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一般的な自動車では、[[ステアリング・ホイール|ハンドル]]操作によって前輪に舵角を与えて方向転換を行うのが一般的である。<!--この際、後輪は車体と同じ方向を向いたままであるため、運動エネルギーが大きな場合には車両の横滑りが発生する、また、--><!--コーナリングにおける自動車運動力学において、「車体の向きの変えにくさ」はヨーイング方向のモーメントであり、「運動エネルギーが」という説明はどこから来るのか?-->このため、舵角が大きい場合には[[内輪差]]が大きくなるなどの不都合が起こる。これに対し四輪操舵方式ではハンドルによる前輪の操舵情報を後輪に対しても与えることにより、操舵時のこうした不都合を低減することを目的としている。
機構そのものは古くから存在し、[[第二次世界大戦]]前の[[ドイツ国]]で一部の車両に採用されたが、戦後はいったん消滅した。[[1980年代]]終盤、日本メーカーの乗用車においては四輪操舵を採用した車種がいくつか発売されたが、雑誌などのメディアが強く注目したものの、販売は伸び悩み、それらの次期モデルからは以下にあげる理由によって四輪操舵の採用が減少していった。その理由のひとつは、機構追加による複雑化、重量の増加と新規技術ゆえの価格上昇である。もうひとつの理由は、<!--自ら[[運転免許]]を取得して運転するようになる前から誰もが二輪操舵の挙動に慣れきっているため、← 逆。車両感覚は免許を取ってから慣れる。無免許運転者以外は。-->四輪操舵がもたらす「理想的な」挙動と一般的な二輪操舵の挙動との違いであり、<!--特に強い影響力を持つ自動車評論家と言われる人々に{{要出典|date=2013年9月}}-->四輪操舵の良さが「違和感」「クセの強さ」と認識されてしまったことである。具体的には、右左折時に運転者の予想よりも車体後部が外側に振り出す(逆相操舵)ことや逆に高速走行でほとんど回頭せずに横に動くように感じる(同相操舵)こと、車庫入れ後退時に狙った通りに車が動かないと感じることなどが挙げられる。日本のように車庫・駐車場事情がそれほど良くない場合、壁にぴったりと寄せられないことは不都合を招く場合もある。さらには[[チューニングカー]]の世界においては重量や挙動に対する不満から4WSを取り外してしまうケースも珍しくない。主に[[日産自動車|日産]]車向けに、「[[HICAS|ハイキャス]]キャンセラー」なるパーツも発売されている。加えて、[[スズキ (企業)|スズキ]]([[鈴木自動車|鈴木自動車工業]]時代を含む)は、[[スズキ (企業)#製品展開|自社商品への4WSの採用への意欲がなかった]]。{{also|スズキ (企業)#製品展開}}
その後乗用車では一時採用されなくなったが、2011年12月現在においては、日産自動車が[[日産・スカイライン]]、[[日産・フーガ]]で、レクサスが[[レクサス・GS#4代目 L1#型(2012年 - 2020年)|4代目GS]]<ref>
競技の世界では[[パイクスピーク・ヒルクライム]]や氷上レースのアンドロス・トロフィーなど、ローカル色が強く改造が自由なイベントで四輪操舵が採用されることもあるが、多くのカテゴリにおいては規定で禁止されている。F1では1993年に、1994年からの運転補助装置の禁止が通達されたが、その中に四輪操舵が含まれていた。禁止直前の[[1993年]]に[[ベネトン・B193|ベネトン・B193B]]の改良型として開発されたB193Cに四輪操舵が採用されたが、[[ミハエル・シューマッハ]]は「あまり変わらない」という主旨の感想を残しており、結局実戦では使用されなかった<ref>{{Cite web|url=https://www.racefans.net/2007/03/22/banned-four-wheel-steering/ |title=Banned: Four-wheel-steering|publisher=RACEFAN |language=|accessdate=2023-11-05}}</ref>。ラリー系競技では[[グループB]]車両で四輪操舵が用いられた。
[[1971年]]から[[1972年]]にかけて、[[アポロ計画]]のJミッションで使われた[[月面車]]に四輪操舵システムが採用された。この場合、一方の系統が故障した場合でも、もう一方の系統で操舵できるように[[冗長化|冗長性]]をもたせるためのものであった。→[[フォールトトレラント設計]]▼
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乗用車以外では、農業機械や建設機械に同機構を採用したものがみられる。
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: 舵角を前輪と同じ方向にする方式。転舵時に発生する[[ヨーイング|ヨー]]を抑えることで、車両の安定性を高める。高速域での[[車線]]変更などでの横滑りを抑える。縦列駐車にも適している。
; 逆位相方式
: 舵角を前輪と逆の方向にする方式。回転半径を小さくすることが可能になる。ただし、後輪の軌跡や、リア[[オーバーハング (自動車用語)|オ
乗用車では、走行速度やハンドルの操舵角度により、同位相と逆位相を連続的に制御しているものが多く、後退時にはキャンセル(中立で固定)できるものもある。
