JP2004296227A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる有機EL素子の作製方法を提供する。
【解決手段】有機EL素子は陽極と陰極との間に有機層が設けられて構成され、該有機層は陽極側から順に正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送性発光層で構成されている。電子輸送性発光層は、陽極上に正孔注入層及び正孔輸送層が積層された積層体19の正孔輸送層上に、電子輸送性の材料を有機溶剤に溶解した噴霧溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって形成される。すなわち、噴霧溶液を噴霧ノズル25から積層体19の正孔輸送層上に所定の噴霧圧にてミスト状に吹き付けることにより行われる。このミスト状の吹き付けは、噴霧時間と待機時間を繰り返すように間欠的に行なわれる。
【選択図】 図1
【解決手段】有機EL素子は陽極と陰極との間に有機層が設けられて構成され、該有機層は陽極側から順に正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送性発光層で構成されている。電子輸送性発光層は、陽極上に正孔注入層及び正孔輸送層が積層された積層体19の正孔輸送層上に、電子輸送性の材料を有機溶剤に溶解した噴霧溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって形成される。すなわち、噴霧溶液を噴霧ノズル25から積層体19の正孔輸送層上に所定の噴霧圧にてミスト状に吹き付けることにより行われる。このミスト状の吹き付けは、噴霧時間と待機時間を繰り返すように間欠的に行なわれる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話、オーディオ等の表示素子として利用される有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、本明細書では有機EL素子と称する)の作製方法に関するものである。さらに詳しくは、陽極側の正孔輸送層上に陰極側の電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる有機EL素子の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の有機EL素子は陽極と陰極との間に、複数の有機層として例えば陽極側から順に正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送性発光層が積層して形成されている。そして、陽極側から正孔(ホール)が正孔注入層、正孔輸送層を介して供給され、陰極から電子が供給され、電子輸送性発光層において正孔と電子が再結合して発光される。このような有機EL素子として例えば非特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、正孔輸送層は正孔輸送性材料としてのメトキシ置換された1,3,5−トリス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕ベンゼン(TDAPB)により構成されている。この正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合には、電子輸送性を有するガリウム錯体のメタノール溶液がスピンコート法によって塗工される。
【0003】
【非特許文献1】
Advanced Materials 2001,13,No23,December3 1811〜1813頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術においては、スピンコート法によって正孔輸送層上に電子輸送性発光層が形成されると、スピンコート法における物理的な力(回転力)により正孔輸送層中のTDAPBが外部へ飛ばされる場合がある。更に、電子輸送性発光層を形成する場合のメタノールが正孔輸送層中のTDAPBを溶解する場合がある。従って、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成するときに、正孔輸送層中で正孔輸送性を発揮するTDAPBの損失を伴なうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる有機EL素子の作製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、陽極と陰極との間には陽極側から少なくとも正孔輸送層及び電子輸送性発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法であって、陽極上に少なくとも正孔輸送層が積層された積層体の正孔輸送層上に、電子輸送性の材料が有機溶剤に溶解された溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって電子輸送性発光層を形成し、その上に陰極を形成することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、請求項1に記載の発明において、前記ミスト状の吹き付けは間欠的に行なわれるものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ミストを形成する液滴の粒径は1〜300μmである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、有機EL素子11は陽極12と陰極13との間に陽極側から順に正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16の複数(3層)の有機層が積層されて構成されている。この有機EL素子11においては、陽極12から正孔が正孔注入層14に注入され、更に正孔輸送層15に輸送され、一方陰極13から電子が電子輸送性発光層16に注入されてその電子輸送性発光層16で正孔と電子が再結合する。これらのキャリア(正孔と電子)の再結合エネルギーによって発光中心(正孔と電子で対をなす励起子)が励起されて有機EL素子が発光するのである。すなわち、有機EL素子11は直流動作型の発光素子である。
