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「Janes」に基づき、イタリア空軍での退役とブラジル空軍での退役予定について追記
 
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{{ Infobox 航空機
| 名称=AMX
| 画像=File:Italian_Air_Force_AMX_fighter_takes_off_Italian_Air_Force_AMX_fighter_takes_off.JPG
| キャプション=
| 用途=[[攻撃機]]
| 分類=
| 設計者=
| 製造者=[[AMXインターナショナル]]社
| 運用者=
| 運用者 more=:
** {{ITA}}([[イタリア空軍]])
** {{BRA}}([[ブラジル空軍]])
| 初飛行年月日=[[1984年]][[5月14日]]
| 生産数=208機
| 生産開始年月日=
| 運用開始年月日=[[1989年]]4月
| 退役年月日=
| 運用状況=現役
| ユニットコスト=
}}
'''AMX'''は、[[イタリア]]と[[ブラジル]]が国際共同開発した軽[[攻撃機]]である。
 
[[アフターバーナー]]非搭載の亜音速機であるが、小型な機体に似合わず、がら3.8tの[[武装]]を搭載可能であるためポケット・[[トーネード IDS|トーネード]]」とも呼ばれている。[[イタリア空軍]]では、[[イタリア語]]で熱風を意味する[[ギブリ(Ghibli)]](Ghibli)を愛称に用いており、[[ブラジル空軍]]ではA-1の名称を使用している。
'''AMX'''は、[[イタリア]]と[[ブラジル]]が国際共同開発した軽攻撃機である。
 
== 概要 ==
小型な機体に似合わず、3.8tの武装を搭載可能であるためポケット・トーネードとも呼ばれている。イタリア空軍では、[[イタリア語]]で熱風を意味するギブリ(Ghibli)を愛称に用いており、ブラジル空軍ではA-1の名称を使用している。
[[イタリア空軍]]では[[1970年代]]中頃に、当時[[戦闘爆撃機]]として運用していた[[G.91 (航空機)|G.91R/Y]]と[[F-104 (戦闘機)|F-104Gスターファイター]]の後継機となる[[トーネード IDS]]を補佐する軽戦闘爆撃機を必要としており、[[1977年]]に[[アエリタリア]](現[[アレニア・アエルマッキ]]社)社が主導で空軍の要求性能に見合った機体の設計作業が開始された。また、[[ブラジル空軍]]でも[[アエルマッキ MB-326|AT-26シャバンチ]]の後継機導入計画が進められており、これに[[アエルマッキ]](現アレーニア・アエルマッキ)社は[[エンブラエル]]社と共同でMB-340の提案を予定していた。だが、イタリア空軍とブラジル空軍の要求性能が似通っていたこともあり、[[1978年]]中頃にアエリタリア社とアエルマッキ社が共同で両国に設計案を提示することで合意し、[[ロールス・ロイス]]社製スペイ・エンジンを使用する設計案をAMXとしてまとめ上げた。[[1980年]][[3月]]にブラジル政府が承認し、同年[[7月]]にはエンブラエル社が参加することとなり、AMXプロジェクトは2ヶ国3社での国際共同プログラムとしてスタートした。
 
AMXは安価な[[攻撃機]]であることを念頭に置いて開発が進められ、開発にあたっては専従化、柔軟性、信頼性、生存性の4つの柱が立てられた。また、高度な電子機器類や複雑なシステムは不要とされ、[[超音速]]性能も求められなかった。しかし、この代わりに優れた短距離離着陸性能、高速侵攻能力、大量の兵装搭載能力、侵攻支援装置の統合化、不具合発生後の運用能力などが求められている。
== 開発経緯 ==
[[ファイル:AMX_Italian_Air_Force.JPG|thumb|left|250px|エアショーで地上展示される[[イタリア空軍]]のAMX(手前) [[2006年]][[9月17日]]の撮影]]
イタリア空軍では1970年代中頃に、当時戦闘爆撃機として運用していた[[G.91 (航空機)|G.91R/Y]]と[[F-104 (戦闘機)|F-104Gスターファイター]]の後継機となる[[トーネードIDS]]を補佐する軽戦闘爆撃機を必要としており、[[1977年]]に[[アエリタリア]](現[[アレニア]]社)社が主導で空軍の要求性能に見合った機体の設計作業が開始された。また、ブラジル空軍でも[[アエルマッキ MB-326|AT-26シャバンチ]]の後継機導入計画が進められており、これに[[アエルマッキ]]社は[[エンブラエル]]社と共同でMB-340の提案を予定していた。だが、イタリア空軍とブラジル空軍の要求性能が似通っていたこともあり、[[1978年]]中頃にアエリタリア社とアエルマッキ社が共同で両国に設計案を提示することで合意し、[[ロールス・ロイス]]社製スペイ・エンジンを使用する設計案をAMXとしてまとめ上げた。[[1980年]]3月にブラジル政府が承認し、同年7月にはエンブラエル社が参加することとなり、AMXプロジェクトは2ヶ国3社での国際共同プログラムとしてスタートした。
 
