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JP2003102430A - 柑橘属発酵物及びその製造方法 - Google Patents

柑橘属発酵物及びその製造方法

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JP2003102430A
JP2003102430A JP2001298325A JP2001298325A JP2003102430A JP 2003102430 A JP2003102430 A JP 2003102430A JP 2001298325 A JP2001298325 A JP 2001298325A JP 2001298325 A JP2001298325 A JP 2001298325A JP 2003102430 A JP2003102430 A JP 2003102430A
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citrus
fermentation
fermented
raw material
fruit
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Shuichi Fukumoto
修一 福本
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Pokka Corp
Original Assignee
Pokka Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 健康機能の向上作用を増大させてその付加価
値を高めることができる柑橘属発酵物及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】 柑橘属発酵物は、アスペルギルス属黒麹
菌を用いて柑橘属果実又はその一部からなる発酵原料を
微生物発酵処理することにより得られる。この柑橘属発
酵物には、8−ヒドロキシヘスペレチン、又は8−ヒド
ロキシナリンゲニン及び6−ヒドロキシナリンゲニンが
含有されている。また、ヘスペレチンやナリンゲニン等
のフラバノンアグリコンも含有されている。この柑橘属
発酵物は、黒麹菌を含む培地を好気的条件下で振盪培養
する予備培養処理を行った後、その培地を発酵原料に接
種して微生物発酵処理を行うことにより製造される。微
生物発酵処理における発酵期間は2〜14日間であるの
が好ましい。発酵原料としては、柑橘属果実から果汁を
搾汁した後の搾汁残渣が好適に使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、健康機能の向上
作用を増大させて付加価値を高め、飲料品や医薬品等に
利用することができるように構成された柑橘属発酵物及
びその製造方法に関するものである。より詳しくは、発
酵原料としての柑橘果実又はその一部を微生物発酵処理
することにより、その発酵原料中のフラバノン配糖体を
微生物変換し、より健康機能向上作用の高い成分を生成
させるように構成された柑橘属発酵物及びその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】柑橘属の果実は、果汁、果皮、じょうの
う膜及びさのうから構成されており、ヘスペリジンやナ
リンジン等のフラバノン配糖体が多量に含有されてい
る。前記ヘスペリジンやナリンジンには、抗アレルギー
作用、抗ウィルス作用及び抗炎症作用があることが確認
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、本発明者
らの鋭意研究の結果、柑橘属果実又はその一部を用いて
前記フラバノン配糖体よりもさらに健康機能の向上効果
が高い成分を効率よく得ることができたという知見に基
づいてなされたものである。その目的とするところは、
健康機能の向上作用を増大させてその付加価値を高める
ことができるように構成された柑橘属発酵物及びその製
造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明の柑橘属発酵物は、黒麹菌
を用いて、柑橘属の果実又はその一部からなる発酵原料
を微生物発酵処理することによって得られ、前記柑橘属
をミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキツ亜属ライ
ム区、ブンタン区若しくはダイダイ区、又はミカン科ミ
カン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ユズ区若しくはミ
カン区に属する柑橘とするとともに、8−ヒドロキシヘ
スペレチン、8‐ヒドロキシナリンゲニン及び6‐ヒド
ロキシナリンゲニンから選ばれる少なくとも1種のフラ
ボノイド化合物を含有することを特徴とするものであ
る。
【0005】請求項2に記載の発明の柑橘属発酵物は、
請求項1に記載の発明において、前記発酵原料中よりも
高濃度のフラバノンアグリコンを含有することを特徴と
するものである。
【0006】請求項3に記載の発明の柑橘属発酵物は、
黒麹菌を用いて、柑橘属の果実又はその一部からなる発
酵原料を微生物発酵処理することによって得られ、前記
柑橘属をミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキツ亜
属ライム区、ブンタン区若しくはダイダイ区、又はミカ
ン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ユズ区若し
くはミカン区に属する柑橘とするとともに、前記発酵原
料中よりも高濃度のフラバノンアグリコンを含有するこ
とを特徴とするものである。
【0007】請求項4に記載の発明の柑橘属発酵物は、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明におい
て、前記発酵原料を柑橘属果実から果汁を搾汁した後の
搾汁残渣とすることを特徴とするものである。
【0008】請求項5に記載の発明の柑橘属発酵物は、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明におい
て、前記黒麹菌をアスペルギルス・ニガー(Aspergillu
s niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus aw
amori)又はアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus sai
toi)とすることを特徴とするものである。