【0010】
有機層中へのキャリアの注入は、化学的にはラジカルカチオン(正孔)とラジカルアニオン(電子)の注入である。すなわち、陽極12と有機層との界面においては有機分子の電子が奪われ酸化されてラジカルカチオンが形成され、陰極13と有機層との界面においては有機分子に電子を与え還元してラジカルアニオンが形成される。ここで、ラジカルカチオンは有機分子の最高被占分子軌道(HOMO)の電子を引き抜くことにより形成され、ラジカルアニオンは有機分子の最低空分子軌道(LUMO)に電子を注入することにより形成される。
【0011】
前記陽極12はガラス基板17上に形成されたインジウム−スズ酸化物(ITO)の被膜18によって構成されている。このITOの被膜18のイオン化ポテンシャル(仕事関数)は通常4.8〜5.2eVである。
【0012】
正孔注入層14はITOの被膜18上に、正孔輸送性を有する水系の高分子材料によって50〜60nmの厚みに形成されている。この高分子材料として具体的にはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸塩(PSS)とが重量比で10:1に混合されたものが用いられる。両高分子材料の混合物によって正孔注入層14の安定性が図られる。この正孔注入層14のHOMOのイオン化ポテンシャルは4.7〜5.3eVであることが好ましい。
【0013】
正孔輸送層15は正孔注入層14上に、層安定性を有する高分子材料と正孔輸送性を有する低分子材料との混合物により30〜100nmの厚みに形成されている。高分子材料を低分子材料に混合することにより、耐熱性、非晶質性等の層安定性が向上し、より高電圧、大電流領域での駆動を行うことができ、最高輝度の向上を図ることができる。高分子材料は更に低級アルコール、ケトン等の有機溶剤に対する耐溶剤性をも有している。そのため、正孔輸送層15上に電子輸送性発光層16等の有機層を有機溶剤を用いた塗工法によって容易に形成することができる。また、低分子材料に基づき正孔を低電圧でより多く輸送することができ、発光閾値電圧を低電圧化することができる。
【0014】
前記高分子材料は、正孔輸送層15が電子輸送性発光層16と電気的に接触したときLUMOのイオン化ポテンシャルが電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルより高くなるような電気伝導性を有することが必要である。かつ高分子材料は、正孔注入層14のHOMOのイオン化ポテンシャルとの差が小さくなるような電気伝導性を有することが望ましい。高分子材料の重量平均分子量は、10,000〜10,000,000であることが好ましい。そのような高分子材料として具体的にはポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)等が用いられる。
【0015】
低分子材料は、上記の高分子材料の性能に加えて、高分子材料よりも高い電気伝導性を有することが望ましい。また、低分子材料の重量平均分子量は前記高分子材料の重量平均分子量よりも小さく、従って10,000未満であることが好ましい。そのような低分子材料として具体的にはメトキシ置換された1,3,5−トリス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕ベンゼン(TDAPB)、4,4’,4”−トリス〔3−メチル(フェニル)アミノ〕トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が用いられる。また、溶剤としてクロロホルム、キシレン等が用いられる。これら成分の割合は、溶剤100重量部に対してPVKが0〜2重量部で、TDAPBが0.1〜3.0重量部である。
【0016】
この正孔輸送層15のHOMOのイオン化ポテンシャルは4.6〜5.4eVであることが好ましい。一方、正孔輸送層15のLUMOのイオン化ポテンシャルは、電子を陽極側に流れ込ませないために、電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルに対して障壁が十分高くなるように設定する必要がある。従って、正孔輸送層15のLUMOのイオン化ポテンシャルは、2.1〜2.7eVであることが好ましい。
【0017】
電子輸送性発光層16は正孔輸送層15上に、電子輸送性材料としてのガリウム錯体等の金属錯体(金属キレート化合物)によって60nm以下の厚みで形成されている。金属錯体としては例えば、ビス−(8−ヒドロキシキナルジン)ガリウムピバレート〔bis−(8−hydroxyquinaldine)gallium pivalate〕、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体等が用いられる。ガリウム錯体の溶剤としてはメタノール等が使用される。この電子輸送性発光層16は、発光される光の波長が可視光域である必要があると共に、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等の金属又はフッ化リチウム(LiF)等の金属化合物を陰極としたときのその陰極との界面でエネルギー障壁がないことが好ましい。このため、電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルは、2.7〜3.3eVであることが好ましい。一方、電子輸送性発光層16のHOMOのイオン化ポテンシャルは、5.4〜6.0eVであることが好ましい。