プロジェクト参加企業の生産分担率も決められており、アエリタリア社は全体の46.7%を受け持ち、中央胴体、水平/垂直安定板、方向舵の製造。アエルマッキ社は全体の23.6%を受け持ち、前部胴体、テイルコーンの製造。エンブラエル社は全体の29.7%を受け持ち、主翼、空気取り入れ口、[[パイロン]]、主翼下[[増槽]]の製造を担当した。
AMXは安価な攻撃機であることを念頭に置いて開発が進められ、開発にあたっては専従化、柔軟性、信頼性、生存性の4つの柱が立てられた。また、高度な電子機器類や複雑なシステムは不要とされ、[[超音速]]性能も求められなかった。しかし、この代わりに優れた短距離離着陸性能、高速侵攻能力、大量の兵装搭載能力、侵攻支援装置の統合化、不具合発生後の運用能力などが求められている。
 
AMXの試作機は[[イタリア]]で4機、[[ブラジル]]で2機が製造され、イタリア製試作初号機は[[1984年]][[5月14日]]に初飛行し、ブラジル製試作初号機も[[1986年]][[10月16日]]に初飛行した。量産機も両国で自国向けの機体が生産され、イタリア空軍向け初号機は[[1988年]][[5月11日]]に初飛行、ブラジル空軍向け初号機は[[1989年]][[8月12日]]に初飛行している。両国空軍への引渡しは1989年4月からイタリア空軍、同年10月からブラジル空軍で開始された。
プロジェクト参加企業の生産分担率も決められており、アエリタリア社は全体の46.7%を受け持ち、中央胴体、水平/垂直安定板、方向舵の製造。アエルマッキ社は全体の23.6%を受け持ち、前部胴体、テイルコーンの製造。エンブラエル社は全体の29.7%を受け持ち、主翼、空気取り入れ口、パイロン、主翼下増槽の製造を担当した。
 
また、機種転換訓練などに使用する複座型の開発も行われ、AMX-T複座型試作初号機が[[1990年]][[8月14日]]に初飛行している。
AMXの試作機はイタリアで4機、ブラジルで2機が製造され、イタリア製試作初号機は[[1984年]][[5月14日]]に初飛行し、ブラジル製試作初号機も[[1986年]][[10月16日]]に初飛行した。量産機も両国で自国向けの機体が生産され、イタリア空軍向け初号機は[[1988年]][[5月11日]]に初飛行、ブラジル空軍向け初号機は[[1989年]][[8月12日]]に初飛行している。両国空軍への引渡しは1989年4月からイタリア空軍、同年10月からブラジル空軍で開始された。
 
また、機種転換訓練等に使用する複座型の開発も行われ、AMX-T複座型試作初号機が[[1990年]][[8月14日]]に初飛行している。
 
[[2000年代]]に入るとAMX既存機への機体寿命延長と近代化改修がイタリア、ブラジルで計画されている。AMX-MLUとされる改修計画では、以下の改修が盛り込まれる。
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* [[アビオニクス]]の換装
* パイロット・インターフェイスの改良
* [[暗視装置]]対応型[[グラスコックピット|グラス・コクピット]]の導入
* [[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]航法装置、[[電波高度計]]の装備
* ヘルメット装着式照準装置の使用能力付与
* [[統合戦術情報伝達システム|統合戦術データリンク]]機能(JTIDS)(JTIDS)の付加
* デジタル飛行操縦装置の装備
* [[JDAM]]の搭載能力付与
* [[ライトニング (照準ポッド)|ライトニング]][[レーザー目標指示装置照準ポッド|レーザー目標指示ポッド]]の携行能力付与
 
