JP2004093793A - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高感度、低残留電位、および、繰り返し使用による画像安定性、さらには、優れた耐久性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供する。
【解決手段】支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として、有機光導電性物質が、その無公害性や高生産性といった利点を有するため広く利用されている。有機光導電性物質を用いた有機電子写真感光体は、電気的および機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した積層型の電子写真感光体として利用される場合が多い。
【0003】
電子写真感光体には、当然のことながら、適用される電子写真プロセスに応じた感度、残留電位、とともに摩耗や傷に対する耐久性を備えていることが要求され、電子写真感光体を構成する材料の構造、組み合わせ、量比などを変えて、電子写真装置本体とのマッチングに優れた電子写真感光体とする。
【0004】
しかし、現状、熱可塑性樹脂を使用した表面層の場合などは、昨今のプロセススピードの増加にともない、膜の減耗が激しく、その弊害として、繰り返し電位変動が増大する場合もあり、画質に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
また、使用する材料によっては、光が照射した部分でキャリアーが滞留しやすいものがあり、メモリー(フォトメモリー)となって、耐久初期から画質に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
これらの問題点を解決するためには、膜の減耗を抑える方法が挙げられる。具体的には、電荷輸送物質の量を減らす、微粒子を添加する、電荷輸送物質そのものを高分子量化し、さらなる高耐久化を図ろうという試みが行われている。しかし、現状これらの方法では飛躍的な膜強度の向上は見込めない。
【0007】
そこで、硬化性樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いることが、例えば、特開平2−127652号公報などに開示されている。すなわち、電荷輸送層を硬化、架橋することにより、3次元化され、膜強度が増加し、繰り返し電位変動量を低減することが可能になるというものである。
【0008】
しかし、硬化性樹脂の比誘電率は高く、また、未反応の重合性官能基が多量に残存する場合があり、その結果、電荷が滞留し、メモリーや残留電位が大きくなるといった弊害を有している。
【0009】
また、特許第3194392号に開示された技術は、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、または、結着樹脂と炭素−炭素二重結合を有する単量体とを反応させて電荷輸送層を形成するというものであるが、実際のところ、膜強度が飛躍的に向上することはなく、耐摩耗性、耐傷性は不十分である。なぜなら、開示されている電荷輸送物質は、炭素−炭素二重結合部位が1つのみで、膜中、電荷輸送機能を有する部位(電荷輸送性基)がぶら下がった状態で存在しているからである。
【0010】
また、特開2000−66424号公報、特開2000−66425号公報、特開2000−147814号公報、特開2000−147815号公報、特開2000−147804号公報、特開2000−147813号公報に開示されたのは、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送物質などを含有させるという技術であるが、実際、官能基の数が多いので、架橋密度が増加し、硬い表面層を形成するが、電子写真感光体周辺の接触部材からの衝撃による傷などが目立ってしまうという問題を抱えている。
【0011】
また、特開2001−117250号公報には、化合物の末端に特定の重合性官能基を有するモノマーを含有させるという技術が開示されているが、膜強度は高いが、繰り返し使用で、感度が低下するといった問題を抱えている。
【0012】
さらに、特開2000−264961号公報、特開2001−117252号公報は、官能基を有する高分子量電荷輸送物質が開示されている。しかし、それ単独で硬化、架橋することは困難で、実際のところ、過酸化物、イソシアネート化合物などを添加して、膜を作製しており、感度が悪化する。また、官能基については、特に優れた官能基、または、電荷輸送物質中の官能基の組み合わせについては言及していない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度、低残留電位、および、繰り返し使用による画像安定性、さらには、優れた耐久性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、電子写真感光体の表面層に、特定の構造の電荷輸送物質を使用することによって、膜強度と電位特性(高感度、低残留電位)の両立が図れ、さらには、繰り返し電位安定性の向上が達成できることを見いだした。
【0015】
すなわち、本発明は、支持体上に、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0016】
【外11】
【0017】
(式(1)中、R11、R12は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。X11は、下記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y11は、下記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。)
【0018】
【外12】
【0019】
(式(2)中、R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換または無置換の炭化水素基を示す。)
【0020】
【外13】
【0021】
(式(3)中、R31は、水素原子またはメチル基を示す。pは、0または1を示す。ただし、pが0のとき、R31はメチル基である。)
【0022】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0023】
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基は、重合可能な基である上記式(2)で示される構造(フマルエステル構造:X)を有する基と、上記式(3)で示される構造(プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造:Y)を有する基とを併有することを特徴としており、アクリル基、ビニル基や、フマルエステル構造のみ、または、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造のみを有する基よりも、より高い反応性を示す(反応部位はXとYの両方であり、反応形態として、−X−X−、−Y−Y−、−X−Y−の結合が考えられる)。
【0024】
このように、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基の反応性が高くなる理由としては、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を併有することで、不飽和結合部位の電荷密度がより高くなり、結果として反応性が高くなった、と推測される。
【0025】
また、本発明で用いられる特定の構造の電荷輸送物質は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基が直接電荷輸送物質中の芳香環に結合することで、感光層中の電荷輸送部位(芳香環部位)の比率を高い状態のまま維持することが可能であり、高感度化を達成しやすい。
【0026】
さらに、フマルエステル構造を有することで、正孔輸送能が高められ、残留電位を抑えることができる。
【0027】
また、例えば、特定の構造の電荷輸送物質Aと特定の構造の電荷輸送物質Bとが反応する場合、A中のXA(フマルエステル構造)とB中のYB(プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造)とが反応すれば、層中の架橋密度は高くなる。実際、本発明の電子写真感光体の表面層は架橋密度が高く、高強度である。
【0028】
なお、本発明で用いられる特定の構想の電荷輸送物質は、低分子量であっても高分子量であってもよく、低分子量の場合、架橋密度が高いため高強度な表面層を形成することが可能となる。また、高分子量の場合、架橋密度は低下するものの絡み合いの因子が付加されるので、十分な強度を有する表面層を形成することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
上記式(1)中のR11、R12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられ、シクロアルキレン基としては、シクロへキシレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン、ナフタレン基などが挙げられる。
【0031】
また、上記式(2)中のR21、R22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基およびt−ブチル基などが挙げられる。
【0032】
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの炭化水素が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のR11、R12は、感度という観点からは、アルキレン基が好ましく、その中でも、置換または無置換のメチレン基、置換または無置換のエチレン基がより好ましい。
【0034】
上記式(2)中のR21、R22は、反応性という観点から、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0035】
上記式(3)中のR31は、膜強度の観点から、メチル基であることが好ましく、かつ、pが0であればより好ましい。
【0036】
さらに、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質は、下記式(61)または下記式(62)で示される構造を有することが好ましい。
【0037】
【外14】
【0038】
(式(61)中、R611〜R614は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A611は、電荷輸送性基を示す。X611、X612は、それぞれ独立に、上記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y611、Y612は、それぞれ独立に、上記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。mは、2以上500以下の整数を示す。)
