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JP2000119774A - 快削性銅合金 - Google Patents

快削性銅合金

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JP2000119774A
JP2000119774A JP10287921A JP28792198A JP2000119774A JP 2000119774 A JP2000119774 A JP 2000119774A JP 10287921 A JP10287921 A JP 10287921A JP 28792198 A JP28792198 A JP 28792198A JP 2000119774 A JP2000119774 A JP 2000119774A
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JP
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alloy
machinability
silicon
copper
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JP10287921A
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Keiichiro Oishi
恵一郎 大石
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SANBO COPPER ALLOY CO Ltd
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SANBO COPPER ALLOY CO Ltd
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Priority to CA002303512A priority patent/CA2303512C/en
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    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22FCHANGING THE PHYSICAL STRUCTURE OF NON-FERROUS METALS AND NON-FERROUS ALLOYS
    • C22F1/00Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working
    • C22F1/08Changing the physical structure of non-ferrous metals or alloys by heat treatment or by hot or cold working of copper or alloys based thereon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C22CALLOYS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉛の含有量を従来の快削性銅合金に比して大
幅に低減させつつも、工業的に充分満足しうる被削性を
確保しうる快削性銅合金を提供する。 【解決手段】 快削性銅合金は、銅69〜79重量%、
珪素2.0〜4.0重量%及び鉛0.02〜0.4重量
%を含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなすも
のである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛成分を殆ど含有
しない快削性銅合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】被削性に優れた銅合金として、一般に、
JIS H5111 BC6等の青銅系合金やJIS
H3250−C3604,C3771等の黄銅系合金が
知られている。これらは1.0〜6.0重量%程度の鉛
を含有することによって被削性を向上させたものであ
り、従来からも、切削加工を必要とする各種製品(例え
ば、上水道用配管の水栓金具,給排水金具,バルブ等)
の構成材として重宝されている。
【0003】ところで、鉛はマトリックスに固溶せず、
粒状をなして分散することによって、被削性を向上させ
るものであるが、鉛含有量が1重量%に満たない場合に
は、切屑が図1(D)の如く螺旋状に連なった状態で生
成してバイトに絡み付く等の種々のトラブルを生じる。
一方、鉛含有量が1.0重量%以上であれば、切削抵抗
の軽減等を充分に図ることができるが、鉛含有量が2.
0重量%に満たない場合には切削表面が粗くなる。した
がって、工業的に満足しうる被削性を確保するために
は、鉛含有量を2.0重量%以上としておくのが普通で
ある。一般に、高度の切削加工が要求される銅合金展伸
材においては約3.0重量%以上の鉛が含有されてお
り、青銅系の鋳物においては約5重量%の鉛が含有され
ている。例えば、上記したJIS H5111 BC6
では鉛含有量が約5.0重量%である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、鉛は人体や環
境に悪影響を及ぼす有害物質であるところから、近時に
おいては、その用途が大幅に制限される傾向にある。例
えば、合金の溶解,鋳造等の高温作業時に発生する金属
蒸気には鉛成分が含まれることになり、或いは飲料水等
との接触により水栓金具や弁等から鉛成分が溶出する虞
れがあり、人体や環境衛生上問題がある。そこで、近
時、米国等の先進国においては銅合金における鉛含有量
を大幅に制限する傾向にあり、わが国においても鉛含有
量を可及的に低減した快削性銅合金の開発が強く要請さ
れている。
【0005】本発明は、かかる世界的な傾向及び要請に
応えるべくなされたもので、鉛の含有量を従来の快削性
銅合金に比して大幅に低減させつつも、工業的に充分満
足しうる被削性を確保しうる快削性銅合金を提供するこ
とを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成すべく、次のような快削性銅合金を提案する。
【0007】すなわち、第1発明においては、被削性に
優れた銅合金として、銅69〜79重量%と珪素2.0
〜4.0重量%と鉛0.02〜0.4重量%とを含有
し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなす快削性銅合
金(以下「第1発明合金」という)を提案する。
【0008】鉛はマトリックスに固溶せず、粒状をなし
て分散することによって、被削性を向上させるものであ
る。一方、珪素は金属組織中にγ相(場合によってはκ
相)を出現させることにより、被削性を改善するもので
ある。このように、両者は合金特性における機能を全く
異にするものであるが、被削性を改善させる点では共通
する。かかる点に着目して、第1発明合金は、珪素を添
加することにより、工業的に満足しうる被削性を確保し
つつ、鉛含有量の大幅な低減を可能としたものである。
すなわち、第1発明合金は、珪素の添加によるγ相形成
により被削性を改善したものである。
【0009】而して、珪素の添加量が2.0重量%未満
では、工業的に満足しうる被削性を確保するに充分なγ
相の形成が行われない。また、被削性は珪素添加量の増
大に伴って向上するが、4.0重量%を超えて添加して