【0009】請求項6に記載の発明の柑橘属発酵物は、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明におい
て、抗酸化作用を有することを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明の柑橘属発酵物の製造方法は、請
求項1から請求項6のいずれかに記載の柑橘属発酵物の
製造方法であって、黒麹菌を用いて、前記発酵原料を微
生物発酵処理することを特徴とするものである。
【0010】請求項8に記載の発明の柑橘属発酵物の製
造方法は、請求項7に記載の発明において、前記微生物
発酵処理に先立って、黒麹菌を含む培地を好気的条件下
で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養
処理後の培地を前記発酵原料に付着させて微生物発酵処
理を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0011】請求項9に記載の発明の柑橘属発酵物の製
造方法は、請求項7又は請求項8に記載の発明におい
て、前記微生物発酵処理を2〜14日間行うことを特徴
とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体化した実施
形態を詳細に説明する。柑橘属発酵物は、アスペルギル
ス属に分類される黒麹菌を用いて、柑橘属の果実又はそ
の一部からなる発酵原料を微生物発酵処理することによ
って得られるものである。この柑橘属発酵物には、有効
成分として高い抗酸化作用を有する8−ヒドロキシヘス
ペレチン(8-hydroxyhesperetin)、又は8‐ヒドロキ
シナリンゲニン(8-Hydroxynaringenin)及び6‐ヒド
ロキシナリンゲニン(6-Hydroxynaringenin)が含有さ
れており、例えば飲料品、食品、医薬品等の素材に添加
して健康増進活性を有する健康食品や健康ドリンク等に
利用される。また、この柑橘属発酵物には、前記発酵原
料中よりも高濃度のフラバノンアグリコン(ヘスペレチ
ンやナリンゲニン等)も含有されており、健康機能の向
上に寄与している。なお、前記黒麹菌としては、アスペ
ルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギ
ルス・アワモリ(Aspergillus awamori)又はアスペルギ
ルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)が好適に使用され
る。
【0013】発酵原料としては、インド北東部アッサム
地方を起源とするミカン科ミカン亜科カンキツ属の柑橘
が用いられる。これらの柑橘としては、ミカン科ミカン
亜科カンキツ属初生カンキツ亜属ライム区(ライム、ベ
ルガモット等)、ブンタン区(グレープフルーツ、スウ
ィーティー、ポメロ、ブンタン、八朔、夏柑、安政柑、
甘夏柑等)若しくはダイダイ区(スイートオレンジ、サ
ワーオレンジ、鳴門、ダンカン、伊予柑等)、又はミカ
ン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ユズ区(ユ
ズ、スダチ、カボス、日向柑等)若しくはミカン区(温
州ミカン、地中海マンダリン、ポンカン、紀州ミカン
等)に属する柑橘が挙げられる。
【0014】これら発酵原料としては、収穫後の柑橘属
果実又はその一部(その果実の構成成分)が用いられ
る。なお、これら発酵原料は、冷蔵保存又は冷凍保存さ
れたものであっても構わない。前記柑橘属果実の構成成
分としては、柑橘属果実から剥離、分離若しくは単離さ
れた柑橘属の果皮(アルベド及びフラベド)、じょうの
う膜並びにさのうから選ばれる少なくとも1種が使用さ
れる。さらに、この発酵原料としては、果実から分離さ
れた部分を用いることもできるが、製造に要する手間を
省くとともに柑橘属果実の有効利用を容易に図ることが
できることから、柑橘属果実から果汁を搾汁した後の搾
汁残渣を使用するのが最も好ましい。この搾汁残渣に
は、柑橘属の果皮(アルベド及びフラベド)と、じょう
のう膜と、さのうの一部と、搾汁しきれなかった極少量
の果汁とが含まれている。
【0015】この発酵原料中には、ヘスペレチン(hesp
eretin;3',5,7-trihydroxy-4'-methoxyflavanone;C16
146)とルチノースとの配糖体であるヘスペリジン
(hesperidin)(ビタミンP)、ナリンゲニン(naring
enin;4',5,7-trihydroxyflavanone)とネオヘスペリジ
オース(neohesheridiose)との配糖体であるナリンジ
ン(naringin)等のフラバノン配糖体が含有されてい
る。例えば、ライム区、ダイダイ区、ミカン区及びユズ
区にはヘスペリジンが比較的多量に含有されるものが多
く、ブンタン区にはナリンジンが多量に含有されるもの
が多い。
【0016】微生物発酵処理は、前記黒麹菌を発酵原料
に接種した後、所定の発酵条件下で黒麹菌に発酵原料中
のフラバノン配糖体を微生物変換させる処理である。こ
の微生物変換は、主として黒麹菌の栄養菌糸が生産する
グルコシダーゼ(β−グルコシダーゼ)によりフラバノ
ン配糖体からフラバノンアグリコンを遊離させるアグリ
コン生成過程と、その生成されたフラバノンアグリコン
を、主として胞子形成期にある黒麹菌から生産されるヒ
ドロキシラーゼによってヒドロキシ化するヒドロキシ化
過程とを備えている。そして、これら両過程により、前
記発酵原料が微生物変換された柑橘属発酵物中には、ヘ
スペレチンやナリンゲニン等のフラバノンアグリコン
と、前記ヘスペレチン又はナリンゲニンがヒドロキシ化
された8−ヒドロキシヘスペレチン(8-hydroxyhespere
tin)、又は8‐ヒドロキシナリンゲニン(8-Hydroxyna
ringenin)及び6‐ヒドロキシナリンゲニン(6-Hydrox
ynaringenin)とが共存している。
【0017】前記8−ヒドロキシヘスペレチンは、下記
化1で示される構造を有している。
【0018】
【化1】 この8‐ヒドロキシヘスペレチンは、化学式がC1614
7で、分子量が約319のフラボノイド化合物(3',5,
7,8-tetrahydroxy-4'-methoxyflavanone 又は2,3-dihyd
ro-5,7,8-trihydroxy-2-(3-hydroxy-4-methoxyphenyl)-
4H-1-benzopyran-4-one)であり、ヘスペレチンの8位
に水酸基を備えた有機化合物である。この8−ヒドロキ
シヘスペレチンは、メタノール、エタノール及びジメチ
ルスルフォキシド(DMSO)に可溶で、若干溶解性は
悪いが水にも可溶である。さらに、前記ヘスペレチンに
は抗酸化作用がほとんど見られないのに対し、この8−
