ポリエチレンもしくはポリエチレンワック、添加剤等を含有するポリプロピレンランダム共重合体樹脂組成物からなる。
【0012】
(1)結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体
本発明に使用される結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンとα−オレフィンの1種又は2種以上との結晶性ランダム共重合体であり、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数2〜10のα−オレフィンが挙げられる。α−オレフィンの中では、エチレンが好ましい。
【0013】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のメルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)は、1〜30g/10分であり、好ましくは4.0〜20g/10分であり、より好ましくは5.0〜10g/10分である。MFRが1g/10分未満では押出特性が悪化し、生産性が低下するため好ましくなく、また、MFRが30g/10分を超えるとフィルム成形時の厚み精度が悪化しやすくなるため好ましくない。
【0014】
また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の融解ピーク温度(Tm1)は、DSCによる融解ピーク温度であり、120℃〜145℃、好ましくは125℃〜145℃である。融解ピーク温度が120℃未満では、加熱殺菌処理時、特に110℃以上のレトルト処理時に包装用フィルムが変形し易くなり、耐熱性に劣る。
【0015】
さらに、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のオルソジクロルベンゼンを溶媒としたときの40℃における溶出量は、2.0重量%以下であり、好ましくは1.5重量%以下である。40℃における溶出量が2.0重量%を超えるものは、フィルムがべたついたり、耐ブロッキング性が悪化しやすく、更には50℃n−ヘキサン抽出量が多くなりやすく、食品衛生性に問題がある。
【0016】
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン触媒により重合されたものであることが必要である。メタロセン触媒としては、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)、メチルアルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物若しくはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物若しくはイオン交換性層状珪酸塩等のメタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要に応じ使用するトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とするいわゆるチーグラーナッタ触媒などのメタロセン触媒以外の触媒により重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いると透明性と剛性、耐衝撃性のバランスが悪化しやすい。
【0017】
メタロセン触媒により重合された結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体としては、市販品を用いることができ、例えば、日本ポリケム(株)製ウィンテック等が例示できる。
【0018】
本発明の加熱殺菌処理食品包装用フィルムのA層において、上記の全ての特性を満たしている結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と他の成分である以下に述べるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーを配合した樹脂組成物から得られたフィルムは、透明性、剛性、耐衝撃性が良好なだけでなく、食品衛生性も良好となる。
【0019】
(2)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー
本発明に使用されるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーは、エチレンを主体とするエチレンとα−オレフィンとのエラストマー系ランダム共重合体である。エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数3〜10のα−オレフィンが挙げられ、1種類でも2種類以上でも用いることができる。特に、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1が好ましい。
また、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体中のエチレン含量は、50重量%以上が好ましく、エチレン含量が50重量%未満のものは耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性に劣る。α−オレフィンの含有量は、後述の密度に応じ適宜調整される。
【0020】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーの密度は、0.86〜0.90g/cmであり、好ましくは0.86〜0.89g/cmである。密度が0.86g/cm未満のものは、フィルムがべたついたり耐ブロッキング性が悪化しやすい。また、密度が0.90g/cmを超えるのものは、透明性が悪くなり易く、また耐衝撃性が悪化しやすい。
【0021】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーのメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、0.5〜10g/10分であり、好ましくは1.0〜10g/10分である。MFRが0.5g/10分未満のものは、押出特性が悪化しやすく、フィルムの生産性が悪化しやすい問題がある。10g/10分を超えるものは、耐衝撃性が悪化しやすくなる。
