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JP2004123468A - 光ファイバ母材の作製方法および光ファイバ母材 - Google Patents

光ファイバ母材の作製方法および光ファイバ母材 Download PDF

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JP2004123468A JP2002291328A JP2002291328A JP2004123468A JP 2004123468 A JP2004123468 A JP 2004123468A JP 2002291328 A JP2002291328 A JP 2002291328A JP 2002291328 A JP2002291328 A JP 2002291328A JP 2004123468 A JP2004123468 A JP 2004123468A
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Abstract

【課題】所望の母材径および空孔径を有する光ファイバ母材を容易に形成できる光ファイバ母材の作製方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ母材1に形成されるべき空孔4の所定径よりも径が大きな空孔14を有するガラス母材11を作製するガラス母材の作製工程と、当該空孔14の径が前記所定径となるように延伸する延伸工程を備える光ファイバ母材の作製方法により、光ファイバ母材を作製する。これにより空孔径を縮小させることができるので、ガラス母材11に小径の空孔を直接形成する必要はなくなり、ガラス母材11に形成する空孔14の径は、作業の容易な径とすることができる。延伸による空孔14の潰れや変形を抑制するため、ガラス母材11の延伸を複数回に分けて徐々にガラス母材11の径を縮小するようにすることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸方向に沿って空孔を有する光ファイバを作製するために用いられる光ファイバ母材の作製方法および光ファイバ母材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、図6(a)、(b)に示すように、クラッド領域内の所定の位置に、軸方向に沿った空孔を有する光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
図6(a)に示す光ファイバ101は、コア102の周囲のクラッド103内に空孔104(図6(a)中は6個)を形成したものである。この例の光ファイバ101によれば、空孔104内の屈折率がガラスに比べて極めて低いので、クラッド103の実効屈折率が低くなり、高い実効屈折率差を得ることができる。
【0003】
また、図6(b)に示す光ファイバ201は、空孔203を有しない中心部202の周囲に、多数の空孔203を有する円環領域204が形成されたものである。空孔203以外の中実の部分は、均一な媒質から構成されている。そして、空孔203の個数および間隔は、ブラッグ回折条件を満足するように決定されている。この例の光ファイバによれば、円環領域204によるブラッグ回折により、回折条件を満たす所定の波長の光を反射して、中心部202に閉じ込めて伝搬させることができる。
【0004】
これらの例に代表される、空孔を有する光ファイバは、大きな構造分散が得られるため分散補償に適するとともに、非常に大きな、あるいは非常に小さな実効コア断面積を実現できるため、多種多様な光学効果の利用が期待され、注目されている。
【0005】
これらの空孔を有する光ファイバは、従来の提案によれば、空孔を有する光ファイバ母材を作製したのち、これを加熱して線引きすることによって作製されている。空孔を有する光ファイバ母材を作製する方法としては、主として、
(1)中実のガラス母材の所定の位置にドリルなどを用いて穿孔する方法、
(2)複数のガラス管とガラス棒を束ね、加熱して管および棒の外面を融着させ、ガラス管の孔を残して一体化する方法、
の2通りがある。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−95628号公報
【特許文献2】
