JP2004002455A - レトロウイルス感染の阻害 - Google Patents
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Abstract
【課題】 哺乳動物細胞のレトロウイルス感染を予防または治療する新規な方法、特に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるヒト細胞の感染および後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む関連疾患を予防する新規な方法を提供すること。
【解決手段】 レトロウイルス感染を阻害するための方法であって、該処置を必要とする宿主に、該レトロウイルスによる該宿主の感染をブロックするのに十分な量のセリン白血球プロテアーゼインヒビター、もしくはそれらのアナログまたは誘導体(SLPI)を投与する工程を包含する、方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 レトロウイルス感染を阻害するための方法であって、該処置を必要とする宿主に、該レトロウイルスによる該宿主の感染をブロックするのに十分な量のセリン白血球プロテアーゼインヒビター、もしくはそれらのアナログまたは誘導体(SLPI)を投与する工程を包含する、方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、レトロウイルス感染症の治療、さらに特定すれば、後天性免疫不全症候群(AIDS)を含むヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症および関連疾患の治療に関する。
レトロウイルス因子は、癌、自己免疫疾患およびAIDSを含む多くの疾患に関連している。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は、CD4+Tリンパ球(CD4+細胞)の慢性の進行性欠乏およびマクロファージの感染症を引き起こし、後天性の免疫不全症候群となる。現在では、チミジンのアナログであるジドブジン(AZT)は、HIV感染症の治療に用いられた最初の抗ウイルス薬剤であるが、類似の作用機構を有する他の2つの薬剤であるジデオキシイノシン(ddI)およびジデオキシシトシン(ddC)もまた用いられる。Colley, T. P.ら、New Engl. J. Med. (1990) 322:1340−45;Fischl, M. A.ら、New Engl. J. Med. (1987) 317:185−91。これらの薬剤は、ウイルスの複製を阻害するのに効果的であり、そしてCD4+細胞濃度を安定化し得るが、これらは、主なウイルスの貯蔵器官の1つであるHIVに感染したマクロファージを排除し得ない。Gartner, S.ら、Science (1986) 233:215−19。特にHIV宿主骨髄に伴う激しい毒性もまた、AZT治療のより多い投与量に関連しており、そしてAIDS患者におけるこの薬剤の有益な効果は、長引く治療により減少される;AZTに耐性であるHIV株もまた、治療を受けた患者で観察された。これらの発見は、HIV感染症の治療のための代替薬剤、特に異なる機構で作用する薬剤の探求を促進した。
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)であるレトロウイルスは、AIDSの病因学的原因である。HIV−1エンベロープ糖タンパク質であるgp120は、Tリンパ球上、ならびに単球およびマクロファージ上のCD4レセプターに特異的に結合する。Tリンパ球の感染には、細胞増殖およびDNA合成が必要であるが、単球の増殖的感染が、細胞のDNA合成とは無関係に生じ得る(Weinberg, J. B.ら、(1991)J. Exp. Med. 174:1477−82)。HIV−1感染がCE4+リンパ球を活性化する場合、それは致死的であるが、感染した単球は、ウイルスによる破壊に比較的抵抗する。従って、これらの細胞は、一旦HIV−1に感染すると、このウイルスのための長期生存貯蔵器官としてふるまう。これらの細胞は、ウイルスを複製する源であるだけでなく、これら細胞のウイルスに介在される機能不全が、AIDSの特徴である日和見感染へのかかり易さの増加に貢献する。