ヒドロキシヘスペレチンはα−トコフェロール(ビタミ
ンE)とほぼ同等又はそれ以上の抗酸化活性を有してい
る。
【0019】前記8‐ヒドロキシナリンゲニンは、下記
化2で示される構造を有している。
【0020】
【化2】 この8‐ヒドロキシナリンゲニンは、化学式がC1512
6で、分子量が約289のフラボノイド化合物(4',5,
7,8-tetrahydroxyflavanone又は2,3-Dihydro-5,7,8-tri
hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-4H-1-benzopyran-4-on
e)であり、ナリンジンの8位に水酸基を備えた有機化
合物である。この8−ヒドロキシナリンゲニンは、メタ
ノール、エタノール及びDMSOに可溶で、若干溶解性
は悪いが水にも可溶である。さらに、前記ナリンゲニン
には抗酸化作用がほとんど見られないのに対し、この8
−ヒドロキシナリンゲニンはα−トコフェロール(ビタ
ミンE)とほぼ同等又はそれ以上の抗酸化活性を有して
いる。
【0021】前記6‐ヒドロキシナリンゲニンは、下記
化3で示される構造を有している。
【0022】
【化3】 この6‐ヒドロキシナリンゲニンは、化学式がC1512
6で、分子量が約289のフラボノイド化合物(4',5,
6,7-tetrahydroxyflavanone又は2,3-Dihydro-5,6,7-tri
hydroxy-2-(4-hydroxyphenyl)-4H-1-benzopyran-4-on
e)であり、ナリンゲニンの6位に水酸基を備えた有機
化合物である。この6−ヒドロキシナリンゲニンは、メ
タノール、エタノール及びDMSOに可溶で、若干溶解
性は悪いが水にも可溶である。さらに、前記ナリンゲニ
ンには抗酸化作用がほとんど見られないのに対し、この
6−ヒドロキシナリンゲニンはα−トコフェロール(ビ
タミンE)にかなり近い抗酸化活性を有している。
【0023】黒麹菌を発酵原料に接種する方法として
は、黒麹菌の胞子を発酵原料に直接振りかけて付着させ
ることができる。また、予め黒麹菌を含む培地を好気的
条件で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備
培養処理後の培地を発酵原料全体に行き渡るように振り
かけて付着させたり、前記予備培養後の培地中に発酵原
料を浸漬させることによって接種することも可能であ
る。これらの接種方法のうち、発酵原料の微生物発酵処
理が比較的均一に進むことから、予備培養処理後の培地
を発酵原料に振りかけて付着させるのが最も好ましい。
【0024】前記予備培養処理は、微生物発酵処理に用
いられる黒麹菌を予め十分に増殖させるとともに活性化
させることによって、微生物発酵処理を迅速かつ円滑に
進行させるために行われる。この予備培養処理は、20
〜40℃の好気的条件下で最低5日以上行われ、好まし
くは黒麹菌の菌糸体が培地表面を3分の1程度覆う状態
となるまで行われる。
【0025】前記培地としては、ポテトデキストロース
含有培地やツァペック培地等の糸状菌用培地又はオカラ
等の有機物を含有する種々の液体培地が好適に使用され
る。さらに、この予備培養処理では、黒麹菌の生育を良
好にするために、培養開始時点における培地のpHを3
〜7に調整するのが好ましい。また、前記振盪培養する
際の振盪速度としては、好ましくは50rpm/分以
上、より好ましくは50〜200rpm/分である。こ
の振盪速度が50rpm/分未満の場合には、黒麹菌を
含有した培地全体が好気的でないため、菌糸の増殖が十
分にできない。また、振盪速度が200rpm/分を越
える場合には、培地の揺れが激しく、黒麹菌の菌体形成
が抑制されるおそれがある。
【0026】上記予備培養処理により活性化された黒麹
菌を発酵原料に接種する場合の微生物発酵処理条件とし
ては、微生物発酵処理を好気的条件で行うことが容易で
あることから、例えば有底筒状に形成された培養皿等の
底部が広く深さが浅い培養容器が好適に用いられる。さ
らに、この培養容器の底面に万遍なく発酵原料を広げる
ように載置するとよい。また、発酵温度としては、黒麹
菌の生育に好適な条件として、好ましくは10〜40
℃、より好ましくは20〜40℃で行われる。加えて、
黒麹菌の生育に好適な条件として、暗所で微生物発酵処
理を行うのが好ましい。
【0027】8−ヒドロキシヘスペレチンを多量に得る
ための微生物発酵処理の発酵期間としては、好ましくは
2〜14日、より好ましくは2〜10日、さらに好まし
くは3〜8日である。この発酵期間が2日未満の場合に
は、黒麹菌による微生物発酵がほとんど進行していない
ことから十分な量の8−ヒドロキシヘスペレチンが生成
されていない。逆に14日を越える場合には、微生物変
換により生成された8−ヒドロキシヘスペレチンの分解
が進み、抗酸化作用が低下する。
【0028】8−ヒドロキシナリンゲニン及び6−ヒド
ロキシナリンゲニンを多量に得るための微生物発酵処理
の発酵期間としては、好ましくは2〜14日、より好ま
しくは2〜10日、さらに好ましくは3〜8日である。
この発酵期間が2日未満の場合には、黒麹菌による微生
物発酵がほとんど進行していないことから十分な量の8
−ヒドロキシナリンゲニン及び6−ヒドロキシナリンゲ
ニンが生成されていない。逆に14日を越える場合に
は、微生物変換により生成された8−ヒドロキシナリン
ゲニン又は6−ヒドロキシナリンゲニンの分解が進み、
抗酸化作用が低下する。
【0029】また、フラバノンアグリコン(ヘスペレチ
ン、ナリンゲニン等)を多量に得るための発酵期間とし
ては、好ましくは2〜12日、より好ましくは2〜9
日、さらに好ましくは3〜7日である。この発酵期間が
2日未満の場合には、黒麹菌による微生物発酵がほとん
ど進行していないことから十分な量のフラバノンアグリ
コンが生成されていない。逆に12日を越える場合に
は、微生物変換により生成されたフラバノンアグリコン
の分解が進むおそれがある。
【0030】上記微生物発酵処理により得られる柑橘属
発酵物は、発酵により繊維質の分解が進み非常にもろく
て崩れやすい状態となる。柑橘属発酵物中には発酵途中
で繊維質の分解が不充分な発酵原料や発酵中に形成され
た接種菌株の菌糸体等の固形分が存在しており、その固
形分は微生物発酵処理前の発酵原料と比較し、体積で約
10分の1程度となる。この柑橘属発酵物は、そのまま
飲料品、食品、医薬品等の素材に添加するか、或いはミ
キサーやホモジナイズ処理した後に前記素材に添加して
利用することが可能である。また、前記柑橘属発酵物中
に生成された抗酸化作用等を有する有効成分を精製した
後、前記素材中に添加するように構成してもよい。
【0031】この柑橘属発酵物中の有効成分を精製する