【0018】
陰極13はアルミニウム、マグネシウム、リチウム等の被膜が真空蒸着法によって電子輸送性発光層16上に蒸着されることにより形成される。
次に、有機EL素子11の作製方法について説明する。
【0019】
まず、ガラス基板17上に真空蒸着法やスパッタリング法によってITOの被膜18が形成されることにより陽極12が得られる。ITOの被膜18上には正孔注入層14が正孔輸送性を有する水系の高分子材料を浸漬法(ディップコート法)又はスピンコート法等によって塗工(コーティング)することにより形成される。ディップコート法では、例えばポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物の水分散液が収容された収容槽中に、ITOの被膜18が形成されたガラス基板17を浸漬して引き上げることにより行なわれる。
【0020】
正孔注入層14上には正孔輸送層15が、前記PVKとTDAPBをクロロホルム等に溶解した溶液をディップコート法、スピンコート法等によって塗工することにより形成される。
【0021】
正孔輸送層15上には電子輸送性発光層16が、電子輸送性の材料としてのガリウム錯体を有機溶剤に溶解した噴霧溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって形成される。その噴霧法に使用される噴霧装置ついて説明すると、図1に示すように、密閉された噴霧装置本体21内の底部には温度制御用ヒータ22が据付けられ、その上には試料台23が支持されている。該試料台23上には支持板24が支持され、その支持板24上には有機EL素子11の陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が積層された積層体19が載置されている。
【0022】
該積層体19の上方位置には噴霧ノズル25が支持杆26を介して位置制御レール27に移動可能に支持され、積層体19に対する噴霧ノズル25の位置を窒素圧によって調整できるようになっている。噴霧装置本体21の一側方には噴霧溶液28が収容されたタンク29が配置され、そのタンク29と前記噴霧ノズル25とが輸送用チューブ30で接続されている。タンク29の隣接位置には第1窒素ボンベ31が置かれ、その第1窒素ボンベ31とタンク29との間が連結管32で連結されて窒素圧によってタンク29内の噴霧溶液28が噴霧ノズル25へと圧送されるようになっている。
【0023】
噴霧装置本体21の他側方には第2窒素ボンベ33が配置され、その第2窒素ボンベ33と噴霧ノズル25とが接続管34で接続されて窒素圧にて噴霧ノズル25から噴霧溶液28を所定のパターンで積層体19に向けて噴霧するようになっている。噴霧されたミストを形成する液滴37の粒径は1〜300μmであることが好ましい。この粒径が1μm未満の場合、液滴37が細かくなり過ぎてそのような液滴37を安定して得ることが困難になる。300μmを越える場合、液滴37中の有機溶剤の揮発を速やかに行うことができなくなる。前記窒素圧による噴霧ノズル25の移動、噴霧溶液28の供給、噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧パターンの制御は、図示しない制御装置によって行われる。
【0024】
図3に示すように、噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧は、ミストによる液滴37中の有機溶剤が揮発されやすい点から所定の待機時間35と噴霧時間36とが交互に繰り返される間欠パターンによって行われることが好ましい。この場合、噴霧ノズル25には一定の液圧と窒素圧が加えられ、噴霧時間36に噴霧ノズル25が開口され、待機時間35に噴霧ノズル25が閉鎖されるように制御される。間欠パターンは、噴霧時間36が0.1〜10秒であることが好ましく、待機時間35が0.1〜15秒であることが好ましい。
【0025】
さて、ITOの被膜18が形成されたガラス基板17上には正孔注入性を有する高分子材料が浸漬法、スピンコート法等によって形成される。その正孔注入層14上に正孔輸送層15を形成する場合には、前記高分子材料としてのPVKと低分子材料としてのTDAPBを含む有機溶剤溶液をディップコート法、スピンコート法等によって塗工することにより形成される。
【0026】
次に、電子輸送性発光層16を正孔輸送層15上に形成する場合には、前記の噴霧装置を用いた噴霧法によって行われる。すなわち、陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が設けられた積層体19を支持板24上に載せ、噴霧ノズル25からガリウム錯体がメタノール等に溶解された噴霧溶液28を間欠パターンで正孔輸送層15上に噴霧する。
【0027】
このとき、図4(a)に示すように、最初に正孔輸送層15上には噴霧溶液28のミストによる液滴37が所定量噴霧される。その後、待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。続いて、図4(b)に示すように、噴霧ノズル25から所定量の噴霧溶液28が噴霧され、各液滴37が前記皮膜38の特に窪んだ部分に滴下される。そして、前記と同様に待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。
