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JP2004014560A - 太陽電池素子およびその製造方法 - Google Patents

太陽電池素子およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】単位面積当たりの発電効率に優れ、高い信頼性および歩留まりで製造可能な、直列積層構造を有する太陽電池素子を提供する。
【解決手段】複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子であって、前記発電領域は、少なくとも第一のp層およびi層3a、第一のn層3bからなる光電変換層である上部セル3と、第二のp層およびi層4a、第二のn層4bからなる光電変換層である下部セル4が順に積層された構造を有しており、該第一のn層3bは微結晶シリコンを含む半導体膜であり、該第一のn3b層とコンタクトライン8との間には不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材からなる第一のn層分離ライン7を備えており、該第一のn層3bとコンタクトライン8とは直接接触しない構造を有することを特徴とする太陽電池素子。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池素子に関する。より詳細には、本発明は、絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子に関する。
【0002】
また、本発明は、上記の太陽電池素子の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子の製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
太陽光線から太陽電池を使って直接電気エネルギーを発生する太陽光発電システムは、近年その技術開発が急速に進歩し、実用に耐える発電方法としても技術的見通しがつきつつある。その結果、太陽光発電システムは、21世紀の地球環境を化石エネルギーの燃焼による環境汚染から守る本格的なクリーンエネルギー技術としてその将来が期待されている。
【0004】
ここで、太陽電池に用いられる太陽電池素子の材質の種類には、大きく分けて下記の4種類がある。
(i)IV族半導体
(ii)化合物半導体(III−V族、II−VI族、I−III−VI族)
(iii)有機半導体
(iv)湿式太陽光発電に用いられるTiOなどの化合物
これらの材質の中でも、他の材質と比較して低コストでの製造が可能であるために現在最も実用化が進んでいるのが、IV族半導体である。IV族半導体は大きく(i)結晶系半導体と(ii)非晶質半導体(別名、アモルファス半導体とも呼ばれる)に分けられる。
【0005】
太陽電池素子として用いられる結晶系半導体の材質としては、たとえば、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、多結晶シリコン、微結晶シリコンなどが挙げられる。
【0006】
また、太陽電池素子として用いられる非晶質半導体としては、たとえば、アモルファスシリコンなどが挙げられる。
【0007】
ここで、このような半導体からなる材質を用いて製造された太陽電池素子は、大きく分けて、下記の3つの種類に分けられる。
(i)pn接合型
(ii)pin接合型
(iii)ヘテロ接合型
これらの中でも、一般に、キャリア拡散距離の大きな結晶系半導体を用いた太陽電池素子ではpn接合型が用いられることが多い。また、キャリア拡散距離が小さく局在準位が存在する非晶質半導体でを用いた太陽電池素子では、キャリアをi層(真性層)中の内部電界によりドリフトで移動させることが有利であるため、pin接合型が用いられることが多い。
【0008】
そして、一般に、pin接合型の太陽電池素子は、ガラスなどの絶縁透光性基板上にSnOやITO、ZnOなどの透明導電膜が形成され、その上に非晶質半導体のp層、i層、n層がこの順に積層されて光電変換層が形成され、その上に金属薄膜などからなる裏面電極が積層されてなる構造を有することが多い。また、逆に、金属薄膜などからなる裏面電極の上に非晶質半導体のn層、i層、p層がこの順に積層されて光電変換層が形成されその上に透明導電膜が積層されてなる構造を有するpin接合型の太陽電池素子も存在する。
【0009】
これらのうちp−i−n層の順に積層する方法は、透光性絶縁基板が太陽電池表面カバーガラスを兼ねることができること、また、SnOなどの耐プラズマ性透明導電膜が開発されて、この上に非晶質半導体からなる光電変換層をプラズマCVD法で積層することが可能となったことなどの理由から多用されるようになり現在の主流となっている。
【0010】
ここで、上記のような太陽電池素子を用いて製造された太陽電池のエネルギー変換効率は、入力となる太陽輻射光エネルギーと、太陽電池の端子から出てくる電気出力エネルギーの比を%で表したものである。
【0011】
すなわち、変換効率ηは、
η=(太陽電池の電気出力)/(太陽電池に入った太陽エネルギー)×100%
と定義することができる。
【0012】
また、国際電気規格標準化委員会では、変換効率の測定基準を統一するため、太陽輻射の空気質量通過条件がAM(air mass:通過空気質量)1.5で、100mW/cmという入力光パワーに対して、負荷条件を変えた場合の最大電気出力との比を百分率で表わしたものを公称効率と定義している。
【0013】
そして、太陽電池の公称効率ηは、上記の条件に基づく太陽電池の出力測定法から求められる最大出力点電圧Vmax、最大出力点電流Imax、開放電圧Vocおよび短絡光電流密度Iscなどから導くことができる。
【0014】
すなわち、太陽光線の入力光パワーをPinで表わし、太陽電池の有効受光面積をS(cm)とすると、
Figure 2004014560
で表わすことができる。
ただし、上記の式で、F.F.=(Vmax・Imax)/(Voc・Isc)であるものとする。
【0015】
ここで、F.F.は曲線因子(fill factor)と呼ばれ、太陽電池の性能のよさを示す重要な指数として扱われている。
【0016】
また、上記の式を見れば分かるように、入力パワーを100mW/cm−2に規格化した測定では、実験で求められるVocならびにIscとFFが分かれば、それらの積を求めることにより、太陽電池の公称効率を求めることができる。
【0017】
一般に、上記のようにして求められる太陽電池の公称効率は10〜20%程度であるのが現状である。すなわち、太陽エネルギーの80〜90%程度は電気エネルギーに変換されず、どこかに消えているわけである。その理由としては、下記のような原因が考えられている。
【0018】
(i)太陽光がセル表面で反射する。
たとえば、シリコン太陽電池のシリコン板の表面は、黒っぽい鏡のようであるが、これはセル表面で光が反射するからである。一般にこれらの反射を減らすためにセル表面に反射を防止する膜が施されている。
【0019】
(ii)太陽光の全波長を吸収できない。
太陽光線の大部分は波長0.2〜3μm(紫外線、可視光線、赤外線)からなっているが、太陽光線はこれらの全波長域を吸収することはできない。どの波長をより効率よく電気エネルギーに変換するかは、太陽電池の材質、作り方などにより影響される。
【0020】
(iii)自由電子、自由ホール発生率が100%にならない。
光が当たっても自由電子、自由ホールが発生しないことがあり、発生しても寿命があるため、電気エネルギーとして取出される前にすぐに消滅してしまうことがある。
【0021】
(iv)自由電子、自由ホールの収量が100%にならない。
pn接合面などで発生、分離された自由電子、自由ホールは、電極方向に移動中にある程度消滅する。
【0022】
(v)太陽電池内部に抵抗がある。
シリコン材料や電極部などに電気抵抗があり、発生した電気を全部外部に取出すことができないため、F.F.が低下する。
【0023】
すなわち、これらの原因を除去あるいは低減することにより、現在の太陽電池の公称効率をさらに向上させることができるといえる。
【0024】
また、これらの努力に加えて、太陽電池の基板上により多くの光電変換層を設ける集積化の高度化により、太陽電池の公称効率を向上させようという取り組みも行なわれている。
【0025】
たとえば、多重接合型とよばれる太陽電池素子においては、多数の光電変換層を光の進行方向に積層することにより、短波長側の光から順次各光電変換層に吸収され、それぞれの禁止帯幅Egに見合った電圧を発生するように構造が設計されている。
【0026】
また、光電変換層における光の吸収効率を高めるために、太陽電池素子の裏面電極として、Ag、Alなど反射率の高い材料を使用し、また光電変換層と裏面電極の間に透明電極を挟むことで光を散乱させ、光電変換層中における入射光の光路長を大きくして、太陽電池の変換効率を向上させる方法も併せて用いられることが多い。この際、透明電極としては、たとえば、SnO、ZnO、ITOなどを含む材質が使用されることが多い。
【0027】
また、太陽電池素子の発電領域1箇所において発生する電圧をより高めるために、2層ないし3層に光電変換層を積層した発電領域を有する太陽電池素子の開発も近年盛んに行なわれている。さらに、太陽光線の有する異なる波長のエネルギーを有効に利用するために、上部光電変換層と下部光電変換層のバンドギャップが異なる、マルチバンドギャップ型の発電領域を有する太陽電池素子の開発も進められている。
【0028】
ここで、一般に、エレクトロニクス機器を太陽電池で駆動したり、電力用として太陽電池を用いる場合においては、発電領域1箇所において発生する電圧が一般に1V以下であるため、複数個の発電領域を直列に接続した構造からなる大面積を有する太陽電池素子を用いる必要がある。
【0029】
たとえば、一般的な太陽電池素子は、絶縁性基板上にパターニングプロセスなどを用いて作成されるが、この場合、1枚のガラス基板などの透光性絶縁基板上に、透明電極、光電変換層および裏面電極を有する複数の発電領域が形成され、さらに、これらの隣接する発電領域が直列接続されたような構造が多く用いられている。
【0030】
また、上記の太陽電池素子のパターニングプロセスにおいては、従来は樹脂マスクなどを用いたエッチングによるパターニングが行なわれてきた。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが難しいなどの問題点を有している。