特開2002−145634号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、いずれの方法によっても、空孔径がドリル径または管径によって決定されるため、容易に形成できる空孔径には制約があり、特に、小径の空孔の形成は困難である。また、所望の特性を得るために空孔の径を変えると、ドリルや管の径を変える必要があるので、多種のドリルや管を用意する必要があり、生産性に劣る。
さらに、前記(1)の方法には、長尺の光ファイバ母材を得るためには長いドリルを用いて深い空孔を開ける必要があるが、あまりに長いドリルではドリルが折れやすくなる等、穿孔作業が実質的に不可能であるという問題がある。前記(2)の方法には、ガラス管を正確に配置する必要があるので、特に細いガラス管を束ねる場合、作業に手間が掛かるという問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、空孔径を所望の値とせずとも、母材径を適宜変え、母材径と空孔径との比率が目標のものと等しくなるように光ファイバ母材を作製する方法が考えられる。しかし、この方法では、母材径に対する空孔径の比率が非常に小さい場合、母材径を非常に大きくせざるを得ないので、線引きの作業に支障をきたすおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、所望の母材径および空孔径を有する光ファイバ母材を容易に形成できる光ファイバ母材の作製方法およびこの作製方法により作製された光ファイバ母材を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、軸方向に沿った所定の領域に所定径の空孔を1つ以上有する光ファイバ母材の作製方法であって、前記所定径より大きな空孔を有するガラス母材の作製工程と、当該空孔径が前記所定径となるように前記ガラス母材を延伸する延伸工程とを備えることを特徴とする光ファイバ母材の作製方法を提供する。
この作製方法によれば、延伸工程により、ガラス母材の空孔径を縮小させることができるので、ガラス母材の作製工程において、ガラス母材に小径の空孔を直接形成する必要はなくなり、ガラス母材に形成する空孔の径は形成の容易な径とすることができる。さらに、延伸工程において、母材の長さを長くすることができるので、長尺の光ファイバ母材を得ることができる。
【0011】
延伸工程において、以下に示す手法のいずれか一つまたは複数を行うと、空孔が潰れたり、変形したりすることを抑制することができるので、好ましい。
(1)延伸を複数回に分け、徐々に径を縮小する。
(2)延伸の際、ガラス母材中の空孔を封止せず、その開口部を大気に開放しておく。
(3)延伸前にガラス母材の空孔を両端封止したのち、該ガラス母材の一部を加熱して、空孔中に膨大部を形成する前工程を行う。
(4)延伸前に、ガラス母材の一端または両端に前記空孔と連結するガラス管を接続する前工程を行い、延伸時に、このガラス管を介して空孔の内圧を制御する。
【0012】
ガラス母材の延伸後、さらに、その外周にクラッド用ガラスの外付けを行うことにより、母材径に対する空孔径の比がより小さな光ファイバ母材を作製することができる。これにより、母材径と空孔径との比を自在に変え、所望の母材径および空孔径を有する光ファイバ母材の作製が可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本実施の形態の光ファイバ母材の作製方法を説明する図である。図1(c)は、光ファイバ母材1の断面図である。この光ファイバ母材1は、円柱状に作製されており、高屈折率のコア部2と低屈折率のクラッド部3とを有している。クラッド部3は、内側クラッド部3aと外側クラッド部3bに分かれており、内側クラッド部3a内に所定の径を有する複数の空孔4が形成されている。
【0014】
コア部2およびクラッド部3を形成する成分は特に限定されるものではないが、コア部2としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)など屈折率を高くするドーパントが添加された石英ガラスを用いることができる。また、クラッド部3としては、例えば、純粋な石英ガラスや、フッ素(F)など屈折率を低くするドーパントが添加された石英ガラスを用いることができる。