【0028】
次いで、図4(c)に示すように、前記皮膜38上に噴霧ノズル25から所定量の噴霧溶液28が噴霧され、皮膜38の特に窪んだ部分に液滴37が形成され、待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。このようにして、皮膜38の表面が凹凸状態から次第に平坦化される。
【0029】
最後に、電子輸送性発光層16上にアルミニウムの被膜が真空蒸着法によって形成されることにより、陰極13が得られる。このようにして、陽極12、正孔注入層14、正孔輸送層15、電子輸送性発光層16及び陰極13が順に積層されることによって有機EL素子11が得られる。
【0030】
そして、有機EL素子11を直流電源に接続して動作させると、陽極12から正孔が正孔注入層14に注入され、注入された正孔は正孔輸送層15へと輸送され、更に電子輸送性発光層16へと輸送される。一方、陰極13からは電子輸送性発光層16に電子が注入され、電子輸送性発光層16において前記正孔と電子が再結合する。この再結合エネルギーによって有機EL素子11が発光する。このとき、有機層は正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16の3層から構成されているため、キャリア輸送と発光の機能が分離されて各機能がそれぞれ十分に発揮される。しかも、正孔輸送層15は有機溶剤に対して耐性を有することから、正孔輸送の機能が低下することなく安定して発揮される。
【0031】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の有機EL素子11の作製方法によれば、電子輸送性発光層16は正孔輸送層15上に噴霧法によって形成される。この噴霧法においては、陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が形成された積層体19上に噴霧溶液28のミストによる微細な液滴が分散した状態で滴下されると同時に、微細な各液滴37から有機溶剤が速やかに揮発して皮膜38が形成される。その皮膜38上に更に噴霧溶液28のミストが滴下され、皮膜38が形成される。従って、電子輸送性発光層16を形成するための有機溶剤によって正孔輸送層15中の正孔輸送性材料が外部へ飛ばされたり、溶解されたりして損失を招くことを防止することができる。
【0032】
・ 更に、噴霧法において、噴霧パターンを噴霧時間36と待機時間35とを繰り返す間欠パターンにて行うことにより、噴霧されたミストによる液滴37中の有機溶剤が待機時間35中により揮発されやすいことから、皮膜38が速やかに形成される。このため、電子輸送性発光層16を形成する際に正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失をより確実に防止することができる。
【0033】
・ 加えて、ミストを形成する液滴37の粒径を1〜300μmに設定することにより、液滴37中の有機溶剤の揮発速度を適切なものにでき、電子輸送性発光層16を形成する際に正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失をより確実に防止することができる。
【0034】
・ 噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧圧又は前記積層体19に対する噴霧ノズル25の位置を調整することにより、前記積層体19上へミストを吹き付ける際の液滴37を均一に揃えることができる。
【0035】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 噴霧装置本体21内の温度制御用ヒータ22を駆動させて噴霧装置本体21内の温度を上げたり、噴霧装置本体21内を減圧したりしてミストによる液滴37中の有機溶剤の揮発を促進させるように構成することもできる。
【0036】
・ 噴霧法におけるミストを形成する液滴37の大きさをできるだけ小さくし、ミスト状の吹き付けを連続的に行なうこともできる。
・ 電子輸送性発光層16を形成する電子輸送性材料を溶解する有機溶剤として、メタノール、アセトン等の低沸点のものを使用して揮発速度を速め、正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失を確実に防止すると共に、電子輸送性発光層16を形成を速やかに行うように構成しても良い。
【0037】
・ 正孔注入層14を省略し、正孔輸送層15が正孔注入層14の機能を有するように構成しても良い。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0038】
・ 前記噴霧法に用いられる有機溶剤は低級アルコール又はケトンである。このように構成した場合、正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を確実に防止することができると共に、電子輸送性発光層を形成を速やかに行うことができる。
【0039】
・ 陽極12と陰極13との間には正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16を設ける。このように構成した場合、キャリア輸送と発光の機能が分離されて各機能がそれぞれ十分に発揮される。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の有機EL素子の作製方法によれば、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる。
【0041】
