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JP2002176973A - 哺乳動物胚性幹細胞とその樹立方法並びにその継代培養方法 - Google Patents

哺乳動物胚性幹細胞とその樹立方法並びにその継代培養方法

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JP2002176973A
JP2002176973A JP2000404227A JP2000404227A JP2002176973A JP 2002176973 A JP2002176973 A JP 2002176973A JP 2000404227 A JP2000404227 A JP 2000404227A JP 2000404227 A JP2000404227 A JP 2000404227A JP 2002176973 A JP2002176973 A JP 2002176973A
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JP
Japan
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embryonic stem
cells
stem cells
umbilical cord
medium
Prior art date
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Application number
JP2000404227A
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English (en)
Inventor
Shigeo Saito
成夫 齋藤
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Original Assignee
Individual
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】多能性を有する胚性幹細胞とその樹立方法、並
びにその胚性幹細胞の継代培養方法の提供。 【解決手段】以下の細胞生物学的特徴(1)胚盤胞期胚
由来であること、(2)未分化状態での増殖を続けるこ
と、(3)糖鎖SSEA−1抗原が発現すること、
(4)アルカリフォスファターゼ活性が陽性であるこ
と、(5)転写因子Oct3/4が発現すること、
(6)多分化能を持つこと、の全てを有することを特徴
とする哺乳動物胚性幹細胞と、哺乳動物胚盤胞期胚の内
細胞塊から得られた細胞を牛胎児血清を含有するMEM
αを培地とし、臍帯より分離した臍帯内皮細胞のフィー
ダー上で培養しコロニーを形成する胚性幹細胞の樹立方
法、並びに継代培養方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は胚性幹細胞とその
樹立方法並びにその胚性幹細胞の継代培養方法に関する
ものである。さらに詳しくは、この発明は胚性幹細胞か
ら臓器へ、臓器から個体へと分化する細胞生物学的、分
子生物学的な制御転換機能解明のための研究材料とし
て、或いは異種間移植用の臓器作出のための医療材料と
して、また胚性幹細胞は、高い頻度で外来遺伝子との相
同組み換えが起こる可能性があるため、有用医薬品のバ
イオリアクターなる組み換えクローン動物を生産するた
めのドナー細胞として有益な胚性幹細胞とその樹立方
法、並びにその胚性幹細胞を継代培養する方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】生物個体への分化能を示す培養細胞とし
てのマウス胚性幹細胞が発見されて以来、この胚性幹細
胞を用いた組織・器官の再生、胚の発生機序の追求、ク
ローン化個体の作出を目指した発生学がクローズアップ
され、次世代の医学及びバイオテクノロジーの目指す方
向性の一つとして期待されている。
【0003】1998年にアメリカの研究者グループが
ヒトにおける胚性幹細胞の樹立を初めて報告して以来
(Thompson TA,et al.,Scien
ce 282,1145−1147,1998;Sha
mblott MJ,et al.,Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA.1995,13726