も、その添加量に見合う被削性改善効果はない。ところ
で、珪素は融点が高く比重が小さいため又酸化し易いた
め、合金溶融時に珪素単体で炉内に装入すると、当該珪
素が湯面に浮くと共に、溶融時に酸化されて珪素酸化物
ないし酸化珪素となり、珪素含有銅合金の製造が困難と
なる。したがって、珪素含有銅合金の鋳塊製造にあって
は、通常、珪素添加をCu−Si合金とした上で行うこ
とになり、製造コストが高くなる。このような合金製造
コストを考慮した場合にも、被削性改善効果が飽和状態
となる量(4.0重量%)を超えて珪素を添加すること
は好ましくない。また、実験によれば、珪素を2.0〜
4.0重量%添加したときにおいて、Cu−Zn系合金
本来の特性を維持するためには、亜鉛含有量との関係を
も考慮した場合、銅含有量は69〜79重量%の範囲と
しておくことが好ましいことが判明した。このような理
由から、第1発明合金にあっては、銅及び珪素の含有量
を夫々69〜79重量%及び2.0〜4.0重量%とし
た。なお、珪素の添加により、被削性が改善される他、
鋳造時の湯流れ性,強度,耐摩耗性,耐応力腐蝕割れ
性,耐高温酸化性も改善される。また、延性,耐脱亜鉛
腐蝕性も或る程度改善される。
【0010】一方、鉛の添加量は、次の理由から0.0
2〜0.4重量%とした。すなわち、第1発明合金で
は、上記した如き機能を有する珪素を添加したことによ
り、鉛添加量を低減しても被削性を確保できるが、特
に、従来の快削性銅合金より優れた被削性を得るために
は、鉛を0.02重量%以上添加する必要がある。しか
し、鉛添加量が0.4重量%を超えると、却って切削表
面が粗くなると共に、熱間での加工性(例えば、鍛造
性)が悪くなり、冷間での延性も低下する。そして、鉛
添加量が0.4重量%以下の微量であれば、わが国を含
めた先進各国において近い将来制定されるであろう鉛含
有量規制が如何に厳格なものであったとしても、その規
制を充分にクリアすることができると考えられる。な
お、後述する第2〜第11発明合金においても、上記し
た理由から、鉛の添加量は0.02〜0.4重量%とさ
れている。
【0011】また、第2発明においては、同じく被削性
に優れた銅合金として、銅69〜79重量%と、珪素
2.0〜4.0重量%と、鉛0.02〜0.4重量%
と、ビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.02
〜0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%から
選択された1種の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛から
なる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第2発明合
金」という)を提案する。
【0012】すなわち、第2発明合金は、第1発明合金
にビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.02〜
0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%の1つ
を更に含有させた合金組成をなすものである。
【0013】ビスマス、テルル又はセレンは、鉛と同様
に、マトリックスに固溶せず、粒状をなして分散するこ
とによって、被削性を向上させる機能を発揮するもので
あり、鉛の添加量不足を補いうるものである。したがっ
て、これらの何れかを珪素及び鉛と共添させると、珪素
及び鉛の添加による被削性改善限度を超えて被削性を更
に向上させることが可能となる。第2発明合金では、か
かる点に着目して、第1発明合金における被削性を更に
改善すべく、ビスマス、テルル及びセレンのうちの1つ
を添加させることとした。特に、珪素及び鉛に加えてビ
スマス、テルル又はセレンを添加することにより、複雑
な形状を高速で切削加工する場合にも、高度の被削性を
発揮する。しかし、ビスマス、テルル又はセレンの添加
による被削性向上効果は、各々の添加量が0.02重量
%未満では発揮されない。一方、これらは銅に比して高
価なものであるから、0.4重量%を超えて添加して
も、被削性は僅かながらも添加量の増加に応じて向上す
るものの、経済的に添加量に見合う程の効果は認められ
ない。また、添加量が0.4重量%を超えると、熱間で
の加工性(例えば、鍛造性等)が悪くなり、冷間での加
工性(延性)も低下する。しかも、ビスマス等の重金属
について仮に鉛同様の問題が生じる可能性があったとし
ても、0.4重量%以下の微量添加であれば、格別の問
題を生じる虞れもないと考えられる。これらの点から、
第2発明合金では、ビスマス、テルル又はセレンの添加
量を0.02〜0.4重量%とした。なお、鉛とビスマ
ス、テルル又はセレンとを共添させる場合、両者の合計
添加量は0.4重量%以下となるようにしておくことが
好ましい。けだし、合計添加量が0.4重量%を僅かで
も超えると、それらの単独添加量が0.4重量%を超え
る場合ほどではないが、熱間での加工性や冷間での延性
が低下し始め、或いは切屑形態が図1(B)から同図
(A)へと移行する虞れがあるからである。ところで、
ビスマス、テルル又はセレンは上記した如く珪素と異な
る機能により被削性を向上させるものであるから、これ
らの添加により銅及び珪素の適正含有量は影響されな
い。したがって、第2発明合金における銅及び珪素の含
有量は第1発明合金と同一とした。
【0014】また、第3発明においては、同じく被削性
に優れた銅合金として、銅70〜80重量%と、珪素
1.8〜3.5重量%と、鉛0.02〜0.4重量%
と、錫0.3〜3.5重量%、アルミニウム1.0〜
3.5重量%及び燐0.02〜0.25重量%から選択
された1種以上の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛から
なる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第3発明合
金」という)を提案する。
【0015】錫は、Cu−Zn系合金に添加した場合、
珪素と同様に、γ相を形成して被削性を向上させるもの
である。例えば、錫は、58〜70重量%のCuを含有
するCu−Zn系合金において1.8〜4.0重量%添
加させることにより、珪素が添加されておらずとも、良
好な被削性を示す。したがって、Cu−Si−Zn系合
金に錫を添加させることにより、γ相の形成を促進させ
ることができ、Cu−Si−Zn系合金の被削性を更に
向上させることができる。錫によるγ相の形成は1.0
重量%以上で行なわれ、3.5重量%に達すると飽和状
態となる。なお、錫の添加量が3.5重量%を超える
と、γ相の形成効果が飽和状態となるばかりでなく、却
って延性が低下する。また、錫の添加量が1.0重量%
未満ではγ相の形成効果が少ないものの、添加量が0.
3重量%以上であれば、珪素により形成されるγ相を分
散させて均一化させる効果があり、このようなγ相の分
散効果によっても被削性が改善される。すなわち、錫の
添加量が0.3重量%以上であれば、その添加により被
削性が改善されることになる。
【0016】また、アルミニウムも、錫と同様に、γ相
形成を促進させる機能を有するものであり、錫と共に或
いはこれに代えて添加することにより、Cu−Si−Z
n系合金の被削性を更に向上させることができる。アル
ミニウムには、被削性の他、強度,耐摩耗性,耐高温酸
化性を改善させる機能や合金比重を低下させる機能もも
あるが、被削性改善機能が発揮されるためには、少なく
とも1.0重量%添加させる必要がある。しかし、3.