【0031】
これに対して、レーザの照射による加熱を利用したパターニングが近年開発され、盛んに用いられている。このレーザを用いたパターニング方式は、積層構造の形成プロセスの減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状などの任意の構造の基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大でき、連続一貫生産および自動化生産に適するという利点を有する。
【0032】
特に、従来の樹脂マスクなどを用いたエッチングによるパターニングにおいては隣接する発電領域との距離が3mm程度必要であったところ、レーザの照射による加熱を利用したパターニングを採用することによって該距離を0.5mm以下に短縮することができる。そのため、レーザの照射による加熱を利用したパターニングを採用することによって、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積の増大を通じて、太陽電池素子の単位面積当たりの出力を一般に30%以上向上させることができる。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
このような光電変換層を積層した発電領域を有する太陽電池素子(本明細書において、積層型太陽電池素子とも呼称する)においては、たとえば該発電領域が上部光電変換層(本明細書において、上部セルとも呼称する)と下部光電変換層(本明細書において、下部セルとも呼称する)からなる二層構造の発電領域である場合には、上部セルn層と下部セルp層とのコンタクト性などにより、積層型太陽電池素子の発電効率が左右されるということが一般的である。
【0034】
ここで、上部セル内にアモルファスシリコンを主要な材質とする半導体薄膜のi層、下部セル内に微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜のi層を有する発電領域を備えた太陽電池素子を用いて太陽光発電を行なう場合には、その太陽電池素子の製造工程において、上部セルのn層を微結晶化させることにより、その表面に積層させる下部セルのp層が微結晶化しやすくなり、さらにその表面に積層させる下部セルのi層も微結晶化しやすくなる。その結果、良質な微結晶シリコンを主要な材質とする下部セルのi層が得られ、太陽電池素子の発電効率が向上する。よって、太陽電池素子の発電効率を向上させるためには、上部セルのn層の微結晶の結晶化率を上げていくことが有効である。
【0035】
また、上部セルのn層を微結晶化させることには、下部セルのp層とのコンタクトを改善し、太陽電池素子のF.F.を安定させ、その結果、太陽電池素子の発電効率を安定させるという長所もある。
【0036】
ここで、このような積層型太陽電池が十分な電圧を発生させるためには、複数の光電変換層を積層した発電領域が直列接続した構造の積層構造(本明細書において、直列積層構造とも呼称する)を有することが必要である。ところが、上部セルのn層に微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜を有する構造を備えた積層型太陽電池素子においては、レーザの照射による加熱を利用したパターニング(本明細書において、レーザパターニングとも呼称する)などの従来公知の方法によって直列積層構造を形成すると、上部セルにおいて短絡が生じ、積層型太陽電池素子の出力が低下する場合があるという問題があった。
【0037】
上部セルのn層に微結晶シリコンを有する構造の太陽電池素子において直列積層構造を形成する場合においても、裏面電極と表面電極を導電性材料を充填したコンタクトラインで接続して隣接する発電領域間を直列接続することが必要である。しかし、このような構造を有する太陽電池素子では、レーザパターニングなどの従来公知の方法を用いてこのようなコンタクトラインを形成すると、コンタクトラインと上部セルのn層とが直接に接触してしまう場合が多い。
【0038】
たとえば、上部セルのn層が微結晶シリコンでない場合と同様の、一般的な直列積層構造で上部セルと下部セルの二層構造からなる発電領域を有する直列積層型太陽電池を作製した場合、図4に示したような構造になる。
【0039】
ところが、このような直列積層構造にした場合、上部セルのn層(すなわち第一のn層)3bが微結晶シリコンである場合、成膜条件によっては、上部セルのn層(すなわち第一のn層)3bとコンタクトライン8との間にリーク電流が生じる場合がある。すなわち、裏面電極5と表面電極2とを電気的に接続するコンタクトライン8により隣接する発電領域間を接続すると、上部セルのn層(すなわち第一のn層)3bとコンタクトライン8の開溝とが直接に接触することとなる。そのため、上部セル3が短絡状態になり、この直列積層型太陽電池素子の出力が、本来の出力よりも低くなってしまうという問題が生じる。
【0040】
なお、図4において、符号1は絶縁透光性基板を、2は表面電極を、3aは第一のp層およびi層を、4は下部セルを、6は表面電極分離ラインを、9は裏面電極分離ラインをそれぞれ示すものとする。
【0041】
そして、このような問題を克服するべく、現在、多くの方面において多大な研究開発の努力が払われている。たとえば、特開平9−129903号公報には、図5に示したような直列積層構造が開示されている。しかし、図5に示したような直列積層構造にした場合、表面電極2と上部セル3を同時にレーザパターニングした場合、表面電極2が十分に加工されないと、表面電極2同士は発電領域間で分離ができた場合でも、上部セル3の側面に昇華された表面電極2が再付着し、その後、超音波洗浄などの洗浄を行った場合でも、上部セルのn層(すなわち第一のn層)3bと表面電極2との間に短絡が生じて太陽電池素子の出力の低下を招く場合があり、太陽電池素子の製造工程における歩留まりの低下の原因となるという問題がある。
【0042】
さらに、図5に示したような直列積層構造を有する太陽電池素子においては、下部セル4の材質として微結晶シリコンを含む材質を用いて、かつCVD法により下部セル4を形成する場合には、下部セル4は2μm以上の分厚い膜厚を必要とする。その上、この場合には、下部セル4と絶縁透光性基板1とが直接接触する部位が存在するため、下部セル4の形成工程において、下部セル4の成膜条件によっては、下部セル4の剥離が高い頻度で生じる。そのため、太陽電池素子の信頼性の低下を招き、太陽電池素子の製造工程における歩留まりが低下するため、太陽電池素子の効率を向上させるのに制約を受けるという問題がある。
【0043】
また、通常の太陽電池素子の製造工程においては、表面電極2のレーザスクライブ後にセル間の分離抵抗を測定し、分離が十分ではない場合、その後の工程に流れないように排除したり、加工不良場所をリペア―することにより、太陽電池素子の材料の有効利用を図ったり、太陽電池素子の平均出力の向上を図ることが一般的である。しかし、図5の構造を備えた太陽電池素子の製造プロセスでは、上記の分離の確認および加工不良場所のリペアーができないため、太陽電池素子の材料が一部無駄になり、太陽電池素子の平均出力が低下するという問題がある。
【0044】
そして、図5に示したような直列積層構造を有する太陽電池素子の製造工程においては、第一のn層3b形成後の表面電極2のレーザスクライブ後に、表面電極2の残渣を除去するために純水中にて超音波洗浄が必須となる。このとき、第一のn層3bの裏面側に導電層が無い構造の場合には、純水中で洗浄することにより、第一のn層3bと下部セル4のp層とのコンタクト性が悪くなり、太陽電池素子のF.F.の低下を招く場合があるという問題もあった。
【0045】
なお、図5において、符号3aは第一のp層およびi層を、5は裏面電極を、6は表面電極分離ラインを、8はコンタクトラインを、9は裏面電極分離ラインをそれぞれ示すものとする。
【0046】
また、特開平9−129906号公報には、図6に示したような直列積層構造が開示されている。
【0047】
ここで、図6に示したような直列積層構造を有する太陽電池素子においても、CVD法により下部セル4を形成する場合には下部セルは2μm以上の分厚い膜厚を必要とし、その上、下部セル4と絶縁透光性基板1とが直接接触する部位が存在するため、下部セル4の形成工程において、下部セル4の成膜条件によっては、下部セル4の剥離が高い頻度で生じ、信頼性の低下を招き、太陽電池素子の製造工程における歩留まりが低下し、素子の効率を向上させるのに制約を受けるという問題点があった。
【0048】
なお、図6において、符号1は絶縁透光性基板を、2は表面電極を、3は上部セルを、3aは第一のp層およびi層を、3bは第一のn層を、5は裏面電極を、6は表面電極分離ラインを、8はコンタクトラインを、9は裏面電極分離ラインを、38は表面電極/第一のn層隔離部材をそれぞれ示すものとする。
【0049】
上記のように、上部セルのi層と下部セルのp層の間に微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜からなる第一のn層3bが形成された直列積層構造を有する太陽電池素子を形成しようとすると、裏面電極5と微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜からなる第一のn層3bとが短絡状態になることを防ぐためには、特定の構造を採用する必要があるが、従来公知の構造においては、太陽電池素子の信頼性が低下したり、太陽電池素子の製造工程の歩留まりが低下したり、太陽電池素子の特性が低くなるという問題は克服できていない。
【0050】
そこで、上記の現状に基づき、本発明の課題は、単位面積当たりの発電効率に優れ、高い信頼性および歩留まりで製造可能な、直列積層構造を有する太陽電池素子を提供することである。
【0051】
また、本発明の別の課題は、単位面積当たりの発電効率に優れた直列積層構造を有する太陽電池素子を、高い信頼性および歩留まりで製造可能な太陽電池素子の製造方法を提供することである。