−13731,1998)、胚性幹細胞がヒトの神経
系、血球系、臓器等の再生医療や遺伝子治療に道を開く
万能細胞として俄然世の脚光を浴びる様になってきた。
しかしながら、マウス以外の動物種では胚性幹細胞(或
いは胚性幹様細胞)を用いた生殖系列キメラの作出は未
だ成功しておらず(SticeS,et al.,Bi
ol.Reprod.48,715−719,199
6;Strelchenko N,Therio−ge
nology,37,111−126,1996)、体
外で胚性幹細胞の遺伝子操作を行い、形質転換された幹
細胞を介し、組み換え個体の生産が可能なものも今のと
ころマウスに限られている(Bradley A,et
al.,Nature,399,255,198
4)。
【0004】Strelchenkoは前出の論文でウ
シの胚性幹様細胞を樹立し、この細胞をドナー核として
核移植を行い、クローン胚をレシピエント牛に移植した
ところ妊娠55日で流産したと報告している。しかし、
本発明者が幹細胞の特徴として挙げたアルカリフォスフ
ァターゼの発現は陰性であり、その他の条件もクリアし
ていない様である。またCampbellらは、ヒツジ
でembryonic disc由来の培養細胞からの
クローン産仔の作出に成功したが(Nature,38
0,64−66,1996)、胚性幹細胞の特徴である
アルカリフォスファターゼの発現性や糖鎖SSEA−1
抗体の発現性に関しては記述しておらず、embryo
nic disc由来の細胞は形態的にも上皮様細胞の
様である。
【0005】Strelchenko,Campbel
lらは胚性幹様細胞の培養を行う為に、胎児繊維芽細胞
株であるマウスSTOかマウス胎児由来の初代繊維芽細
胞を用いている。胚性幹細胞の維持に使われる初代繊維
芽細胞は始原生殖細胞の二次培養以降に使えば細胞株が
得られるが、初代培養に使うと継代出来ないとされてお
り(Stewart,CL,et al.,Dev.B
iol.161,626−628,1994)、ウシや
ヒツジなど家畜種の胚性幹細胞樹立のために、その初代
繊維芽細胞を用いたことが幹細胞の樹立を妨げた可能性
が高いと考えられる。また胚性幹細胞は白血病阻害因子
存在下において未分化状態が維持され、細胞の増殖を促
されることが知られている。しかしながら、白血病阻害
因子を加えてもマウス以外の齧歯類や家畜種胚性幹細胞
の樹立には成功しておらず、未知の増殖因子が存在して
いるのかもしれない。
【0006】以上の通り、マウスやヒト以外には胚性幹
細胞の樹立された動物種は確認されておらず、胚性幹細
胞を特定するうえで不可欠な糖鎖SSEA−1が発現す
ることや体外培養系で多分化能を持つこと等が証明され
た報告はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の様な事
情を勘案してなされたものであり、マウスやヒト以外の
胚性幹細胞を提供することを目的としている。またこの
発明はそれらの細胞を樹立するための方法と、それらの
細胞を継代的に培養するための方法を提供することを目
的としてもいる。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明はまず、上記の
課題を解決するものとして、以下の細胞生物学的特徴、
(1)胚盤胞期胚由来であること、(2)未分化状態で
の増殖を継続すること、(3)糖鎖SSEA−1抗原が
発現すること、(4)アルカリフォスファターゼ活性が
陽性であること、(5)転写因子Oct3/4が発現す
ること、(6)多分化能を持つこと、の全てを有するこ
とを特徴とする、哺乳動物胚性幹細胞を提供する。
【0009】またこの発明は、哺乳動物胚の内細胞塊か
ら得られた細胞を牛胎児血清を含有するMEMαを培地
とし、臍帯より分離した臍帯内皮細胞のフィーダー上で
培養しコロニーを形成させるか、または、このコロニー
をアルカリフォスファターゼ活性の有無、糖鎖SSEA
−1抗原の発現性、Oct3/4の発現性、多分化能の
有無、未分化状態での増殖性、を指標にスクリーニング
することを特徴とする、胚性幹細胞の樹立方法を提供す
る。
【0010】さらにこの発明は、哺乳動物胚性幹細胞期
胚の内細胞塊から得られた細胞を、牛胎児血清を含有す
るMEMαを培地とし、臍帯より分離した臍帯内皮細胞
のフィーダー上で初代培養してコロニーを形成させ、