イタリア空軍では改修計画の第1段階が承認され、GPSやJTIDSを装備した改修機が[[2005年]]から引き渡されている。
 
開発プログラム参加国以外では、[[ベネズエラ]]が複座型12機を発注したものの配備は実現しなかった。
 
2024年4月5日、イタリア空軍から退役した<ref name=":0">{{Cite web |url=https://www.janes.com/osint-insights/defence-news/defence/italy-retires-amx-light-strike-jet |title=Italy retires AMX light strike jet |access-date=2024-08-20 |website=janes.com |date=2024-04-08}}</ref>。ブラジル空軍からは2025年に退役する予定である<ref name=":0" />。
 
== 機体構成 ==
[[ファイルFile:M61_Vulcan_italian_AMXAMI AMX.jpg|thumb|left|200px250px|イタリア軍向けAMXのM61バルカン砲機体上面]]
[[File:KAM 3155 (14645820785).jpg|thumb|right|250px|機体下面]]
AMXはターボファン単発の単座攻撃機で、[[翼型#遷音速翼型|スーパークリティカル翼]]を採用した主翼は25%翼弦で27度30分の後退角を持ち、前縁にスラット、後縁に[[高揚力装置|フラップ]]を備える。尾翼は単[[垂直尾翼]][[水平尾翼|水平安定板]]を組み合わせた標準的なスタイルをしており、[[補助翼]][[昇降舵]]、前縁スラットは電動で油圧で作動し、後縁フラップは電動で作動する。また、スポイラー、[[方向舵]]、水平安定板の全遊動作動は[[フライ・バイ・ワイヤ]]制御となっている。
 
優れた短距離離着陸性能を獲得するために機体には二重隙間フラップと前縁スラットを備え、最大離陸重量13000kg13,000kgでも1km以内に収まる950mの滑走で離陸が可能であり、機体重量をその80%にあたる10750kg10,750kgに抑えれば、プロペラ機並の750mで離陸可能とされている。
 
長距離侵攻能力は重視されていないが[[空中給油]]に対応している。プローブ類は操縦席右横に固定されている。固定式は空気抵抗が増大し高速での機動時に影響が出るが、亜音速の攻撃機であるため大きな問題にはならず、引き込み式に比べ故障箇所が減り軽量であるなどAMXのコンセプトに合致している。
固定武装は機首部に機関砲が標準装備されている。この機関砲はイタリア空軍向けではM61A1 20mmバルカン砲1門、ブラジル空軍向けではDEFA5 30mm機関砲2門を装備。ハードポイントは主翼下片側2箇所と胴体中心線下1箇所の計5箇所で、両主翼端には自己防御用の空対空ミサイル・ランチャーが備えられている。
 
{{-}}
本機では固定[[武装]]として機首部に[[航空機関砲]]が標準装備されている。この機関砲は[[イタリア空軍]]向けでは[[ガトリング砲|ガトリング]]式の[[アメリカ合衆国|米国]]製[[M61 バルカン|M61A1 20mmバルカン砲]]1門、[[ブラジル空軍]]向けではDEFA5[[リヴォルヴァーカノン]]式の[[フランス]]製[[DEFA 550|DEFA554 30mm機関砲]]2門を装備。[[ハードポイント]]は主翼下片側2箇所と胴体中心線下1箇所の計5箇所で、両主翼端には自己防御用の[[空対空ミサイル]][[ランチャー]]が備えられている。
 
{{clear|right}}
 
== 派生型 ==
; AMX
: 単座[[攻撃機]]型。
:; A-1A
:: [[ブラジル空軍]]でのAMXの呼称。
; AMX-T
: 胴体内燃料タンクを一つ撤去して前席後方に後席を増設した複座攻撃/[[練習機]]型。後席にも操縦システムが装備されており、[[ヘッドアップディスプレイ]]も装備している。
:; A-1B
:: ブラジル空軍でのAMX-T呼称。
; AMX-ATA
: AMX-Tにデジタル式アビオニクスを装備した、[[ベネズエラ空軍]]向け生産型(計画のみ)
; AMX-E
: 電子戦/敵防空網制圧(SEAD)機型。AMX-Tを元に固定機関砲を撤去、[[AGM-88 (ミサイル)|AGM-88]]対レーダーミサイルの運用能力を持ち、胴体下に電子戦ポッドを装備。エンジンには、より強力かつ軽量な[[ユーロジェット EJ200]]([[アフターバーナー]]無し)を使用する予定であった。[[イタリア空軍]]向けのAMX-T 4号機を改造して研究が行われていたが、試験段階でキャンセルされている。なお、ブラジル空軍はAMXに{{仮リンク|スカイシールド|en|Sky Shield}}電子戦ポッドと{{仮リンク|MAR-1|en|MAR-1}}対レーダーミサイルを搭載して防空網制圧に充てている
; AAMX-1AACOL
:AMX-MLU改修計画に基づく近代化改修型。
: ブラジル空軍でのAMXの呼称。
:; AAMX-1BT ACOL
:: AMX-TのAMX-MLU改修計画に基づく近代化改修型。
: ブラジル空軍でのAMX-T呼称。
 