【0039】
【外15】
【0040】
(式(62)中、R621、R622は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A621は、電荷輸送性基を示す。X621は、上記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y621は、上記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。nは、1以上10以下の整数を示す。)
【0041】
上記式(61)、(62)中のR611〜R614、R621、R622のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられ、シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレン基などが挙げられる。
【0042】
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの炭化水素が挙げられる。
【0043】
上記式(61)、(62)中のR611〜R614、R621、R622は、感度という観点からは、アルキレン基が好ましく、その中でも、置換または無置換のメチレン基、置換または無置換のエチレン基がより好ましい。
【0044】
また、上記式(61)中のmは、500より大きくなると、電荷輸送性基のスタッキングが低下し、感度が低下し、残留電位が上昇するため、mは2以上500以下でなければならず、2以上250以下がより好ましい。
【0045】
また、上記式(62)中のnは1以上10以下の整数であるが、膜強度と電位特性の観点から、2以上4以下の整数であることが好ましい。
【0046】
上記式(61)中のA611、上記式(62)中のA621は電荷輸送性基であるが、高感度、低残留電位の観点から、電荷輸送物質であるトリアリールアミン化合物や、ヒドラゾン化合物や、スチルベン化合物や、ピラゾリン化合物や、オキサゾール化合物や、トリアリルメタン化合物から誘導される基であることが好ましく、その中でも、トリアリールアミン化合物から誘導される基がより好ましい。なお、これら化合物は、メチル基、エチル基などのアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0047】
また、トリアリールアミン化合物から誘導される基の中でも、下記式(8)で示される構造を有する電荷輸送性基、または、下記式(9)で示される構造を有する電荷輸送性基がより好ましい。
【0048】
【外16】
【0049】
【外17】
【0050】
また、フォトメモリーの観点からは、上記式(1)のR12、上記式(61)のR611、R614、上記式(62)のR621は、下記式(4)で示される構造を有する基、または、下記式(5)で示される構造を有する基であることが好ましい。これらの基は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体の誘電率を下げ、電荷の滞留を防ぐ役割を有する。
【0051】
【外18】
【0052】
【外19】
【0053】
以下に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の具体例を示す。
【0054】
【外20】
【0055】
【外21】
【0056】
【外22】
【0057】
【外23】
【0058】
【外24】
【0059】
【外25】
【0060】
【外26】
【0061】
【外27】
【0062】
これらの中でも、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−7)、(1−10)、(1−12)、(1−13)、(1−14)、(1−15)、(1−19)が、感度、残留電位および膜強度の観点から好ましく、特には、(1−1)、(1−2)、(1−12)、(1−15)、(1−19)がより好ましい。
【0063】
次に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体の合成法について説明する。
【0064】
例えば、上記式(1−1)で示される構造を有する重合体の場合、フマル酸エステルを下記式(10)で示される構造を有する電荷輸送能を有するアルコールと触媒存在下、公知のエステル交換法で合成し、さらに、下記式(11)で示される構造を有するアルコールと触媒存在下、同様に公知のエステル交換法で合成する。
【0065】
【外28】
【0066】
【外29】
【0067】
その他の化合物についても、相応のアルコールおよびフマル酸エステルを用いることによって、上記と同様の方法で合成することができる。
【0068】
なお、ここで使用される溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドや、塩基性のピリジン類、ピコリン、コリジンなどが挙げられる。
【0069】
また、末端にCH3−CH=CH−を有する単量体の場合、CH2=CH−CH2−を有する化合物を異性化することによっても合成することができる。この異性化反応は、Pd、Ru、Rhなどの金属錯体や金属担持触媒を用いて、反応温度50℃〜200℃で行うことができる。
【0070】
本発明の電子写真感光体の表面層には、低残留電位および高強度な表面層という観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を2種以上混合して用いてもよい。
【0071】
また、同様の観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質やその重合体や、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の重合体とを混合して用いてもよい。
【0072】
またさらに、同様の観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質とを共重合させた共重合体としてもよいし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体とを共重合させた共重合体としてもよいし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質と、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体とを共重合させた3元共重合体としてもよい。
【0073】
このように、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体以外の電荷輸送物質を混合したり共重合させたりした場合は、膜中の電荷輸送能を有する部位がより多くなり、高い正孔輸送能を示し、残留電位が低下(良化)し、かつ繰り返し電位特性が安定する。
【0074】
また、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体を混合したり共重合させたりした場合は、電荷輸送物質(の重合体)間の隙間に入ることで、より架橋密度が増加し、高強度な表面層が得られる。
【0075】
ただし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質以外のものを用いる場合は、本発明の効果が損なわれない範囲にしなければならず、具体的には、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質および/または重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体との合計質量に対して、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質および/または重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の合計質量が50質量%以下であることが好ましい。
【0076】
また、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質が有する重合性官能基として好ましいもの、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体が有する重合性官能基のうち、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基で好ましいものを、以下に挙げる。
【0077】
【外30】
【0078】
上記式(71)〜(78)で示される構造を有する基は、ラジカルの発生効率が高く、特に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質との反応性が高い。
【0079】
これらの中でも、より高い反応性を示すモノマーとして、上記式(74)、(77)、(78)で示される重合性官能基がより好ましい。
【0080】
さらには、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有することがより好ましい。
【0081】
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について説明する。
【0082】
本発明の電子写真感光体は、感光層が電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。またさらに、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した積層型(順層型)がより好ましい。
【0083】
また、電子写真感光体の表面層として電荷輸送物質を含有する保護層を設ける、換言すれば、電荷輸送層を複層にしてもよく、本発明においては、少なくとも表面層となる層に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有していればよい。
【0084】
本発明の電子写真感光体に用いる支持体としては、導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成型したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したものなどが挙げられる。
【0085】
レーザービームプリンター(LBP)など(画像)露光光がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。
【0086】
導電層はカーボンブラック、金属粒子などの導電性微粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。
【0087】
導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmがより好ましい。