際には、まず、接種菌体及び未発酵原料を主体とする固
形分を取り除く固形分除去処理が行われる。この固形分
除去処理は、前記固形分を含有する柑橘属発酵物を極性
溶媒中に浸漬させ、有効成分を溶媒中に移行させて抽出
した後、ガーゼ、粗メッシュ等で濾過又は2000×
g、30分間程度の軽い遠心分離を行って固形分を取り
除く処理である。なお、前記柑橘属発酵物を極性溶媒中
で抽出する際の抽出条件としては、常温で2時間以上抽
出するのが抽出効率の面からも好ましい。
【0032】前記極性溶媒としては、メタノール、エタ
ノール、それらの水溶液又は水が好適に用いられる。ま
た、ブタノールやイソプロパノール等の低級アルコール
又はそれらの水溶液も使用可能である。さらに、この極
性溶媒としては、大量の柑橘属発酵物を処理する場合の
経済的な観点から、好ましくはメタノール、その水溶液
又は水が用いられ、精製コスト面から最も好ましくは水
が用いられる。また、飲料品、食品、医薬品等の素材に
そのまま添加する場合には、エタノール、その水溶液又
は水を用いるのが好ましい。また、黒麹菌を死滅させて
微生物発酵を停止させるためには、メタノール、エタノ
ール又はその高濃度(例えば20容量%以上)の水溶液
を用いるのが好ましい。
【0033】さらに、前記固形分除去処理後の柑橘属発
酵物中に含まれるペクチンを主体とする水溶性繊維成分
を分離除去するための繊維分除去処理を行うことも可能
である。この繊維分除去処理は、前記固形分除去処理後
の柑橘属発酵物を遠心分離して、水溶性繊維成分を(遠
心管等の底部に)沈澱させることによって除去する処理
である。なお、この繊維分除去処理は、前記極性溶媒と
してメタノール又はエタノールを用いた場合には110
00×g、20分間程度の遠心力で遠心分離すればよ
く、前記極性溶媒として水又は水溶液を用いた場合には
それよりも強い遠心力で遠心分離される。
【0034】上記実施形態によって発揮される効果につ
いて、以下に記載する。 ・ 柑橘属発酵物は、アスペルギルス属に分類される黒
麹菌を用いて、柑橘属の果実又はその一部からなる発酵
原料を微生物発酵処理することによって得られるもので
ある。このため、この柑橘属発酵物は、前記発酵原料中
に含まれるフラバノン配糖体が黒麹菌により微生物変換
されたフラバノンアグリコンが高濃度で含有されてお
り、それらフラバノンアグリコンが有する抗炎症作用や
抗酸化作用等により健康機能の向上効果を発揮すること
ができる。また、この柑橘属発酵物中には、同黒麹菌に
より微生物変換された8−ヒドロキシヘスペレチン、8
−ヒドロキシナリンゲニン及び6−ヒドロキシナリンゲ
ニンから選ばれる少なくとも1種のフラボノイド化合物
が含有されており、微生物発酵処理前の発酵原料と比較
して極めて高い抗酸化作用を発揮することができる。
【0035】そして、この柑橘属発酵物は、主として前
記フラボノイド化合物により生体内で活性酸素を消去し
て過酸化脂質の生成を抑制し、酸化ストレスに起因する
癌、動脈硬化、糖尿病の合併症等の生活習慣病の予防に
役立てることができるうえ、酸化ストレスを低減させる
ことができる。さらに、前記フラバノンアグリコン及び
フラボノイド化合物により、健康の維持や疲労の回復等
に役立てることができ、その付加価値を容易に高めるこ
とができる。さらに、この柑橘属発酵物は、飲料品、食
品、医薬品等の素材に添加することによって健康食品や
健康ドリンク等の様々な製品に利用することが可能であ
ることから、柑橘属の利用拡大を容易に図ることができ
る。
【0036】・ 発酵原料として柑橘属果実から果汁を
搾汁した後の残渣を用いることによって、果汁よりも高
い濃度でフラバノン配糖体が含有されていることから、
前記フラバノンアグリコン及びフラボノイド化合物の製
造効率を容易に高めることができる。加えて、前記搾汁
残渣は、これまでほとんど利用されることがなく廃棄処
分されていたものであることから、本実施形態の柑橘属
発酵物を製造するための原料として用いることにより、
その有効利用を図ることができるとともに製造コストを
容易に低減させることができる。そのうえ、柑橘属発酵
物の製造後には、前記発酵原料の10分の1程度の固形
分が廃棄処分されるにとどまり、廃棄物の体積を顕著に
減量させることができる。このため、廃棄にかかる運搬
コストを容易に低減させることができるうえ、食品リサ
イクル法を遵守するのが極めて容易となる。
【0037】・ 柑橘属発酵物は、黒麹菌を用いて、柑
橘属の果実又はその一部からなる発酵原料を微生物発酵
処理することにより、前記発酵原料中に含まれるフラバ
ノン配糖体を微生物変換してフラバノンアグリコンを生
成させることによって製造される。また、8−ヒドロキ
シヘスペレチン、8−ヒドロキシナリンゲニン及び6−
ヒドロキシナリンゲニンから選ばれる少なくとも1種の
フラボノイド化合物も生成させることができる。このた
め、高い健康機能向上効果を発揮するとともにその付加
価値を高めることができる柑橘属発酵物を極めて容易に
製造することができる。
【0038】さらに、前記微生物発酵処理に先立って黒
麹菌の予備培養処理を行うことにより、微生物発酵処理
に用いる黒麹菌を予め十分に増殖させるとともに活性化
させ、微生物発酵処理を迅速かつ円滑に進行させること
ができる。加えて、微生物発酵処理を2〜14日間行う
ことによって、多量のフラバノンアグリコン及びフラボ
ノイド化合物を含有する柑橘属発酵物を容易に製造する
ことができる。
【0039】また、固形分除去処理により柑橘属発酵物
中の固形分を取り除くことによって、取り扱い性や機能
成分の濃度を容易に向上させた柑橘属発酵物を容易に製
造することができる。さらに、この取り除かれた固形分
は、次の微生物発酵処理における発酵スターターとして
も再利用することが可能であり、この場合には廃棄物を
より一層減量させることができる。
【0040】前記固形分除去処理に続いて、繊維分除去
処理により柑橘属発酵物中の水溶性繊維成分を取り除く
ことによって、抗酸化作用をより一層増強させた柑橘属
発酵物を容易に製造することができる。さらに、この取
り除かれた水溶性繊維成分は、整腸作用を有する機能性
食品や飲料品等に添加して再利用することが可能であ
り、柑橘属の利用拡大及び有効利用をさらに効果的に図
ることができる。
【0041】
【実施例】以下、前記実施形態を具体化した実施例及び
比較例について説明する。 <柑橘属発酵物の製造>本実験では、柑橘属の微生物発
酵処理に際し以下の菌株を使用した。なお、ATCCは
American Type Culture Collection、RIBは国税庁醸
造研究所、IAMは(財)応用微生物学研究奨励会より分