請求項2又は請求項3に記載の発明の有機EL素子の作製方法によれば、請求項1に記載の発明の効果をより確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における噴霧装置を示す概略説明図。
【図2】有機EL素子を示す概略断面図。
【図3】噴霧装置で間欠的に噴霧する際の間欠パターンを示すグラフ。
【図4】(a)〜(c)は噴霧法によって噴霧液を噴霧する際の作用を示す概略説明図。
【符号の説明】
11…有機EL素子、12…陽極、13…陰極、15…正孔輸送層、16…電子輸送性発光層、19…積層体、37…液滴。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話、オーディオ等の表示素子として利用される有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、本明細書では有機EL素子と称する)の作製方法に関するものである。さらに詳しくは、陽極側の正孔輸送層上に陰極側の電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる有機EL素子の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の有機EL素子は陽極と陰極との間に、複数の有機層として例えば陽極側から順に正孔注入層、正孔輸送層及び電子輸送性発光層が積層して形成されている。そして、陽極側から正孔(ホール)が正孔注入層、正孔輸送層を介して供給され、陰極から電子が供給され、電子輸送性発光層において正孔と電子が再結合して発光される。このような有機EL素子として例えば非特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、正孔輸送層は正孔輸送性材料としてのメトキシ置換された1,3,5−トリス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕ベンゼン(TDAPB)により構成されている。この正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合には、電子輸送性を有するガリウム錯体のメタノール溶液がスピンコート法によって塗工される。
【0003】
【非特許文献1】
Advanced Materials 2001,13,No23,December3 1811〜1813頁
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来技術においては、スピンコート法によって正孔輸送層上に電子輸送性発光層が形成されると、スピンコート法における物理的な力(回転力)により正孔輸送層中のTDAPBが外部へ飛ばされる場合がある。更に、電子輸送性発光層を形成する場合のメタノールが正孔輸送層中のTDAPBを溶解する場合がある。従って、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成するときに、正孔輸送層中で正孔輸送性を発揮するTDAPBの損失を伴なうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる有機EL素子の作製方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、陽極と陰極との間には陽極側から少なくとも正孔輸送層及び電子輸送性発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法であって、陽極上に少なくとも正孔輸送層が積層された積層体の正孔輸送層上に、電子輸送性の材料が有機溶剤に溶解された溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって電子輸送性発光層を形成し、その上に陰極を形成することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、請求項1に記載の発明において、前記ミスト状の吹き付けは間欠的に行なわれるものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ミストを形成する液滴の粒径は1〜300μmである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、有機EL素子11は陽極12と陰極13との間に陽極側から順に正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16の複数(3層)の有機層が積層されて構成されている。この有機EL素子11においては、陽極12から正孔が正孔注入層14に注入され、更に正孔輸送層15に輸送され、一方陰極13から電子が電子輸送性発光層16に注入されてその電子輸送性発光層16で正孔と電子が再結合する。これらのキャリア(正孔と電子)の再結合エネルギーによって発光中心(正孔と電子で対をなす励起子)が励起されて有機EL素子が発光するのである。すなわち、有機EL素子11は直流動作型の発光素子である。
【0010】
有機層中へのキャリアの注入は、化学的にはラジカルカチオン(正孔)とラジカルアニオン(電子)の注入である。すなわち、陽極12と有機層との界面においては有機分子の電子が奪われ酸化されてラジカルカチオンが形成され、陰極13と有機層との界面においては有機分子に電子を与え還元してラジカルアニオンが形成される。ここで、ラジカルカチオンは有機分子の最高被占分子軌道(HOMO)の電子を引き抜くことにより形成され、ラジカルアニオンは有機分子の最低空分子軌道(LUMO)に電子を注入することにより形成される。
【0011】