【0088】
支持体または導電層と感光層との間には、接着機能を有する中間層を設けてもよい。
【0089】
中間層の材料としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、などが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。
【0090】
中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、特には0.3〜1μmがより好ましい。
【0091】
支持体、導電層または中間層の上には、感光層が設けられる。感光層が順層型の場合は、電荷発生層が形成される。以下、順層型感光層について説明する。
【0092】
本発明の電子写真感光体に用いる電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料や、トリスアゾ、ジスアゾ、モノアゾなどのアゾ顔料などが挙げられる。
【0093】
これらの中でも、感度という観点から、フタロシアニン顔料が好ましく、本発明の表面層への電荷の注入が優れ、高感度化、繰り返し使用における耐久変動が小さく、安定した画質を提供することができる。
【0094】
さらに、フタロシアニン顔料の中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましく、その中でも、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンがより好ましい。
【0095】
電荷発生層は、電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。
【0096】
電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmがより好ましい。
【0097】
電荷発生層上には電荷輸送層が設けられる。
【0098】
電子写真感光体の表面層となる電荷輸送層の場合、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を溶剤に溶解させた塗料を、塗工、乾燥して形成する。
【0099】
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には15〜30μmがより好ましい。
【0100】
電荷輸送層を複層にする場合、電子写真感光体の表面層となる電荷輸送層の膜厚は1〜20μmが好ましい。
【0101】
電荷輸送層が複層の場合、電子写真感光体の表面層となる層以外の電荷輸送層については、電子写真分野で一般的に使用する熱可塑性樹脂などの結着樹脂、正孔輸送物質および/または電子輸送物質(電荷輸送物質)を使用してもよい。
【0102】
この場合の結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0103】
また、正孔輸送物質としては、例えば、ピレン、アントラセンなどの多環芳香族化合物、カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、トリアゾール化合物などの複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物が挙げられ、これらの中でも、トリアリールアミン化合物が好ましい。
【0104】
一方、電子輸送物質としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンおよびアルキル置換ジフェノキノンなどが挙げられる。
【0105】
本発明の電子写真感光体の表面層の中には、必要に応じて、シリコーン樹脂微粒子あるいはフッ素原子含有樹脂微粒子などの潤滑剤や、シリカ微粒子、アルミナ微粒子などの無機フィラーや、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など添加することもできる。
【0106】
本発明の電子写真感光体の表面層の成膜方法は、熱、光あるいは電子線での硬化を採ることが可能であり、必要に応じて、感度、残留電位を悪化させない程度にラジカル重合開始剤などの重合開始剤を含有してもよい。
【0107】
電子写真感光体の各層の形成工程において使用する溶剤としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、Cが3以上のアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられ、単独で用いても複数の溶剤を用いてもよい。
【0108】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0109】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0110】
電子写真感光体1は、回転過程において、(一次)帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0111】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0112】
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0113】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0114】
なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0115】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。
【0116】
例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0117】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0118】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0119】
次に、本発明で用いる測定機について説明する。
【0120】
X線回折の測定にはCuKα線を用い、次の条件で行った。
使用測定機:マック・サイエンス社製、全自動X線回折装置MXP18
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:2deg./min
サンプリング間隔:0.020deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):40deg.
ダイバージェンススリット:0.5deg.
スキャッタリングスリット:0.5deg.
レシービングスリット:0.3deg.
湾曲モノクロメーター使用
【0121】
【実施例】
以下、実施例にしたがって本発明をより一層詳細に説明する。なお、実施例中「部」は質量部を意味する。
【0122】
〔実施例1〕
直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬コーティング法で塗布し、145℃で30分熱硬化して、膜厚15μmの導電層を形成した。
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
結着樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール=2/8 20部
【0123】
上記導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部を、メタノール65部およびn−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬コーティング法で塗布し、100℃で10分熱乾燥して、膜厚0.5μmの中間層を形成した。
【0124】
次に、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン4部を、シクロヘキサノン95部にブチラール樹脂(ブチラール化度63モル%、重量平均分子量100,000)2部を溶かした液に加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で温度23±3℃の雰囲気下で20時間分散した。
【0125】
その後、酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。
【0126】
これを、上記中間層上に塗布し、100℃で10分熱乾燥して、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0127】
次に、電荷輸送層を形成した。
【0128】
上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体80部を、トルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とし、上記電荷発生層上に浸漬塗布後、140℃で120分熱乾燥して、膜厚15μmの電荷輸送層を設け、ドラム形状の電子写真感光体とした。
【0129】
次に、評価について説明する。
【0130】
以下に示す評価機を用いて初期電位評価(感度、残留電位)、耐久評価(繰り返し電位特性)、およびフォトメモリーの評価を行った。
【0131】
(初期電位評価)
・評価機
GP−405(普通紙複写機)(キヤノン(株)製)
プロセススピード:210mm/s
帯電方式:直流電流に交流電流を重畳したローラー接触帯電手段(AC/DCローラー接触帯電手段)
レーザー像露光量:0.45μJ/cm2
転写方式:ローラー接触転写手段
クリーニングブレード:カウンター方向に設置、電子写真感光体に対するブレードの線圧を通常の1.5倍に設定
なお、電子写真感光体の電位特性を測定するため、現像位置にプローブを取り付けた電位測定冶具を用いて測定した。
【0132】
得られた電子写真感光体を上記評価機に装着し、温度23℃、湿度50%RHの常温常湿環境(N/N)下で暗部電位VD、明部電位VLおよび残留電位VRを測定した。
【0133】
VDに関しては、より帯電能を評価しやすい暗減衰量を見た。すなわち、VDを測定した直後に印加電圧およびドラム回転を切り、10秒間放置した後のVDを評価した。暗減衰量の計算は以下の式より算出した。
【0134】
暗減衰量=初期VDの絶対量−10秒後のVD絶対量
暗減衰量は、値が小さいほど帯電能が良いことを示し、VL、VRは小さいほど特性が良いことを示す。
【0135】
(耐久評価)
N/Nで60000枚の通紙耐久試験を行い、60000枚後のVLを測定し、初期と耐久後の電位変動量を評価した。なお、電位変動量については以下の式より算出した。
【0136】
VL電位変動量=通紙耐久後のVL−初期VL
摩耗量については、初期の膜厚と60000枚後の膜厚との差として算出した。なお、測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープタイプE111)を用いた。