譲を受けた菌株を示す。 アスペルギルス・ニガー属 ・Aspergillus niger ATCC−10549、38857 アスペルギルス・アワモリ属(ニガー属と分けない分類もある) ・Aspergillus awamori RIB−2804 ・Aspergillus shirousami IAM−2414、RIB−2503 ・Aspergillus usami IAM−2185、RIB−2001 アスペルギルス・フェニシス属 ・Aspergillus saitoi IAM−2210 これら菌株の予備培養処理は、pHを5.0に調整し、
121℃、15分間オートクレーブ滅菌したポテトデキ
ストロース−ブロス培地(DIFCO社製)をフラスコ
内に500ml用意し、培地が十分に冷めた後に分譲菌
株を接種し、100rpmの好気的条件下で振盪培養す
ることにより行った。そして、培地に菌を接種して7日
以上経過し、フラスコ内で菌体が十分に育成された予備
培養処理後の培地液を微生物発酵処理に用いる接種用菌
とした。
【0042】(実施例1―1:ミカン科カンキツ属初生
カンキツ亜属ブンタン区)ブンタン区に属する柑橘とし
てグレープフルーツやスウィーティー、ブンタン、ハッ
サク等が知られている。それらの中で代表的なものとし
てグレープフルーツ(スタールビー種)を選択し微生物
発酵処理を実施した。
【0043】柑橘発酵原料には、グレープフルーツ果実
と、その果実から果汁を搾汁した後に残った搾汁残渣と
の2種類を用いた。グレープフルーツ果実は果実を8等
分にカットしたもので、搾汁残渣はグレープフルーツ果
実のうち、果皮とじょうのう膜及びさのうの一部が残っ
たもの(極僅かながら果汁も含まれている)である。本
実験では、前記発酵原料を通気性が良くなるように予め
オートクレーブ滅菌した底部の広い容器(有底円筒状の
容器)に万遍なく広げて置き、上記接種用菌をその発酵
原料全体に行き渡るように振りかけることにより接種を
行った。菌を接種した後の果実及び搾汁残渣は、30℃
の恒温室内で暗黒条件下にて微生物発酵処理を行った。
【0044】そして、上記菌株接種後所定日数経過後の
各グレープフルーツ発酵物をサンプリングし、−20℃
の冷凍庫にて冷凍保管した。次に、前記微生物発酵処理
後のサンプル(固形分を含むグレープフルーツ発酵物)
を100gあたり500mlのエタノールに浸漬させ、
37℃の暗黒条件下で2日間、有効成分の抽出操作を行
った。抽出後の液を11000×gで30分間遠心分離
し、得られた上澄み液を以下の分析に使用した。
【0045】(実施例1―2:ミカン科カンキツ属初生
カンキツ亜属ライム区)ライム区に属する柑橘としてラ
イム、ベルガモット等が知られている。それらの中で代
表的なものとしてライムを選択し、上記実施例1−1と
同様に微生物発酵処理を実施した。
【0046】(実施例1―3:ミカン科カンキツ属初生
カンキツ亜属ダイダイ区)ダイダイ区に属する柑橘とし
てオレンジやダイダイ、イヨカン等が知られている。そ
れらの中で代表的なものとしてオレンジ(バレンシア)
を選択し、上記実施例1−1と同様に微生物発酵処理を
実施した。
【0047】(実施例1―4:ミカン科カンキツ属後生
カンキツ亜属ミカン区)ミカン区に属する柑橘として温
州ミカンやマンダリン、ポンカン等が知られている。そ
れらの中で代表的なものとして温州ミカン(以下ミカン
と表記する)を選択し、上記実施例1−1と同様に微生
物発酵処理を実施した。
【0048】(実施例1―5:ミカン科カンキツ属後生
カンキツ亜属ユズ区)ユズ区に属する柑橘としてユズや
スダチ、カボス、日向夏等が知られている。それらの中
で代表的なものとしてユズを選択し、上記実施例1−1
と同様に微生物発酵処理を実施した。
【0049】(比較例1)上記各種柑橘の未発酵の発酵
原料(果実及び搾汁残渣)100gを500mlのエタ
ノールに浸漬させ、37℃の暗黒条件下で2日間、有効
成分の抽出操作を行った。抽出後の液を11000×g
で30分間遠心分離して得られた上澄み液をコントロー
ルとして以下の分析に使用した。
【0050】<抗酸化活性の測定>実施例1の各種柑橘
属発酵物(各種柑橘属果実及び搾汁残渣発酵物抽出液)
と、比較例1の各種柑橘未発酵物抽出液とを用いて、D
PPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazy)によるラジカ
ル捕捉能の測定を実施した。
【0051】本試験に使用する試薬の準備として、DP
PH20mgをエタノール100mlに溶解させた後
0.80μmのミリポアフィルターで濾過することによ
り、500μMのDPPH溶液を作製した。また、バッ
ファーにはTris緩衝液(0.2M、pH7.4)を
用いた。
【0052】まず、前記DPPH溶液2mlとTris
緩衝液0.8mlとを混合した混合液に、各サンプル液
を0.2ml加えて合計3mlの反応液を調製し、ボル
テックスでよく攪拌した後に室温暗所に置き20分間反
応させた。なお、コントロール(ブランクテスト)とし
ては、前記サンプル液の代わりに水0.2mlを使用し
て同様に反応を行った。また、比較のため、前記サンプ
ル液の代わりに50〜100μMの範囲内の各種濃度の
α−トコフェロール標準液0.2mlを加えた区分も用
意し、同様に反応を行った。
【0053】次に、各反応液を再度攪拌した後、マイク
ロシリンジを用いて各反応液10μlを高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)(島津製作所製のLC−10
A)にインジェクトした。このHPLCの溶媒には、十
分に脱気したメタノール/蒸留水=70/30を使用
し、流速1ml/分の条件で測定を行った。測定用のカ
ラムにはTSK−GEL OCTYL−80TS(15
0×4.6mm I.D.)、カラム温度35℃、UV
検出器の波長は517nmで測定を行った。
【0054】溶出開始からおよそ9分後にDPPHのピ
ークが出現することから、そのピーク高さ(HEIGHT)を
測定し、下記数1により各サンプルのDPPHラジカル
捕捉能(%)を求めた。結果を表1〜表6に示す。
【0055】
【数1】
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】 その結果、菌種による差異としてアスペルギルス・ニガ
ーは抗酸化能の上昇が見られるのが早く、アスペルギル
ス・サイトイでは逆に抗酸化能の上昇がやや遅くなる傾
向が確認された。さらに、各柑橘属間の比較では、最適
な発酵菌種に違いが見られたものの、ごく一部を除きほ
ぼすべての区で微生物発酵処理前と比較して抗酸化能の
向上が確認された。また、果実よりも搾汁残渣の方が抗
酸化能が高い傾向があることも確認された。なお、上記
α−トコフェロール標準液50,75,100,125
μMを加えた区分のラジカル捕捉能はそれぞれ18.