0.25%トリプシン0.1%EDTA溶液によってコ
ロニーの細胞を培地から剥がし、剥がした細胞をPBS
溶液と共に遠心分離器にかけることで洗浄し、個々の細
胞に分散させた後、上記初代培養に用いた培地で再培養
することを特徴とする、胚性幹細胞の継代培養法を提供
する。
【0011】なお、上記の胚性幹細胞の樹立方法、及
び、その継代培養法においては、哺乳動物胚盤胞期胚の
内細胞塊から得られた細胞を、牛胎児血清、上皮細胞成
長因子、白血病阻害因子を含有するMEMαの培地で培
養することを好ましい態様としてもいる。
【0012】
【発明実施の形態】まず、この発明の胚性幹細胞の樹立
方法に関してさらに詳しく説明する。通常、胚性幹細胞
を樹立するためには、マイトマイシン処理をするか、γ
放射線を照射し細胞分裂を停止させたマウスSTOフィ
ーダー細胞が必要である。この発明では臍帯内皮細胞を
フィーダーに用いる。培養培地には牛胎児血清(FC
S)、白血病阻害因子(LIF)を含有させる。また上
皮細胞成長因子(EGF)は胚性幹細胞コロニーの形成
に必須ではないが、胚性幹細胞を株化するのに顕著な効
果があり、細胞の増殖因子として、培養培地に添加する
ことが重要である。臍帯細胞をフィーダーとして用い、
培養培地にEGFを添加することは、胚性幹細胞の増殖
に対し相乗的に働き、細胞株の樹立を可能にする。
【0013】これらの成分の培地中への添加量は、例え
ばFCSは5〜10%、LIFは10〜50ng/m
l、EGFは10〜50ng/ml程度とすることが出
来る。培養は5%CO条件下で39℃前後の温度で行
う。以上の通りの培養により、胚性幹細胞のコロニーが
得られる。さらに、これらのコロニーを形成する細胞に
対しては、例えば糖鎖SSEA−1抗原が発現するこ
と、アルカリフォスファターゼが陽性であること、転写
因子Oct3/4が発現すること、多分化能を持つこ
と、を指標としてスクリーニングすることによって、胚
性幹細胞としての機能発現を確認することが出来る。
【0014】例えばSSEA−1抗原の発現性は、細胞
をSSEA−1抗体で染色してからフローサイトメトリ
ーで分離することにより確認することが出来る。多分化
能を持つことは、培養系で神経細胞に分化させ、gli
al fibrillary acidic prot
ein(GFAP)、Nestin抗体マーカーで染色
してその多分化能を確認することが出来る。さらに胚性
幹細胞を除核した体外培養由来の未受精卵に核移植し、
更に体外培養することにより胚盤胞に発達させ、これを
受胚雌の子宮に移植することにより妊娠せしめることで
確認することも可能である。
【0015】次に、この発明における胚性幹細胞の継代
培養法に関して説明する。この方法は、上記の樹立方法
によって得た胚性幹細胞のコロニー(初代培養細胞)を
培養器から剥がし、別の培養器において再培養し、増殖
させる方法である。コロニーを剥がす際には、培養器か
ら培養培地を取り除いた後、0.1〜0.25%程度の
トリプシンEDTA液を添加し、約39℃で6分間程度
処理することにより、フィーダー細胞と共にコロニーを
剥がすことが出来る。これを予め細胞分裂を抑止された
臍帯内皮細胞由来の初代培養に用いたものと同様の培地
(すなわちFCS、LIF、EGFを含有する培地)で
培養することによって、コロニーをフィーダーに接着さ
せ、再度増殖させることが出来る。継代培養に使用する
細胞以外は、定法に従って液体窒素中で凍結保存も出来
る。
【0016】以上の通りこの発明の方法はヒトをはじめ
とする全ての哺乳動物の胚性幹細胞の樹立に適用するこ
とが出来、様々な動物種から胚性幹細胞を樹立するこ
と、並びにそれらの胚性幹細胞を継代的に培養すること
が出来る。そして例えばブタやウシ、ウマの胚性幹細胞
は異種移植用の臓器の作成に利用することが出来たり、
有用医薬品のバイオリアクターとなる組み換えクローン
動物生産に活用出来、再生医学やバイオテクノロジーの
発展に多大な貢献が期待される。
【0017】以下、実施例を示し、この発明の幹細胞樹
立方法をさらに詳細かつ具体的に説明すると共に、この
方法によって得られた胚性幹細胞についても試験結果を
示してその特徴を解説する。しかしながら、この発明は
以下の例によって限定されるものではない。
【0018】
【実施例】実施例1この発明の胚性幹細胞を以下の方法
により取得し、その細胞を生物学的特性を試験した。
【0019】(1)臍帯内皮細胞の分離、培養法並びに