単球−マクロファージが、HIV−1の貯蔵器官としてふるまうので、Tリンパ球に加えて、この個体群を選択的に標的とすることは、さらなる研究を正当化する(Finberg, R. W.ら、Science 252:1703−05, 1991。Foxのグループからの初期の報告(JADA 118:709−711, 1989)は、ヒト唾液成分がHIV複製をブロックすると指摘した。さらに最近、Hattori(FEBS Lett. 248:48−52, 1989)は、トリプターゼ(トリプシン様の酵素)のインヒビターが、HIVにより誘発されるT−細胞の合胞体形成を阻害し得ることを示した。
HIV−1感染の種々の強力なモジュレーターの調査において、本発明者らは、最近、HIV−1感染および/または複製を遅滞させる阻害活性の内因性の源を同定した。
抗ウイルス活性に応答し得るこの因子は、セリン白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)である。SLPIは、ヒト白血球エラスターゼおよびカテプシンG、ならびにヒトトリプシンの強力なインヒビターであり、そして耳下腺分泌物から精製された(Thompson, R. C.およびK. Ohlsson, (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:6692−96;および米国特許第4,760,130号、これらはいずれも本明細書中に参考として援用されている)。現在では、SLPIは、組換えDNA技術により作成されて入手可能である;1991年6月7日出願の米国特許出願第07/712,354号、1985年12月4日出願のPCT出願第WO86/03519号、および1985年12月4日出願の欧州特許出願第85 905 953.7号、これらはそれぞれ本明細書中に参考として援用されている)。
HIV−1感染および/または複製をブロックするSLPIおよび/またはその誘導体およびアナログの能力は、HIV−1感染における治療的介入の基礎を提供し得る。
本発明の目的は、哺乳動物細胞のレトロウイルス感染を予防または治療する新規な方法、特に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるヒト細胞の感染および後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む関連疾患を予防する新規な方法を提供することである。
本発明の範囲に含まれるのは、レトロウイルス感染症(特にヒトのHIV感染症)を治療するためのセリン白血球プロテアーゼインヒビター(SLPI)、あるいはそれのアナログまたは誘導体、および薬学的に受容可能な担体を含む薬学的な組成物である。
本発明は、SLPIあるいはそのアナログまたは誘導体の効果的な量をヒト細胞に投与することを包含する、ヒト細胞のHIV感染の治療方法もまた包含する。 本発明は、レトロウイルス感染を阻害するための方法であって、この処置を必要とする宿主に、このレトロウイルスによるこの宿主の感染をブロックするのに十分な量のセリン白血球プロテアーゼインヒビター、もしくはそれらのアナログまたは誘導体(SLPI)を投与する工程を包含する、方法である。
好適な実施形態においては、上記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、方法である。
好適な実施形態においては、上記SLPIのアナログまたは誘導体が、SLPIのPhe 72変異タンパク質、SLPIのGly 20変異タンパク質、SLPIのGly 72変異タンパク質、SLPIのVal 72変異タンパク質、CLPIのPhe 25変異タンパク質、CLPIのGly 25変異タンパク質、およびCLPIのVal 25変異タンパク質からなる群から選択される、方法である。
本発明は、レトロウイルス感染に必要な宿主細胞の酵素機能をブロックすることを包含する、細胞のレトロウイルス感染を阻害する方法であって、この宿主細胞が、単球または単球の前駆体である、方法である。
好適な実施形態においては、上記宿主細胞が単球である、方法である。
好適な実施形態においては、上記宿主細胞が前単球である、方法である。
本発明は、キモトリプシンおよびエラスターゼを阻害するが、トリプシンを阻害しない、単離されたセリンプロテアーゼインヒビターである。
好適な実施形態においては、以下のアミノ酸配列:
好適な実施形態においては、以下のアミノ酸配列:
R3、R4、R5、R6、およびR8が、同じまたは異なるアミノ酸であって、メチオニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、グリシンおよびアルギニンからなる群から選択される:
を有する、単離されたプロテアーゼインヒビターである。
好適な実施形態においては、R8が、フェニルアラニン、グリシン、およびバリンからなる群から選択される、単離されたプロテアーゼインヒビターである。
好適な実施形態においては、上記のセリンプロテアーゼインヒビターをコードする、単離された核酸である。
好適な実施形態においては、以下のアミノ酸配列:
好適な実施形態においては、以下のアミノ酸配列:
R3、R4、R5、R6、およびR8が、同じまたは異なるアミノ酸であって、メチオニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、グリシンおよびアルギニンからなる群から選択される:
を有するセリンプロテアーゼインヒビターをコードする、上記の単離された核酸である。
好適な実施形態においては、以下のヌクレオチド配列:
本発明は、少なくとも1つのセリンプロテアーゼ阻害活性を有する活性部位を有するセリンプロテアーゼインヒビターを組換え生産する方法であって、以下の工程:
(a)宿主生物に以下のアミノ酸配列:
(a)宿主生物に以下のアミノ酸配列:
R7がアラニン、そして
R3、R4、R5、R6、R8、およびR9が、同じまたは異なり、そして、メチオニン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リジン、グリシンおよびアルギニンからなる群から選択される:
を含むタンパク質を産生することを導き得る核酸を調製する工程;
(b)この核酸を、作動可能にする構成要素を含むベクターであって、宿主微生物に転移し、そして宿主微生物中で複製し得るベクター中にこの核酸をクローニングする工程;
(c)この核酸および作動可能にする構成要素を含むこのベクターを、このセリンプロテアーゼインヒビターを発現し得る宿主微生物中へ 転移させる工程;
(d)この宿主微生物を、このベクターの増幅およびこのインヒビターの発現に好適な条件下で培養する工程;
(e)このインヒビターを回集する工程;および
(f)このインヒビターに、セリンプロテアーゼインヒビター活性を有する活性三次構造をとらせる工程;
を包含する、方法である。
本発明によれば、哺乳動物細胞のレトロウイルス感染を予防または治療する新規な方法、特に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によるヒト細胞の感染および後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む関連疾患を予防する新規な方法を提供することができる。
本発明は、レトロウイルスの予防方法、特に哺乳動物細胞(特にヒト細胞)のHIV感染、および後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む関連疾患の予防方法に関する。
本明細書で用いた用語「薬学的に受容可能な担体」とは、非毒性であり、活性成分に対して一般的に不活性な賦形剤であり、この賦形剤は、成分および処方物を投与される患者に対し不利な作用を及ぼさない。
本明細書で用いた用語「効果的な量」とは、SLPIまたはアナログまたはそれらの誘導体のインビボでHIVに効果を及ぼすのに十分な、前もって測定された量のことである。
本発明によれば、レトロウイルス感染症は、このような感染の影響を減少するのに十分な投与量で抗レトロウイルス薬剤を投与することにより治療される。レトロウイルス感染症は、癌、自己免疫疾患、および後天性免疫不全症候群を含むがこれらに限定されない多くの疾患と深いつながりがある。ヒト免疫不全ウイルス感染は、本発明の特に関心の対象である。
種々の抗レトロウイルス薬剤が、本分野では公知である。これらの大部分は、レトロウイルスの逆転写酵素の活性を阻害し、そしてこれらには、チミジンのアナログであるジドブジン(AZT)、ジデオキシイノシン(ddI)、およびジデオキシシトシン(ddC)を包含する。ジドブジンは、HIV感染症の治療に使用された最初の抗ウイルス薬剤である。抗ウイルス薬剤は、一般的に約50mg/日〜約1000mg/日の範囲の投与量が効果的であり、さらに特定すると約100mg/日〜約500mg/日、そしてジドブジンの場合は、特に約300mg/日〜約500mg/日である。これらの薬剤は、一般的には経口処方物として投与される。