2,40.6,52.9,69.5%であった。従っ
て、柑橘果実及び搾汁残渣(果皮、じょうのう膜及びさ
のう)を、アスペルギルス・ニガーやアスペルギルス・
アワモリ、アスペルギルス・サイトイ(フェノシス)に
分類される黒麹菌を用いて2〜14日間微生物処理する
ことにより、極めて高い抗酸化能を持つ柑橘属発酵物が
得られることが確認された。以下に、各柑橘及び搾汁残
渣それぞれの結果について詳細を記す。
【0062】(グレープフルーツ果実及び搾汁残渣:ブ
ンタン区)グレープフルーツ果実発酵物の中では、Aspe
rgillus awamori RIB-2804 で9日間微生物発酵処理し
た区分が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵果実と比較
し30%以上抗酸化能が向上していることが確認され
た。Aspergillus niger、Aspergillus shirousami 及び
Aspergillus saitoi でも発酵前と比較し抗酸化能の向
上が確認された。発酵期間は7〜10日が最適との結果
となった。
【0063】グレープフルーツ搾汁残渣発酵物の中で
は、Aspergillus shirousami IAM-2414 で9日間微生物
発酵処理した区分が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵
搾汁残渣と比較し2倍程度の抗酸化能の向上が確認され
た。Aspergillus niger 、Aspergillus awamori、Asper
gillus usami 及び Aspergillus saitoi でも発酵前と
比較し抗酸化能の向上が確認された。発酵期間は7〜1
0日が最適との結果となった。
【0064】(ライム果実及び搾汁残渣:ライム区)ラ
イム果実発酵物の中では、Aspergillus niger ATCC-105
49 で9日間微生物発酵処理した区分が最も高い抗酸化
活性を示し、未発酵果実と比較し3倍弱程度まで抗酸化
能が向上していることが確認された。Aspergillus awam
ori 及び Aspergillus saitoi でも発酵前と比較し抗酸
化能の向上が確認された。発酵期間は7〜10日が最適
との結果となった。
【0065】ライム搾汁残渣発酵物の中では、Aspergil
lus awamori RIB-2804 で9日間微生物発酵処理した区
分が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵搾汁残渣と比較
し20〜30%程度抗酸化能が向上していることが確認
された。Aspergillus niger、Aspergillus shirousami
及び Aspergillus saitoi でも発酵前と比較し抗酸化能
の向上が確認された。発酵期間は、Aspergillus shirou
sami及びAspergillus niger を除き7〜10日が最適と
の結果となった。
【0066】(オレンジ果実及び搾汁残渣:ダイダイ
区)オレンジ果実発酵物の中では、Aspergillus saitoi
IAM-2210 で5日間微生物発酵処理した区分が最も高い
抗酸化活性を示し、未発酵果実と比較し40%程度抗酸
化能が向上していることが確認された。Aspergillus ni
ger でも発酵前と比較し抗酸化能の向上が確認された。
発酵期間は5〜10日が最適との結果となった。
【0067】オレンジ搾汁残渣発酵物の中では、Asperg
illus saitoi IAM-2210 で13日間微生物発酵処理した
区分が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵搾汁残渣と比
較し60〜70%程度の抗酸化能の向上が確認された。
Aspergillus niger 、Aspergillus shirousami 及び As
pergillus awamori でも発酵前と比較し抗酸化能の向上
が確認された。発酵期間は7〜14日が最適との結果と
なった。
【0068】(ミカン果実及び搾汁残渣:ミカン区)ミ
カン果実発酵物の中では、Aspergillus niger ATCC-105
49 で9日間微生物発酵処理した区分が最も高い抗酸化
活性を示し、未発酵果実と比較し40%以上抗酸化能が
向上していることが確認された。Aspergillus awamori
及び Aspergillus saitoi でも発酵前と比較し抗酸化能
の向上が確認された。発酵期間は7〜10日が最適との
結果となった。
【0069】ミカン搾汁残渣発酵物の中では、Aspergil
lus awamori RIB-2804 で9日間微生物発酵処理した区
分が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵搾汁残渣と比較
し10〜20%倍程度の抗酸化能の向上が確認された。
Aspergillus niger 、Aspergillus shirousami及び Asp
ergillus saitoi でも発酵前と比較し抗酸化能の向上が
確認された。発酵期間は7〜10日が最適との結果とな
った。
【0070】(ユズ果実及び搾汁残渣:ユズ区)ユズ果
実発酵物の中では、Aspergillus niger ATCC-10549 で
7日間微生物発酵処理した区分が最も高い抗酸化活性を
示し、未発酵果実と比較し2倍近く抗酸化能が向上して
いることが確認された。Aspergillus saitoi でも発酵
前と比較し抗酸化能の向上が確認された。発酵期間は7
〜10日が最適との結果となった。
【0071】ユズ搾汁残渣発酵物の中では、Aspergillu
s niger ATCC-10549 で7日間微生物発酵処理した区分
が最も高い抗酸化活性を示し、未発酵搾汁残渣と比較し
2倍以上の抗酸化能の向上が確認された。Aspergillus
awamori 及び Aspergillus saitoi でも発酵前と比較し
抗酸化能の向上が確認された。発酵期間は7〜10日が
最適との結果となった。
【0072】<柑橘属発酵物中の有効成分の確認>上記
実施例1で得られた各柑橘属発酵物中に含まれる有効成
分(代表的なフラバノン配糖体、フラバノンアグリコ
ン、8−ヒドロキシヘスペレチン(8OH−HE)及び
8−ヒドロキシナリンゲニン(8OH−NA))の含有