5重量%を超えて添加しても、添加量に見合った被削性
改善効果はみられないし、錫と同様に延性の低下を招来
する。
【0017】また、燐には、錫やアルミニウムのような
γ相の形成機能はないが、珪素の添加により又はこれと
錫,アルミニウムの一方若しくは両方を共添させること
により生成したγ相を均一に分散して、γ相分布を良好
なものとする機能があり、かかる機能によってγ相形成
による被削性の更なる向上を図ることができる。また、
燐の添加により、γ相の分散化と同時にマトリックスに
おけるα相の結晶粒を微細化して、熱間加工性を向上さ
せ、強度,耐応力腐蝕割れ性も向上させる。さらに、鋳
造時の湯流れ性を著しく向上させる効果もある。このよ
うな燐添加による効果は0.02重量%未満の添加では
発揮されない。一方、燐の添加量が0.25重量%を超
えると、添加量に見合った被削性改善等の効果は得られ
ないし、過剰添加により却って熱間鍛造性,押出性の低
下を招来する。
【0018】第3発明合金では、かかる点に着目して、
Cu−Si−Pb−Zn系合金(第1発明合金)に、錫
0.3〜3.5重量%、アルミニウム1.0〜3.5重
量%及び燐0.02〜0.25重量%のうち少なくとも
1つを添加させることより、被削性の更なる向上を図っ
ている。
【0019】ところで、錫、アルミニウム又は燐は、上
記した如くγ相の形成機能又はγ相の分散機能により被
削性を改善させるものであり、γ相による被削性改善を
図る上で、珪素と密接な関係を有するものである。した
がって、珪素に錫、アルミニウム又は燐を共添させた第
3発明合金では、第1発明合金の珪素に置き換えて被削
性を向上させる機能が発揮され、γ相とは関係なく被削
性を改善させる機能(マトリックスに粒状をなして分散
することにより被削性を向上させる機能)を発揮するビ
スマス、テルル又はセレンを添加した第2発明合金に比
して、珪素の必要添加量が少なくなる。すなわち、珪素
添加量が2.0重量%未満であっても、1.8重量%以
上であれば、錫、アルミニウム又は燐の共添により、工
業的に満足しうる被削性を得ることができる。しかし、
珪素の添加量が4.0重量%以下であっても、3.5重
量%を超えると、錫、アルミニウム又は燐を共添するこ
とにより、珪素添加による被削性改善効果は飽和状態と
なる。かかる点から、第3発明合金では、珪素の添加量
を1.8〜3.5重量%とした。また、かかる珪素の添
加量との関係及び錫、アルミニウム又は燐を添加させる
こととの関係から、銅配合量の上下限値は第2発明合金
より若干大きくして、その好ましい含有量を70〜80
重量%とした。
【0020】また、第4発明においては、同じく被削性
に優れた銅合金として、銅70〜80重量%と、珪素
1.8〜3.5重量%と、鉛0.02〜0.4重量%
と、錫0.3〜3.5重量%、アルミニウム1.0〜
3.5重量%及び燐0.02〜0.25重量%から選択
された1種以上の元素と、ビスマス0.02〜0.4重
量%、テルル0.02〜0.4重量%及びセレン0.0
2〜0.4重量%から選択された1種の元素とを含有
し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなす快削性銅合
金(以下「第4発明合金」という)を提案する。
【0021】すなわち、第4発明合金は、第3発明合金
にビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.02〜
0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%の何れ
かを更に含有させた合金組成をなすものであり、これら
を添加させる理由及び添加量の決定理由は第2発明合金
について述べたと同様である。
【0022】また、第5発明においては、被削性に加え
て耐蝕性にも優れた銅合金として、銅69〜79重量%
と、珪素2.0〜4.0重量%と、鉛0.02〜0.4
重量%と、錫0.3〜3.5重量%、燐0.02〜0.
25重量%、アンチモン0.02〜0.15重量%及び
砒素0.02〜0.15重量%から選択された1種以上
の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成を
なす快削性銅合金(以下「第5発明合金」という)を提
案する。
【0023】すなわち、第5発明合金は、第1発明合金
に錫0.3〜3.5重量%、燐0.02〜0.25重量
%、アンチモン0.02〜0.15重量%及び砒素0.
02〜0.15重量%の少なくとも1つを更に含有させ
た合金組成をなすものである。
【0024】錫には、被削性改善機能の他、耐蝕性(耐
脱亜鉛腐蝕性,耐漬食性)及び鍛造性を向上させる機能
がある。すなわち、α相マトリックスの耐蝕性を向上さ
せ、γ相の分散化により耐蝕性、鍛造性及び耐応力腐蝕
割れ性の改善を図ることができる。第5発明合金では、
錫のかかる機能により耐蝕性の改善を図り、被削性の改
善は主として珪素添加効果により図っている。したがっ
て、珪素及び銅の含有量は第1発明合金と同一としてあ
る。一方、耐蝕性,鍛造性の改善機能を発揮させるため
には、錫の添加量を少なくとも0.3重量%とする必要
がある。しかし、錫添加による耐蝕性,鍛造性の改善機
能は、3.5重量%を超えて添加しても、添加量に見合
うだけの効果が得られず、経済的にも無駄である。
【0025】また、燐は、上記した如くγ相を均一分散
化させる共にマトリックスにおけるα相の結晶粒を細分
化させることにより、被削性改善機能の他、耐蝕性(耐
脱亜鉛腐食性,耐漬食性)、鍛造性、耐応力腐蝕割れ性
及び機械的強度を向上させる機能を発揮するものであ
る。第5発明合金では、燐のかかる機能により耐蝕性等
の改善を図り、被削性の改善は主として珪素添加効果に
より図っている。燐添加による耐蝕性等の改善効果は、
微量の燐添加により発揮されるものであり、0.02重
量%以上の添加で発揮される。しかし、0.25重量%
を超えて添加しても、添加量に見合った効果が得られな
いばかりか、熱間鍛造性,押出性が却って低下する。
【0026】また、アンチモン及び砒素も、燐と同様
に、微量(0.02重量%以上)で耐脱亜鉛腐食性等を
向上させるものである。しかし、0.15重量%を超え
て添加しても、添加量に見合う効果が得られないばかり
か、燐の過剰添加と同様に、熱間鍛造性,押出性が却っ
て低下する。
【0027】これらのことから、第5発明合金では、第
1発明合金におけると同量の銅、珪素及び鉛に加えて、
耐蝕性向上元素として錫、燐、アンチモン及び砒素の少
なくとも1つを上記した範囲内で添加させることによ
り、被削性のみならず、耐蝕性等をも向上させることが
できるのである。なお、第5発明合金にあっては、錫及
び燐は、主として、アンチモン及び砒素と同様の耐蝕性
改善元素として機能するため、珪素及び微量の鉛以外に
被削性改善元素を添加しない第1発明合金と同様に、銅
及び珪素の配合量は、夫々、69〜79重量%及び2.
0〜4.0重量%としてある。
【0028】また、第6発明においては、同じく被削性
及び耐蝕性に優れた銅合金として、銅69〜79重量%
と、珪素2.0〜4.0重量%と、鉛0.02〜0.4
重量%と、錫0.3〜3.5重量%、燐0.02〜0.