本発明で用いられるプロテアーゼインヒビターは、当業者に周知の方法により調製され得る(例えば、米国特許第4,760,130号;欧州特許出願第85 905 953.7号、PCT出願第WO86/03519号、および米国特許出願第07/712,354号、前出を参照のこと)。
本発明は、純粋な形態で単離されたプロテアーゼインヒビターに関する。好ましくは、本発明のセリンプロテアーゼインヒビターは、単一ポリペプチド鎖のタンパク質であり、これは、ヒト耳下腺分泌物から単離した天然のセリンプロテアーゼインヒビターと実施上相同であり、そして最も好ましくは、生物学的に等価である。天然のセリンプロテアーゼインヒビターはまた、天然の耳下腺インヒビターとも呼ばれる。本明細書および請求の範囲の全体で用いた「生物学的に等価」は、SLPIにより阻害される単球由来プロテアーゼを阻害する能力を有するが、同じ程度である必要はない組成物を意味する。以下の明細書および請求の範囲全体で用いた「誘導体」は、天然の耳下腺インヒビターに対するアミノ酸の相同性の程度を意味し、好ましくは40%より高く、最も好ましくは50%より高く、特に好ましいタンパク質の基と天然の耳下腺インヒビターとの相同性は、60%より高い。上記の相同性の比率は、2つの配列のうちの小さい方で見いだされ、2つの配列のうちの大きい方でも見いだされる成分のパーセントとして計算される。この成分は4つの連続したアミノ酸の配列として解釈される。
1つの有用なSLPI誘導体は、CLPI、つまり天然の耳下腺インヒビターの最後の60アミノ酸のみを有する欠損SLPI分子である。これらの60アミノ酸は以下の通り:
本明細書で用いた「アナログ」は、HIV感染の阻害において、SLPIと機能的に生物学的に等価なあらゆる化合物(例えば、小さな有機化合物を含む)を意味する。このような誘導体およびアナログは、SLPIが単球に結合するのを予防する化合物をスクリーニングするために単球を用いることを包含する、当業者に周知の方法により単離され得る。アナログもまた、天然のタンパク質と少なくとも等価な活性、およびある場合にはそれよりも高い活性を有する特定のSLPI変異タンパク質を含む。特に有用なSLPI変異タンパク質は、列挙した残基の位置で以下のアミノ酸の置換を含む:Gly 20、Gly 72、Val 72、およびPhe 72。
CLPI変異タンパク質もまた、本発明の範囲内にある。SLPI変異タンパク質のGly 72、Val 72、およびPhe 72に対応するCLPI変異タンパク質は、本明細書中でそれぞれGly 25、Val 25、およびPhe 25と呼ばれる。いくつかの企図されたCLPI変異タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する:
SLPI、あるいはそのアナログまたは誘導体(以下、本化合物)が、HIV感染症に抵抗するためにヒトに用いられる場合、本化合物は1つ以上の薬学的に受容可能な担体を含有する賦形剤中で、経口投与または非経口投与され得、その比率は、本化合物の可溶性および化学的性質、選択した投与経路および標準的な生物学的経験により決定される。経口投与のためには、SLPI、あるいはそのアナログまたは誘導体は、薬学的に受容可能な担体中、患者1人につき1日あたり約10mg〜約1000mg、より好ましくは患者1人につき1日あたり約10mg〜約200mg、さらに好ましくは患者1人につき1日あたり約20mg〜約200mgの範囲において前もって測定された量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル、または錠剤などの単位投与量形態で処方され得る。
非経口投与のためには、SLPI、あるいはそのアナログまたは誘導体は、薬学的に受容可能な賦形剤または担体との組成物中で、静脈内注射、皮下注射、または筋内注射により投与される。注射による投与のためには、滅菌水性媒体中での溶液状態の化合物を用いるのが好ましく、この媒体には、バッファーまたは保存薬などの他の溶質、および溶液を等張にする薬学的に受容可能な十分量の塩またはグルコースが含有され得る。皮下注射は、好ましい投与経路である。これらの場合の投与量は、経口投与に関して上述した投与量と実質的に同様である。
上記の処方物に好適な賦形剤または担体は、一般的な薬学上のテキスト中(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、Mack Publishing Company, Easton, PA, 1980年刊)に見出され得、そしてこれは本明細書中に参考として援用されている。