量を以下の方法で確認した。なお、前記含有量は、発酵
原料の湿重量(Fresh Weight)100gから生成された
重量(mg)を示す(以下、便宜的にmg/100gF
Wと記載する)すなわち、上記実施例1及び比較例1で
得られた各柑橘属発酵物(果実及び搾汁残渣発酵物抽出
液)と、コントロールの未発酵物抽出液とを高速液体ク
ロマトグラフィー(島津製作所製LC10A)を用い
て、下記分析条件にて成分の分析を行い、各柑橘属果実
及び搾汁残渣の微生物発酵処理前後における各有効成分
の変動について確認を実施した。 Column : YMC-Pack ODS-A A303 (250x4.6mmI.D.) Mobile phase : 40%methanol-water Flow rate : 1ml/min Injection volume : 10μl Column Temperature: 40℃ 紫外吸光度 : λ=280nm なお、この実験では、先に我々が単離した8−ヒドロキ
シヘスペレチン(特願2001−73577の<ヘスペ
リジン変換物の製造>)、8−ヒドロキシナリンゲニ
ン、6−ヒドロキシナリンゲニン(特願2001−93
020の<ナリンジン変換物の製造>)及びフラバノン
配糖体のエリオシトリンをそれぞれ100ppm濃度で
エタノール中に溶解させた標準サンプルと、市販のフラ
バノン配糖体(ナリンジン、ナリルチン、ネオエリオシ
トリン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン)、及び市販
のアグリコン(ナリンゲニン、エリオディクティオー
ル、ヘスペレチン)をそれぞれ100ppmの濃度でエ
タノール又はジメチルスルフォキシド(DMSO)中に
溶解させた標準サンプルを作成し、これら標準品を前記
抽出液と同条件にて分析し、各抽出液中における含有量
(mg/100gFW)を定量した。結果を上記表1〜
表6に示す。
【0073】その結果、微生物発酵処理前の段階で各発
酵原料中にフラバノン配糖体は非常に多量に含まれてい
たものの、フラバノンアグリコン及び8OH−HE及び
8OH−NAはほとんど存在していないことが確認され
た。柑橘の種類により差はあるが同じ重量で比較すると
果実よりも搾汁残渣のほうがフラバノン配糖体を高濃度
で含んでいることから、フラボノイド変換を目的とする
処理を行う場合、搾汁残渣は非常に好適な発酵原料であ
るといえる。
【0074】また、上記の結果は、柑橘の果実及び搾汁
残渣にアスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワ
モリ及びアスペルギルス・サイトイ等の黒麹菌を接種し
微生物発酵処理を進めていくことで、柑橘の果実及び搾
汁残渣中に大量に存在するフラバノン配糖体が減少し、
その代わりにフラバノンアグリコン、8OH−HE及び
8OH−NAの生成が見られたものと理解される。この
フラバノン配糖体からフラバノンアグリコン、8OH−
HE及び8OH−NAへの変換は、黒麹菌由来酵素の作
用によりフラバノン配糖体(ヘスペリジンやナリンジ
ン)についている糖が切断されてフラバノンアグリコン
(ヘスペレチンやナリンゲニン)になり、さらに、生成
されたフラバノンアグリコンの一部に黒麹菌由来の酵素
が働き水酸基が付加されて8OH−HE、8OH−NA
又は6−ヒドロキシナリンゲニン(6OH−NA)が生
成されたものであると考えられる。なお、6OH−NA
は8OH−NAと比較し生成量が少ないため、今回実施
したHPLCの分析では柑橘属の発酵物がごく小さいピ
ークしか検出されなかったためデータには示さなかっ
た。
【0075】上記のように黒麹菌由来の酵素の働きによ
り、フラバノン配糖体から変換されたフラバノンアグリ
コンは、抗アレルギー作用、抗ウィルス作用、抗炎症作
用等の種々の健康機能向上作用を有し、かつ体内への吸
収性を向上させるというメリットがある。さらにフラバ
ノンアグリコンに水酸基が付与された8OH−HE、8
OH−NA及び6OH−NAは、柑橘属発酵物の抗酸化
能をより一層高めることに寄与する。
【0076】また、上記結果から、フラバノンアグリコ
ン、8OH−HE、8OH−NA等の生成量が多いサン
プルでは、DPPHラジカル捕捉能もほぼ比例しつつ高
まる傾向が見られ、微生物発酵処理により生成されたフ
ラバノンアグリコン、8OH−HE及び8OH−NA
は、柑橘属発酵物全体の抗酸化能にとって大きく寄与し
ていることが確認された。微生物を用いた発酵のため各
サンプルで多少のバラツキがある点を差し引けば、フラ
バノンアグリコン、8OH−HE、8OH−NAの変換
効率の優れている菌株(アスペルギルス・ニガー、アス
ペルギルス・アワモリ及びアスペルギルス・サイトイ)
は、抗酸化能の評価とほぼ相関した結果が得られたとい
える。
【0077】以上の結果から、黒麹菌を用いて微生物発
酵処理することにより、抗酸化能の低かったフラバノン
配糖体がより抗酸化能が高く体内吸収性に優れたフラバ
ノンアグリコン、8OH−HE及び8OH−NAに変換
されたことが確認された。さらに、それら変換物を含有
する柑橘属発酵物は、非常に高い抗酸化作用を発揮し、
健康機能を著しく向上させる働きを有することが強く示
唆される。
【0078】なお、本実施形態は、次のように変更して
具体化することも可能である。 ・ 発酵原料として柑橘属果実から搾汁した果汁を用い
てもよい。 ・ 柑橘属発酵物中に、好ましくは0.5mg/100
gFW以上、より好ましくは0.8〜100mg/10
0gFW、より一層好ましくは3〜60mg/100g
FWのヘスペレチンを含有するとよい。
【0079】・ 柑橘属発酵物中に、好ましくは1.0
mg/100gFW以上、より好ましくは1.3〜50
0mg/100gFW、さらに好ましくは10〜300
mg/100gFWのナリンゲニンを含有するとよい。
【0080】・ 柑橘属発酵物中に、好ましくは0.3
mg/100gFW以上、より好ましくは0.8〜10
0mg/100gFW、さらに好ましくは1.0〜20
mg/100gFWの8−ヒドロキシヘスペレチンを含
有するとよい。
【0081】・ 柑橘属発酵物中に、好ましくは0.3
mg/100gFW以上、より好ましくは1.0〜10
0mg/100gFW、さらに好ましくは1.0〜20
mg/100gFWの8−ヒドロキシナリンゲニンを含
有するとよい。また、柑橘属発酵物中に発酵原料よりも