25重量%、アンチモン0.02〜0.15重量%及び
砒素0.02〜0.15重量%から選択された1種以上
の元素と、ビスマス0.02〜0.4重量%、テルル
0.02〜0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重
量%から選択された1種の元素とを含有し、且つ残部が
亜鉛からなる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第6
発明合金」という)を提案する。
【0029】すなわち、第6発明合金は、第5発明合金
にビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.02〜
0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%の何れ
か1つを更に含有させた合金組成をなすものであり、第
2発明合金と同様に、珪素及び鉛に加えてビスマス、テ
ルル及びセレンの何れか1つを添加することにより被削
性を改善すると共に、第5発明合金と同様に、錫、燐、
アンチモン及び砒素のうちから選択した少なくとも1つ
を添加することにより耐蝕性等を改善したものである。
したがって、銅、珪素、鉛、ビスマス、テルル及びセレ
ンの添加量については第2発明合金と同一とし、錫、
燐、アンチモン及び砒素の添加量については第5発明合
金と同一とした。
【0030】また、第7発明においては、被削性に加え
て高力性,耐摩耗性に優れた銅合金として、銅62〜7
8重量%と、珪素2.5〜4.5重量%と、鉛0.02
〜0.4重量%と、錫0.3〜3.0重量%、アルミニ
ウム0.2〜2.5重量%及び燐0.02〜0.25重
量%から選択された1種以上の元素と、マンガン0.7
〜3.5重量%及びニッケル0.7〜3.5重量%から
選択された1種以上の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛
からなる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第7発明
合金」という)を提案する。
【0031】マンガン又はニッケルは、珪素と結合して
MnX SiY 又はNiX SiY の微細金属間化合物を形
成して、マトリックスに均一に析出し、それにより耐摩
耗性,強度を向上させる。したがって、マンガン及びニ
ッケルの一方又は両方を添加することにより、高力性,
耐摩耗性が改善される。かかる効果は、マンガン及びニ
ッケルを夫々0.7重量%以上添加することに発揮され
る。しかし、3.5重量%を超えて添加しても、効果が
飽和状態となり、添加量に見合う効果が得られない。珪
素は、マンガン又はニッケルの添加に伴い、これらとの
金属間化合物形成に要する消費量を考慮して、2.5〜
4.5重量%を添加させることとした。
【0032】また、錫、アルミニウム及び燐の添加によ
り、マトリックスのα相が強化され、被削性も改善され
る。錫及び燐は、α相,γ相の分散により強度,耐摩耗
性を向上させ、被削性も向上させる。錫は、0.3重量
%以上の添加により強度及び被削性を向上させるが、
3.0重量%を超えて添加すると延性が低下する。した
がって、高力性,耐摩耗性の改善を図る第7発明合金に
おいては、被削性改善効果も考慮して、錫の添加量を
0.3〜3.0重量%とした。また、アルミニウムは、
耐摩耗性改善に寄与し、マトリックスの強化機能は0.
2重量%以上の添加により発揮される。しかし、2.5
重量%を超えて添加すると、延性が低下する。したがっ
て、被削性改善効果も考慮して、アルミニウムの添加量
は0.2〜2.5重量%とした。また、燐の添加によ
り、γ相の分散化と同時にマトリックスにおけるα相の
結晶粒を微細化して、熱間加工性を向上させ、強度,耐
摩耗性も向上させる。しかも、鋳造時の湯流れ性を著し
く向上させる効果もある。このような効果は、燐を0.
02〜0.25重量%の範囲で添加することにより奏せ
られる。なお、銅の配合量については、珪素添加量との
関係及びマンガン,ニッケルが珪素と結合する関係か
ら、62〜78重量%とした。
【0033】さらに、第8発明においては、被削性に加
えて耐高温酸化性に優れた銅合金として、銅69〜79
重量%、珪素2.0〜4.0重量%、鉛0.02〜0.
4重量%、アルミニウム0.1〜1.5重量%及び燐
0.02〜0.25重量%を含有し、且つ残部が亜鉛か
らなる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第8発明合
金」という)を提案する。
【0034】アルミニウムは、強度,被削性,耐摩耗性
を改善させる他、耐高温酸化性を改善させる元素であ
る。また、珪素も、上記した如く、被削性,強度,耐摩
耗性,耐応力腐蝕割れ性を改善させる他、耐高温酸化性
を改善する機能を発揮する。アルミニウムによる耐高温
酸化性の改善は、珪素との共添によって、0.1重量%
以上の添加で行なわれる。しかし、アルミニウムを1.
5重量%を超えて添加しても、添加量に見合う耐高温酸
化性改善効果はみられない。かかる点から、アルミニウ
ムの添加量は0.1〜1.5重量%とした。
【0035】燐は、合金鋳造時における湯流れ性を向上
させるために添加される。また、燐は、かかる湯流れ性
の他、上記した被削性,耐脱亜鉛腐蝕性に加えて、耐高
温酸化性をも改善する。このような燐の添加効果は0.