【0022】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーの製造方法は、上記の物性を満足する共重合体の製造方法であれば特に制限されず、重合触媒としては、チタン系触媒、バナジウム系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒、フェノキシイミン系触媒のいずれを用いても製造することができる。
また、市販品を用いることもでき、三井化学(株)製タフマーPシリーズやタフマーAシリーズ、JSR(株)製EPシリーズやEBMシリーズが例示できるほか、直鎖状低密度ポリエチレンもこの範疇にはいる。
【0023】
本発明の樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーは、2種類以上のエラストマーからなってもよい。
【0024】
上記結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と上記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーの配合割合は、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が70〜95重量%、好ましくは75〜95重量%であり、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーが5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%である。結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が70重量%未満であるとフィルムの剛性が低下し、95重量%を超えると耐衝撃性が悪化する。
【0025】
(3)ポリエチレンもしくはポリエチレンワックス等
本発明で用いるプロピレンランダム共重合体樹脂組成物には、必要に応じて、透明性、剛性の更なる向上を目的としてポリエチレンもしくはポリエチレンワックスを添加することができる。
添加することのできるポリエチレンもしくはポリエチレンワックスの密度は、0.94〜0.98g/cmが望ましい。密度が0.94g/cm未満では透明性の改良効果が不十分となり、0.98g/cmを超えるとポリエチレンもしくはポリエチレンワックスの分散径が十分小さくならず、このため、フィルム表面に分散粒子が凹凸として反映して透明性が低下しやすくなる。
また、添加されるポリエチレンのMFR(190℃、21.18N荷重)は、特に制限はないが、10g/10分以上が好ましく、10〜500g/10分が更に好ましい。MFRが10g/10未満のときポリエチレンの分散径が十分に小さくならず、フィルム表面に分散粒子が凹凸として反映されてしまうため透明性の悪化につながる。また、ポリエチレンが微分散するためには、好ましくは、ポリエチレンのMFR(190℃、21.18N荷重)がプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体のMFR(230℃、21.18N荷重)より大きい方が望ましい。
添加することのできるポリエチレン、ポリエチレンワックスの製造方法は、特に制限されず、市販品を用いることができる。市販品の例として、ポリエチレンとしては、日本ポリケム(株)製ノバテックHD、ポリエチレンワックスとしては、三井化学(株)製ハイワックス、三洋化成(株)製サンワックス等が挙げられる。
【0026】
添加することのできるポリエチレン、ポリエチレンワックス添加量は、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と前記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーの合計量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部である。ポリエチレンもしくはポリエチレンワックスの配合割合が0.05重量部未満ではフィルムの透明性改良効果が乏しく、また、5重量部を超えるとポリエチレンがフィルム中で連続層を形成し、フィルムの透明性が損なわれ易くなる。
【0027】
本発明で用いるプロピレンランダム共重合体樹脂組成物には、さらに必要に応じて、スリップ剤、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤等の一般的な添加剤や、若干のフィルム性能調整の目的で少量のプロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン系ブロック共重合体、石油樹脂などを添加することができる。ここで、少量とは、概ね10重量%以内を意味する。
なお、アンチブロッキング剤は、透明性確保の観点から本発明で用いるプロピレンランダム共重合体樹脂組成物には添加しないほうが望ましい。
【0028】
2.B層(表面層)
本発明の加熱殺菌処理食品包装用フィルムのB層は、アンチブロッキング剤を含有するポリプロピレン樹脂組成物からなり、少なくとも一層の表面層を構成する。
【0029】
(1)ポリプロピレン樹脂
B層のポリプロピレン樹脂組成物に用いるポリプロピレン樹脂は、結晶性プロピレンの単独重合体、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、結晶性プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のいずれでもよく、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数2〜10のα−オレフィンが挙げられる。α−オレフィンの中では、エチレンが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)は、1.0〜30g/10分、好ましくは4.0〜20g/10分である。MFRが1.0g/10分未満では押出特性が悪化し、生産性が低下するため好ましくなく、また、MFRが30g/10分を超えるとフィルム成形時の厚み精度が悪化しやすくなるため好ましくない。
【0031】
また、ポリプロピレン樹脂の融解ピーク温度(Tm2)は、DSCによる融解ピーク温度であり、130℃〜145℃、好ましくは135℃〜145℃である。融解ピーク温度が130℃未満では、加熱殺菌処理時、特に110℃以上のレトルト処理時に包装用フィルムの内面同士が融着し易くなり、耐熱性(耐融着性)に劣る。
【0032】