【0052】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するには、微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜からなる第一のn層とコンタクトラインとが直接接触しないような構造を形成すればよいとの着想を得、そのような構造の直列積層構造を形成することができ、かつ高い信頼性および歩留まりで製造可能な太陽電池素子の構造を見出すべく、多くの新規な直列積層構造について、多くの製造プロセスの組合せによる実験を行ない、鋭意検討を重ねた。
【0053】
そして、検討の末に、本発明者らは、微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜からなる第一のn層とコンタクトラインとの間に不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備え、微結晶シリコンを主要な材質とする半導体薄膜からなる第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有する直列積層型の太陽電池素子は、単位面積当たりの発電効率に優れ、かつ高い信頼性および歩留まりで製造可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0054】
すなわち、本発明の太陽電池素子は、少なくとも絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する発電領域と、隣接する発電領域同士の表面電極および裏面電極を電気的に接続するコンタクトラインとを備え、複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子であって、前記発電領域は、少なくとも第一のp層、i層、n層からなる光電変換層と、第二のp層、i層、n層からなる光電変換層が順に積層された構造を有しており、該第一のn層は微結晶シリコンを含む半導体膜であり、該第一のn層とコンタクトラインとの間には不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備えており、該第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有することを特徴とする太陽電池素子である。
【0055】
ここで、本発明の太陽電池素子においては、第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質からなる部材であることが望ましい。
【0056】
さらに、本発明の太陽電池素子においては、第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層に含まれる半導体膜であって、かつ該光電変換層中において最も光入射側に設けられた半導体膜と同一の組成の半導体からなる部材であることが推奨される。
【0057】
そして、本発明の太陽電池素子においては、第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも入光側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質からなる部位と、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質とからなる部位との複合した部材であってもよい。
【0058】
また、本発明の太陽電池素子においては、第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも入光側に設けられた光電変換層に含まれる単一または複数の半導体膜と同一の組成の単一または複数の半導体からなる部位と、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層に含まれる半導体膜であって、かつ該光電変換層中において最も光入射側に設けられた半導体膜と同一の組成の半導体からなる部位との複合した部材であってもよい。
【0059】
ここで、本発明の太陽電池素子においては、表面電極は、酸化亜鉛、酸化スズまたはITOを含む材質を用いた透明導電膜からなることが望ましい。
【0060】
また、本発明の太陽電池素子においては、光電変換層のうち、第一のp層およびi層はa−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であり、第一のn層はμc−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であり、第二のp層、i層およびn層はμc−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であることが推奨される。
【0061】
そして、本発明の太陽電池素子においては、裏面電極は、酸化亜鉛、酸化スズまたはITOを含む材質を用いた透明導電膜と、AgまたはAlを含む材質を用いた金属膜とを積層した構造であることが好ましい。
【0062】
また、本発明の太陽電池素子においては、コンタクトラインは、裏面電極の一部と同一の組成からなる材質を用いた部材であることが望ましい。
【0063】
ここで、本発明は、上記の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層および該第一のn層と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至る第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該第一のn層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法を含む。
【0064】
また、本発明は、上記の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層を貫通し、かつ該第一のp層および/またはi層を一部除去する第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該n層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法を含む。
【0065】
そして、本発明の太陽電池素子の製造方法においては、レーザを照射することにより第一のn層分離ラインおよびコンタクトラインの開溝を形成することが好ましい。
【0066】
また、本発明の太陽電池素子の製造方法においては、D工程において用いるレーザのビーム断面の最大直径は、B工程において用いるレーザのビーム断面の最大直径より小さいことが望ましい。
【0067】
また、本発明の太陽電池素子の製造方法においては、光電変換層はプラズマCVD法を用いて形成されることが推奨される。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0069】
<太陽電池素子の構造>
本発明の太陽電池素子は、少なくとも絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する発電領域と、隣接する発電領域同士の表面電極および裏面電極を電気的に接続するコンタクトラインとを備え、複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子であって、前記発電領域は、少なくとも第一のp層、i層、n層からなる光電変換層と、第二のp層、i層、n層からなる光電変換層が順に積層された構造を有しており、該第一のn層は微結晶シリコンを含む半導体膜であり、該第一のn層とコンタクトラインとの間には不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備えており、該第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有することを特徴とする太陽電池素子である。
【0070】
<絶縁透光性基板>
本発明の太陽電池素子に用いる絶縁透光性基板は、絶縁性および透光性を有していれば、特に限定されず、一般に太陽電池素子に用いられる基板を使用することができる。本発明に用いる絶縁透光性基板の具体例としては、ガラス、石英、透明性を有するプラスチックなどを材質として用いた基板が挙げられる。
【0071】
ただし、本発明に用いる絶縁透光性基板は、全ての部位が絶縁性を有する必要はなく、少なくとも表面電極形成面が絶縁されていれば使用可能である。すなわち、導電性の基板であっても、表面電極形成面を絶縁物で覆うことにより、本発明に用いる絶縁透光性基板として使用することができる。
【0072】
<表面電極>
本発明の太陽電池素子に用いる表面電極は、絶縁透光性基板上に形成される。ここで、本発明に用いる表面電極は、導電性および透光性を有していれば、特に限定されず、一般に太陽電池素子に用いられる表面電極を使用することができる。本発明に用いる表面電極としては、透明性および導電性を有する材質からなる膜状の電極(本明細書において、透明導電膜とも呼称する)が好ましい。
【0073】
ただし、本発明に用いる表面電極は、全ての部位が透明性を有する必要はなく、少なくとも一部の部位が透明性を有し、太陽光発電に必要とされる量の光を透過することのできる透明性を有していれば使用可能である。すなわち、金属などの透明性を有さない材質を用いた電極であっても、たとえば構造が格子状であれば透光性を有するため、本発明に用いる表面電極として使用可能である。
【0074】
本発明に用いる表面電極の具体例としては、酸化スズや酸化亜鉛やITOなどを材質として用いた透明導電膜が挙げられる。ここで、酸化スズには、SnOだけでなく、Sn(ここで、mおよびnは正の整数)で表わされる各種組成の酸化スズが含まれるものとする。また、酸化亜鉛には、ZnOだけでなく、Znm’n’(ここで、m’およびn’は正の整数)で表わされる各種組成の酸化亜鉛が含まれるものとする。また、ITOとは、Indium Tin Oxideの略称であり、インジウムスズ酸化物を意味する。
【0075】
ここで、ITOとSnOとも透光性の点では特に差異は少ないが、一般的に比抵抗の低さではITOが優れており、化学的な安定性ではSnOが優れていると考えられている。また、ZnOはITOに比べて材料コストが低いという利点がある。さらに、SnOはa−Si膜形成時にプラズマによる表面の還元が問題となる場合があるのに対してZnOは耐プラズマ性が高い。また、ZnOには長波長光の透過率も高いという利点もある。
【0076】