前記陽極12はガラス基板17上に形成されたインジウム−スズ酸化物(ITO)の被膜18によって構成されている。このITOの被膜18のイオン化ポテンシャル(仕事関数)は通常4.8〜5.2eVである。
【0012】
正孔注入層14はITOの被膜18上に、正孔輸送性を有する水系の高分子材料によって50〜60nmの厚みに形成されている。この高分子材料として具体的にはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸塩(PSS)とが重量比で10:1に混合されたものが用いられる。両高分子材料の混合物によって正孔注入層14の安定性が図られる。この正孔注入層14のHOMOのイオン化ポテンシャルは4.7〜5.3eVであることが好ましい。
【0013】
正孔輸送層15は正孔注入層14上に、層安定性を有する高分子材料と正孔輸送性を有する低分子材料との混合物により30〜100nmの厚みに形成されている。高分子材料を低分子材料に混合することにより、耐熱性、非晶質性等の層安定性が向上し、より高電圧、大電流領域での駆動を行うことができ、最高輝度の向上を図ることができる。高分子材料は更に低級アルコール、ケトン等の有機溶剤に対する耐溶剤性をも有している。そのため、正孔輸送層15上に電子輸送性発光層16等の有機層を有機溶剤を用いた塗工法によって容易に形成することができる。また、低分子材料に基づき正孔を低電圧でより多く輸送することができ、発光閾値電圧を低電圧化することができる。
【0014】
前記高分子材料は、正孔輸送層15が電子輸送性発光層16と電気的に接触したときLUMOのイオン化ポテンシャルが電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルより高くなるような電気伝導性を有することが必要である。かつ高分子材料は、正孔注入層14のHOMOのイオン化ポテンシャルとの差が小さくなるような電気伝導性を有することが望ましい。高分子材料の重量平均分子量は、10,000〜10,000,000であることが好ましい。そのような高分子材料として具体的にはポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)等が用いられる。
【0015】
低分子材料は、上記の高分子材料の性能に加えて、高分子材料よりも高い電気伝導性を有することが望ましい。また、低分子材料の重量平均分子量は前記高分子材料の重量平均分子量よりも小さく、従って10,000未満であることが好ましい。そのような低分子材料として具体的にはメトキシ置換された1,3,5−トリス〔4−(ジフェニルアミノ)フェニル〕ベンゼン(TDAPB)、4,4’,4”−トリス〔3−メチル(フェニル)アミノ〕トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が用いられる。また、溶剤としてクロロホルム、キシレン等が用いられる。これら成分の割合は、溶剤100重量部に対してPVKが0〜2重量部で、TDAPBが0.1〜3.0重量部である。
【0016】
この正孔輸送層15のHOMOのイオン化ポテンシャルは4.6〜5.4eVであることが好ましい。一方、正孔輸送層15のLUMOのイオン化ポテンシャルは、電子を陽極側に流れ込ませないために、電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルに対して障壁が十分高くなるように設定する必要がある。従って、正孔輸送層15のLUMOのイオン化ポテンシャルは、2.1〜2.7eVであることが好ましい。
【0017】
電子輸送性発光層16は正孔輸送層15上に、電子輸送性材料としてのガリウム錯体等の金属錯体(金属キレート化合物)によって60nm以下の厚みで形成されている。金属錯体としては例えば、ビス−(8−ヒドロキシキナルジン)ガリウムピバレート〔bis−(8−hydroxyquinaldine)gallium pivalate〕、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体等が用いられる。ガリウム錯体の溶剤としてはメタノール等が使用される。この電子輸送性発光層16は、発光される光の波長が可視光域である必要があると共に、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等の金属又はフッ化リチウム(LiF)等の金属化合物を陰極としたときのその陰極との界面でエネルギー障壁がないことが好ましい。このため、電子輸送性発光層16のLUMOのイオン化ポテンシャルは、2.7〜3.3eVであることが好ましい。一方、電子輸送性発光層16のHOMOのイオン化ポテンシャルは、5.4〜6.0eVであることが好ましい。
【0018】
陰極13はアルミニウム、マグネシウム、リチウム等の被膜が真空蒸着法によって電子輸送性発光層16上に蒸着されることにより形成される。
次に、有機EL素子11の作製方法について説明する。
【0019】
まず、ガラス基板17上に真空蒸着法やスパッタリング法によってITOの被膜18が形成されることにより陽極12が得られる。ITOの被膜18上には正孔注入層14が正孔輸送性を有する水系の高分子材料を浸漬法(ディップコート法)又はスピンコート法等によって塗工(コーティング)することにより形成される。ディップコート法では、例えばポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸塩との混合物の水分散液が収容された収容槽中に、ITOの被膜18が形成されたガラス基板17を浸漬して引き上げることにより行なわれる。
【0020】