02重量%以上で発揮される。しかし、0.25重量%
を超えて添加しても、添加量に見合う効果はみられず、
却って合金の脆性化を招くことになる。かかる点から、
燐の添加量は、0.02〜0.25重量%とした。
【0036】また、珪素は、上記した如く被削性を改善
させるために添加されるものであるが、燐と同様に湯流
れ性を向上させる機能も有するものである。珪素による
湯流れ性の向上は2.0重量%以上の添加により発揮さ
れ、被削性を向上させるに必要な添加範囲と重複する。
したがって、珪素の添加量は、被削性の改善を考慮し
て、2.0〜4.0重量%とした。
【0037】また、第9発明においては、同じく被削性
及び耐高温酸化性に優れた銅合金として、銅69〜79
重量%と、珪素2.0〜4.0重量%と、鉛0.02〜
0.4重量%と、アルミニウム0.1〜1.5重量%
と、燐0.02〜0.25重量%と、ビスマス0.02
〜0.4重量%、テルル0.02〜0.4重量%及びセ
レン0.02〜0.4重量%から選択された1種の元素
とを含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなす銅
合金(以下「第9発明合金」という)を提案する。
【0038】すなわち、第9発明合金は、第8発明合金
にビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.02〜
0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%の何れ
かを更に含有させた合金組成をなすものであり、前記し
た如く鉛同様の被削性を改善する元素であるビスマス等
を添加することにより、第8発明合金と同様の耐高温酸
化性を確保しつつ、被削性の更なる改善を図ったもので
ある。
【0039】また、第10発明においては、同じく被削
性及び耐高温酸化性に優れた銅合金として、銅69〜7
9重量%と、珪素2.0〜4.0重量%と、鉛0.02
〜0.4重量%と、アルミニウム0.1〜1.5重量%
と、燐0.02〜0.25重量%と、クロム0.02〜
0.4重量%及びチタン0.02〜0.4重量%から選
択された1種以上の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛か
らなる合金組成をなす快削性銅合金(以下「第10発明
合金」という)を提案する。
【0040】クロム及びチタンは耐高温酸化性を向上さ
せる機能を有するものであり、その機能は、特に、アル
ミニウムとの共添による相乗効果によって顕著に発揮さ
れる。かかる機能は、これらを単独添加すると共添する
とに拘わらず、夫々、0.02重量%以上で発揮され、
0.4重量%で飽和状態となる。このような点から、第
10発明合金においては、第8発明合金にクロム0.0
2〜0.4重量%及びチタン0.02〜0.4重量%の
少なくとも1つを更に含有させた合金組成をなすものと
して、第8発明合金の耐高温酸化性を更に向上させるべ
く図っている。
【0041】また、第11発明においては、同じく被削
性及び耐高温酸化性に優れた銅合金として、銅69〜7
9重量%と、珪素2.0〜4.0重量%と、鉛0.02
〜0.4重量%と、アルミニウム0.1〜1.5重量%
と、燐0.02〜0.25重量%と、クロム0.02〜
0.4重量%及びチタン0.02〜0.4重量%から選
択された1種以上の元素と、ビスマス0.02〜0.4
重量%、テルル0.02〜0.4重量%及びセレン0.
02〜0.4重量%から選択された1種の元素とを含有
し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなす快削性銅合
金(以下「第11発明合金」という)を提案する。
【0042】すなわち、第11発明合金は、第10発明
合金にビスマス0.02〜0.4重量%、テルル0.0
2〜0.4重量%及びセレン0.02〜0.4重量%の
何れか1つを更に含有させた合金組成をなすものであ
り、前記した如く珪素と異なる機能により被削性を改善
する鉛同様元素であるビスマス等を添加することによ
り、第10発明合金と同様の耐高温酸化性を確保しつ
つ、被削性の更なる改善を図ったものである。
【0043】また、第12発明においては、上記した各
発明合金に400〜600℃で30分〜5時間の熱処理
を施しておくことより、その被削性を更に改善した快削
性銅合金(以下「第12発明合金」という)を提案す
る。
【0044】第1〜第11発明合金は珪素等の被削性改
善元素を添加したものであり、かかる元素の添加により
優れた被削性を有するものであるが、かかる添加元素の
機能による被削性は熱処理によって更に向上する場合が
ある。例えば、第1〜第11発明合金における銅濃度が
高いものであって、γ相が少なく且つκ相が多いものの
については、熱処理によりκ相がγ相に変化して、γ相
が微細に分散析出することにより、被削性が更に改善さ
れる。また、実際の鋳物,展伸材,熱間鍛造品の製造を
想定した場合、鋳造条件や熱間加工(熱間押出,熱間鍛
造等)後の生産性,作業環境等の条件によって、それら
の材料が強制空冷,水冷される場合がある。かかる場
合、第1〜第11発明合金において、特に、銅濃度が低
いものでは、γ相が若干少なく且つβ相を含んでいる
が、熱処理を施すと、これによりβ相がγ相に変化する
と共にγ相が微細に分散析出することになり、被削性が
改善される。しかし、何れの場合においても、熱処理温
度が400℃未満であれば、上記した相変化速度が遅く
なり、熱処理に極めて長時間を要するため、経済的にも
実用できない。逆に、600℃を超えると、却ってκ相
が増大し或いはβ相が出現するため、被削性の改善効果
が得られない。したがって、実用性をも考慮した場合、
被削性改善のためには、400〜600℃の条件で30
分〜5時間の熱処理を行なうことが好ましい。
【0045】
【実施例】実施例として、表1〜表15に示す組成の鋳
塊(外径100mm,長さ150mmの円柱形状のも
の)を熱間(750℃)で外径15mmの丸棒状に押出
加工して、第1発明合金No.1001〜No.100
7、第2発明合金No.2001〜No.2006、第
3発明合金No.3001〜No.3010、第4発明
合金No.4001〜No.4021、第5発明合金N
o.5001〜No.5020、第6発明合金No.6
001〜No.6045、第7発明合金No.7001
〜No.7029、第8発明合金No.8001〜N
o.8008、第9発明合金No.9001〜No.9
006、第10発明合金No.10001〜No.10
008及び第11発明合金No.11001〜No.1
1011を得た。また、表16に示す組成の鋳塊(外径
100mm,長さ150mmの円柱形状のもの)を熱間
(750℃)で外径15mmの丸棒状に押出加工した
上、その押出材を表16に示す条件で熱処理して、第1
2発明合金No.12001〜No.12004を得
た。すなわち、No.12001は第1発明合金No.