また、本発明に用いる表面電極がZnOを含む材質からなる透明導電膜からなる場合には、透明導電膜の低抵抗化のためにAl、Gaなどの不純物をドープしてもよい。これらの不純物のうちでは、より低抵抗化する性質に優れたGaをドープすることが好ましい。
【0077】
さらに、本発明に用いる表面電極が透明導電膜の場合には、その表面に凹凸が形成されていることが好ましい。表面透明導電膜の表面に微小な凹凸を形成することにより、太陽電池素子に設けられた発電領域内において光を散乱させることができ、光の光路長が伸びることとなる。そのため、表面透明導電膜の表面に凹凸がない場合に比べて、太陽電池素子の発電効率を向上させることができる。
【0078】
<光電変換層>
本発明の太陽電池素子に用いる光電変換層は、半導体膜を積層した構造を有し、第一のn層が微結晶シリコンを含む半導体膜であり、かつ光電変換性を有するものであれば、特に限定されず、一般に太陽電池素子に用いられる光電変換層を使用することができる。
【0079】
ここで、本発明に用いる光電変換層の材質としては、半導体であれば、一般に太陽電池素子の光電変換層に用いられる材質を用いることができるが、具体例としては、Si、Ge、SiGe、SiC、SiN、GaAs、SiSnなどの半導体を使用することができる。これらのうちでは、シリコン系の半導体であるSi、SiGe、SiCなどを用いることが好ましい。
【0080】
また、本発明に用いる光電変換層の材質である半導体は、微結晶または多結晶型などの結晶半導体であってもよく、アモルファス型などの非晶質半導体であってもよい。ここで、非晶質半導体および多結晶型半導体としては、局在準位の原因となるダングリングボンドを水素で終端した化学構造を有する、水素化された半導体を用いることが好ましい。ただし、本発明に用いる第一のn層の材質である半導体は、微結晶シリコンを含む半導体である必要がある。
【0081】
さらに、本発明に用いる第一の光電変換層と第二の光電変換層の半導体膜は、p型、i型、n型の三層構造からなる必要がある。ここで、p型およびn型の半導体は、所定の不純物をドープすることにより形成することができる。また、三層構造は、光入射面側から順にp層とi層とn層とが積層したp−i−n型の構造である必要がある。
【0082】
さらに、本発明の太陽電池素子に設けられた発電領域は、積層された2以上の光電変換層を有している。ここで、本発明の太陽電池素子に設けられた発電領域は、2つの光電変換層が積層した、いわゆるタンデム構造であってもよいし、3以上の光電変換層が積層した構造であってもよい。また、積層された2以上の光電変換層は、同じ構造および/または材質の光電変換層であってもよいが、異なる構造および/または材質の光電変換層であってもよい。
【0083】
ここで、本発明の太陽電池素子に設けられた発電領域は、2つの光電変換層が積層した構造であることが好ましい。また、このような構造を有する太陽電池素子においては、第一のn層を含む光電変換層であって、光入射面側に設けられる光電変換層である上部光電変換層(本明細書において、上部セルとも呼称する)は、水素化アモルファスシリコン系半導体(a−Si:H)のp層とi層を積層した上に、さらに水素化微結晶シリコン系半導体n型の三層構造からなる光電変換層であることが好ましい。
【0084】
また、このような構造を有する太陽電池素子においては、第一のn層と接触する光電変換層であって、かつ第一のn層よりも光入射面の反対側に設けられる光電変換層である下部光電変換層(本明細書において、下部セルとも呼称する)は、水素化多結晶シリコン系半導体(μc−Si:H)のp−i−n型の三層構造からなる光電変換層であることが好ましい。
【0085】
<裏面電極>
本発明に用いる裏面電極は、積層された2以上の光電変換層の光入射面の反対側(本明細書において、裏面側とも呼称する)に形成される。また、本発明に用いる裏面電極は、導電性に加えて光散乱性または光反射性を有していれば、特に限定されず、一般に太陽電池素子に用いられる裏面電極を好適に使用することができる。
【0086】
さらに、本発明に用いる裏面電極は、裏面透明電極および裏面金属電極を積層したものであることが好ましい。また、本発明に用いる裏面電極は、裏面金属電極のみからなるものであってもよく、裏面透明電極は割愛してもよいが、光の散乱を促して高い発電効率を得るためには、裏面透明電極もあった方が望ましい。
【0087】
そして、本発明に用いる裏面金属電極の具体例としては、光反射性に優れたAgやAlやCrなどを材質として用いた金属膜が挙げられる。
【0088】
また、本発明に用いる裏面透明電極の具体例としては、酸化スズや酸化亜鉛やITOなどを材質として用いた透明導電膜が挙げられる。ここで、酸化スズには、SnOだけでなく、Sn(ここで、mおよびnは正の整数)で表わされる各種組成の酸化スズが含まれるものとする。また、酸化亜鉛には、ZnOだけでなく、Znm’n’(ここで、m’およびn’は正の整数)で表わされる各種組成の酸化亜鉛が含まれるものとする。また、ITOとは、Indium TinOxideの略称であり、インジウムスズ酸化物を意味する。
【0089】
ここで、ITOとSnOとも透光性の点では特に差異は少ないが、一般的に比抵抗の低さではITOが優れており、化学的な安定性ではSnOが優れていると考えられている。また、ZnOはITOに比べて材料コストが低いという利点がある。さらに、SnOはプラズマなどによる表面の還元が問題となる場合があるのに対してZnOは耐プラズマ性が高い。また、ZnOには長波長光の透過率も高いという利点もある。
【0090】
また、本発明に用いる裏面透明電極がZnOを含む材質からなる透明導電膜からなる場合には、透明導電膜の低抵抗化のためにAl、Gaなどの不純物をドープしてもよい。これらの不純物のうちでは、より低抵抗化する性質に優れたGaをドープすることが好ましい。
【0091】
さらに、本発明に用いる裏面透明電極は、その表面に凹凸が形成されていることが好ましい。裏面透明電極の表面に微小な凹凸を形成することにより、太陽電池素子に設けられた発電領域内において光を散乱させることができ、光の光路長が伸びることとなる。そのため、裏面透明電極の表面に凹凸がない場合に比べて、太陽電池素子の発電効率を向上させることができる。
【0092】
そして、本発明に用いる裏面透明電極の表面の凹凸は、一般的なエッチング溶液によるエッチングを用いることにより、簡便かつ正確に形成することが可能である。
【0093】
<直列積層構造>
本発明の太陽電池素子は、少なくとも絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する発電領域と、隣接する発電領域同士の表面電極および裏面電極を電気的に接続するコンタクトラインとを備え、複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子であって、前記発電領域は、少なくとも第一のp層、i層、n層からなる光電変換層と、第二のp層、i層、n層からなる光電変換層が順に積層された構造を有しており、該第一のn層は微結晶シリコンを含む半導体膜であり、該第一のn層とコンタクトラインとの間には不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備えており、該第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有することを特徴とする太陽電池素子である。
【0094】
ここで、本発明の太陽電池素子において、このような複数の発電領域が直列接続されている構造(本明細書において、直列積層構造とも呼称する)を実現するためには、隣接する発電領域間で、表面電極同士、光電変換層同士、裏面電極同士がそれぞれ完全に分離されている必要がある。また、本発明の太陽電池素子が集積構造を実現するためには、隣接する発電領域間で、表面電極と裏面電極が順に接続されている必要がある。
【0095】
それゆえ、本発明の太陽電池素子は、表面電極を分離するための開溝(本明細書において、表面電極分離ラインとも呼称する)、光電変換層を分離するための開溝(本明細書において、光電変換層分離ラインとも呼称する)、第一のn層を分離するための開溝(本明細書において、第一のn層分離ラインとも呼称する)、および裏面電極を分離するための開溝(本明細書において、裏面電極分離ラインとも呼称する)を有する必要がある。
【0096】
ここで、開溝の内部は、空隙である場合に限られず、不導体、半導体、導電体などが膜状で存在あるいは充填されている場合もあり得るが、そのような場合にも、本明細書においては、開溝と呼称することとする。
【0097】
また、本発明の太陽電池素子において、直列積層構造を実現するためには、表面電極と裏面電極を電気的に接続するための部材(本明細書において、コンタクトラインとも呼称する)を有する必要もある。
【0098】
さらに、本発明の太陽電池素子において、直列積層構造を実現し、かつ第一のn層とコンタクトラインとの短絡による太陽電池素子の出力の低下を防止するためには、第一のn層とコンタクトラインとの間に不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材(本明細書において、中間透明導電膜/コンタクトライン隔離部材とも呼称する)を備え、第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有する必要もある。
【0099】
ここで、この第一のn層分離ラインは、第一のn層および第一のp層およびi層をともに完全に分離する構造でああることが好ましい。しかし、この第一のn層分離ラインは、第一のn層は完全に分離するが、第一のp層およびi層を完全には分離しない構造であってもよい。ただし、この場合には、後述するように、第一のn層分離ラインの内側に設けられるコンタクトラインが第一のp層およびi層を完全に分離する必要がある。
【0100】
また、隣接する発電領域同士の表面電極と裏面電極を電気的に接続する上記のコンタクトラインは、第一のn層分離ラインの内側に設けることが好ましい。そして、このコンタクトラインは、裏面電極の一部と同一の組成からなる材質であることが好ましい。さらに、このコンタクトラインは、上記のように光電変換層を完全に分離するような形状を有することが好ましい。
【0101】
