Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

人権

近代・現代的な法と人権理論で保障される、人間の生存に必須で不可譲な生来の権利

これはこのページの過去の版です。小雪 (会話 | 投稿記録) による 2006年6月29日 (木) 09:33個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (起源)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

人権(じんけん)は「人の権利」、通常は基本権基本的人権と同義のものとしてとらえれる。ただし、基本権という場合とは違い、他人から与えられたのではなく生来的に有するものであるというニュアンスがある。

起源

人権の特徴は、

  1. 人間が人間であるということを根拠として発生するものである点。(ヨーロッパで最初に主張されたときは神賦とされた。)
  2. その権利を持つこと、自由に行使しあるいは保留することが当然であり、自然である点 (これは啓蒙主義時代の人権が自然権と呼ばれたことに由来する。)

の二つにある。

ホッブズの最初に唱えた社会契約説によれば聖書に記述されている楽園(原始社会)においても(自然に)存在した権利である生命権と自由権が自然権とされる。このような平和な無国家状態も人口の拡大とともに紛争が必然となる。個人は国家主権(国王)に対して自然権を完全に放棄し絶対王政の国家を確立すべきであると主張された。これに反発したロックなどの自由主義者の社会契約説によれば個人は人権を守るために人権を国家に委託するのであって国家が人権を侵害する正当性はそれに属する個人の人権や私権を保護するために存在すると主張された。ちなみにロックは原始社会にも個人所有が存在したと主張し、財産権を生命権と自由権に継ぐ自然権とした。彼が経済自由主義の始祖とされる理由である。どちらにしてもホッブズが最初に提起した自然権と社会契約説がその後の欧米政治思想の基本となったため人権は現時点での法哲学の論争の淵源であるといえる。

人権の観念の成立後も国家によって人権が侵害されてことは、歴史的にみての事実であるが、人権の国家による侵害がどの程度において許容されるかはいまだ解決されていない論争である。多くの人権侵害、場合によっては大量虐殺が国家の維持の名のもとに行われたのは事実である。日本国憲法においては人権の維持に不断の努力を要するとする。しかし人権は法律上「生来」のものとされているが「絶対」のものとはされていない。ロックなどの自由主義が最初に主張されたときから権利を守るための権利の侵害は正当化されており、ロックやミルあるいはカントなどの代表的な自由主義者・人権論者が死刑あるいは戦争を条件付で肯定した理由がそれである。日本国憲法においても人権侵害は公共の利益の元に正当化されており、この場合の境界は司法の判断に任されている。

かつては、人権の根拠は自然法つまり神に求められていた。しかし、世俗主義の現代においては人権そのものが根拠・命題と法律理想論では主張される。これが日本においては個人の尊厳に求められる。日本国憲法第13条の「個人の尊厳」は、この意味に解される。この場合人権の観念は憲法も含めた法律の上に位置付けられる。一方で法律論(法律現実論:LegalRealism)においては人権の根拠は単純に法律(殆どの国では憲法)にあるとされる。

世界人権宣言

1948年12月10日国際連合は、世界人権宣言を採択して宣言した。これは、国際社会に於ける人権の基本原則を定義しており、加盟国に対して人権の基準の雛形を提示している。強制力は無いが無視できない宣言である。

外務省の「世界人権宣言」(仮訳文)より

第5条

  • 何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。

第29条

  1. すべて人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して義務を負う。
  2. すべて人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公の秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。
  3. これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならない。

国際人権規約

1966年12月16日に、前項の世界人権宣言を強化するため国際連合は国際人権規約を採択した。規約詳細は該当項を参照のこと。

日本における人権

日本においては、人権は日本国憲法が「国民の権利」として保障している。人権に関する法律の整備の基本的な部分は、主に内閣府法務省が担当しており、法務省の人権擁護局がその中心となっているほか、必要に応じて担当する省庁が法律を整備している。

  • 特別な法律関係における人権
法人・公務員・在監者に対しては、一部の人権が制限されると考えられている。
  • 外国人の人権
原則として、日本国憲法の人権規定は外国人に対しても適用される。ただし、参政権、公務就任権、社会権、入国の自由等に対しては制限があると考えられている。
  • 皇族の人権
皇族に選挙権・被選挙権は認められない。ではその他の人権は認められるか。これを肯定する説と否定する説があるが、中身に大きな差異はない。なお、判例によると天皇は民事裁判権に服さないとする。
  • 直接適用説
憲法に定める人権の効力は、公私の別を問わず該当するから、私人に対しても憲法の適用を直接できるという説。
  • 間接適用説
憲法が直接適用されるのは、一部の例外を除いて公権力と私人の関係であるが、私法上の解釈において憲法の人権保障の趣旨を汲むことにより私人間における人権保障を図ろうとする説。通説であり,判例もこの立場と解されてきた。
私人間効力・第三者効力ともいう。
  • 問題となった事件として、三菱樹脂事件、昭和女子大事件などがある。
  • 具体例として、民間企業の男女別定年制は、憲法14条違反ではなく、民法90条違反として無効であるとされた。
  • 無適用説
憲法が直接適用されるのは、一部の例外を除いて公権力と私人の関係であり,憲法の人権規定は私人間の関係に全く効力を及ぼさないとする説。もっとも,近時の見解は私法もまた憲法と共通の価値秩序を前提とするはずであるから私法の解釈においてもその価値は考慮されるはずであるとする。判例はこのような立場であるとも解することが可能である。


基本的人権

基本的人権(きほんてきじんけん)とは、人間が、1人の人間として人生をおくり、他者とのかかわりをとりむすぶにあたって、最大限に尊重されなければならないとされる人権のことである。

基本的人権は、生命財産名誉の尊重といったような個別的具体的な権利の保障へと展開することが多い。このため、体系化されているさまざまな権利を総称して「基本的人権」と言うこともある。

日本国憲法での基本的人権

日本国憲法は、国民主権(主権在民)、平和主義とならび、基本的人権の尊重を三大原則としている。

主な基本的人権

  • 包括的基本権
  • 自由権(国家からの自由、恐怖から免れる権利(前文))


  • 社会権(国家により欠乏や抑圧から免れる権利(前文))

(以下は基本的人権を守るための権利)

  • 請求権(国務請求権・受益権)


註:ここにある人権は必ずしも一つのカテゴリに入れることは不適当であり、自由権の中でも社会権的なもの、またその逆もある。また時代によって人権の意味が変わってくるため、その権利を固定的な意味で捉えるのは適当ではない(人権の相対性)。

最高法規

新しい人権

日本国憲法第13条幸福追求権から認められるとされる。

人権侵害

公権力による人権侵害

冤罪刑務所拘置所などの職員による被収容者への虐待、劣悪な収容環境など。公権力による人権侵害は裁判所も公権力を構成するだけに公正な判決を期し難い場合もある。このため欧州評議会加盟国では欧州人権裁判所を設置して市民が加盟国政府に対する訴訟を提起できる制度を採っているが、日本では最高裁判所を超越する国際的司法機関への提訴の道は開かれていない。

外部から隔離された刑務所など刑事施設の処遇を見ればその国の人権意識のレベルが分かると言われている。

日本においては、国際人権規約の下で設置された国連人権委員会において代用監獄の問題を指摘された。人権委員会は1998年の第4回日本政府報告の審査において、代用監獄の廃止を勧告している。

マスメディアによる人権侵害
家庭の人権侵害
企業の人権侵害
インターネットの人権侵害
学校の人権侵害
病院・施設の人権侵害
  • 入院患者・入所者に対する虐待(身体の束縛・監禁など)
地域社会における人権侵害

関連法令

関連項目

外部リンク