内側クラッド部3aと外側クラッド部3bとは、図1中では、後述する作製方法の説明のため、区別を設けているが、必ずしも媒質として異なるものではなく、同一の媒質とすることができる。また、それらの境界線も必ずしも明確に識別されうるものではない。
【0015】
空孔4の個数、径、配置は、特に制限されるものではなく、従来の提案にあるように、空孔4の形成による実効屈折率に基づいて、適宜設計したものを採用することができる。また、空孔4の内部を満たす媒質は、所望の光学特性が得られる限り、特に限定されるものではなく、例えば、空気や不活性ガスを充填してもよい。また、真空にしてもよい。
【0016】
本実施の形態においては、図1(c)に示す光ファイバ母材1を作製するに当り、まず、図1(a)に示すように、前記所定径より径の大きな空孔14を有するガラス母材11を作製するガラス母材の作製工程と、次いで、図1(b)に示すように、当該空孔14の径が前記所定径となるように延伸する延伸工程とを用いることを特徴とする。これにより、延伸後の空孔4の径は、延伸前の空孔14の径より小さくなるので、ガラス母材の作製工程において、該ガラス母材11に設ける空孔14の径は、光ファイバ母材1に形成されるべき空孔4の所定径より大きくすることができ、空孔14の形成は容易である。また、延伸工程により、元のガラス母材11より空孔14の径が小さく、長尺の光ファイバ母材1を得ることができる。このように、小径の空孔4を有する長尺の光ファイバ母材1の作製が容易になる。
ガラス母材11の母材径としては、例えば、40〜100mmとすることができる。
【0017】
空孔14を有するガラス母材11を作製する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、VAD法、MCVD法、OVD法などの公知の方法を用いて、コア部12とクラッド部13とを有する中実のガラス母材11を作製した後、ダイヤモンド刃などのドリルにより空孔4を穿孔したのち、穿孔後の空孔14の内面を内面研磨やエッチングにより表面平滑化する方法が挙げられる。
この場合、ガラス母材11の空孔14の径は、また、延伸の比率を変えることにより、延伸後の空孔4の径を自由に変えることができるので、目的とする光ファイバ母材1の空孔4の径より大きく、穿孔作業や表面平滑化処理の容易な径とすることができ、空孔14の穿孔や研磨のためのツールの種類は少なくて済み、生産性が向上する。
【0018】
また、空孔14を有するガラス母材11を作製する方法として、所定の径を有するガラス管とガラス棒を複数用意し、所定の配置に束ねて(バンドルして)、加熱し一体化させる方法を採用してもよい。
この場合、ガラス管およびガラス棒の寸法は、目的とする光ファイバ母材1ではなく、延伸前のガラス母材11の寸法によって決定され、延伸前のガラス母材11の外径は、目的とする光ファイバ母材1の外径より太いので、ガラス管やガラス棒の内外径を大きくすることにより、取扱い性を向上させ、バンドル作業を容易にすることができる。また、延伸の比率を変えることにより、延伸後の空孔4の径を自由に変えることができるので、用意すべきガラス管やガラス棒の径も少ない種類で済み、生産性が向上する。
上記ガラス管およびガラス棒は、円柱状でもよいが、外面を四角柱状や六角柱状に研磨しておくと、束ねる際にズレにくくなるので、より好ましい。
【0019】
次いで、ガラス母材の作製工程において得られた空孔14を有するガラス母材11を、延伸工程により、延伸する。空孔14を有するガラス母材11を延伸するためには、中実の石英ロッドの延伸に用いられている公知の延伸機を用い、ガラス母材11を加熱して軟化させ、一端または両端を牽引手段により牽引することにより、延伸することができる。
【0020】
延伸後の母材径を所望の値にするためには、加熱温度や牽引手段の牽引条件を制御することが好ましい。
加熱温度としては、1800〜2000℃とすることが好ましい。加熱温度が前記下限値未満であると、充分に効率よく延伸することができない。また、前記上限値を超えると、ガラスの粘度が低くなり、空孔の潰れや膨らみ、変形などが発生するおそれがあるので好ましくない。
また、牽引手段の牽引速度としては、20mm/min〜150mm/minとすることが好ましい。
牽引力が強すぎたり、牽引速度が速すぎたりすると、母材径の調節が難しく、母材径が細くなりすぎたり、母材の長手方向で、母材径の変動が大きくなったりし、延伸後の母材径を所望の値にすることが困難である。また、牽引力が弱すぎたり、牽引速度が遅すぎたりすると、延伸工程に時間が掛かり、生産性が低下する等の不都合がある。