本発明のポリプロピレン樹脂は、前記特性を満足する限り一種類もしくは二種類以上のポリプロピレン樹脂からなっても良い。
【0033】
(2)アンチブロッキング剤
本発明の最表面に積層されるB層のポリプロピレン樹脂組成物には、アンチブロッキング剤を含有する必要がある。アンチブロッキングを添加しない場合、ブロッキング強度が大きくなりすぎ、耐ブロッキング性に劣る。
添加することのできるアンチブロッキング剤は、目的、用途に応じて適宜選択でき、例えば、シリカなどの無機系微粒子や架橋ポリメチルメタクリレートなどの有機系微粒子が例示できる。アンチブロッキング剤のサイズとしては、平均粒径0.5〜10μmのものが好ましく用いられる。
アンチブロッキング剤の添加量としては、アンチブロッキング剤の種類、サイズにもよるが、目的に応じて、ポリプロピレン樹脂組成物中に100〜10000ppmの範囲で添加することが望ましい。
【0034】
さらに、本発明のフィルム最表面に積層されるポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、スリップ剤、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤等の一般的な添加剤や、若干のフィルム性能調整の目的で少量のプロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン系ブロック共重合体、石油樹脂などを添加しても構わない。ここで、少量とは概ね10重量%以内を意味する。
【0035】
3.積層フィルム
本発明の加熱殺菌処理食品包装用フィルムは、上記A層からなる層の最表面にB層を積層して得られる。
なお、本発明のフィルムにおいては、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、A層、B層以外の層を積層できる。
本発明のフィルムにおける積層体の構成としては、2層であっても3層以上の多層であってもよく、例えば、A層/B層、A層/B層/A層が挙げられ、さらに必要に応じて、他の層を中間層、外層に加えることができる。
A層、B層、必要に応じて他の層を積層する方法としては、共押出法、ドライラミネート法等の公知の方法を用いることができる。
A層の厚みは、全フィルム厚みの50%以上であり、好ましくは60〜90%である。A層の厚みが50%未満であると耐衝撃性が悪化し易く好ましくない。
【0036】
本発明の積層フィルムは、基材層(A層)にアンチブロッキング剤を添加せず、表面層(B層)にアンチブロッキング剤を添加しているので、耐ブロッキング性、剛性、耐衝撃性、ヒートシール性を確保しつつ透明性を向上させることができる。
【0037】
本発明のフィルムは、n−ヘキサンを溶媒としたときの50℃における抽出量が2.5重量%以下が好ましく、より好ましくは2.2重量%以下である。50℃n−ヘキサン抽出量が2.5重量%を超えると食品衛生性に問題がある。
【0038】
また、本発明の積層フィルムは、透明性、ヒートシール性、剛性、耐ブロッキング性がバランスよく向上していて、従来にない優れた性能のプロピレン共重合体フィルムとなる。このようなフィルムは、一般の包装材料としての性能を十分具備しているのみならず、耐衝撃性、耐熱性、食品衛生性にも優れるため、加熱殺菌処理食品用途としての適性に優れる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた重合体の物性測定方法、フィルムの物性測定方法、実施例で用いた樹脂材料は以下の通りである。
【0040】
I.評価法
1.重合体の物性測定
(1)メルトフローレート(MFR:単位g/10分):プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体については、JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定した。ポリエチレンおよびポリオレフィン系エラストマーについてはJIS K−7210−1995に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定した。
(2)融解ピーク温度(Tm:単位℃):示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度Tmを測定した。
(3)密度:厚さ1mmの金型を用い、230℃にて7分間予熱をかけた後、プレス成形機にて30kg/cmの圧力で3分間プレス成形した。3分経過の後、直ちに30℃に調整された別のプレス成形機にて50kg/cmの圧力で2分間冷却した。得られたプレスシートを23℃にて12時間以上状態調整した後、およそ5mm×5mmの大きさにカットした。カットしたプレスシートを105℃にて90分間状態調整した後、更に23℃にて12時間以上状態調整した後にJIS K7112−1980に準拠して密度勾配管法により測定した。
(4)オルソジクロルベンゼンを溶媒としたときの70℃以上の溶出量および40℃における溶出量(単位:重量%):試料を140℃でオルソジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルソジクロロベンゼンを1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルソジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒 :オルソジクロルベンゼン
試料濃度 :5mg/ml
試料注入量 :0.2ml
溶媒流速 :1ml/分
検出器 :波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
【0041】
2.フィルムの物性測定
測定対象のフィルムとしては、温度23℃、湿度50%の雰囲気下7日間調整したフィルムを用いた。
(1)引張弾性率(単位:MPa):下記の条件にて、フィルムの流れ方向(MD)および直交方向(TD)各々について測定し、フィルム剛性の尺度とした。引張弾性率の計算方法は、JIS K−7127−1989に準拠した。
サンプル長さ:150mm、サンプル幅:15mm、チャック間距離:100mm、クロスヘッド速度:1mm/min
(2)ヘイズ(単位:%):JIS K7105−1981に準拠し、測定した。
(3)ヒートシール温度(単位:℃):JIS Z1707−1995に準拠し、下記の方法により測定した。