高濃度の6−ヒドロキシナリンゲニンを含有するとよ
い。
【0082】・ 柑橘属発酵物(特にライム区の柑橘)
中に、好ましくは0.1mg/100gFW以上、より
好ましくは2.0〜50mg/100gFW、さらに好
ましくは3〜20mg/100gFWのエリオディクテ
ィオールを含有するとよい。
【0083】さらに、前記実施形態より把握できる技術
的思想について以下に記載する。 ・ 前記発酵原料を柑橘属果実とすることを特徴とする
請求項1から請求項6のいずれかに記載の柑橘属発酵
物。
【0084】・ 前記フラバノンアグリコンは、ヘスペ
レチン又はナリンゲニンであることを特徴とする請求項
2から請求項6のいずれかに記載の柑橘属発酵物。 ・ 前記発酵原料をライム区、ダイダイ区、ミカン区及
びユズ区に属する柑橘とするとともに、前記フラボノイ
ド化合物を8−ヒドロキシヘスペレチンとすることを特
徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の柑橘
属発酵物。前記発酵原料をライム区及びミカン区に属す
る柑橘とするとともに、前記フラボノイド化合物を8−
ヒドロキシヘスペレチンとすることを特徴とする請求項
1から請求項6のいずれかに記載の柑橘属発酵物。
【0085】・ 前記発酵原料をライム区、ダイダイ
区、ミカン区又はユズ区に属する柑橘とするとともに、
前記フラバノンアグリコンをヘスペレチンとすることを
特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の柑
橘類発酵物。前記発酵原料をライム区及びミカン区に属
する柑橘とするとともに、前記フラバノンアグリコンを
ヘスペレチンとすることを特徴とする請求項2から請求
項6のいずれかに記載の柑橘類発酵物。
【0086】・ 前記発酵原料をブンタン区に属する柑
橘とするとともに、前記フラボノイド化合物を8−ヒド
ロキシナリンゲニン及び6−ヒドロキシナリンゲニンと
することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか
に記載の柑橘属発酵物。前記発酵原料をブンタン区に属
する柑橘とするとともに、前記フラバノンアグリコンを
ナリンゲニンとすることを特徴とする請求項2から請求
項6のいずれかに記載の柑橘類発酵物。
【0087】・ 前記発酵原料よりも高い抗酸化活性を
有することを特徴とする請求項6に記載の柑橘属発酵
物。
【0088】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような効果を奏する。本発明の柑橘属発酵物に
よれば、健康機能の向上作用を増大させてその付加価値
を高めることができる。本発明の柑橘属発酵物の製造方
法によれば、健康機能の向上作用を増大させてその付加
価値を高めることができる柑橘属発酵物を容易に製造す
ることができる。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 黒麹菌を用いて、柑橘属の果実又はその
    一部からなる発酵原料を微生物発酵処理することによっ
    て得られ、 前記柑橘属をミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキ
    ツ亜属ライム区、ブンタン区若しくはダイダイ区、又は
    ミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ユズ区
    若しくはミカン区に属する柑橘とするとともに、 8−ヒドロキシヘスペレチン、8‐ヒドロキシナリンゲ
    ニン及び6‐ヒドロキシナリンゲニンから選ばれる少な
    くとも1種のフラボノイド化合物を含有することを特徴
    とする柑橘属発酵物。
  2. 【請求項2】 前記発酵原料中よりも高濃度のフラバノ
    ンアグリコンを含有することを特徴とする請求項1に記
    載の柑橘属発酵物。
  3. 【請求項3】 黒麹菌を用いて、柑橘属の果実又はその
    一部からなる発酵原料を微生物発酵処理することによっ
    て得られ、 前記柑橘属をミカン科ミカン亜科カンキツ属初生カンキ
    ツ亜属ライム区、ブンタン区若しくはダイダイ区、又は
    ミカン科ミカン亜科カンキツ属後生カンキツ亜属ユズ区
    若しくはミカン区に属する柑橘とするとともに、 前記発酵原料中よりも高濃度のフラバノンアグリコンを
    含有することを特徴とする柑橘属発酵物。
  4. 【請求項4】 前記発酵原料を柑橘属果実から果汁を搾
    汁した後の搾汁残渣とすることを特徴とする請求項1か
    ら請求項3のいずれかに記載の柑橘属発酵物。
  5. 【請求項5】 前記黒麹菌をアスペルギルス・ニガー
    (Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(As
    pergillus awamori)又はアスペルギルス・サイトイ(Asp
    ergillus saitoi)とすることを特徴とする請求項1から
    請求項4のいずれかに記載の柑橘属発酵物。
  6. 【請求項6】 抗酸化作用を有することを特徴とする請
    求項1から請求項5のいずれかに記載の柑橘属発酵物。
  7. 【請求項7】 請求項1から請求項6のいずれかに記載
    の柑橘属発酵物の製造方法であって、 黒麹菌を用いて、前記発酵原料を微生物発酵処理するこ
    とを特徴とする柑橘属発酵物の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記微生物発酵処理に先立って、黒麹菌
    を含む培地を好気的条件下で振盪培養する予備培養処理
    を行った後、その予備培養処理後の培地を前記発酵原料
    に付着させて微生物発酵処理を行うようにしたことを特
    徴とする請求項7に記載の柑橘属発酵物の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記微生物発酵処理を2〜14日間行う
    ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の柑橘属
    発酵物の製造方法。
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