【0137】
また、耐久通紙画像はA4で、印字率4%の格子パターンとした。また、シーケンスは連続プリントモードとし、トナーがなくなったならば補給した。
【0138】
VL変動量(ΔVL)は、少ないほど繰り返し特性が良好であり、摩耗量については、値が小さいと膜強度が優れることを示す。
【0139】
表面層の膜厚測定には、フィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープタイプE111)を用いた。
【0140】
画像に出る傷については、電子写真感光体の周方向に傷による画像欠陥が見られる場合がある。
【0141】
傷の深さについては表面粗さ測定機(小坂研究所(株)製サーフコーダーSE−3300)を使用し、カットオフ値0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mm、ガウシャンフィルターの条件にて行った。
【0142】
画像に現われる傷画像については、ハーフトーン画像上に現われる電子写真感光体の周方向の画像欠陥(傷による画像欠陥)の個数を目視により、評価した。
【0143】
(フォトメモリーの評価)
耐久後の電子写真感光体の一部に、3000lxの白色蛍光灯の光を30分間照射し、4分間放置後、光を照射した部分の電位を測定し、照射前から電位がどれだけ低下したかを測定し、その変化量をフォトメモリー値とした。
【0144】
〔実施例2〜10〕
実施例1において、上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0145】
実施例1〜10の評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
〔実施例11〕
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質との共重合体を含有する表面層を形成した。
【0148】
すなわち、上記式(1−15)で示される構造を有する電荷輸送物質60部と表2中の式(2−1)で示される構造を有する電荷輸送物質20部とをトルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0149】
〔実施例12〜17〕
実施例11において、表2中の式(2−1)で示される構造を有する電荷輸送物質を、それぞれ表2、3に示すとおりに変更した以外は、実施例11と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0150】
実施例11〜17の評価結果を表4に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
〔実施例18〕
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体との共重合体を含有する表面層を形成した。
【0155】
すなわち、上記式(1−1)で示される構造を有する電荷輸送物質の重合体60部と表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体20部とをトルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0156】
〔実施例19〜27〕
実施例18において、表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体を、それぞれ表5、6に示すとおりに変更した以外は、実施例18と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0157】
実施例18〜27の評価結果を表7に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
【表7】
【0161】
〔実施例28〜35〕
実施例26において、上記式(1−1)で示される構造を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表8に示すとおりに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0162】
実施例28〜35の評価結果を表8に示す。
【0163】
【表8】
【0164】
〔比較例1〕
実施例1において、上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0165】
〔比較例2〜7〕
比較例1において、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表9、10、11に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0166】
〔比較例8〕
比較例1において、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体60部と、表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体20部を混合して、塗工液を作製した以外は、比較例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0167】
比較例1〜8の評価結果を表12に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
【表12】
【0172】
比較例1〜7は、初期電位特性が悪く、耐摩耗性、耐傷性も悪い。このことから、本発明の効果を得るためには、電荷輸送物質(の重合体)は、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を有していることが必須であることがわかる。
【0173】
〔実施例36〕
実施例26において、表6中の式(3−9)で示される構造を有する単量体の重合体の含有量を20部から2部に変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0174】
〔実施例37〕
実施例26において、表6中の式(3−9)で示される構造を有する単量体の重合体の含有量を20部から70部に変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0175】
〔実施例38〕
実施例1において、電荷輸送用塗料に過酸化ベンゾイル0.4部を加えた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0176】
〔実施例39〕
実施例1において、電荷発生物質をCuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°および27.1°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニンに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0177】
実施例36〜39の評価結果を表13に示す。
【0178】
【表13】
【0179】
本発明で用いる特定の構造の電荷輸送物質と共重合させる重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の含有量を変更した場合でも、該単量体を過酸化物に変更した場合でも、電荷発生物質を変更した場合でも、優れた電位特性、および耐久特性を示すことがわかる。
【0180】
〔実施例40、41〕
実施例1において、評価環境を、それぞれ、温度15℃、湿度10%RH(L/L)、温度30℃、湿度80%RH(H/H)に変更した以外は、実施例1と同様の電子写真感光体を用いて評価した。
【0181】
ただし、60000枚耐久後の評価項目はΔVLのみとした。
【0182】
〔比較例9、10〕
比較例1において、評価環境を、それぞれ、温度15℃、湿度10%RH(L/L)、温度30℃、湿度80%RH(H/H)に変更した以外は、比較例1と同様の電子写真感光体を用いて評価した。
【0183】
ただし、60000枚耐久後の評価項目はΔVLのみとした。
【0184】
実施例40、41、比較例9、10の評価結果を表14に示す。
【0185】
【表14】
【0186】
比較例9、10は、環境間でのΔVLが大きいが、実施例40、41はΔVLが小さいことがわかる。
【0187】
【発明の効果】
以上の結果から、高感度、低残留電位、および、繰り返し使用による画像安定性、さらには、優れた耐久性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを用いる電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ容器
12 案内手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体に用いられる材料として、有機光導電性物質が、その無公害性や高生産性といった利点を有するため広く利用されている。有機光導電性物質を用いた有機電子写真感光体は、電気的および機械的特性の双方を満足するために電荷発生層と電荷輸送層を積層した積層型の電子写真感光体として利用される場合が多い。
【0003】
電子写真感光体には、当然のことながら、適用される電子写真プロセスに応じた感度、残留電位、とともに摩耗や傷に対する耐久性を備えていることが要求され、電子写真感光体を構成する材料の構造、組み合わせ、量比などを変えて、電子写真装置本体とのマッチングに優れた電子写真感光体とする。
【0004】
しかし、現状、熱可塑性樹脂を使用した表面層の場合などは、昨今のプロセススピードの増加にともない、膜の減耗が激しく、その弊害として、繰り返し電位変動が増大する場合もあり、画質に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
また、使用する材料によっては、光が照射した部分でキャリアーが滞留しやすいものがあり、メモリー(フォトメモリー)となって、耐久初期から画質に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
これらの問題点を解決するためには、膜の減耗を抑える方法が挙げられる。具体的には、電荷輸送物質の量を減らす、微粒子を添加する、電荷輸送物質そのものを高分子量化し、さらなる高耐久化を図ろうという試みが行われている。しかし、現状これらの方法では飛躍的な膜強度の向上は見込めない。
【0007】
そこで、硬化性樹脂を電荷輸送層用の樹脂として用いることが、例えば、特開平2−127652号公報などに開示されている。すなわち、電荷輸送層を硬化、架橋することにより、3次元化され、膜強度が増加し、繰り返し電位変動量を低減することが可能になるというものである。
【0008】
しかし、硬化性樹脂の比誘電率は高く、また、未反応の重合性官能基が多量に残存する場合があり、その結果、電荷が滞留し、メモリーや残留電位が大きくなるといった弊害を有している。
【0009】