【0021】
空孔14を有するガラス母材11の延伸は、ガラス母材11の外径を一度に細くすると、引き取り速度が速くなり、制御が難しく、空孔14が変形しやすい。また、あまりに遅すぎても、制御しにくい。このため、空孔14の潰れや変形を抑制するためには、一度に延伸せず、複数回に分けて行うことが好ましい。それぞれの回の延伸において、延伸前の母材径に対する延伸後の母材径の比率が、いずれも1/2以上となるようにすることが好ましい。例えば、母材径を1/4とするためには、母材径が1/2倍になる延伸を2回行うことにより、空孔14の潰れや変形をほとんど起こすことなくガラス母材11を延伸することができる。
【0022】
延伸の際、空孔14の内圧が過度に高くなったり、あるいは過度に低くなったりすると、空孔14が膨らんだり、潰れたり、変形したりするおそれがある。
例えば、加熱を続けるうちに、ガラス母材11の温度が高くなっていく状況では、空孔14の内圧が高まるとともに、ガラス母材11を軟化させた部分の粘度が低下していくので、図2(a)に示すように、空孔4の内径が徐々に広くなってテーパ状となり、ついには膨らみや変形5などの欠陥を生じるおそれがある。
また、空孔14の内圧が過度に低下した場合には、図2(b)に示すように、空孔の潰れ6が生じるおそれがある。
【0023】
このような欠陥の発生を抑制するため、空孔14の内圧などの作製条件を適宜調節しながら延伸することが好ましい。以下、空孔14の内圧の調節が可能な手法について説明する。
【0024】
第1の手法は、図3(a)に示すように、ガラス母材11の一端または両端にガラス管15を接続し、ガラス管15と空孔14とを連通させる方法である。この方法によれば、空孔14の内圧が常に大気圧に等しく保たれるので、空孔14の膨らみや変形が抑制される。
ガラス管15は、すべての空孔14が大気に接触するように、空孔14が開口している領域を覆うだけの内径を有する必要がある。ガラス管15の肉厚は、あまりに薄いと破損しやすいので、ガラス管15の肉厚と外径との比が1/6以上(例えば外径が30mmのとき肉厚5mm以上)とすることが好ましい。
【0025】
図3(a)には、ガラス管15を両端に接続した様子を示したが、ガラス管15をガラス母材11の一端のみに接続してもよい。この場合、ガラス母材11の他端には、中実のガラス棒(ダミー棒)を接続することが好ましい。
これにより、延伸の際、ガラス母材11を把持する代わりに、ガラス管15やダミー棒を把持して支えることができるので、ガラス母材11を有効に利用することができる。
【0026】
次いで、図3(b)に示すように、ガラス管15を接続したガラス母材11を、延伸装置内に配置する。この延伸装置は、少なくとも把持手段31と、ヒータ32と、牽引手段33とを備えている。把持手段31により一方のガラス管15aを把持し、ガラス母材11をヒータ32により加熱しながら、牽引手段33により他方のガラス管15bに牽引力を与えてガラス母材11を延伸する。
この際、空孔14がガラス管15を介して大気に開放されているので、空孔14内の空気が加熱により膨張しても、空孔14の内圧が常に大気圧に等しく保たれる。このため、空孔の膨らみや変形が抑制される。
【0027】
延伸されたガラス母材11からガラス管15a、15bを切除し、所望の長さごとに切断することによって、所望の径の空孔4を有する光ファイバ母材1が得られる。
【0028】
第2の手法は、図4(a)に示すように、ガラス母材11の両端に中実のガラス棒(ダミー棒)16を接続して、空孔14を封止したのち、ガラス母材11の一部を加熱して、空孔14の一部を膨らませて膨大部17を形成する方法である。延伸に用いる延伸装置の構成は、図4(b)に示すように、上述の第1の手法に説明したもの(図3(b)参照)と同様とすることができるので、説明を省略する。
【0029】
膨大部17を形成する位置は、ガラス母材11を延伸装置内に配置した時、牽引手段33の反対の側、すなわち、把持手段31側とすることが好ましい。これにより、膨大部17は最後まで延伸されずに済む。膨大部17を形成した箇所は、光ファイバの作製に用いることができないので、膨大部17に達する手前で延伸の作業を終了し、膨大部17の近傍部は切除することが好ましい。
【0030】