大型・特殊車両([[消防車]]や[[ラフテレーンクレーン]]など)では、特に内輪差の低減と小回り性能の向上を目的として、逆位相方式の四輪操舵機能が採用されるが、[[日産ディーゼル・FJ]]のように、同位相により「カニ足走行」も可能にした例も存在する。一部のリーチ[[フォークリフト]]では真横に走行が可能であり、限られた倉庫スペースの有効活用に役立っている。また、[[2階建てバス]]や三軸観光バスや全長15 mの2階建てバス[[メガライナー]]などは最後軸に逆位相方式のパッシブステア機能がある。また、牽引型の[[連節バス]]にも付随車の車軸に逆位相方式のステア機能が装備されている。
== 制御方式 ==
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; 機械式
: [[ステアリング]]と前後輪とをギアやシャフトなどの機構で接続し制御するもので、[[本田技研工業|ホンダ]]が[[1987年]]に[[ホンダ・プレリュード|プレリュード]]に搭載した(1991年の四代目以降は後述する電動式へ移行<ref>{{Cite web
; 電気制御式
: ステアリングの切れ角に応じて、後輪を電気制御された[[アクチュエータ]]で動かすもので、代表例は日産[[HICAS|HICAS/HICAS-II/SuperHICAS]]。[[1985年]] - [[1988年]]に採用されたHICASは[[油圧]]による後輪の同位相制御のみを行っていたが、[[1989年]]5月発表の[[日産・スカイライン|スカイライン(R32型系)]]に採用されたSuperHICASからは逆位相制御が組み込まれ、ステアリングの切り始めに一瞬のみ逆位相となり、ヨーモーメントを発生させたのち、同位相制御へと移行する機構を持っている。機械式と比べ、容易にその動作を無効化することができた。
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* [[トヨタ自動車]]
** [[トヨタ・ソアラ|ソアラ]](UZZ32)
** [[トヨタ・セリカ|セリカ]]/[[トヨタ・カリーナED|カリーナED]]/[[トヨタ・コロナEXiV|コロナEXiV]]/[[トヨタ・カレン|カレン]]
** [[トヨタ・カムリ|カムリ]]/[[トヨタ・ビスタ|ビスタ]]
** [[トヨタ・ライトエース|ライトエーストラック]]
** 乗用車以外では[[高機動車]][[シャシ (自動車)|シャシ]]共通各車、2代目[[トヨタ・ハイメディック|ハイメディック]]
* [[日産自動車]]
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** [[日産・シルビア|シルビア]](S13-S15)
** [[日産・フェアレディZ|フェアレディZ]](Z32)
** [[日産・スカイライン|スカイライン]](R31-R34)
** [[日産・セフィーロ|セフィーロ]](A31)
** [[日産・ローレル|ローレル]](C33-C35)
** [[日産・ステージア|ステージア]](C34,M35)
** [[日産・フーガ|フーガ]]
* [[三菱自動車工業|三菱自動車]]
** [[三菱・ギャラン|ギャラン]]/[[三菱・エテルナ|エテルナ]]
** [[三菱・GTO|GTO]]
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** [[マツダ・センティア|センティア]]/[[マツダ・MS-9|アンフィニ・MS-9]]
** [[マツダ・ミレーニア|ユーノス・800/ミレーニア]]
* [[
** [[スバル・アルシオーネSVX|アルシオーネ SVX]](CXD<ref group="注釈">4WSが採用されていたのはバージョンL(型式:CXD)のみ。バージョンEを含む他のグレード(型式:CXW)には採用されていない。</ref>)
* [[ダイハツ工業]]
** [[ダイハツ・ミラ|ミラ]]
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** [[いすゞ・ジェミニ|ジェミニ]]([[前輪駆動|FFモデル]])
** [[いすゞ・ピアッツァ|ピアッツァ]](FFモデル)
**[[ロールス・ロイス・ファントム|ファントム]]▼
*[[フェラーリ]]
**[[フェラーリ・F12ベルリネッタ|
**[[フェラーリ・GTC4ルッソ|GTC4ルッソ]]
*[[BMW]]
*[[ロールスロイス]]▼
**[[BMW・8シリーズ|8シリーズ(E31)]]
▲**[[ロールスロイス・ファントム]]
▲**[[ロールスロイス・ゴースト]]
*[[ランボルギーニ]]
**[[ランボルギーニ・アヴェンタドールS|アヴェンタドールS]]
== 現行の量産乗用車への採用例 ==
*[[メルセデス・ベンツ]]
**[[メルセデス・ベンツ・W223|Sクラス(W223)]]
**[[メルセデスAMG・SL|AMG・SL(R232)]]
*[[BMW]]
**[[BMW・5シリーズ|5シリーズ(G60)]]
**[[BMW・7シリーズ|7シリーズ(G70)]]
*[[ロールス・ロイス・モーター・カーズ|ロールス・ロイス]]
▲**[[ロールス・ロイス・ゴースト|ゴースト]]
*[[ランボルギーニ]]