フィーダー細胞としての準備に関して記す。ウシ新生子
の臍帯を滅菌した外科用鋏で約1cmに切断し、70
%エタノールを噴霧し、火炎滅菌を行った後、抗生物質
添加PBS(−)(Dulbecco、Ca、Mg不
含)で数回洗浄した(ペニシリン2000単位/ml;
明治製菓、ストレプトマイシン100μg/ml;明治
製菓、ファンギゾン25μg/ml;GIBCO BR
L)。更に滅菌ペトリ皿上で上記サンプルを1mm
度に細切後、3mlの0.25%トリプシン0.1%E
DTA(GIBCO BRL)で10分間処理した。こ
のサンプルの入ったトリプシン液を5mlのPBS
(−)で希釈後、遠心分離(1000rpm、5分間)
し、沈殿を5mlのPBS(−)で懸濁し再度同条件で
遠心分離した。得られた沈殿を10%のFCS(GIB
CO BRL)と抗生物質を含有したMEMα(GIB
CO BRL)3mlの入った培養皿(プライマリア、
ファルコン、6cm径)に入れ、38.6℃、5%CO
の条件下で培養を行った。培養3〜4日後に細切され
た臍帯サンプルの周囲に内皮細胞がコロニーとなって出
現した。コンフルエントに至る迄更に7〜10日培養
後、臍帯サンプル塊を除去後、継代培養を行った。培地
は2日に1度新しいものと交換する。継代は細胞をPB
S(−)で2回洗浄後数分間トリプシンEDTA処理を
し、6cmの培養皿に約1/5の濃度で細胞を蒔くこと
で行った。4日後にほぼコンフルエントに達した。2〜
3回継代を繰り返した後、既法に従い凍結保存した。フ
ィーダーとして用いる時には凍結細胞を融解後新たに培
養を始めた。フィーダー細胞の作成手順。aコンフルエ
ントに近い臍帯内皮細胞に、10μg/mlとなるよう
マイトマイシン(Sigma)を加え、3〜4時間培養
した。b培地を除きPBS(−)で3回洗浄し、トリプ
シン処理を行い細胞を剥がした後、遠心分離した(10
00rpm、5分間)。細胞を2×10/mlの濃度
に懸濁した。c4穴培養皿(Nunc)に1穴当たり
0.5mlの懸濁液を滴下した。一様なフィーダー細胞
となる、作成後2日以降のものを胚性幹細胞の樹立の為
に使用した。
【0020】(2)胚性幹細胞の樹立並びに培養予め凍
結保存された胚を既法に従い融解した後、試験に供し
た。ラットにおいては交尾確認後4日目の胚盤胞期胚を
ウシ及びウマにおいてはそれぞれ人工或いは自然交配後
7日目の胚盤胞期胚を用いた。全ての胚盤胞から顕微手
術により内細胞塊(ICM)部分を切り出し、フィーダ
ー細胞上で培養を行った。20ng/ml EGF(S
igma)、20ng/ml LIF(Sigma)を
加えたMEMα(10%FCS、ペニシリン、ストレプ
トマイシン含有)中で、38.6℃、5%CO条件下
で培養を続けた。培地は2日に1度交換した。フィーダ
ー上のICMは1〜2日でフィーダーに接着し、増殖を
続けた。培養4〜5日後には周囲に細胞コロニーが発達
してきた。更に培養を続け、コロニーの直径が3000
〜4000μmになった時点でピペットを用いてフィー
ダーより剥がし、トリプシン液でおよそ6〜7分間処理
した後、ガラスピペットを用い細胞を解離した。解離後
はPBS(−)で希釈後遠心分離を2回行って洗浄した
後、得られた沈殿を上記と同じ培養条件でフィーダー細
胞上に1/3濃度で蒔いた(初代培養)。
【0021】(3)試験方法胚性幹細胞の指標の1つと
なる形態を位相差顕微鏡下で観察し、未分化状態での増
殖を調べた。未分化細胞としての特徴であるアルカリフ
ォスファターゼ活性はfast red TR塩(Si
gma)含有のNaphthol AS MX Pho
sphate(Sigma)で染色することによって検
出した。胚性幹細胞の未分化マーカーSSEA−1抗原
の発現は、抗SSEA−1抗体染色によりフローサイト
メトリー(fluorescence activat
ed cell sorter;FACS)を用いSS
EA−1抗体と結合する幹細胞集団の分離を試みた。す
なわちラット胚性幹細胞2×10個を抗ラットIgG
及び抗マウスSSEA−1抗体と反応後、FITC(f
luorecein isothio−cyanat
e)標識ウサギ抗マウスIgGで二次染色しFACSに
て解析した。またウシ胚性幹細胞2×10個を抗ウシ
IgG及び抗マウスSSEA−1抗体と反応後、FIT
C標識ウサギ抗マウスIgGで二次染色しFACSにて
解析した。更にウマにおいても胚性幹細胞2×10