膨大部17を形成する方法としては、延伸の際に用いるヒータ32と同程度の長さの加熱装置を用い、延伸時の加熱温度と同程度に加熱して、自然に膨張するして、空孔14の内圧が外気圧とほぼ釣り合う程度まで膨張させる。このようにして膨大部17を形成した場合、膨大部17の直径は、延伸前の空孔14の直径の1.0〜2.0倍程度になる。
このようにして、空孔14を密閉した状態で、該空孔14に膨大部17を形成することにより、延伸工程において加熱したときに、空孔14の内圧が外気圧とほぼ釣り合う程度となり、空孔14の膨張や変形が抑制される。
【0031】
第3の手法は、まず、図5(a)に示すように、ガラス母材11の一端にガラス管15を、他端に中実のダミー棒16を接続したのち、図5(b)に示すように、ガラス管15の開口側に圧力コントローラ34を取り付けて、空孔14内の内圧を制御する方法である。
圧力コントローラ34は、ピストンや圧力調整弁などの圧力調整手段を備え、空孔14内を所望の圧力とすることができる装置である。
【0032】
さらに、図5(b)に示す延伸装置には、ヒータ32および圧力コントローラ34を制御するための制御器35が備えられている。この制御器35により、ヒータ32の加熱温度および空孔14の内圧が制御される。
このような延伸装置を用いて延伸を行うことにより、空孔14の膨らみや変形が抑制される。
空孔14の内圧の制御は、外気の圧力との差が、+0.0kPa〜+2.0kPaの範囲内となるようにし、また、延伸工程に亘る空孔14の内圧の変動幅が±0.1kPa以下となるように行うことが好ましい。空孔14の内圧の変動が大きいと、母材の長手方向に亘る空孔14径の変動が大きくなり、空孔14の潰れや膨らみなどが生じやすくなるので、好ましくない。
また、空孔14の内圧を、ヒータ32の加熱温度に応じて制御することにより、加熱されたガラス母材11のガラスの粘度に応じて、適切な内圧を設定することができるので、好ましい。
【0033】
さらに、上述のようにガラス母材11を延伸した後、図1(c)に示すように、延伸後の母材21の外周上にクラッド用ガラスを外付けして、外側クラッド部3bを形成し、光ファイバ母材1とする。これにより、母材径を増大させることができるので、光ファイバ母材1の径に対する空孔4の径の比率を小さくすることができる。従って、この光ファイバ母材1を線引して得られる光ファイバは、ファイバ径に対する空孔径の比も小さくなる。このため、小径の空孔を有する光ファイバを容易に作製することができる。
【0034】
母材径を増大させる処理の具体例としては、延伸母材21を石英ガラス管などのジャケット管に入れ、加熱してコラプスする方法、MCVD法やOVD法等の手法を用いて、延伸母材21の外周にガラス粒子を堆積させたのち、そのガラス粒子を焼結して透明ガラス化する方法が挙げられる。
【0035】
以上のように、本実施の形態の光ファイバ母材の作製方法によれば、空孔14を有するガラス母材11を作製して、延伸したのち、その外周に外側クラッド部3bを外付けして光ファイバ母材1を得るので、光ファイバ母材1の径および空孔4の径を適宜変化させ、所望の寸法の光ファイバ母材1を容易に作製することができる。また、空孔14の内圧を制御しながら延伸することにより、空孔14の潰れや膨らみ、変形を抑制し、長手方向に均一な空孔4を有する光ファイバ母材1を得ることができる。
【0036】
【実施例】
石英ガラスを主成分とするガラスからなる中実のガラス母材をVAD法により作製し、このガラス母材に、ダイヤモンド刃のドリルを用いて、表1に示す寸法の空孔14を穿設して、空孔14を有するガラス母材11を作製した。
このガラス母材11を延伸装置内に配置し、1850℃に加熱して、外径が約1/2になるように延伸した。得られた光ファイバ母材1の空孔4を観察したところ、潰れや変形がなく、径が長手方向に均一になっていた。空孔4の直径を測定したところ、表1に示すように、延伸前に対してほぼ1/2倍となっており、延伸前後の母材径の比とほぼ等しくなるように、空孔径を縮径することができた。
【0037】
【表1】
Figure 2004123468
【0038】
次に、延伸回数を1回とした場合と、2回にした場合との効果の違いを調べるため、以下の実験を行った。
まず、石英ガラスを主成分とするガラスからなる中実のガラス母材をVAD法により作製し、このガラス母材に、ダイヤモンド刃のドリルを用いて、表2に示す寸法の空孔14を穿設して、空孔14を有するガラス母材11を作製した。