ここで、上記の第一のn層とコンタクトラインとを隔離する部材(本明細書において、第一のn層/コンタクトライン隔離部材とも呼称する)は、第一のn層とコンタクトラインとの短絡による太陽電池素子の出力の低下を防止するためには、第一のn層分離ラインの内側に設けられ、かつ第一のn層とコンタクトラインとが直接接触しないように、第一のn層とコンタクトラインの間に挿入された構造で設けることが好ましい。
【0102】
そして、この第一のn層分離ライン7の材質は、製造工程の簡略化の観点からは、図1に示すように、該第一のn層3bよりも裏面側に設けられた下部セル4の一部と同一の組成の材質であることが好ましい。
【0103】
さらに、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材の材質は、製造工程の簡略化の観点からは、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層に含まれる半導体膜であって、かつ該光電変換層中において最も光入射側に設けられた半導体膜と同一の組成の材質であることが特に好ましい。
【0104】
また、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材18は、単一の材質からなる必要はなく、たとえば、図2に示すように、該第一のn層3bよりも入光側に設けられた第一のp層およびi層3aの一部と同一の組成の材質からなる部位である第一のn層/コンタクトライン隔離部材18と、第一のn層よりも裏面側に設けられた下部セル4の一部と同一の組成の材質とからなる第一のn層分離ライン7との複合した部材であってもよい。
【0105】
そして、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材は、該第一のn層よりも入光側に設けられた上部セルのp層、i層に含まれる単一または複数の半導体膜と同一の組成の単一または複数の半導体からなる部位と、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層に含まれる半導体膜であって、かつ該光電変換層中において最も光入射側に設けられた半導体膜と同一の組成の半導体からなる部位との複合した部材であってもよい。
【0106】
すなわち、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材の材質としては、たとえば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiN、GaAs、SiSnなどの半導体を使用することができる。これらのうちでは、シリコン系の半導体であるSi、SiGe、SiCなどを用いることが好ましい。
【0107】
また、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材の材質である半導体は、多結晶型や微結晶などの結晶半導体であってもよく、アモルファス型などの非晶質半導体であってもよい。ただし、第一のn層とコンタクトラインにリーク電流を生じさせない程度の隔離材でなければならない。ここで、非晶質半導体および多結晶型半導体としては、局在準位の原因となるダングリングボンドを水素で終端した化学構造を有する、水素化された半導体を用いることが好ましい。
【0108】
さらに、この第一のn層/コンタクトライン隔離部材の材質である半導体は、p型、i型、n型のいずれであってもよい。ここで、p型およびn型の半導体は、所定の不純物をドープすることにより形成することができる。
【0109】
また、本発明の太陽電池素子において、1つの発電領域が積層された2つの光電変換層(上部セル3,下部セル4)を有する場合には、上記の第一のn層分離ライン7は、図1に示すように単層で設けられることが好ましい。
【0110】
一方、本発明の太陽電池素子において、1つの発電領域が第一のn層3bに加えて、微結晶シリコンを含む半導体膜からなる第二のn層4bを有し、3つの光電変換層(上部セル3,下部セル4,および第三の光電変換層23)を有する場合には、上記の第一のn層および第二のn層分離ライン25は、光電変換層の厚みにもよるが、工程の簡略化を考慮すると、2つの光電変換層の場合と同じく、図7に示すように単層で設けられることが好ましい。
【0111】
なお、図7において、符号1は絶縁透光性基板を、2は表面電極を、3aは第一のp層およびi層を、4aは第二のp層およびi層を、5は裏面電極を、6は表面電極分離ラインを、8はコンタクトラインを、9は裏面電極分離ラインをそれぞれ示すものとする。
【0112】
<太陽電池素子の製造方法>
本発明の太陽電池素子の製造方法は、上記の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層および該第一のn層と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至る第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該第一のn層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法であることが好ましい。
【0113】
また、本発明の太陽電池素子の製造方法は、上記の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層を貫通し、かつ該第一のp層および/またはi層を一部除去する第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該n層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法であってもよい。
【0114】
<表面電極形成工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、絶縁透光性基板上に表面電極を形成する工程(本明細書において、表面電極形成工程とも呼称する)においては、表面電極が金属電極であるか透明導電膜であるかで工程が異なる。
【0115】
ここで、本発明に用いる表面電極が金属電極である場合には、表面電極形成工程として、物理的製法を用いることができる。
【0116】
そして、物理的製法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。そして、これらの製造方法のうちでは、品質などの面から、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0117】
また、本発明に用いる表面電極が透明導電膜からなる場合には、表面電極形成工程として、化学的製法または物理的製法を用いることができる。
【0118】
ここで、化学的製法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、スプレー法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。一般に、化学的製法は、塩化物や有機金属化合物の熱分解、酸化反応によって基板上に酸化膜を形成する方法で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0119】
一方で、物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0120】
<表面電極パターニング工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、表面電極をパターニングして表面電極分離ラインを形成する工程(本明細書において、表面電極パターニング工程とも呼称する)においては、パターニングの手法は特に限定されず、正確にパターニングが可能な手法であれば、一般に金属電極あるいは透明導電膜のパターニングに用いられる手法を好適に使用可能である。
【0121】
本発明における表面電極パターニング工程においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクなどを用いたエッチングによるパターニングを行なってもよい。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが難しいなどの問題点を有している。
【0122】
そのため、本発明における表面電極パターニング工程においては、レーザの照射による加熱を利用したパターニング(本明細書において、レーザパターニングとも呼称する)を行なうことが好ましい。このようなレーザパターニングを行なうことにより、積層構造の形成に要する工程の減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状などの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大でき、連続一貫生産および自動化生産に適するという利点が得られる。
【0123】
ここで、本発明における表面電極パターニング工程において、レーザパターニングに用いるレーザとしては、特に限定されるものではなく、一般に太陽電池素子の製造方法において用いられるレーザを用いることができる。
【0124】
また、、本発明における表面電極パターニング工程において、レーザ射出口と照射面との距離、照射面におけるレーザの径およびレーザ照射時間などは、パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが好ましい。
【0125】
なお、本発明における表面電極パターニング工程の後、光電変換層の形成工程を行なう前に、表面電極の残渣を除去するために、基板および表面電極を純水中にて超音波洗浄することが好ましい。
【0126】
<光電変換層の形成工程:A工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、表面電極上に積層された2以上の光電変換層を形成する工程(本明細書において、光電変換層形成工程とも呼称する)においては、化学的製法または物理的製法を用いることができる。
【0127】
ここで、光電変換層形成工程における化学的製法としては、たとえば、スプレー法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。一般に、半導体の化学的製法は、シランガスなどの原料ガスの熱分解、プラズマ反応などによって基板上に半導体膜を形成する方法で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0128】