を抗ウマIgG及び抗マウスSSEA−1抗体と反応
後、ラット、ウシと同様に二次染色し、FACSにて解
析した。マウスの未分化細胞を同定するのに用いられる
転写因子Oct3/4の検出をPCR法により行った。
胚性幹細胞の多分化能を調べるため、得られた幹細胞を
神経系細胞へと分化させ、星状膠細胞、神経幹細胞の細
胞マーカー抗体であるGFAP、Nestin抗体で細
胞免疫化学的にそれらの検出を試みた。すなわち、ウ
マ、ラット胚性幹細胞をEGF、繊維芽細胞成長因子
(FGF)2、FGF9含有MEMα培地で3回継代培
養し、グリア細胞が観察された時点で、マウス抗Nes
tin抗体と反応後アルカリフォスファターゼ共役抗マ
ウスIgG抗体と二次反応させ、Fast redで染
色した。また同様にEGF、FGF2、FGF9含有地
で3回継代培養した後、これらサイトカインを除去し、
更に7日間培養した時点で、ウサギ抗GFAP抗体と反
応後、アルカリフォスファターゼ共役抗ウサギIgG抗
体と二次反応させ、同様に染色した。更にウシ胚性幹細
胞の多分化能を調べるため、幹細胞をドナー核とし、核
移植を実施し、クローン胚を作出した後、受胚雌に移植
した。培地への添加因子であるEGF、LIFをそれぞ
れ1種、及び、両方を除いたコントロール培地で、継代
3〜4代のウマ胚性幹細胞の培養を行い、添加因子の細
胞増殖への作用を調べた。又、フィーダー細胞の幹細胞
樹立に対する効果を調べるため、フィーダー細胞無しで
ウシICMの培養を行い、対照と比較した。
【0022】(4)試験結果上記(2)の条件で培養の
結果、図1〜3の位相差顕微鏡写真に示した様にマウス
胚性幹細胞と酷似した細胞同士が密に凝集した胚性幹細
胞コロニーが得られた。初代培養ではコンフルエントに
達するのに7〜10日間を要した。アルカリフォスファ
ターゼ活性は陽性であった(図4、5、6)。胚性幹細
胞の抗マウスSSEA−1抗体陽性細胞の割合は図7、
8、9で示してある。ラットは24.5%、ウシが1
0.2%、ウマは38.4%の割合となり、動物種間で
差があることが示唆された。
【0023】
【表1】 表1から明らかなように、全ての動物種の胚性幹細胞で
Oct3/4が陽性であった。
【0024】次に胚性幹細胞の多分化能を示す証拠とし
てウマ胚性幹細胞から星状膠細胞マーカーGPAP抗体
陽性細胞(図10)、及び神経幹細胞マーカーNest
in抗体陽性細胞(図11)が体外培養系により作出さ
れた。この結果により、ウマ胚性幹細胞が多能性を有す
ることが証明された。ラット胚性幹細胞でも同様の結果
が得られた。
【0025】
【表2】
【0026】更にウシ胚性幹細胞をドナー核として用い
た核移植胚の妊娠率は表2に示した。このことにより細
胞核の多能性も確認出来た。
【0027】以上図1〜11、表1、2に示したように
本発明で樹立した細胞株は、多分化能を有する胚性幹細
胞としての特徴を完全に示すことが確認出来た。
【0028】図12に明らかなように、EGF、LIF
共に除いたコントロールでは、1週間培養を続けてもコ
ンフルエントに達しないのに対し、EGF単独で加えた
系では4日で、EGF・LIFを組み合わせると更に3
日で、コンフルエントに達する顕著な増殖効果が認めら
れた。
【0029】
【表4】
【0030】表4に明らかなように、フィーダー細胞の
存在無しではウシ胚性幹細胞の樹立は不可能であった
が、フィーダー細胞を用いることでICM9個中5個
(56%)が幹細胞として樹立され、フィーダー細胞を
使用することが胚性幹細胞樹立には必須であることが示
唆された。
【0031】実施例2実施例1で得た胚性幹細胞を、以
下の方法により継代培養した。フィーダー細胞上でコン
フルエントに達したウシ胚性幹細胞の培養皿から培地を
取り除いた後、0.25%トリプシン0.1%EDTA
で6〜10分間処理し、胚性幹細胞とフィーダー細胞と
を溶液中に分散させた。この懸濁液を2回遠心分離し
(1000rpm、5分間)、得られた沈殿を継代培養
に用いたものと同様の組成からなる培地に2×10
/ml濃度で蒔いたところ、細胞は培養皿上での活発な
分裂、増殖が観察され(図13)、ほぼ4〜5日でコン
フルエントに達した。
【0032】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って胚性幹細胞とこの細胞を樹立するための方法、並び