上記の処方物に好適な賦形剤または担体は、一般的な薬学上のテキスト中(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、Mack Publishing Company, Easton, PA, 1980年刊)に見出され得、そしてこれは本明細書中に参考として援用されている。
本化合物の投与量は、投与形態および特定の選択した活性薬剤により変化する。さらに、それは治療を受ける特定の患者または宿主(ヒトを含む哺乳動物を含む)により変化する。一般的に、治療は、本化合物の最適投与量より実質上少ない投与量で開始される。その後、投与量は、到達した状況下で最適効果になるまで少しずつ増加される。概して、本化合物は、いかなる危険または有害な副作用も引き起こすことのない抗ウイルス性の効果的な結果を一般的にもたらす濃度レベルで投与されるのが最も望ましい。宿主細胞のレトロウイルス感染を阻害するのに十分なレベルの本化合物の血中レベルを維持するのが望ましい。これは、宿主細胞のレトロウイルス感染(例えば、単球へのHIV感染)を予防するのに効果的である化合物量をインビトロにおいてアッセイし、次いで、標準的な薬動学技術を用いて、同じ阻害性のレベルまたは10〜100倍以上までのレベルに血漿中のレベルを保つのに必要である化合物量を測定することにより概算され得る。
上記の処方物は、HIV感染症を治療するために効果的であり比較的安全な薬物であるが、これらの処方物を他の抗ウイルス性薬物または薬剤と同時に投与して有益な結果が得られる可能性は、排除されない。このような他の抗ウイルス性薬物または薬剤には、可溶性CD4、ジドブジン、ジデオキシシチジン、ホスホノホルマート、リババリン(ribavarin)、抗ウイルス性インターフェロン(例えば、アルファ−インターフェロンまたはインターロイキン−2)、またはエアロゾルペンタミジンが含まれる。
本発明は、以下の実施例により例示される。
実施例1. 末梢血単球(PBM)を、健康な提供者から水簸により単離し、培養プレートに蒔き、そして数日間インキュベートした。SLPIをHIV(Bal)と混合し、そして37℃で1時間PBMに加えた。細胞を洗浄し、そして培地を交換してさらに培養し、3日毎に上清の逆転写酵素の測定を行った。本発明者らは、1μg/mlの濃度で、SLPIが効果的にHIV複製をブロックすることを見出した(図1)。≦20μg/mlの濃度では、SLPI阻害が減少する。阻害性効果が長く続き、18日間かなりの阻害が観察される(図2)。
実施例2. PBMを、実施例1と同様にプレートに蒔いてインキュベートした。SLPIを約1時間細胞に加えて、次いで細胞を洗浄し、そしてHIVで処理した。培地を交換して、実施例1のようにアッセイした。本発明者らは、細胞をSLPIで前処理した場合は、細胞をSLPIおよびHIVの混合物で処理した場合より、HIVのブロッキングにおいてSLPIがより効果的であることを発見した。
実施例3. 本発明者らはまた、単球をT−細胞に替えてはいるが本質的に実施例1と同じプロトコールを用いて、T−細胞中でSLPIがHIV複製の阻害に効果的であることを証明した。
実施例4. ヒトT−リンパ球性細胞株(H−9)を、10% ウシ胎児血清(FCS)および1リットルあたり200マイクログラムのゲンタマイシンの入ったRPMI 1640中での懸濁培養で維持した。SLPIを、1ミリリットルあたり100マイクログラムの最終濃度で、培養培地に添加した。24時間後、細胞を洗浄し、HIV株IIIBで4時間接種し、再度洗浄し、そして1ミリリットルあたり細胞500,000個の密度で再懸濁した。再懸濁直後(T=0)または再懸濁の2日後(T=2)に、培地が供給され、そして1ミリリットルあたり100マイクログラムの最終濃度でSLPIを維持した。2日毎に培養上清を集めて、そして培養物には培地を補給した。感染後8日目に集めた上清を、ポリ(rA)−オリゴ(dT)テンプレートへのトリチウム化チミジンの取り込みを測定することにより、逆転写酵素活性についてアッセイした。
表1に示すように、SLPIで前処理した細胞では、SLPIを感染直後または感染後2日目に添加すると、ウイルスの複製をそれぞれ約62%および約54%阻害した。
実施例5. 1000倍に濃縮したHIV株IIIBを、接種前に氷上で6時間、1ミリリットルあたり100マイクログラムのSLPIとインキュベートした以外は、実施例4に記載したように実験を行った。このHIV/SLPI混合物を、接種の4時間前に1000倍に希釈した。