23℃、湿度50%に調整された恒温恒湿室内に設置された、東洋精機製作所製熱傾斜試験機にトーマス循環式恒温油槽T−201Pより熱媒体として信越シリコーン製シリコーン油KF96を導入し、5mm×200mmのヒートシールバーに温度傾斜を付けないように、シールバーの温度調節を行った。各設定温度にて圧力2kg/cm、時間1秒のヒートシール条件でシールした試料から15mm幅のサンプルを切り取り、ショッパー型引張試験機を用いて引張速度500mm/分にて引き離し、300gの強度となる温度を求めた。ヒートシール性、耐熱性の指標として用いた。ヒートシール温度が145℃を超えるとヒートシール性に劣り、また、130℃未満であると加熱殺菌処理時にフィルム内面同士が融着し易く耐熱性が劣る。
(4)ブロッキング強度(単位:g/10cm):得られたフィルムより、2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムの表面同士を長さ5cmにわたり重ね、50g/cmの荷重下、40℃の雰囲気下で24時間放置した後、荷重を除き、23℃の温度に十分調整した後、ショッパー型引張試験機を用いて500mm/分の速度で試料の剪断剥離に要する力を測定した。数値が小さい方が良好である。
(5)衝撃強度(単位:kg・cm/cm):東洋精機製フィルムインパクトテスターを用い、単位フィルム厚み当たりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、得られたフィルムを23℃及び0℃の雰囲気下にそれぞれ24時間以上放置し、状態調整を行った後、23℃又は0℃にて試験フィルムを直径50mmのホルダーに固定し、25.4mmφの半球型の金属貫通部を打撃させ、貫通破壊に要した仕事量(kg・cm)から、そのフィルムの衝撃に対する脆さを測定した。
衝撃強度(kg・cm/cm)=仕事量/試験片厚み
(6)50℃におけるn−ヘキサン抽出量(単位:wt%):FDA(米国食品医薬品局) §177・1520規格試験((d)(3)(ii))に従い、厚さ60μmのフィルムの50℃、n−ヘキサン抽出量を測定した。
【0042】
II.使用樹脂材料
1.プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、ポリプロピレン樹脂
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、ポリプロピレン樹脂として、以下のPP−1〜PP−4を用いた。
(1)PP−1(メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)WXK1195(融解ピーク温度Tm:134.7℃、MFR:6.2g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で0.3wt%、70℃で98wt%)の未造粒パウダー
(2)PP−2(メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)WXK1193(融解ピーク温度Tm:141.9℃、MFR:6.6g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で0.2wt%、70℃以上で99wt%)の未造粒パウダー
(3)PP−3(メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)WFX4T(融解ピーク温度Tm:124.3℃、MFR:7.2g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で0.7wt%、70℃以上で90.5wt%)の未造粒パウダー
(4)PP−4(チーグラー触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)FG4(融解ピーク温度Tm:141.7℃、MFR:6.9g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で7.0wt%、70℃以上で87.4wt%)の未造粒パウダー
【0043】
2.エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマーとして、以下のER−1〜ER−4を用いた。
(1)ER−1(エチレン・α−オレフィンランダム共重合体):三井化学(株)製タフマーP0280M(密度:0.87g/cm、MFR(190℃):2.9g/10分)
(2)ER−2(エチレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)製カーネルKS340T(密度:0.88g/cm、MFR(190℃):3.5g/10分)
(3)ER−3(プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):三井化学(株)製タフマーXR110T(密度:0.89g/cm、MFR(190℃):3.2g/10分)
(4)ER−4(エチレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリケム(株)製ノバテックLL UF240(密度は0.92g/cm、MFR(190℃):2.1g/10分)
【0044】
3.ポリエチレン
ポリエチレンとして次の高密度ポリエチレン(PE−1)を用いた。
(1)PE−1(ポリエチレン):日本ポリケム(株)製ノバテックHD HE490(密度:0.96g/cm、MFR(190℃):20g/10分)
【0045】
実施例1
PP−1 100重量部に、テトラキス[メチレン−3−(3‘、5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)を0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(耕正製、商品名Ca−St)を0.05重量部を配合し、ヘンシェルミキサーにて750rpm、2分間混合後、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、PP−1ペレットを得た。得られたPP−1ペレット85重量部とER−1 15重量部を配合し、リボンミキサーにて60rpm、2分間撹拌し、A層(中間層)用ペレット混合物を得た。