一方、物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0129】
そして、これらの製造方法のうちでは、品質などの面から、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
【0130】
<第一のn層のパターニング工程:B工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、第一のn層をパターニングして第一のn層分離ラインを形成する工程(本明細書において、第一のn層のパターニング工程とも呼称する)においては、パターニングの手法は特に限定されず、正確にパターニングが可能な手法であれば、一般に光電変換層および透明導電膜のパターニングに用いられる手法を好適に使用可能である。
【0131】
本発明における光電変換層のパターニング工程においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクなどを用いたエッチングによるパターニングを行なってもよい。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが難しいなどの問題点を有している。
【0132】
そのため、本発明における第一のn層のパターニング工程においては、レーザの照射による加熱を利用したパターニング(本明細書において、レーザパターニングとも呼称する)を行なうことが好ましい。
【0133】
このようなレーザパターニングを行なうことにより、積層構造の形成に要する工程の減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状などの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大でき、連続一貫生産および自動化生産に適するという利点が得られる。
【0134】
ここで、本発明における第一のn層のパターニング工程において、レーザパターニングに用いるレーザとしては、表面電極が透明導電膜からなる場合には、透明導電膜に損傷を与えることを避けるために、透明導電膜の透過性に優れた可視光領域のレーザを用いることが好ましい。それゆえ、たとえば、YAG SHGレーザを用いることが好ましい。
【0135】
また、本発明における第一のn層のパターニング工程において、レーザ射出口と照射面との距離およびレーザ照射時間などは、パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが好ましい。
【0136】
そして、たとえば、図1に示すような太陽電池素子を製造する場合には、上記のようなレーザを用いて第一のn層分離ラインを形成する際に、第一のn層分離ラインが該第一のn層および該第一のn層と表面電極に挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至る構造となるように、レーザの加工条件を選択することが好ましい。
【0137】
また、たとえば、図2に示すような太陽電池素子を製造する場合には、上記のようなレーザを用いて第一のn層分離ラインを形成する際に、第一のn層分離ラインが該第一のn層を貫通し、かつ該第一のn層の光入射側に設けられたp層および/またはi層を一部除去するよう、レーザの加工条件を選択することが好ましい。なお、この場合には、後述するコンタクトラインが、該光電変換層を完全に分離するような構造を有する必要がある。
【0138】
なお、第一のn層分離ラインを形成した後、純水などによる洗浄を行なってもよいが、もしも純水などにより洗浄することにより第一のn層と下部セルのp層とのコンタクト性が低下するのであれば、その際には純水などによる洗浄を行なうことは不要である。本発明においては、第一のn層分離ラインを形成する際に表面電極2の残渣がほとんど発生しないため、その残渣を除去するために純水などによる洗浄を行なう必要はないからである。
【0139】
<さらなる光電変換層の形成工程:C工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、上記の工程により第一のn層分離ラインにより分離された第一のn層の裏面側および該第一のn層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように別の光電変換層を形成する工程(本明細書において、さらなる光電変換層の形成工程とも呼称する)においては、化学的製法または物理的製法を用いることができる。
【0140】
ここで、光電変換層形成工程における化学的製法としては、たとえば、スプレー法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。一般に、半導体の化学的製法は、シランガスなどの原料ガスの熱分解、プラズマ反応などによって基板上に半導体膜を形成する方法で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0141】
一方、物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0142】
そして、これらの製造方法のうちでは、品質などの面から、プラズマCVD法を用いることが好ましい。
【0143】
また、この第一のn層分離ラインの内側に形成されるのは、この光電変換層の一部のみでよく、たとえば、この光電変換層の最も光入射側に設けられた半導体膜のみであってもよい。
【0144】
さらに、この第一のn層分離ラインの内側は、この光電変換層の形成工程により該第一のn層分離ラインの外郭のすべてがこの光電変換層の一部で被覆されていてもよいし、該第一のn層分離ラインの内側がすべてこの光電変換層の一部で充填された状態であってもよい。
【0145】
ここで、上記のA工程、B工程、C工程は、この順番で連続して行なわれることが好ましく、A工程、B工程、C工程を1回ずつ行なうことにより、図1に示すような、1つの発電領域が第一のn層を挟んで積層された2つの光電変換層を有する太陽電池素子を製造することができる。
【0146】
<コンタクトラインおよび裏面電極形成工程:D工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、コンタクトラインの形成工程は、コンタクトラインの形成に必要な開溝(本明細書において、コンタクトラインの開溝とも呼称する)を形成する工程と、コンタクトラインの開溝内に導電物質(本明細書において、この導電物質の材質をコンタクトラインの材質と呼称する)を充填する工程とに分けて考えることができる。
【0147】
ここで、本発明において、コンタクトラインの開溝を形成するために、光電変換層をパターニングする工程(本明細書において、コンタクトラインの開溝形成工程とも呼称する)においては、パターニングの手法は特に限定されず、正確にパターニングが可能な手法であれば、一般に光電変換層および透明導電膜のパターニングに用いられる手法を好適に使用可能である。
【0148】
そして、本発明におけるコンタクトラインの開溝形成工程においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクなどを用いたエッチングによるパターニングを行なってもよい。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが難しいなどの問題点を有している。
【0149】
そのため、本発明におけるコンタクトラインの開溝形成工程においては、レーザパターニングを行なうことが好ましい。このようなレーザパターニングを行なうことにより、積層構造の形成に要する工程の減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状などの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大でき、連続一貫生産および自動化生産に適するという利点が得られる。
【0150】
ここで、本発明におけるコンタクトラインの開溝形成工程において、レーザパターニングに用いるレーザとしては、表面電極が透明導電膜からなる場合には、透明導電膜に損傷を与えることを避けるために、透明導電膜の透過性に優れた可視光領域のレーザを用いることが好ましい。それゆえ、たとえば、YAG SHGレーザを用いることが好ましい。
【0151】
なお、ここで用いるレーザのビーム断面の最大直径は、B工程において用いるレーザのビーム断面より小さいことが好ましい。ここで用いるレーザのビーム断面の最大直径が、B工程において用いるレーザのビーム断面より大きいと、第一のn層とコンタクトラインの分離を取るためには、B工程において、第一のn層分離ラインを形成するのに、複数回のレーザ加工が必須となり、生産性を落とすことになる。
【0152】
また、本発明におけるコンタクトラインの開溝形成工程においては、レーザ射出口と照射面との距離、照射面におけるレーザの径およびレーザ加工条件などは、パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが好ましい。
【0153】
ただし、レーザ加工条件に関しては、コンタクトラインの開溝が裏面電極と表面電極に挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至る構造となるように、レーザの加工条件を選択することが好ましい。
【0154】
そして、本発明におけるコンタクトラインの開溝は、第一のn層分離ラインの内側に設けられることが好ましい。すなわち、本発明におけるコンタクトラインの開溝形成工程においては、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による第一のn層分離ラインの断面が、該平面または曲面による該コンタクトラインラインの開溝の断面を包含することとなるような位置に、レーザの照準を合わせてレーザパターニングを行なうことが好ましい。
【0155】
<コンタクトライン充填および裏面電極形成工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、コンタクトラインの開溝を導電物質により充填する工程(本明細書において、コンタクトライン充填工程とも呼称する)において用いられる導電物質は、導電性を有するものであれば特に限定されず、一般的に太陽電池素子に用いられる導電物質を用いることができる。