延伸機を用いて、ガラス母材11を1850℃に加熱して、外径が約1/4になるように1回で延伸したところ、空孔4が潰れてしまった。
延伸回数を2回とし、1回の延伸で母材径が約1/2になるように延伸したところ、空孔4の潰れのない光ファイバ母材1を作製することができた。
【0039】
【表2】
Figure 2004123468
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ファイバ母材の作製方法は、所定径の空孔が設けられた光ファイバ母材を作製するために、前記所定径より大きな空孔を有するガラス母材の作製工程と、当該空孔径が前記所定径となるように前記ガラス母材を延伸する延伸工程とを備えるものであるので、ガラス母材の作製工程においてガラス母材に設ける空孔の径は、光ファイバ母材に形成されるべき空孔の所定径より大きくすることができ、小径の空孔を有する光ファイバ母材の作製が容易になる。
また、延伸工程により、ガラス母材を線引きの作業に支障をきたさない程度に縮径することができることを考慮すれば、延伸前のガラス母材の母材径を太くすることができるので、空孔を有するガラス母材の作製工程における生産性を向上することができる。
また、空孔をドリルを用いて穿設する場合には、ガラス母材に設ける空孔の深さをあまり深くする必要がなくなるので、空孔の形成が極めて容易になるとともに、長尺の光ファイバ母材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ母材の作製方法を説明する断面図である。
【図2】ガラス母材の延伸の際に発生しうる欠陥の例を示す側面図である。
【図3】延伸方法の第1の例を説明する断面図である。
【図4】延伸方法の第2の例を説明する断面図である。
【図5】延伸方法の第3の例を説明する断面図である。
【図6】従来の空孔を有する光ファイバの例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…光ファイバ母材、3…クラッド部、3b…外側クラッド部、4…光ファイバ母材の空孔、11…ガラス母材、14…ガラス母材の空孔、15…ガラス管。

Claims (7)

  1. 軸方向に沿った所定の領域に所定径の空孔を1つ以上有する光ファイバ母材の作製方法であって、
    前記所定径より大きな空孔を有するガラス母材の作製工程と、
    当該空孔径が前記所定径となるように前記ガラス母材を延伸する延伸工程と
    を備えることを特徴とする光ファイバ母材の作製方法。
  2. 前記延伸工程において、前記ガラス母材の初期空孔径と、前記所定径との間に1つ以上の目標空孔径を設定し、ガラス母材を空孔径が前記目標空孔径となるように延伸した後、前記所定径となるように前記ガラス母材を延伸することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ母材の作製方法。
  3. 前記延伸工程において、ガラス母材中の空孔を封止せず、その開口部を大気に開放しておくことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材の作製方法。
  4. 前記延伸工程において、延伸前にガラス母材の空孔を両端封止したのち、該ガラス母材の一部を加熱して、空孔中に膨大部を形成する前工程を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材の作製方法。
  5. 前記延伸工程において、延伸前に、ガラス母材の一端または両端に前記空孔と連結するガラス管を接続する前工程を行い、延伸時に、このガラス管を介して空孔の内圧を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ母材の作製方法。
  6. 延伸工程の後、さらに、その外周にクラッド用ガラスの外付けを行う外付け工程を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに光ファイバ母材の作製方法。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の光ファイバ母材の作製方法によって作製されたことを特徴とする光ファイバ母材。
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