1006と同一組成をなす押出材を580℃,30分の
条件で熱処理したものであり、No.12002はN
o.1006と同一組成をなす押出材を450℃,2時
間の条件で熱処理したものであり、No.12003は
第1発明合金No.1007と同一組成をなす押出材を
No.12001と同一条件(580℃,30分)で熱
処理したものであり、No.12004はNo.100
7と同一組成をなす押出材をNo.12002と同一条
件(450℃,2時間)で熱処理したものである。
【0046】また、比較例として、表17に示す組成の
鋳塊(外径100mm,長さ150mmの円柱形状のも
の)を熱間(750℃)で押出加工して、外径15mm
の丸棒状押出材(以下「従来合金」という)No.13
001〜No.13006を得た。なお、No.130
01は「JIS C3604」に相当するものであり、
No.13002は「CDA C36000」に相当す
るものであり、No.13003は「JIS C377
1」に相当するものであり、No.13004は「CD
A C69800」に相当するものである。また、N
o.13005は「JIS C6191」に相当するも
のであり、JISに規定される伸銅品の中で強度,耐磨
耗性に最も優れるアルミニウム青銅である。また、N
o.13006は「JIS C4622」に相当するも
のであり、JISに規定される伸銅品の中で耐蝕性に最
も優れるネーバル黄銅である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
【表15】
【0062】
【表16】
【0063】
【表17】
【0064】そして、第1〜第12発明合金の被削性を
従来合金との比較において確認すべく、次のような切削
試験を行い、切削主分力、切屑状態及び切削表面形態を
判定した。
【0065】すなわち、上記の如くして得られた各押出
材の外周面を、真剣バイト(すくい角:−8°)を取り
付けた旋盤により、切削速度:50m/分,切込み深さ
(切削代):1.5mm,送り量:0.11mm/re
v.の条件で切削し、バイトに取り付けた3分力動力計
からの信号を重歪測定器により電圧信号に変換してレコ
ーダで記録し、これを切削抵抗に換算した。ところで、
切削抵抗の大小は3分力つまり主分力、送り分力及び背
分力によって判断されるが、ここでは、3分力のうち最
も大きな値を示す主分力(N)をもって切削抵抗の大小
を判断することとした。その結果は、表18〜表33に
示す通りであった。
【0066】また、切削により生成した切屑の状態を観
察し、その形状によって図1(A)〜(D)に示す如く
4つに分類して、表1〜表15に示した。ところで、切
屑が、(D)図に示す如く、3巻以上の螺旋形状をなし
ている場合には、切屑の処理(切屑の回収や再利用等)
が困難となる上、切屑がバイトに絡み付いたり、切削表
面を損傷させる等のトラブルが発生して、良好な切削加
工を行なうことができない。また、切屑が、(C)図に
示す如く、半巻程度の円弧形状から2巻程度の螺旋形状
をなしている場合には、3巻以上の螺旋形状をなす場合
のような大きなトラブルは生じないものの、やはり切屑
の処理が容易ではなく、連続切削加工を行う場合等にあ
ってはバイトへの絡み付きや切削表面の損傷等を生じる
虞れがある。しかし、切屑が、(A)の如き微細な針形
状片や(B)の如き扇形状片又は円弧形状片に剪断され
る場合には、上記のようなトラブルが生じることがな
く、(C)図や(D)図に示すもののように嵩張らない
ことから、切屑の処理も容易である。但し、切屑が
(A)図のような微細形状に剪断される場合には、旋盤
等の工作機械の摺動面に潜り込んで機械的障害を発生し
たり、作業者の手指,目に刺さる等の危険を伴うことが
ある。したがって、被削性を判断する上では、(B)図
に示すものが最良であり、(A)図に示すものがこれに
続き、(C)図や(D)図に示すものは不適当とするの
が相当である。表18〜表33においては、(B)に示
す最良の切屑状態が観察されたものを「◎」で、(A)
図に示すやや良好な切屑状態が観察されたものを「○」
で、(C)図に示す不良な切屑状態が観察されたものを
「△」で、(D)に示す最悪の切屑状態が観察されたも
のを「×」で示した。
【0067】また、切削後において、切削表面の良否を
表面粗さにより判定した。その結果は、表18〜表33
に示す通りであった。ところで、表面粗さの基準として
は最大高さ(Rmax )が使用されることが多く、黄銅製
品の用途にもよるが、一般に、Rmax <10μmであれ
ば極めて被削性に優れると判断することができ、10μ
m≦Rmax <15μmであれば工業的に満足しうる被削
性を得ることができたものと判断でき、Rmax ≧15μ
mの場合には被削性に劣るものと判断できる。表18〜
表33においては、Rmax <10μmの場合を「○」
で、10μm≦Rmax <15μmの場合を「△」で、R
max ≧15μmの場合を「×」で示した。
【0068】表18〜表33に示す切削試験の結果から
明らかなように、第1発明合金No.1001〜No.
1007、第2発明合金No.2001〜No.200
6、第3発明合金No.3001〜No.3010、第
4発明合金No.4001〜No.4021、第5発明
合金No.5001〜No.5020、第6発明合金N
o.6001〜No.6045、第7発明合金No.7
001〜No.7029、第8発明合金No.8001
〜No.8008、第9発明合金No.9001〜N
o.9006、第10発明合金No.10001〜N
o.10008、第11発明合金No.11001〜N
o.11011及び第12発明合金No.12001〜
No.12004は、その何れにおいても、鉛を大量に
含有する従来合金No.13001〜No.13003
と同等の被削性を有するものである。特に、切屑の生成
状態に限っては、鉛含有量が0.1重量%以下である従
来合金No.13004〜No.13006に比しては
勿論、鉛を大量に含有する従来合金No.13001〜
No.13003に比しても、良好な被削性を有する。
また、第1発明合金No.1006及びNo.1007
に比して、これを熱処理した第12発明合金No.12
001〜No.12004は同等以上の被削性を有して
おり、合金組成等の条件によっては、熱処理により第1
〜第11発明合金の被削性を更に向上させ得ることが理
解される。
【0069】次に、第1〜第12発明合金の熱間加工性
及び機械的性質を、従来合金との比較において確認すべ
く、次のような熱間圧縮試験及び引張試験を行った。
【0070】すなわち、上記の如くして得られた各押出
材から同一形状(外径15mm,長さ25mm)の第1
及び第2試験片を切り出した。そして、熱間圧縮試験に
おいては、各第1試験片を700℃に加熱して30分間
保持した上、軸線方向に70%の圧縮率で圧縮(第1試
験片の高さ(長さ)が25mmから7.5mmになるま
で圧縮)して、圧縮後の表面形態(700℃変形能)を
目視判定した。その結果は、表18〜表33に示す通り
であった。変形能の判定は試験片側面におけるクラック
の状態から目視により行い、表18〜表33において
は、クラックが全く生じなかったものを「○」で、小さ
なクラックが生じたものを「△」で、大きなクラックが
生じたものを「×」で示した。また、各第2試験片を使
用して、常法による引張試験を行ない、引張強さ(N/
mm2 )及び伸び(%)を測定した。
【0071】表18〜表33に示す熱間圧縮試験及び引
張試験の結果から、第1〜第12発明合金は、従来合金
No.13001〜No.13004及びNo.130
06と同等若しくはそれ以上の熱間加工性及び機械的性
質を有するものであり、工業的に好適に使用できるもの
であることが確認された。特に、第7発明合金について
は、JISに規定される伸銅品の中で強度に最も優れる
アルミニウム青銅である従来合金No.13005と同
等の機械的性質を有するものであり、高力性に優れるこ
とが理解される。
【0072】また、第1〜第6発明合金及び第8〜第1
2発明合金の耐蝕性及び耐応力腐蝕割れ性を、従来合金