また、特許第3194392号に開示された技術は、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質、または、結着樹脂と炭素−炭素二重結合を有する単量体とを反応させて電荷輸送層を形成するというものであるが、実際のところ、膜強度が飛躍的に向上することはなく、耐摩耗性、耐傷性は不十分である。なぜなら、開示されている電荷輸送物質は、炭素−炭素二重結合部位が1つのみで、膜中、電荷輸送機能を有する部位(電荷輸送性基)がぶら下がった状態で存在しているからである。
【0010】
また、特開2000−66424号公報、特開2000−66425号公報、特開2000−147814号公報、特開2000−147815号公報、特開2000−147804号公報、特開2000−147813号公報に開示されたのは、同一分子内に2つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送物質などを含有させるという技術であるが、実際、官能基の数が多いので、架橋密度が増加し、硬い表面層を形成するが、電子写真感光体周辺の接触部材からの衝撃による傷などが目立ってしまうという問題を抱えている。
【0011】
また、特開2001−117250号公報には、化合物の末端に特定の重合性官能基を有するモノマーを含有させるという技術が開示されているが、膜強度は高いが、繰り返し使用で、感度が低下するといった問題を抱えている。
【0012】
さらに、特開2000−264961号公報、特開2001−117252号公報は、官能基を有する高分子量電荷輸送物質が開示されている。しかし、それ単独で硬化、架橋することは困難で、実際のところ、過酸化物、イソシアネート化合物などを添加して、膜を作製しており、感度が悪化する。また、官能基については、特に優れた官能基、または、電荷輸送物質中の官能基の組み合わせについては言及していない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度、低残留電位、および、繰り返し使用による画像安定性、さらには、優れた耐久性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、電子写真感光体の表面層に、特定の構造の電荷輸送物質を使用することによって、膜強度と電位特性(高感度、低残留電位)の両立が図れ、さらには、繰り返し電位安定性の向上が達成できることを見いだした。
【0015】
すなわち、本発明は、支持体上に、電荷発生物質および電荷輸送物質を含有する感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0016】
【外11】
【0017】
(式(1)中、R11、R12は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。X11は、下記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y11は、下記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。)
【0018】
【外12】
【0019】
(式(2)中、R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換または無置換の炭化水素基を示す。)
【0020】
【外13】
【0021】
(式(3)中、R31は、水素原子またはメチル基を示す。pは、0または1を示す。ただし、pが0のとき、R31はメチル基である。)
【0022】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0023】
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基は、重合可能な基である上記式(2)で示される構造(フマルエステル構造:X)を有する基と、上記式(3)で示される構造(プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造:Y)を有する基とを併有することを特徴としており、アクリル基、ビニル基や、フマルエステル構造のみ、または、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造のみを有する基よりも、より高い反応性を示す(反応部位はXとYの両方であり、反応形態として、−X−X−、−Y−Y−、−X−Y−の結合が考えられる)。
【0024】
このように、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基の反応性が高くなる理由としては、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を併有することで、不飽和結合部位の電荷密度がより高くなり、結果として反応性が高くなった、と推測される。
【0025】
また、本発明で用いられる特定の構造の電荷輸送物質は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基が直接電荷輸送物質中の芳香環に結合することで、感光層中の電荷輸送部位(芳香環部位)の比率を高い状態のまま維持することが可能であり、高感度化を達成しやすい。
【0026】
さらに、フマルエステル構造を有することで、正孔輸送能が高められ、残留電位を抑えることができる。
【0027】
また、例えば、特定の構造の電荷輸送物質Aと特定の構造の電荷輸送物質Bとが反応する場合、A中のXA(フマルエステル構造)とB中のYB(プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造)とが反応すれば、層中の架橋密度は高くなる。実際、本発明の電子写真感光体の表面層は架橋密度が高く、高強度である。
【0028】
なお、本発明で用いられる特定の構想の電荷輸送物質は、低分子量であっても高分子量であってもよく、低分子量の場合、架橋密度が高いため高強度な表面層を形成することが可能となる。また、高分子量の場合、架橋密度は低下するものの絡み合いの因子が付加されるので、十分な強度を有する表面層を形成することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
上記式(1)中のR11、R12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられ、シクロアルキレン基としては、シクロへキシレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン、ナフタレン基などが挙げられる。
【0031】
また、上記式(2)中のR21、R22の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基およびt−ブチル基などが挙げられる。
【0032】
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの炭化水素が挙げられる。
【0033】
上記式(1)中のR11、R12は、感度という観点からは、アルキレン基が好ましく、その中でも、置換または無置換のメチレン基、置換または無置換のエチレン基がより好ましい。
【0034】
上記式(2)中のR21、R22は、反応性という観点から、水素原子、メチル基がより好ましい。
【0035】
上記式(3)中のR31は、膜強度の観点から、メチル基であることが好ましく、かつ、pが0であればより好ましい。
【0036】
さらに、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質は、下記式(61)または下記式(62)で示される構造を有することが好ましい。
【0037】
【外14】
【0038】
(式(61)中、R611〜R614は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A611は、電荷輸送性基を示す。X611、X612は、それぞれ独立に、上記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y611、Y612は、それぞれ独立に、上記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。mは、2以上500以下の整数を示す。)
【0039】
【外15】
【0040】
(式(62)中、R621、R622は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A621は、電荷輸送性基を示す。X621は、上記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y621は、上記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。nは、1以上10以下の整数を示す。)
【0041】
上記式(61)、(62)中のR611〜R614、R621、R622のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基などが挙げられ、シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレン基などが挙げられる。
【0042】
上記各基が有してもよい置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基などの炭化水素が挙げられる。
【0043】
上記式(61)、(62)中のR611〜R614、R621、R622は、感度という観点からは、アルキレン基が好ましく、その中でも、置換または無置換のメチレン基、置換または無置換のエチレン基がより好ましい。
【0044】
また、上記式(61)中のmは、500より大きくなると、電荷輸送性基のスタッキングが低下し、感度が低下し、残留電位が上昇するため、mは2以上500以下でなければならず、2以上250以下がより好ましい。
【0045】
また、上記式(62)中のnは1以上10以下の整数であるが、膜強度と電位特性の観点から、2以上4以下の整数であることが好ましい。
【0046】
上記式(61)中のA611、上記式(62)中のA621は電荷輸送性基であるが、高感度、低残留電位の観点から、電荷輸送物質であるトリアリールアミン化合物や、ヒドラゾン化合物や、スチルベン化合物や、ピラゾリン化合物や、オキサゾール化合物や、トリアリルメタン化合物から誘導される基であることが好ましく、その中でも、トリアリールアミン化合物から誘導される基がより好ましい。なお、これら化合物は、メチル基、エチル基などのアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0047】
また、トリアリールアミン化合物から誘導される基の中でも、下記式(8)で示される構造を有する電荷輸送性基、または、下記式(9)で示される構造を有する電荷輸送性基がより好ましい。
【0048】
【外16】
【0049】
【外17】