正孔注入層14上には正孔輸送層15が、前記PVKとTDAPBをクロロホルム等に溶解した溶液をディップコート法、スピンコート法等によって塗工することにより形成される。
【0021】
正孔輸送層15上には電子輸送性発光層16が、電子輸送性の材料としてのガリウム錯体を有機溶剤に溶解した噴霧溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって形成される。その噴霧法に使用される噴霧装置ついて説明すると、図1に示すように、密閉された噴霧装置本体21内の底部には温度制御用ヒータ22が据付けられ、その上には試料台23が支持されている。該試料台23上には支持板24が支持され、その支持板24上には有機EL素子11の陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が積層された積層体19が載置されている。
【0022】
該積層体19の上方位置には噴霧ノズル25が支持杆26を介して位置制御レール27に移動可能に支持され、積層体19に対する噴霧ノズル25の位置を窒素圧によって調整できるようになっている。噴霧装置本体21の一側方には噴霧溶液28が収容されたタンク29が配置され、そのタンク29と前記噴霧ノズル25とが輸送用チューブ30で接続されている。タンク29の隣接位置には第1窒素ボンベ31が置かれ、その第1窒素ボンベ31とタンク29との間が連結管32で連結されて窒素圧によってタンク29内の噴霧溶液28が噴霧ノズル25へと圧送されるようになっている。
【0023】
噴霧装置本体21の他側方には第2窒素ボンベ33が配置され、その第2窒素ボンベ33と噴霧ノズル25とが接続管34で接続されて窒素圧にて噴霧ノズル25から噴霧溶液28を所定のパターンで積層体19に向けて噴霧するようになっている。噴霧されたミストを形成する液滴37の粒径は1〜300μmであることが好ましい。この粒径が1μm未満の場合、液滴37が細かくなり過ぎてそのような液滴37を安定して得ることが困難になる。300μmを越える場合、液滴37中の有機溶剤の揮発を速やかに行うことができなくなる。前記窒素圧による噴霧ノズル25の移動、噴霧溶液28の供給、噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧パターンの制御は、図示しない制御装置によって行われる。
【0024】
図3に示すように、噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧は、ミストによる液滴37中の有機溶剤が揮発されやすい点から所定の待機時間35と噴霧時間36とが交互に繰り返される間欠パターンによって行われることが好ましい。この場合、噴霧ノズル25には一定の液圧と窒素圧が加えられ、噴霧時間36に噴霧ノズル25が開口され、待機時間35に噴霧ノズル25が閉鎖されるように制御される。間欠パターンは、噴霧時間36が0.1〜10秒であることが好ましく、待機時間35が0.1〜15秒であることが好ましい。
【0025】
さて、ITOの被膜18が形成されたガラス基板17上には正孔注入性を有する高分子材料が浸漬法、スピンコート法等によって形成される。その正孔注入層14上に正孔輸送層15を形成する場合には、前記高分子材料としてのPVKと低分子材料としてのTDAPBを含む有機溶剤溶液をディップコート法、スピンコート法等によって塗工することにより形成される。
【0026】
次に、電子輸送性発光層16を正孔輸送層15上に形成する場合には、前記の噴霧装置を用いた噴霧法によって行われる。すなわち、陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が設けられた積層体19を支持板24上に載せ、噴霧ノズル25からガリウム錯体がメタノール等に溶解された噴霧溶液28を間欠パターンで正孔輸送層15上に噴霧する。
【0027】
このとき、図4(a)に示すように、最初に正孔輸送層15上には噴霧溶液28のミストによる液滴37が所定量噴霧される。その後、待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。続いて、図4(b)に示すように、噴霧ノズル25から所定量の噴霧溶液28が噴霧され、各液滴37が前記皮膜38の特に窪んだ部分に滴下される。そして、前記と同様に待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。
【0028】
次いで、図4(c)に示すように、前記皮膜38上に噴霧ノズル25から所定量の噴霧溶液28が噴霧され、皮膜38の特に窪んだ部分に液滴37が形成され、待機時間35中に各液滴37中の有機溶剤が揮発して皮膜38が形成される。このようにして、皮膜38の表面が凹凸状態から次第に平坦化される。
【0029】
最後に、電子輸送性発光層16上にアルミニウムの被膜が真空蒸着法によって形成されることにより、陰極13が得られる。このようにして、陽極12、正孔注入層14、正孔輸送層15、電子輸送性発光層16及び陰極13が順に積層されることによって有機EL素子11が得られる。
【0030】
そして、有機EL素子11を直流電源に接続して動作させると、陽極12から正孔が正孔注入層14に注入され、注入された正孔は正孔輸送層15へと輸送され、更に電子輸送性発光層16へと輸送される。一方、陰極13からは電子輸送性発光層16に電子が注入され、電子輸送性発光層16において前記正孔と電子が再結合する。この再結合エネルギーによって有機EL素子11が発光する。このとき、有機層は正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16の3層から構成されているため、キャリア輸送と発光の機能が分離されて各機能がそれぞれ十分に発揮される。しかも、正孔輸送層15は有機溶剤に対して耐性を有することから、正孔輸送の機能が低下することなく安定して発揮される。