【0156】
なお、裏面電極が裏面金属電極および裏面透明電極からなる場合には、製造工程の簡略化の観点からは、上記の導電物質は裏面透明電極と同じ材質からなる導電物質を用いることが好ましい。
【0157】
それゆえ、本発明におけるコンタクトライン充填工程は、裏面電極の形成工程において、裏面透明電極を形成する工程と同じ工程であることが好ましい。なお、コンタクトライン充填工程を行なうことにより、コンタクトラインの開溝内は導電物質によって完全に充填され、表面電極と裏面電極とが完全に電気的に接続した状態となることが望まれる。
【0158】
そして、本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、裏面電極を形成する工程(本明細書において、裏面電極形成工程とも呼称する)は、裏面電極の材質および構造によって異なるものとなる。
【0159】
ここで、前述のように、本発明に用いる裏面電極は、裏面透明電極および裏面金属電極を積層したものであることが好ましい。また、本発明に用いる裏面電極は、裏面金属電極のみからなるものであってもよく、裏面透明電極は割愛してもよいが、光の散乱を促して高い発電効率を得るためには、裏面透明電極もあった方が望ましい。
【0160】
そして、本発明に用いる裏面金属電極の製造方法としては、物理的製法を用いることが好ましい。物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。そして、これらの製造方法のうちでは、品質などの面から、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0161】
また、本発明に用いる裏面透明電極の製造方法としては、化学的製法または物理的製法を用いることができる。
【0162】
ここで、化学的製法としては、たとえば、スプレー法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。一般に、化学的製法は、塩化物や有機金属化合物の熱分解、酸化反応によって基板上に酸化膜を形成する方法で、プロセスコストが安いという利点を持つ。
【0163】
一方、物理的製法としては、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法などが挙げられる。一般に、物理的製法は、化学的製法に比べ基板温度が低く、良質の膜形成が可能であるが、成膜速度が遅く、装置費用が高くなるなどの傾向を有する。
【0164】
そして、これらの製造方法のうちでは、品質などの面から、スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0165】
<裏面電極パターニング工程>
本発明の太陽電池素子の製造方法のうち、裏面電極をパターニングして裏面電極分離ラインを形成する工程(本明細書において、裏面電極パターニング工程とも呼称する)においては、パターニングの手法は特に限定されず、正確にパターニングが可能な手法であれば、一般に金属電極あるいは透明導電膜のパターニングに用いられる手法を好適に使用可能である。
【0166】
本発明における裏面電極パターニング工程においては、たとえば、樹脂マスクや金属マスクなどを用いたエッチングによるパターニングを行なってもよい。しかし、このような方法では、積層構造の形成に多くのプロセスを必要とし、しかも取扱い得る基板の寸法に制約があり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が小さくなりやすく、ウェットプロセスのため光電変換層中にピンホールが発生しやすく、曲面基板ではパターニングが難しいなどの問題点を有している。
【0167】
そのため、本発明における裏面電極パターニング工程においては、レーザパターニングを行なうことが好ましい。このようなレーザパターニングを行なうことにより、積層構造の形成に要する工程の減少を図ることができ、大面積の基板上に太陽電池素子を製造することができ、曲面状などの任意の形状の基板上に太陽電池素子の製造が可能であり、太陽電池の基板内の発電領域の有効面積が増大でき、連続一貫生産および自動化生産に適するという利点が得られる。
【0168】
ここで、本発明における裏面電極パターニング工程において、レーザパターニングに用いるレーザとしては、透明導電膜からなる表面電極に悪影響を与えることを避けるために、透明導電膜の透過性に優れた可視光領域のレーザを用いることが好ましい。たとえば、YAG SHGレーザを用いることが好ましい。
【0169】
また、本発明における裏面電極パターニング工程において、レーザ射出口と照射面との距離、照射面におけるレーザの径およびレーザ加工条件などは、パターニングの形状などに応じて適宜選択されることが好ましい。
【0170】
なお、本発明における裏面電極パターニング工程の後、基板および表面電極を純水中にて超音波洗浄することが好ましい。
【0171】
そして、上記の製造方法を用いて製造された本発明の太陽電池素子は、単独あるいは複数を組合わせて、または他の太陽電池素子と組合せて、太陽電池の主要部材として好適に用いられる。
【0172】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0173】
<実施例1>
以下、図1を用いて、実施例1について説明する。ここで、図1は、実施例1で作製する太陽電池素子の断面概要図である。
【0174】
まず、絶縁透光性基板1として厚さ約4.0mm、基板サイズ650mm×910mmのガラス基板を用意し、熱CVD法を用いて絶縁透光性基板1上にSnO(酸化スズ)を材質とする透明導電膜からなる表面電極2を成膜した。
【0175】
次に、YAGレーザの基本波を用いて、表面電極2のパターニングを行った。すなわち、レーザ光を絶縁透光性基板1側から入射させることにより、表面電極2を短冊状に分離し、表面電極分離ライン6を形成した。
【0176】
この後、該基板を純水中で超音波洗浄し、続いて、表面電極2上および表面電極分離ライン6の内側に半導体膜を積層した光電変換層からなる上部セル3をプラズマCVD法により形成した。ここで、上記のようにして形成された上部セル3は、a−Si:Hからなるp層、a−Si:Hからなるi層、μc−Si:Hからなるn層を絶縁透光性基板1側から順に積層した光電変換層であり、合計の厚みは約0.2μmであった。
【0177】
続いて、上部セル3を、YAGレーザの第二高調波を絶縁透光性基板1側から入射させてパターニングした。その結果、上部セル3は短冊状に分離され、上部セル3を貫通して表面電極2の裏面側の表面にまで至る第一のn層分離ライン7が形成された。この時、図3に示すように、第一のn層分離ラインの幅15は、150μm程度となるようにした。
【0178】
次に、プラズマCVD法により、第一のn層分離ライン7の内側に、半導体膜を積層した光電変換層からなる下部セル4を形成した。ここで、上記のようにして形成された下部セル4は、μc−Si:Hからなるp層、μc−Si:Hからなるi層、μc−Si:Hからなるn層を絶縁透光性基板1側から順に積層した光電変換層であり、合計の厚みは約2μmであった。
【0179】
次に、YAGレーザの第二高調波を絶縁透光性基板1側から入射させて、下部セル4をパターニングした。その結果、下部セル4は短冊状に分離され、表面電極2と裏面電極5とを電気的に接続するためのコンタクトライン8の開溝が形成された。
【0180】
この時、図3を参照すると分かるように、コンタクトラインの幅13を、第一のn層分離ラインの幅15より小さくせずに、裏面電極5を形成すると、図5に示すように裏面電極5が、第一のn層3bに直接接触することとなる。その結果、上部セル3が短絡状態になり、太陽電池素子の出力が本来でる出力未満になるという問題が生じる。
【0181】
そのため、本実施例では、図3に示すように、コンタクトラインの幅13が第一のn層分離ラインの幅15より小さくなるように、コンタクトライン8の開溝を形成した。
【0182】
このコンタクトラインの幅13を小さくすることにより、下部セル4と同一の組成の材質からなる第一のn層/コンタクトライン隔離部材が第一のn層分離ライン7の一部を埋めることとなり、第一のn層3bと裏面電極と同一の組成の材質からなるコンタクトライン8の開溝に充填された導電物質を分離することができ、その結果、上部セル3が短絡することを防ぐことができた。
【0183】
この際、コンタクトラインの幅13を約80μmとなるようにし、第一のn層分離ラインとコンタクトラインとの距離17aは約50μmとなるようにした。また、第一のn層分離ラインとコンタクトラインとの距離17aとは反対側の第一のn層分離ラインとコンタクトラインとの距離17bは約20μmとなるようにした。
【0184】
次に、マグネトロンスパッタ法により、裏面電極5として、ZnO(酸化亜鉛)およびAgをを成膜した。この際、裏面電極5の厚みの合計は、約350nmであった。また、このときコンタクトライン8の開溝の内側は、裏面電極5と同一の組成の材質で充填されるようにした。
【0185】
そして、レーザによる表面電極2へのダメージを避けるため、表面電極2の透過性の良いYAGレーザの第二高調波を絶縁透光性基板1側から入射させて、裏面電極5をパターニングした。その結果、裏面電極5は短冊状に分離され、裏面電極分離ライン9が形成された。その後、純水中で該基板の超音波洗浄を行い、乾燥後、バスバーを正極負極に取り付け、本実施例の太陽電池素子(I)を作製した。
【0186】
上記のようにして作製した太陽電池素子(I)(基板サイズ650mm×910mm)の特性をソーラーシミュレータを用いて評価したところ、AM1.5(100mW/cm)の条件下において、測定したところ、F.F.が0.67〜0.70、ηが10.3%から11.0%と安定した効率が得られた。
【0187】
<実施例2>
第一のn層分離ライン7が表面電極の裏面側に到達しない構造を有し、第一のn層分離ライン7の先端部の形状が曲面となるように、絶縁透光性基板1の反対側からレーザを照射して、第一のn層分離ライン7のレーザパターニングをしたことを除いては、実施例1と同様にして太陽電池素子を作製したところ、太陽電池素子(II)を得た。
【0188】
上記のようにして作製した太陽電池素子(II)(基板サイズ650mm×910mm)の特性をソーラーシミュレータを用いて評価したところ、AM1.5(100mW/cm)の条件下において、測定したところ、F.F.が0.67〜0.70、ηが10.3%から11.0%と安定した効率が得られた。