【0050】
また、フォトメモリーの観点からは、上記式(1)のR12、上記式(61)のR611、R614、上記式(62)のR621は、下記式(4)で示される構造を有する基、または、下記式(5)で示される構造を有する基であることが好ましい。これらの基は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体の誘電率を下げ、電荷の滞留を防ぐ役割を有する。
【0051】
【外18】
【0052】
【外19】
【0053】
以下に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の具体例を示す。
【0054】
【外20】
【0055】
【外21】
【0056】
【外22】
【0057】
【外23】
【0058】
【外24】
【0059】
【外25】
【0060】
【外26】
【0061】
【外27】
【0062】
これらの中でも、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−7)、(1−10)、(1−12)、(1−13)、(1−14)、(1−15)、(1−19)が、感度、残留電位および膜強度の観点から好ましく、特には、(1−1)、(1−2)、(1−12)、(1−15)、(1−19)がより好ましい。
【0063】
次に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体の合成法について説明する。
【0064】
例えば、上記式(1−1)で示される構造を有する重合体の場合、フマル酸エステルを下記式(10)で示される構造を有する電荷輸送能を有するアルコールと触媒存在下、公知のエステル交換法で合成し、さらに、下記式(11)で示される構造を有するアルコールと触媒存在下、同様に公知のエステル交換法で合成する。
【0065】
【外28】
【0066】
【外29】
【0067】
その他の化合物についても、相応のアルコールおよびフマル酸エステルを用いることによって、上記と同様の方法で合成することができる。
【0068】
なお、ここで使用される溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドや、塩基性のピリジン類、ピコリン、コリジンなどが挙げられる。
【0069】
また、末端にCH3−CH=CH−を有する単量体の場合、CH2=CH−CH2−を有する化合物を異性化することによっても合成することができる。この異性化反応は、Pd、Ru、Rhなどの金属錯体や金属担持触媒を用いて、反応温度50℃〜200℃で行うことができる。
【0070】
本発明の電子写真感光体の表面層には、低残留電位および高強度な表面層という観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を2種以上混合して用いてもよい。
【0071】
また、同様の観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質やその重合体や、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の重合体とを混合して用いてもよい。
【0072】
またさらに、同様の観点から、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質とを共重合させた共重合体としてもよいし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体とを共重合させた共重合体としてもよいし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質と、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体とを共重合させた3元共重合体としてもよい。
【0073】
このように、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体以外の電荷輸送物質を混合したり共重合させたりした場合は、膜中の電荷輸送能を有する部位がより多くなり、高い正孔輸送能を示し、残留電位が低下(良化)し、かつ繰り返し電位特性が安定する。
【0074】
また、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体を混合したり共重合させたりした場合は、電荷輸送物質(の重合体)間の隙間に入ることで、より架橋密度が増加し、高強度な表面層が得られる。
【0075】
ただし、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質以外のものを用いる場合は、本発明の効果が損なわれない範囲にしなければならず、具体的には、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質および/または重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体との合計質量に対して、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質および/または重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の合計質量が50質量%以下であることが好ましい。
【0076】
また、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質が有する重合性官能基として好ましいもの、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体が有する重合性官能基のうち、上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基で好ましいものを、以下に挙げる。
【0077】
【外30】
【0078】
上記式(71)〜(78)で示される構造を有する基は、ラジカルの発生効率が高く、特に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質との反応性が高い。
【0079】
これらの中でも、より高い反応性を示すモノマーとして、上記式(74)、(77)、(78)で示される重合性官能基がより好ましい。
【0080】
さらには、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体は、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有することがより好ましい。
【0081】
次に、本発明の電子写真感光体の層構成について説明する。
【0082】
本発明の電子写真感光体は、感光層が電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型でもよいが、電子写真特性的には積層型が好ましい。またさらに、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した積層型(順層型)がより好ましい。
【0083】
また、電子写真感光体の表面層として電荷輸送物質を含有する保護層を設ける、換言すれば、電荷輸送層を複層にしてもよく、本発明においては、少なくとも表面層となる層に、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有していればよい。
【0084】
本発明の電子写真感光体に用いる支持体としては、導電性を有するものであればいずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラムまたはシート状に成型したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したものなどが挙げられる。
【0085】
レーザービームプリンター(LBP)など(画像)露光光がレーザー光の場合は、散乱による干渉縞防止、または基盤の傷を被覆することを目的とした導電層を設けてもよい。
【0086】
導電層はカーボンブラック、金属粒子などの導電性微粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。
【0087】
導電層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には10〜30μmがより好ましい。
【0088】
支持体または導電層と感光層との間には、接着機能を有する中間層を設けてもよい。
【0089】
中間層の材料としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、などが挙げられる。これらは適当な溶剤に溶解して塗布される。
【0090】
中間層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、特には0.3〜1μmがより好ましい。
【0091】
支持体、導電層または中間層の上には、感光層が設けられる。感光層が順層型の場合は、電荷発生層が形成される。以下、順層型感光層について説明する。
【0092】
本発明の電子写真感光体に用いる電荷発生物質としては、フタロシアニン顔料や、トリスアゾ、ジスアゾ、モノアゾなどのアゾ顔料などが挙げられる。
【0093】
これらの中でも、感度という観点から、フタロシアニン顔料が好ましく、本発明の表面層への電荷の注入が優れ、高感度化、繰り返し使用における耐久変動が小さく、安定した画質を提供することができる。
【0094】
さらに、フタロシアニン顔料の中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましく、その中でも、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンがより好ましい。
【0095】
電荷発生層は、電荷発生物質を0.3〜4倍量の結着樹脂および溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルおよび液衝突型高速分散機などの方法でよく分散し、分散液を塗布、乾燥させて形成される。
【0096】
電荷発生層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜2μmがより好ましい。
【0097】
電荷発生層上には電荷輸送層が設けられる。
【0098】
電子写真感光体の表面層となる電荷輸送層の場合、上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を溶剤に溶解させた塗料を、塗工、乾燥して形成する。
【0099】
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmが好ましく、特には15〜30μmがより好ましい。
【0100】
電荷輸送層を複層にする場合、電子写真感光体の表面層となる電荷輸送層の膜厚は1〜20μmが好ましい。
【0101】