また、PP−1 100重量部に、テトラキス[メチレン−3−(3‘、5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)を0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(耕正製、商品名Ca−St)を0.05重量部、アンチブロッキング剤として合成シリカ(富士シリシア社製、商品名サイリシア550)を0.15重量部配合し、ヘンシェルミキサーにて750rpm、2分間混合後、池貝製作所製PCM30mmφ二軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、B層(表面層)用ポリプロピレン樹脂組成物を得た。
得られたA層(中間層)用ペレット混合物をプラコー社製20mmφ、35mmφ、20mmφ三種三層Tダイ成形機の35mmφ押出機(中間層用)に投入し、B層(表面層)用ポリプロピレン樹脂組成物を20mmφ押出機2基に投入し、押出温度230℃で幅300mmのTダイから溶融押出し、20℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、毎分8mの速度で厚さ60μmのキャストフィルムを製造した。引き続きフィルムのエアナイフ面に成形直後のJIS K6768による濡れ張力が42mN/mとなるようにコロナ処理を施し、このコロナ処理面を表面、反対面を裏面とし、フィルムの物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0046】
実施例2
実施例1のA層(中間層)用ペレット混合物において、PP−1をPP−2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0047】
実施例3
実施例1のA層(中間層)用ペレット混合物において、PP−1をPP−3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0048】
実施例4
A層(中間層)用ペレット混合物として、PP−1ペレット84.5重量部とER−1 15重量部とPE−1 0.5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0049】
実施例5
実施例1のB層(表面層)用ポリプロピレン樹脂のPP−1をPP−2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0050】
実施例6
実施例1のB層(表面層)用ポリプロピレン樹脂のPP−1をPP−4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0051】
実施例7
実施例1のER−1をER−2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0052】
比較例1
実施例1のA層に用いたPP−1をPP−4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体がメタロセン触媒により重合されたものでなかったため、実施例に比べヘイズが大きくなり透明性が悪化し、S40が2%より大きかったため50℃におけるn−ヘキサン抽出量が悪化した。
【0053】
比較例2
実施例1のB層(表面層)用ポリプロピレン樹脂のPP−1をPP−3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。表面層用ポリプロピレン樹脂の融解ピーク温度が130℃未満であったため、ヒートシール温度が低くなりすぎ、耐熱性が悪化した。
【0054】
比較例3
実施例1のER−1をER−3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。エラストマーとしてエチレン・α−オレフィンランダム共重合体ではなく、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いたため、実施例に比べ低温での耐衝撃性が悪化した。
【0055】
比較例4
実施例1のER−1をER−4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。エチレン・α−オレフィンランダム共重合体の密度が0.90g/cmを超えたため、実施例に比べ透明性が悪化し、また、耐衝撃性が悪化した。
【0056】
【表1】
Figure 2004358683
【0057】
【表2】
Figure 2004358683
【0058】
【発明の効果】
本発明の積層フィルムは、透明性、ヒートシール性、剛性、耐ブロッキング性がバランスよく向上していて、従来にない優れた性能のプロピレン共重合体フィルムとなる。このようなフィルムは、一般の包装材料としての性能を十分具備しているのみならず、耐衝撃性、耐熱性、食品衛生性にも優れるため、加熱殺菌処理食品包装用フィルムとしての適性に優れる。

Claims (2)

  1. メタロセン触媒を用いて重合された、メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm1)が120〜145℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体70〜95重量%と、密度が0.86〜0.90g/cm、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.5〜10g/10分のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー30〜5重量%とを含有するプロピレンランダム共重合体樹脂組成物からなる層(A層)と、アンチブロッキング剤を含有するメルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1.0〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm2)が130〜145℃のポリプロピレン樹脂組成物からなる少なくとも一層の表面層(B層)を含み、A層が全フィルム厚みの50%以上であることを特徴とする加熱殺菌処理食品包装用フィルム。
  2. 結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が、プロピレン・エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の加熱殺菌処理食品包装用フィルム。
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