にこの胚性幹細胞を継代的に培養する方法が提供され
る。このことにより、幹細胞の再生、分化機構の解明や
異種移植用の臓器の作成、有用医薬品のバイオリアクタ
ーとなる組み換えクローン動物生産に活用することが可
能となり、再生医学やバイオテクノロジーの発展に資す
ることが期待出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラット胚性幹細胞コロニー顕微鏡写真200
倍。
【図2】ウシ胚性幹細胞コロニー顕微鏡写真200倍。
【図3】ウマ胚性幹細胞コロニー顕微鏡写真100倍。
【図4】ラット胚性幹細胞コロニーアルカリフォスファ
ターゼ染色顕微鏡写真200倍。
【図5】ウシ胚性幹細胞コロニーアルカリフォスファタ
ーゼ染色顕微鏡写真200倍。
【図6】ウマ胚性幹細胞コロニーアルカリフォスファタ
ーゼ染色顕微鏡写真200倍。
【図7】抗SSEA−1抗体によるラット胚性幹細胞の
FACSの結果。黒く塗られた領域が陽性細胞の割合。
【図8】抗SSEA−1抗体によるウシ胚性幹細胞のF
ACSの結果。黒く塗られた領域が陽性細胞の割合。
【図9】抗SSEA−1抗体によるウマ胚性幹細胞のF
ACSの結果。黒く塗られた領域が陽性細胞の割合。
【図10】ウマ胚性幹細胞由来GFAP抗体陽性細胞顕
微鏡写真100倍。
【図11】ウマ胚性幹細胞由来Nestin抗体陽性細
胞顕微鏡写真200倍。
【図12】細胞増殖因子がウマ胚性幹細胞増殖に及ぼす
影響を示したグラフ。
【図13】ウシ胚性幹細胞(継代数5)顕微鏡写真20
0倍。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の細胞生物学的特徴(1)胚盤胞期胚
    由来であること、(2)未分化状態での増殖を継続する
    こと、(3)糖鎖SSEA−1抗原が発現すること、
    (4)アルカリフォスファターゼ活性が陽性であるこ
    と、(5)転写因子Oct3/4が発現すること、
    (6)多分化能を持つこと、の全てを有することを特徴
    とする哺乳動物胚性幹細胞。
  2. 【請求項2】哺乳動物がラット、ウシ及びウマである請
    求項1の胚性幹細胞。
  3. 【請求項3】哺乳動物胚盤胞期胚の内細胞塊から得られ
    た細胞を牛胎児血清を含有するMEMαを培地とし、臍
    帯より分離した臍帯内皮細胞のフィーダー上で培養しコ
    ロニーを形成させることを特徴とする胚性幹細胞の樹立
    方法。
  4. 【請求項4】哺乳動物胚盤胞期胚の内細胞塊から得られ
    た細胞を牛胎児血清を含有するMEMαを培地とし、臍
    帯より分離した臍帯内皮細胞のフィーダー上で培養しコ
    ロニーを形成させ、このコロニーを未分化状態での増殖
    能、糖鎖SSEA−1抗原の発現性、アルカリフォスフ
    ァターゼ活性の有無、Oct3/4の発現性、多分化能
    の有無、を指標にスクリーニングすることを特徴とする
    胚性幹細胞の樹立方法。
  5. 【請求項5】哺乳動物胚盤胞期胚の内細胞塊から得られ
    た細胞を牛胎児血清、上皮細胞成長因子、白血病阻害因
    子を含有するMEMα培地で培養する請求項3または4
    の胚性幹細胞の樹立方法。
  6. 【請求項6】哺乳動物がラット、ウシ及びウマである請
    求項3から5のいずれかの胚性幹細胞の樹立方法。
  7. 【請求項7】哺乳動物胚盤胞期胚の内細胞塊から得られ
    た細胞を牛胎児血清を含有するMEMαを培地とし、臍
    帯より分離した臍帯内皮細胞のフィーダー上で初代培養
    してコロニーを形成させ、トリプシンEDTA溶液によ
    ってコロニーの細胞を培地から剥がし、剥がした細胞を
    PBS溶液と共に遠心分離器にかけることで洗浄し、個
    々の細胞に分散させた後、上記初代培養に用いた培地で
    再培養することを特徴とする胚性幹細胞の継代培養法。
  8. 【請求項8】哺乳動物胚盤胞期の内細胞塊から得られた
    細胞を牛胎児血清、上皮細胞成長因子、白血病阻害因子
    を含有するMEMα培地で初代培養する請求項7の胚性
    幹細胞の継代培養方法。
  9. 【請求項9】哺乳動物がラット、ウシ及びウマである請
    求項7か8のいずれかの胚性幹細胞の継代培養方法。
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