【0189】
<比較例1>
以下、図5を用いて、比較例1について説明する。ここで、図5は、比較例1で作製する太陽電池素子の断面概要図である。また、この太陽電池素子は、特開平9−129903号公報に開示された集積構造と同一の構造を有するものである。
【0190】
まず、絶縁透光性基板1として厚さ約4.0mm、基板サイズ650mm×910mmのガラス基板を用意し、熱CVD法を用いて絶縁透光性基板1上にSnO(酸化スズ)を材質とする透明導電膜からなる表面電極2を成膜した。
【0191】
次に、表面電極2上に半導体膜を積層した光電変換層からなる上部セル3をプラズマCVD法により形成した。ここで、上記のようにして形成された上部セル3は、a−Si:Hからなるp層、a−Si:Hからなるi層、μc−Si:Hからなるn層を絶縁透光性基板1側から順に積層した光電変換層であり、合計の厚みは約0.2μmであった。
【0192】
その後、YAGレーザの基本波を用いて、表面電極2および上部セル3のパターニングを一括して行った。すなわち、レーザ光を絶縁透光性基板1側から入射させることにより、表面電極2、上部セル3を短冊状に分離し、表面電極分離ライン6を形成した。
【0193】
続いて、該基板を純水で超音波洗浄し、プラズマCVD法により、表面電極分離ライン6の内側に、半導体膜を積層した光電変換層からなる下部セル4を形成した。ここで、上記のようにして形成された下部セル4は、μc−Si:Hからなるp層、μc−Si:Hからなるi層、μc−Si:Hからなるn層を絶縁透光性基板1側から順に積層した光電変換層であり、合計の厚みは約2μmであった。
【0194】
次に、上部セル3および下部セル4を、YAGレーザの第二高調波を絶縁透光性基板1側から入射させてパターニングした。その結果、上部セル3および下部セル4は短冊状に分離され、上部セル3および下部セル4を貫通して表面電極2の裏面側の表面にまで至り、かつ表面電極2と裏面電極5とを電気的に接続するためのコンタクトライン8の開溝が形成された。
【0195】
次に、マグネトロンスパッタ法により、裏面電極5として、ZnO(酸化亜鉛)およびAgをを成膜した。この際、裏面電極5の厚みの合計は、約350nmであった。また、このときコンタクトライン8の開溝の内側は、裏面電極5と同一の組成の材質で充填されるようにした。
【0196】
次に、レーザによる表面電極2へのダメージを避けるため、表面電極2の透過性の良いYAGレーザの第二高調波を絶縁透光性基板1側から入射させて、裏面電極5をパターニングした。その結果、裏面電極5は短冊状に分離され、裏面電極分離ライン9が形成された。その後、純水中で該基板の超音波洗浄を行い、乾燥後、バスバーを正極負極に取り付け、本比較例の太陽電池素子(III)を作製した。
【0197】
上記のようにして作製した太陽電池素子(III)(基板サイズ650mm×910mm)の特性をソーラーシミュレータを用いて評価したところ、F.F.が0.58から0.70でηが7.9%から11.0%の効率が得られた。
【0198】
この値のばらつきの理由は、図5を参照すると分かるように、比較例1で作製した太陽電池素子(III)の表面電極分離ライン6は、表面電極2および上部セル3を一括してレーザパターニングして形成されるため、表面電極2が隣接する発電領域間で完全に分離できたとしても、上部セル3の側面に昇華された表面電極2が再付着し、第一のn層3bと表面電極2との間で短絡が高い頻度で生じる傾向があるためであると解される。すなわち、その結果、上部セル3が短絡状態になり、太陽電池素子の出力が低下するためであると解される。
【0199】
また、ガラス基板上に下部セルが直接成膜された領域で、膜の剥離が一部見られ、外観上に問題点があり、さらにそのようなセルでは特性の低下が見られた。
【0200】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0201】
【発明の効果】
上記の結果から分かるように、本発明の太陽電池素子は、第一のn層とコンタクトラインとの間に不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備え、第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有するため、第一のn層とコンタクトラインとの間に短絡が発生することがない。
【0202】
また、本発明の太陽電池素子は、下部セルと絶縁透光性基板とが直接接触しないため、下部セルの剥離が生じ難い。さらに、第一のn層分離ラインの形成工程後の純水による洗浄が不要であるため、第一のn層と下部セルとのコンタクト性に優れている。太陽電池素子の発電効率が優れている。
【0203】
すなわち、本発明の太陽電池素子は、単位面積当たりの発電効率に優れ、高い信頼性および歩留まりで製造可能な、直列積層構造を有する太陽電池素子であるといえる。
【0204】
また、本発明の太陽電池素子の製造方法は、単位面積当たりの発電効率に優れた直列積層構造を有する太陽電池素子を、高い信頼性および歩留まりで製造可能な太陽電池素子の製造方法であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で作製した太陽電池素子の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例2で作製した太陽電池素子の概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1で作製した太陽電池素子のコンタクトラインの近傍を拡大して示した概略断面図である。
【図4】従来公知の一般的な直列積層型の太陽電池素子の一例の概略断面図である。
【図5】比較例1で作製した太陽電池素子の概略断面図である。
【図6】特開平9−129906号公報に開示された太陽電池素子の概略断面図である。
【図7】本発明の太陽電池素子の別の一例の概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁透光性基板、2 表面電極、3 上部セル、3a 第一のp層およびi層、3b 第一のn層、4 下部セル、4a 第二のp層およびi層、4b 第二のn層、5 裏面電極、6 表面電極分離ライン、7 第一のn層分離ライン、8 コンタクトライン、9 裏面電極分離ライン、13 コンタクトラインの幅、15 第一のn層分離ラインの幅、17a,17b 第一のn層分離ラインとコンタクトラインとの距離、18 第一のn層/コンタクトライン隔離部材、23 第三の光電変換層、25 第一のn層および第二のn層分離ライン、38 表面電極/第一のn層隔離部材。

Claims (6)

  1. 少なくとも絶縁透光性基板、表面電極、半導体膜を積層した光電変換層および裏面電極を有する発電領域と、隣接する発電領域同士の表面電極および裏面電極を電気的に接続するコンタクトラインとを備え、複数の発電領域が直列接続されている太陽電池素子であって、前記発電領域は、少なくとも第一のp層、i層、n層からなる光電変換層と、第二のp層、i層、n層からなる光電変換層が順に積層された構造を有しており、該第一のn層は微結晶シリコンを含む半導体膜であり、該第一のn層とコンタクトラインとの間には不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材を備えており、該第一のn層とコンタクトラインとは直接接触しない構造を有することを特徴とする太陽電池素子。
  2. 第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質からなる部材であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子。
  3. 第一のn層とコンタクトラインとの間に備えられた不導体および/または半導体からなる単一または複数の部材は、該第一のn層よりも入光側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質からなる部位と、該第一のn層よりも裏面側に設けられた光電変換層の一部と同一の組成の材質とからなる部位との複合した部材であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池素子。
  4. 前記光電変換層のうち、前記第一のp層およびi層はa−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であり、前記第一のn層はμc−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であり、前記第二のp層、i層およびn層はμc−Si:Hを主要な材質とする半導体膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池素子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層および該第一のn層と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至る第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該第一のn層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池素子の製造方法であって、A工程として、第一のp層、i層、n層を順に形成する工程と、B工程として、該第一のn層を貫通し、かつ該第一のp層および/またはi層を一部除去する第一のn層分離ラインを形成する工程と、C工程として、該第一のn層の裏面側および該n層分離ライン内に、該第一のn層および該第一のn層分離ラインの外郭に接触するように第二のp層、i層、n層を順に形成する工程と、D工程として、裏面電極と表面電極とに挟まれた部材を貫通して表面電極の裏面側の表面に至るコンタクトラインの開溝を形成する工程を含み、透光性絶縁基板に平行な平面または曲面による前記第一のn層分離ラインの断面は、該平面または曲面による該コンタクトラインの開溝の断面を包含することを特徴とする太陽電池素子の製造方法。
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