電荷輸送層が複層の場合、電子写真感光体の表面層となる層以外の電荷輸送層については、電子写真分野で一般的に使用する熱可塑性樹脂などの結着樹脂、正孔輸送物質および/または電子輸送物質(電荷輸送物質)を使用してもよい。
【0102】
この場合の結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0103】
また、正孔輸送物質としては、例えば、ピレン、アントラセンなどの多環芳香族化合物、カルバゾール系、インドール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、トリアゾール化合物などの複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物が挙げられ、これらの中でも、トリアリールアミン化合物が好ましい。
【0104】
一方、電子輸送物質としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンおよびアルキル置換ジフェノキノンなどが挙げられる。
【0105】
本発明の電子写真感光体の表面層の中には、必要に応じて、シリコーン樹脂微粒子あるいはフッ素原子含有樹脂微粒子などの潤滑剤や、シリカ微粒子、アルミナ微粒子などの無機フィラーや、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など添加することもできる。
【0106】
本発明の電子写真感光体の表面層の成膜方法は、熱、光あるいは電子線での硬化を採ることが可能であり、必要に応じて、感度、残留電位を悪化させない程度にラジカル重合開始剤などの重合開始剤を含有してもよい。
【0107】
電子写真感光体の各層の形成工程において使用する溶剤としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン、Cが3以上のアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられ、単独で用いても複数の溶剤を用いてもよい。
【0108】
図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0109】
図1において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0110】
電子写真感光体1は、回転過程において、(一次)帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして電子写真感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0111】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0112】
像転写を受けた転写材7は、電子写真感光体面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0113】
像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0114】
なお、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0115】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。
【0116】
例えば、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0117】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0118】
本発明の電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンターおよびレーザー製版など電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0119】
次に、本発明で用いる測定機について説明する。
【0120】
X線回折の測定にはCuKα線を用い、次の条件で行った。
使用測定機:マック・サイエンス社製、全自動X線回折装置MXP18
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:2deg./min
サンプリング間隔:0.020deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):40deg.
ダイバージェンススリット:0.5deg.
スキャッタリングスリット:0.5deg.
レシービングスリット:0.3deg.
湾曲モノクロメーター使用
【0121】
【実施例】
以下、実施例にしたがって本発明をより一層詳細に説明する。なお、実施例中「部」は質量部を意味する。
【0122】
〔実施例1〕
直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体とし、それに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬コーティング法で塗布し、145℃で30分熱硬化して、膜厚15μmの導電層を形成した。
導電性顔料:SnO2コート処理硫酸バリウム 10部
抵抗調節用顔料:酸化チタン 2部
結着樹脂:フェノール樹脂 6部
レベリング材:シリコーンオイル 0.001部
溶剤:メタノール/メトキシプロパノール=2/8 20部
【0123】
上記導電層上に、N−メトキシメチル化ナイロン3部および共重合ナイロン3部を、メタノール65部およびn−ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬コーティング法で塗布し、100℃で10分熱乾燥して、膜厚0.5μmの中間層を形成した。
【0124】
次に、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン4部を、シクロヘキサノン95部にブチラール樹脂(ブチラール化度63モル%、重量平均分子量100,000)2部を溶かした液に加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で温度23±3℃の雰囲気下で20時間分散した。
【0125】
その後、酢酸エチル60部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。
【0126】
これを、上記中間層上に塗布し、100℃で10分熱乾燥して、膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
【0127】
次に、電荷輸送層を形成した。
【0128】
上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体80部を、トルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とし、上記電荷発生層上に浸漬塗布後、140℃で120分熱乾燥して、膜厚15μmの電荷輸送層を設け、ドラム形状の電子写真感光体とした。
【0129】
次に、評価について説明する。
【0130】
以下に示す評価機を用いて初期電位評価(感度、残留電位)、耐久評価(繰り返し電位特性)、およびフォトメモリーの評価を行った。
【0131】
(初期電位評価)
・評価機
GP−405(普通紙複写機)(キヤノン(株)製)
プロセススピード:210mm/s
帯電方式:直流電流に交流電流を重畳したローラー接触帯電手段(AC/DCローラー接触帯電手段)
レーザー像露光量:0.45μJ/cm2
転写方式:ローラー接触転写手段
クリーニングブレード:カウンター方向に設置、電子写真感光体に対するブレードの線圧を通常の1.5倍に設定
なお、電子写真感光体の電位特性を測定するため、現像位置にプローブを取り付けた電位測定冶具を用いて測定した。
【0132】
得られた電子写真感光体を上記評価機に装着し、温度23℃、湿度50%RHの常温常湿環境(N/N)下で暗部電位VD、明部電位VLおよび残留電位VRを測定した。
【0133】
VDに関しては、より帯電能を評価しやすい暗減衰量を見た。すなわち、VDを測定した直後に印加電圧およびドラム回転を切り、10秒間放置した後のVDを評価した。暗減衰量の計算は以下の式より算出した。
【0134】
暗減衰量=初期VDの絶対量−10秒後のVD絶対量
暗減衰量は、値が小さいほど帯電能が良いことを示し、VL、VRは小さいほど特性が良いことを示す。
【0135】
(耐久評価)
N/Nで60000枚の通紙耐久試験を行い、60000枚後のVLを測定し、初期と耐久後の電位変動量を評価した。なお、電位変動量については以下の式より算出した。
【0136】
VL電位変動量=通紙耐久後のVL−初期VL
摩耗量については、初期の膜厚と60000枚後の膜厚との差として算出した。なお、測定にはフィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープタイプE111)を用いた。
【0137】
また、耐久通紙画像はA4で、印字率4%の格子パターンとした。また、シーケンスは連続プリントモードとし、トナーがなくなったならば補給した。
【0138】
VL変動量(ΔVL)は、少ないほど繰り返し特性が良好であり、摩耗量については、値が小さいと膜強度が優れることを示す。
【0139】
表面層の膜厚測定には、フィッシャー社製渦電流式膜厚測定機(パーマスコープタイプE111)を用いた。
【0140】
画像に出る傷については、電子写真感光体の周方向に傷による画像欠陥が見られる場合がある。
【0141】
傷の深さについては表面粗さ測定機(小坂研究所(株)製サーフコーダーSE−3300)を使用し、カットオフ値0.8mm、基準長さ0.8mm、評価長さ8.0mm、ガウシャンフィルターの条件にて行った。
【0142】
画像に現われる傷画像については、ハーフトーン画像上に現われる電子写真感光体の周方向の画像欠陥(傷による画像欠陥)の個数を目視により、評価した。
【0143】
(フォトメモリーの評価)
耐久後の電子写真感光体の一部に、3000lxの白色蛍光灯の光を30分間照射し、4分間放置後、光を照射した部分の電位を測定し、照射前から電位がどれだけ低下したかを測定し、その変化量をフォトメモリー値とした。
【0144】
〔実施例2〜10〕
実施例1において、上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0145】
実施例1〜10の評価結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
〔実施例11〕
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と上記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質との共重合体を含有する表面層を形成した。
【0148】