この他にもナイトアタック型や複座型ベースの本格的な戦闘爆撃機型なども開発可能とされたが、いずれも計画のみに終わっている。
 
== 性能諸元 ==
[[ファイル:AMX (AERITALIA,International AERMACCHI,AMX EMBRAER)3-view line drawing.png|thumb|right|300px|AMX 三面図500px]]
* 全幅:8:8.88m/9.97m(97m(翼端[[空対空ミサイル|AAM]]含む)
* 全長:13:13.23m
* 全高:4:4.55m
* 主翼面積:21:21.0m&sup2;0[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]
* 空虚重量:7:7,000kg
* 最大離陸重量:13:13,000kg
* 最大兵装搭載量:3:3,800kg
* エンジン:ロールス・ロイス製[[ロールス・ロイス スペイ|スペイ]] Mk.807 [[ターボファンエンジン×1(49|ターボファン]]×1(49.1kN)1kN)
* 最大速度::[[マッハ数|マッハ]]0.86
* 海面上昇率:3:3,124m/min
* 実用上昇限度:12:12,800m
* 荷重制限:+7.33G33[[重力加速度#単位としての重力加速度|G]]/-3.0G
* フェリー航続距離:1800nm:1,800[[海里#国際海里|nm]]
* 戦闘行動半径:285nm(Lo:285nm(Lo-Lo-Lo)Lo)/500nm(Hi500nm(Hi-Lo-Hi)Hi)
* 乗員:1:1(AMX-T型は2名)
* 武装:[[M61 バルカン|M61]]A1M61A1 20mmバルカン砲]]1門または[[DEFA 550|DEFA554DEFA 554]] 30mm[[機関砲]]2門、[[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9サイドワインダー]][[空対空ミサイル]]×2、[[MAA-1ピラナ|MAA-1 Piranha]]空対空ミサイル×2、通常[[爆弾]]、[[ペイブウェイ|GBU-16ペイヴウェイII]][[レーザー誘導爆弾]]、オファー画像赤外線誘導爆弾、[[クラスター爆弾]]、スタンドオフ・ディスペンサー兵器、[[ロケット弾]]ポッドなど
 
=== ギャラリー ===
<gallery widths="180px" heights="150px">
ファイル:M61_Vulcan_italian_AMX.jpg|イタリア空軍機のM61A1 20mmバルカン砲
File:Italian-Brazilian AMX.JPEG|ブラジル空軍機の武装
File:Alenia-Aermacchi-Embraer AMX, Italy - Air Force JP6705515.jpg|イタリア空軍の特別塗装機
File:Colisão com ave - aeronave AMX.JPG|[[バードストライク]]によって破損したキャノピー(ブラジル空軍機)
File:Colisão com ave - aeronave AMX1.JPG|バードストライクによって破損した機首(ブラジル空軍機)
</gallery>
 
== 脚注 ==
{{reflist}}
 
== 参考資料 ==
{{No footnotes|date=2018年2月|section=1}}
* [[青木 謙知]]編、2007、「Jwings戦闘機年鑑 2007-2008」、[[イカロス出版]] ISBN 4-87149-939-1
* 世界の軍用機 各号
 
== 関連項目 ==
{{Commons|Category:AMX International AMX}}
* [[攻撃機]]
* [[J-22 (航空機)|J-22 オラオ/IAR/IAR.93]] - 同時期、旧[[ユーゴスラビア]]と[[ルーマニア]]で共同生産された[[戦闘撃機]]。
* [[BAe ホーク (航空機)|ホークMk.100/100/ホークMk.200]] - AMXの競合機。
* [[M-346 (航空機)|M-346]]
* [[爆撃機一覧]]
 
{{Embraer aircraft}}
{{Commons|Category:AMX International AMX}}
{{Normdaten}}
 
[[Category:イタリアの爆撃機]]
[[Category:ブラジルの軍用機]]
[[Category:爆撃機]]
[[Category:アレーニア・アエルマッキ|AMX]]
[[Category:マッキの航空機]]
[[Category:イタリア・ブラジル関係]]