との比較において確認すべく、「ISO 6509」に
定める方法による脱亜鉛腐蝕試験及び「JIS H32
50」に規定される応力腐蝕割れ試験を行った。
【0073】すなわち、「ISO 6509」の脱亜鉛
腐蝕試験においては、各押出材から採取した試料を、暴
露試料表面が当該押出材の押出し方向に対して直角とな
るようにしてフェノール樹脂材に埋込み、試料表面をエ
メリー紙により1200番まで研磨した後、これを純水
中で超音波洗浄して乾燥した。かくして得られた被腐蝕
試験試料を、1.0%の塩化第2銅2水和塩(CuCl
2 ・2H2O)の水溶液(12.7g/l)中に浸漬
し、75℃の温度条件下で24時間保持した後、水溶液
中から取出して、その脱亜鉛腐蝕深さの最大値(最大脱
亜鉛腐蝕深さ)を測定した。その結果は、表18 〜表2
5及び表28〜表33に示す通りであった。
【0074】表18 〜表25及び表28〜表33に示す
脱亜鉛腐蝕試験の結果から理解されるように、第1〜第
4発明合金及び第8〜第12発明合金は、大量の鉛を含
有する従来合金No.13001〜No.13003に
比して優れた耐蝕性を有し、特に、被削性と共に耐蝕性
の向上を図った第5及び第6発明合金については、JI
Sに規定される伸銅品の中で耐蝕性に最も優れるネーバ
ル黄銅である従来合金No.13006に比しても極め
て優れた耐蝕性を有することが確認された。
【0075】また、「JIS H3250」の応力腐蝕
割れ試験においては、各押出材から長さ150mmの試
料を切り出し、各試料を、その中央部を半径40mmの
円弧状治具に当てた状態で、その一端部が他端部に対し
て45°となるように折曲させて、試験片とした。この
ようにして引張残留応力を付加された各試験片を脱脂,
乾燥処理した上、12.5%のアンモニア水(アンモニ
アを等量の純水で薄めたもの)を入れたデシケータ内の
アンモニア雰囲気(25℃)中に保持させた。すなわ
ち、各試験片をデシケータ内におけるアンモニア水面か
ら約80mm上方の位置に保持する。そして、試験片の
アンモニア雰囲気中における保持時間が、2時間,8時
間,24時間を経過した時点で、試験片をデシケータか
ら取り出して、10%の硫酸で洗浄した上、当該試験片
の割れの有無を拡大鏡(倍率:10倍)で視認した。そ
の結果は、表18 〜表25及び表28〜表33に示す通
りであった。これらの表においては、アンモニア雰囲気
中での保持時間が2時間である場合に明瞭な割れが認め
られたものについては「××」で、2時間経過時におい
ては割れが認められなかったが、8時間経過時において
は明瞭な割れが認められたものについては「×」で、8
時間経過時においては割れが認められなかったが、24
時間経過時においては明瞭な割れが認められたものにつ
いては「△」で、24時間経過時においても割れが全く
認められなかったものについては「○」で示した。
【0076】表18 〜表25及び表28〜表33に示す
応力腐蝕割れ試験の結果から理解されるように、被削性
と共に耐蝕性の向上を図った第5及び第6発明合金につ
いては勿論、耐蝕性については格別の配慮をしていない
第1〜第4発明合金及び第8〜第12発明合金について
も、亜鉛を含まないアルミニウム青銅である従来合金N
o.13005と同等の耐応力腐蝕割れ性を有し、JI
Sに規定される伸銅品の中で耐蝕性に最も優れるネーバ
ル黄銅である従来合金No.13006より優れた耐応
力腐蝕割れ性を有することが確認された。
【0077】また、第8〜第11発明合金の耐高温酸化
性を、従来合金との比較において確認すべく、次のよう
な酸化試験を行った。
【0078】すなわち、各押出材No.8001〜N
o.8008、No.9001〜No.9006、N
o.10001〜No.10008、No.11001
〜No.11011及びNo.13001〜13006
から、外径が14mmとなるように表面研削され且つ長
さ30mmに切断された丸棒状の試験片を得て、各試験
片の重量(以下「酸化前重量」という)を測定した。し
かる後、各試験片を、磁性坩堝に収納した状態で、50
0℃に保持された電気炉内に放置した。そして、放置時
間が100時間を経過した時点で電気炉から取り出し
て、各試験片の重量(以下「酸化後重量」という)を測
定した上、酸化前重量と酸化後重量とから酸化増量を算
出した。ここに、酸化増量とは、試験片の表面積10c
2 当たりの酸化による増加重量(mg)の程度を示す
ものであり、「酸化増量(mg/10cm2 )=(酸化
後重量(mg)−酸化前重量(mg))×(10cm2
/試験片の表面積(cm2 )」の式から算出されたもの
である。すなわち、各試験片の酸化後重量は酸化前重量
より増加しているが、これは高温酸化によるものであ
る。つまり、高温に晒されると、酸素と銅,亜鉛,珪素
とが結合してCu2O,ZnO,SiO2 となり、その
酸素増分により重量が増加するのである。したがって、
この増加重量の程度(酸化増量)が小さい程、耐高温酸
化性に優れているということができ、表28〜表31及
び表33に示す結果となった。
【0079】表23〜表31及び表33に示す酸化試験
の結果から明らかなように、第8〜第11発明合金の酸
化増量は、JISに規定される伸銅品の中でも高度の耐
高温酸化性を有するアルミニウム青銅である従来合金N
o.13005と同等であり、他の従来合金よりは極め
て小さくなっている。したがって、第8〜第11発明合
金が、被削性に加えて、耐高温酸化性にも極めて優れた
ものであることが確認された。
【0080】
【表18】
【0081】
【表19】
【0082】
【表20】
【0083】
【表21】
【0084】
【表22】
【0085】
【表23】
【0086】
【表24】
【0087】
【表25】
【0088】
【表26】
【0089】
【表27】
【0090】
【表28】
【0091】
【表29】
【0092】
【表30】
【0093】
【表31】
【0094】
【表32】
【0095】
【表33】
【0096】また、第2の実施例として、表9〜表11
に示す組成の鋳塊(外径100mm,長さ200mmの
円柱形状のもの)を熱間(700℃)で外径35mmの
丸棒状に押出加工して、第7発明合金No.7001a
〜No.7029aを得た。また、第2の比較例とし
て、表17に示す組成の鋳塊(外径100mm,長さ2
00mmの円柱形状のもの)を熱間(700℃)で押出
加工して、外径35mmの丸棒状押出材(以下「従来合
金」という)No.13001a〜No.13006a
を得た。なお、No.7001a〜No.7029a及
びNo.13001a〜No.13006aは、夫々、
前記した銅合金No.7001〜No.7029及びN
o.13001〜No.13006と同一の合金組成を
なすものである。
【0097】そして、第7発明合金No.7001a〜
No.7029aの耐摩耗性を、従来合金No.130
01a〜No.13006aとの比較において確認すべ
く、次のような摩耗試験を行った。
【0098】すなわち、上記の如くして得られた各押出
材から、その外周面を切削した上、穴明け加工及び切断
加工を施すことにより、外径32mm,厚さ(軸線方向
長さ)10mmのリング状試験片を得た上、各試験片を
回転自在な軸に嵌合固定して、これと軸線を平行とする
外径48mmのSUS304製ロールに50kgの荷重
を掛けて押圧接触させた状態に保持させる。しかる後、
SUS304製ロール及びこれに転接する試験片を、当
該試験片の外周面にマルチオイルを滴下しつつ、同一回
転数(209r.p.m.)で回転駆動させる。そし
て、当該試験片の回転数が10万回に達した時点で、S
US304製ロール及び試験片の回転を停止して、各試
験片の回転前後における重量差つまり摩耗減量(mg)
を測定した。かかる摩耗減量が少ない程、耐摩耗性に優
れた銅合金ということができるが、その結果は、表34
〜表36に示す通りであった。
【0099】表34〜表36に示す摩耗試験の結果から
明らかなように、第7発明合金No.7001a〜N
o.7029aは、従来合金No.13001〜No.
