軽駆逐戦車ヘッツァー
軽駆逐戦車ヘッツァー(けいくちくせんしゃヘッツァー)は、第二次世界大戦時のドイツの駆逐戦車。ドイツ語では Jagdpanzer 38(t)と呼ばれる。制式番号は Sd.Kfz.138/2 。ヘッツァー(独:Hetzer, 狩りの勢子)というニックネームは本来、次世代軽駆逐戦車であるE-10計画用のものであったが、いつの間にか本車のものになっている。
カナダ戦車博物館のヘッツァー初期型 BMM社により1944年5月に作られた物 | |
性能諸元 | |
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全長 | 6.27 m |
車体長 | 4.87 m |
全幅 | 2.63 m |
全高 | 2.17 m |
重量 | 15.75 t |
懸架方式 | リーフスプリング |
速度 | 42 km/h |
行動距離 | 177 km |
主砲 | 7.5cm48口径戦車砲 PaK39 L/48 |
副武装 | 7.92mm MG34機関銃 |
装甲 | 前面最大60mm、側面20mm |
エンジン |
マイバッハ Hl 203 P 30 160 馬力 |
乗員 | 4 名 |
概要
もともとはIII号突撃砲の生産工場が爆撃され生産停止に陥った際、チェコスロバキアのBMM社に同突撃砲の生産が代行できないかと打診されたのが開発のきっかけであった。BMM社の設備ではより小型の車輌しか生産できないため、ヒトラーは小型駆逐戦車の開発を命じた。
そこでBMM社は38(t)戦車の発展型である、II号戦車L型ルクスとの競争に敗れ不採用となった「新型38(t)戦車」(38(t)n.A. = neuer Art 軽偵察戦車)の足回りを流用して試作車を製作。これは見た目が良く似ているため従来型の38(t)の足回りを流用と言う間違った解説が多く、また古いプラモデルでも混同されているが、転輪の直径(775mmから825mmへ)や起動輪の歯数(19から20へ)、誘導輪の形や直径(535mmから620mmへ)、キャタピラのパターン・幅(290mmから305mmへ)、シャーシのサイズなどが異なっている。またリーフスプリング式サスペンションは、38(t)系自走砲専用車台と同じ7mm厚板バネ16枚のタイプであるが、ノーズヘビー気味であったため1944年9月から前半部は9mm厚のものに変更された。 この足回りに新設計のシャーシ、傾斜した装甲を持つ戦闘室と48口径の75ミリ対戦車砲(7.5cm Pak39 L/48)を搭載した軽駆逐戦車がヘッツァーである。本車は安価(54,000ライヒスマルク、IV号戦車の半額に近い)で生産性が大変良く最優先車両とされ、わずか4ヶ月で設計を終え、1年足らずでBMM及びシュコダ社により2584輌が生産されている。しかし、傾斜した装甲のために戦闘室内は大変狭く、また主砲が中心線を外れて装備されている関係で重量バランスが悪く、エンジン出力が低く履帯の幅が狭いこともあり、重量やサイズから連想されるほど路外機動性は良くなかった。本車はドイツ陸軍の軍直轄戦車駆逐大隊、歩兵・国民擲弾兵師団の戦車駆逐中隊、SS装甲擲弾兵師団に配備されたほか、75輌がハンガリー軍に供与されている。
ヘッツァーは実質的に戦車ではなく、機動性を持ち全面装甲化された対戦車砲にすぎない。車内レイアウトの関係上、車体右側が死角となり、他の乗員と隔離され後方に位置する戦車長からの前方視界は悪く、車内の狭さと合わせ、当時の乗員からの評判は良くなかった。この死角が原因で、個々に攻撃支援など行おうものなら弱い側面を突かれてたちまち撃破され、初陣であるワルシャワ蜂起の市街戦でも、ポーランド国内軍兵士の火炎瓶攻撃により失われている。敵戦車を待ち伏せ小隊単位で互いの死角を補い合い、単一の敵に集中砲火を浴びせ確実に仕留めていく「パック・フロント」戦術こそが正しい本車の戦法であり、機動防御に本領を発揮した。
軽駆逐戦車としては成功したとされる車輌であり、戦後もドイツ軍向けだった生産ラインを用いて(多くはドイツで生産されていた、遠隔操作ではなく車内から直接操作される『リモコン機銃』の在庫が足りず装備していなかったが)ST-Iの名で150輌が追加生産され、非武装の訓練型ST-IIIも50輌が作られた。1946年にはスイス陸軍がG-13の名で採用、チェコでは主砲であるPaK39が生産されていなかったため、代わってIII号突撃砲用のStuK40が装備され、同時に車内レイアウトや乗員配置が改善されている。外見的には主砲のマズルブレーキがあり、上部のリモコン機銃の代わりに装甲カバー付き旋回式ペリスコープを装備、またスイスオリジナルの対空銃架を装備したものもあり、さらに側面に搭載された予備転輪と予備履帯により、ヘッツァーとの識別は容易である。シュコダ社により1950年までに158輌が作られ、戦争映画ではヘッツァー役で登場することもあり、また博物館にある稼動ヘッツァーとされる物の一部には、G-13の外見をヘッツァー風に改造したレプリカもある。
バリエーション
- 38式回収戦車
- Bergepanzer 38
- 15cm重歩兵砲搭載 38式駆逐戦車
- Jagdpanzer 38 sIG33/2
- 38式火焔放射戦車
- Flammpanzer 38
- 38式駆逐戦車 固定砲架(シュタール)型
- Jagdpanzer 38 Starr
- 38(d)式駆逐戦車
- Jagdpanzer 38(d)
- ST-I
- ※チェコスロバキア陸軍(ヘッツァー最後期型とほぼ同仕様)
- G-13
- ※スイス陸軍(主砲と車内レイアウトを変更)
登場作品
- 合衆国最後の日(現用車輌として登場)
- ハノーバー・ストリート
- ザ・ロンゲスト・デイ(『史上最大の作戦』ではない方の、自由フランス軍特殊部隊を描く、1994年製作の仏独英米合作映画のラストに登場)
(これらの映画に登場した稼動するヘッツァー風の車輌は、全てG-13である。)
- コレリ大尉のマンドリン(終盤、ドイツ軍の制止を振り切るイタリア軍部隊の対戦車砲と交戦)
- ぱんほー!(ライトノベル作品、ゆうきりん著)
- ドラゴンボールZ 復活のフュージョン!!悟空とベジータ(地獄から甦った某「独裁者」の麾下戦力として登場。)