【0031】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の有機EL素子11の作製方法によれば、電子輸送性発光層16は正孔輸送層15上に噴霧法によって形成される。この噴霧法においては、陽極12上に正孔注入層14及び正孔輸送層15が形成された積層体19上に噴霧溶液28のミストによる微細な液滴が分散した状態で滴下されると同時に、微細な各液滴37から有機溶剤が速やかに揮発して皮膜38が形成される。その皮膜38上に更に噴霧溶液28のミストが滴下され、皮膜38が形成される。従って、電子輸送性発光層16を形成するための有機溶剤によって正孔輸送層15中の正孔輸送性材料が外部へ飛ばされたり、溶解されたりして損失を招くことを防止することができる。
【0032】
・ 更に、噴霧法において、噴霧パターンを噴霧時間36と待機時間35とを繰り返す間欠パターンにて行うことにより、噴霧されたミストによる液滴37中の有機溶剤が待機時間35中により揮発されやすいことから、皮膜38が速やかに形成される。このため、電子輸送性発光層16を形成する際に正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失をより確実に防止することができる。
【0033】
・ 加えて、ミストを形成する液滴37の粒径を1〜300μmに設定することにより、液滴37中の有機溶剤の揮発速度を適切なものにでき、電子輸送性発光層16を形成する際に正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失をより確実に防止することができる。
【0034】
・ 噴霧ノズル25からの噴霧溶液28の噴霧圧又は前記積層体19に対する噴霧ノズル25の位置を調整することにより、前記積層体19上へミストを吹き付ける際の液滴37を均一に揃えることができる。
【0035】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 噴霧装置本体21内の温度制御用ヒータ22を駆動させて噴霧装置本体21内の温度を上げたり、噴霧装置本体21内を減圧したりしてミストによる液滴37中の有機溶剤の揮発を促進させるように構成することもできる。
【0036】
・ 噴霧法におけるミストを形成する液滴37の大きさをできるだけ小さくし、ミスト状の吹き付けを連続的に行なうこともできる。
・ 電子輸送性発光層16を形成する電子輸送性材料を溶解する有機溶剤として、メタノール、アセトン等の低沸点のものを使用して揮発速度を速め、正孔輸送層15中の正孔輸送性材料の損失を確実に防止すると共に、電子輸送性発光層16を形成を速やかに行うように構成しても良い。
【0037】
・ 正孔注入層14を省略し、正孔輸送層15が正孔注入層14の機能を有するように構成しても良い。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0038】
・ 前記噴霧法に用いられる有機溶剤は低級アルコール又はケトンである。このように構成した場合、正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を確実に防止することができると共に、電子輸送性発光層を形成を速やかに行うことができる。
【0039】
・ 陽極12と陰極13との間には正孔注入層14、正孔輸送層15及び電子輸送性発光層16を設ける。このように構成した場合、キャリア輸送と発光の機能が分離されて各機能がそれぞれ十分に発揮される。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の有機EL素子の作製方法によれば、正孔輸送層上に電子輸送性発光層を形成する場合に正孔輸送層中の正孔輸送性材料の損失を防止することができる。
【0041】
請求項2又は請求項3に記載の発明の有機EL素子の作製方法によれば、請求項1に記載の発明の効果をより確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態における噴霧装置を示す概略説明図。
【図2】有機EL素子を示す概略断面図。
【図3】噴霧装置で間欠的に噴霧する際の間欠パターンを示すグラフ。
【図4】(a)〜(c)は噴霧法によって噴霧液を噴霧する際の作用を示す概略説明図。
【符号の説明】
11…有機EL素子、12…陽極、13…陰極、15…正孔輸送層、16…電子輸送性発光層、19…積層体、37…液滴。
Claims (3)
- 陽極と陰極との間には陽極側から少なくとも正孔輸送層及び電子輸送性発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法であって、
陽極上に少なくとも正孔輸送層が積層された積層体の正孔輸送層上に、電子輸送性の材料が有機溶剤に溶解された溶液をミスト状に吹き付ける噴霧法によって電子輸送性発光層を形成し、その上に陰極を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法。 - 前記ミスト状の吹き付けは間欠的に行なわれるものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法。
- 前記ミストを形成する液滴の粒径は1〜300μmである請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の作製方法。
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