13004及びNo.13006に比しては勿論、JI
Sに規定される伸銅品の中で耐磨耗性に最も優れるアル
ミニウム青銅である従来合金No.13005に比して
も、耐摩耗性が優れることが確認された。したがって、
上記した引張試験の結果をも考慮して総合的に判断した
場合、第7発明合金は、被削性に加えて、JISに規定
される伸銅品の中で耐磨耗性に最も優れるアルミニウム
青銅と同等以上の高力性,耐摩耗性を有するものである
ということができる。
【0100】
【表34】
【0101】
【表35】
【0102】
【表36】
【0103】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるよう
に、第1〜第12発明合金は、被削性改善元素である鉛
の含有量が極く微量(0.02〜0.4重量%)である
にも拘わらず、極めて被削性に富むものであり、鉛を大
量に含有する従来の快削性銅合金の代替材料として安全
に使用できるものであり、切屑の再利用等を含めて環境
衛生上の問題が全くなく、鉛含有製品が規制されつつあ
る近時の傾向に充分対応することができる。
【0104】さらに、第5及び第6発明合金は、被削性
に加えて耐蝕性にも優れるものであり、耐蝕性を必要と
する切削加工品,鍛造品,鋳物製品等(例えば、給水
栓,給排水金具,バルブ,ステム,給湯配管部品,シャ
フト,熱交換器部品等)の構成材として好適に使用する
ことができるものであり、その実用的価値極めて大なる
ものである。
【0105】また、第7発明合金は、被削性に加えて高
力性,耐摩耗性にも優れるものであり、高力性,耐摩耗
性を必要とする切削加工品,鍛造品,鋳物製品等(例え
ば、軸受,ボルト,ナット,ブッシュ,歯車,ミシン部
品,油圧部品等)の構成材として好適に使用することが
できるものであり、その実用的価値極めて大なるもので
ある。
【0106】また、第8〜第11発明合金は、被削性に
加えて耐高温酸化性にも優れるものであり、耐高温酸化
性を必要とする切削加工品,鍛造品,鋳物製品等(例え
ば、石油・ガス温風ヒータ用ノズル,バーナヘッド,給
湯器用ガスノズル等)の構成材として好適に使用するこ
とができるものであり、その実用的価値極めて大なるも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】切屑の形態を示す斜視図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅69〜79重量%、珪素2.0〜4.
    0重量%及び鉛0.02〜0.4重量%を含有し、且つ
    残部が亜鉛からなる合金組成をなすことを特徴とする快
    削性銅合金。
  2. 【請求項2】 錫0.3〜3.5重量%、燐0.02〜
    0.25重量%、アンチモン0.02〜0.15重量%
    及び砒素0.02〜0.15重量%から選択された1種
    以上の元素を更に含有することを特徴とする、請求項1
    に記載する快削性銅合金。
  3. 【請求項3】 銅70〜80重量%と、珪素1.8〜
    3.5重量%と、鉛0.02〜0.4重量%と、錫0.
    3〜3.5重量%、アルミニウム1.0〜3.5重量%
    及び燐0.02〜0.25重量%から選択された1種以
    上の元素とを含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成
    をなすことを特徴とする快削性銅合金。
  4. 【請求項4】 銅62〜78重量%と、珪素2.5〜
    4.5重量%と、鉛0.02〜0.4重量%と、錫0.
    3〜3.0重量%、アルミニウム0.2〜2.5重量%
    及び燐0.02〜0.25重量%から選択された1種以
    上の元素と、マンガン0.7〜3.5重量%及びニッケ
    ル0.7〜3.5重量%から選択された1種以上の元素
    とを含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなすこ
    とを特徴とする快削性銅合金。
  5. 【請求項5】 銅69〜79重量%、珪素2.0〜4.
    0重量%、鉛0.02〜0.4重量%、アルミニウム
    0.1〜1.5重量%及び燐0.02〜0.25重量%
    を含有し、且つ残部が亜鉛からなる合金組成をなすこと
    を特徴とする快削性銅合金。
  6. 【請求項6】 クロム0.02〜0.4重量%及びチタ
    ン0.02〜0.4重量%から選択された1種以上の元
    素を更に含有することを特徴とする、請求項5に記載す
    る快削性銅合金。
  7. 【請求項7】 ビスマス0.02〜0.4重量%、テル
    ル0.02〜0.4重量%及びセレン0.02〜0.4
    重量%から選択された1種の元素を更に含有することを
    特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項5
    又は請求項6に記載する快削性銅合金。
  8. 【請求項8】 400〜600℃で30分〜5時間熱処
    理したことを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項
    3、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7に記載
    する快削性銅合金。
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