表2に示したように、SLPIで前処理したウイルスおよび細胞を用いて、SLPIを感染直後および感染後2日目に添加すると、ウイルスの複製をそれぞれ約64%および約26%阻害した。
実施例6. 細胞が純粋であった、すなわち接種前にSLPIと培養しなかった以外は、実施例5にあるように実験を行った。純粋な細胞およびSLPIで前処理したウイルスを用いて、SLPIを感染直後および感染後2日目に添加すると、ウイルスの複製をそれぞれ約59%および約32%阻害した(表3)。
実施例7. 細胞もウイルスも接種前にSLPIにさらさなかった以外は、実施例4−6にあるように実験を行った。純粋な細胞および純粋なウイルスを用いて、SLPIを感染直後および感染後2日目に添加すると、ウイルスの複製をそれぞれ約50%および約42%阻害した(表4)。表5は、感染後4日目、6日目、および8日目にアッセイした培養上清中に存在する逆転写酵素活性を示す。
実施例8. ウイルス複製に及ぼす種々のSLPI変異タンパク質の効果もまた研究した。純粋なH−9細胞を、実施例7にあるように純粋なウイルスと4時間インキュベートした。洗浄後、細胞を1ミリリットルあたり細胞500,000個の密度で、1ミリリットルあたり30マイクログラムのSLPIまたは表6に示したSLPI変異タンパク質を含む培地に再懸濁した。培養上清を、逆転写酵素活性について8日後にアッセイした(表6)。
実施例9. 接種後に、細胞を1ミリリットルあたり100マイクログラムのSLPIまたはPhe 72変異タンパク質を含む培地に再懸濁した以外は、実施例8にあるように実験を行った。培養上清を、逆転写酵素活性について、感染後2日目、4日目、6日目、8日目および10日目にアッセイした(表7)。表6および7は、Phe−72変異タンパク質の効果が、特に顕著であったことを示す。
実施例10. SLPI単独の影響を測定するために、1ミリリットルあたり100マイクログラムのSLPIと培養したまたはSLPIと培養しなかった200,000個のH−9細胞を用いて、H−9細胞増殖を評価した。培養物に2.5マイクロキュリーのトリチウム化チミジンを含む培地を、0日目、1日目、および2日目に加えた;取り込み総数を、1日目、2日目、および3日目に測定した。表8に示すように、SLPIはこれらの細胞にとって毒性ではない。
実施例11. 本発明者らは、前単球細胞株U1を用いて、慢性的に感染した細胞からのウイルス産生の阻害もまた研究した。U1の懸濁培養物を、10% FCSおよび1リットルあたり200マイクログラムのゲンタマイシンの入ったRPMI中に維持した。細胞を集め、洗浄し、そして1ミリリットルあたり細胞250万個の密度で懸濁した。懸濁した細胞を、1ミリリットルあたり100または200マイクログラムのSLPIを含む培地中または培地だけの中で終夜培養した。13−ホルボール−12−ミリステートアセテート(PMA)を1マイクロモラーの最終濃度での添加により、ウイルスが誘発された。48時間後、細胞培養上清を逆転写酵素活性について、実施例4−9にあるようにアッセイした。表9に示すように、SLPIは、これらの慢性的に感染した細胞からのウイルス産生を著しく阻害した。
Claims (4)
- レトロウイルス感染を処置する医薬の製造のための、CLPI、または1つもしくは数個のアミノ酸の付加、置換、もしくは欠失を有し、かつSLPIの活性を有する、CLPIの変異タンパク質を含む組成物であって、ここで、細胞のレトロウイルス感染が、該CLPIまたはCLPIの変異タンパク質によって阻害される、組成物。
- レトロウイルス感染を阻害するための組成物であって、該レトロウイルスによる細胞の感染をブロックするのに十分な量のCLPI、または1つもしくは数個のアミノ酸の付加、置換、もしくは欠失を有し、かつSLPIの活性を有する、CLPIの変異タンパク質を含む、組成物。
- 前記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項1または2に記載の組成物。
- 前記CLPIの変異タンパク質が、CLPIのPhe 25変異タンパク質、CLPIのGly 25変異タンパク質、およびCLPIのVal 25変異タンパク質からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
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