**[[ランボルギーニ・カウンタック LPI 800-4|カウンタック LPI 800-4]]
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ナチュラル4WSとも呼ばれる。能動的に後輪を操舵する四輪操舵と異なり、リア[[サスペンション]]のストローク量や横方向にかかる力に応じて後輪のトー角をコントロールし、回頭性や安定性を向上させる方法にパッシブステアがある。狭義では「トーコントロールシステム」の範疇であり、四輪操舵には含めない。
通常の後輪[[独立懸架]]では、ホイールがストロークする際や横力を受けた際に、特に旋回外側の車輪においては車両が安定寄りとなるトーインを常に保つように設定されている。また、[[車軸懸架|リジッドアクスル]]や[[リンク式サスペンション]]、[[トーションビーム式サスペンション|トーションビーム]]のような固定車軸の場合は、ストローク時や横力を受けた時に起こるアクスルステアをアーム長や[[ゴム]][[すべり軸受#ブッシュ|ブッシュ]]の[[弾性]]変形<!--塑性変形したら元の形に戻らないよ-->でコントロールし、リアアクスル全体を旋回中心向きに変位させ、安定を保っている。このような特性がサスペンション設計の中で理解されてくる1980年代以前は、ブッシュやサスペンションアームの弾性変形による旋回中のトー角度の変化
これに対しパッシブステアは、ブッシュの変形を利用するまでは変わらないが、旋回初期の極浅い[[ローリング|ロール]]の際、後輪を一瞬だけトーアウト(逆位相)にコントロールするものである。動作が受動的であるためアクチュエーターはなく、タイロッドを持たない点が四輪操舵とは異なる。挙動を乱し[[スピン]]に至らないよう、外輪のみをトーアウトとするものもある。主に[[前輪駆動]]車や[[スポーツカー]]の一部で、回頭性を向上させるための「きっかけ」として用いられる。簡単な構造で四輪操舵に近い効果を実現できる反面、高度な制御を行うことはまったく不可能である。また、ブッシュ硬度の温度依存特性や経年劣化、あるいは路面の凹凸によるストローク量の変化や路面の[[摩擦係数]]の変化などにより動作が変動する点も弱点となる。[[マツダ]]の'''トーコントロールハブ'''<ref name="FC">[https://www.autoexe.co.jp/kijima/column2.html チューニングを楽しむための動的感性工学概論 §2 トー変化をどうコントロールするか?] - AutoExe:貴島ゼミナール</ref>とSSサスペンション<ref name="BD"/>、[[いすゞ自動車|いすゞ]]の[[ニシボリック・サスペンション]]、[[
自動車史上、パッシブステアの概念を本格的にリアサスペンションの設計に採り入れた最初の車輌は1966[[モデルイヤー|年式]]{{仮リンク|フォード・ゼファー|en|Ford Zephyr}}・マークIVであったが、当時の英国市場での評価は芳しくなかった<ref>[https://driventowrite.com/2016/03/29/suspension-when-independence-goes-wrong/ Theme : Suspension – When Independence Goes Wrong] – Driven To Write</ref>。1978年には[[ポルシェ・928]]が{{仮リンク|ヴァイザッハ・アクスル|en|Weissach axle}}を採用したが、これは原理的にはゼファー・マークIVの概念と同じ物であった。日本車では1980年にBD型[[マツダ・ファミリア]]が'''SSサスペンション'''の名称でパッシブステアの概念を導入、旋回時や制動時に後輪をトー・イン側に積極的に変化させる特性が持たせられ、それまでの前輪駆動車につきものであった[[タックイン
マツダでは現行車にも採用されているが、かつてほど大々的に宣伝されてはいない。トーコントロールハブの開発に携わった[[貴島孝雄]]によると、パッシブステアは機敏で優れた操縦特性を実現した一方で、ドライバーに操縦時の違和感を感じさせやすく、自動車工学としては正しいものではあるが、貴島自身が提唱するドライバーの「動的感性」を満足させるものにはなりにくいという反省点が得られたとされており、FD3S以降ではドライバーに明確に変化を感じさせる程のトー角度の制御は行わなくなったという<ref name="FC"/>。
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[[モータースポーツ]]では、パッシブステアが操作性の低下を招く不確実要素となるため、たわみブッシュを硬質な材料で作られたものに交換することがある。実際に[[サーキット]]走行などにおいては、「トーコン(トロール)キャンセラー」、「ニシボリ殺し」などといった[[アフターマーケット]]パーツで動作をキャンセルすることが一般的であった。
その一方で国内[[ラリー]]シーンではパッシブステアは好評であった。ニシボリック・サスの場合、旋回中に通常の前輪駆動車では考えられないほどのオーバー・ステア傾向を示したことや<ref>
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
<references />
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