すなわち、上記式(1−15)で示される構造を有する電荷輸送物質60部と表2中の式(2−1)で示される構造を有する電荷輸送物質20部とをトルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0149】
〔実施例12〜17〕
実施例11において、表2中の式(2−1)で示される構造を有する電荷輸送物質を、それぞれ表2、3に示すとおりに変更した以外は、実施例11と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0150】
実施例11〜17の評価結果を表4に示す。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
〔実施例18〕
上記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体との共重合体を含有する表面層を形成した。
【0155】
すなわち、上記式(1−1)で示される構造を有する電荷輸送物質の重合体60部と表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体20部とをトルエン130部に溶解させ、電荷輸送層用塗料とした以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0156】
〔実施例19〜27〕
実施例18において、表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体を、それぞれ表5、6に示すとおりに変更した以外は、実施例18と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0157】
実施例18〜27の評価結果を表7に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
【表6】
【0160】
【表7】
【0161】
〔実施例28〜35〕
実施例26において、上記式(1−1)で示される構造を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表8に示すとおりに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0162】
実施例28〜35の評価結果を表8に示す。
【0163】
【表8】
【0164】
〔比較例1〕
実施例1において、上記式(1−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0165】
〔比較例2〜7〕
比較例1において、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を、それぞれ表9、10、11に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0166】
〔比較例8〕
比較例1において、表9中の式(4−1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体60部と、表5中の式(3−1)で示される構造を有する単量体の重合体20部を混合して、塗工液を作製した以外は、比較例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0167】
比較例1〜8の評価結果を表12に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
【表12】
【0172】
比較例1〜7は、初期電位特性が悪く、耐摩耗性、耐傷性も悪い。このことから、本発明の効果を得るためには、電荷輸送物質(の重合体)は、フマルエステル構造、および、プロペニレンエーテル構造もしくはアリルエーテル構造を有していることが必須であることがわかる。
【0173】
〔実施例36〕
実施例26において、表6中の式(3−9)で示される構造を有する単量体の重合体の含有量を20部から2部に変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0174】
〔実施例37〕
実施例26において、表6中の式(3−9)で示される構造を有する単量体の重合体の含有量を20部から70部に変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0175】
〔実施例38〕
実施例1において、電荷輸送用塗料に過酸化ベンゾイル0.4部を加えた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0176】
〔実施例39〕
実施例1において、電荷発生物質をCuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の9.0°、14.2°、23.9°および27.1°に強いピークを有する結晶形のオキシチタニウムフタロシアニンに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価した。
【0177】
実施例36〜39の評価結果を表13に示す。
【0178】
【表13】
【0179】
本発明で用いる特定の構造の電荷輸送物質と共重合させる重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の含有量を変更した場合でも、該単量体を過酸化物に変更した場合でも、電荷発生物質を変更した場合でも、優れた電位特性、および耐久特性を示すことがわかる。
【0180】
〔実施例40、41〕
実施例1において、評価環境を、それぞれ、温度15℃、湿度10%RH(L/L)、温度30℃、湿度80%RH(H/H)に変更した以外は、実施例1と同様の電子写真感光体を用いて評価した。
【0181】
ただし、60000枚耐久後の評価項目はΔVLのみとした。
【0182】
〔比較例9、10〕
比較例1において、評価環境を、それぞれ、温度15℃、湿度10%RH(L/L)、温度30℃、湿度80%RH(H/H)に変更した以外は、比較例1と同様の電子写真感光体を用いて評価した。
【0183】
ただし、60000枚耐久後の評価項目はΔVLのみとした。
【0184】
実施例40、41、比較例9、10の評価結果を表14に示す。
【0185】
【表14】
【0186】
比較例9、10は、環境間でのΔVLが大きいが、実施例40、41はΔVLが小さいことがわかる。
【0187】
【発明の効果】
以上の結果から、高感度、低残留電位、および、繰り返し使用による画像安定性、さらには、優れた耐久性を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを用いる電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ容器
12 案内手段
Claims (14)
- 支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、下記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【外1】
(式(1)中、R11、R12は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。X11は、下記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y11は、下記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。)
【外2】
(式(2)中、R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子、または、置換または無置換の炭化水素基を示す。)
【外3】
(式(3)中、R31は、水素原子またはメチル基を示す。pは、0または1を示す。ただし、pが0のとき、R31はメチル基である。) - 前記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質が、下記式(61)または下記式(62)で示される構造を有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【外6】
(式(61)中、R611〜R614は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A611は、電荷輸送性基を示す。X611、X612は、それぞれ独立に、前記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y611、Y612は、それぞれ独立に、前記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。mは、2以上500以下の整数を示す。)
【外7】
(式(62)中、R621、R622は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキレン基、置換または無置換のアルキレン基中にエーテル結合を有する基、置換または無置換のシクロアルキレン基、または、置換または無置換のアリーレン基を示す。A621は、電荷輸送性基を示す。X621は、前記式(2)で示される構造を有する重合性官能基を示す。Y621は、前記式(3)で示される構造を有する重合性官能基を示す。nは、1以上10以下の整数を示す。) - 前記電子写真感光体の表面層が、
前記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する電荷輸送物質と、
前記式(1)で示される構造以外の重合性官能基を有する電荷輸送物質、および、重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体の少なくとも一方との共重合体を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。 - 前記重合性官能基は有するが電荷輸送能は有さない単量体が、前記式(1)で示される構造を有する重合性官能基を有する請求項5または6に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記フタロシアニン顔料が、ヒドロキシガリウムフタロシアニンである請求項8に記載の電子写真感光体。
- 前記ヒドロキシガリウムフタロシアニンが、CuKαのX線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニンである請求項9に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記電荷輸送層が、前記電子写真感光体の表面層である請求項11に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002253612A patent/JP2004093793A/ja not_active Withdrawn
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