揚陸指揮艦
揚陸指揮艦(ようりくしきかん、英: Amphibious Command Ship)は、指揮・統制能力を重視した軍艦[1]。主にアメリカ海軍が採用している艦種であり、艦隊司令等が坐乗する[1]。
概要
編集海上における軍事行動、特に揚陸戦においては、水上艦船のほか、陸上部隊、航空部隊についても指揮・統制を行う必要がある[2]。
第二次世界大戦後半ともなると、上陸作戦は大規模化し、多数の司令部人員や通信能力を必要とした。そのため、充分な容積を確保し、充分な通信能力を備えた指揮専用艦艇・揚陸指揮艦が用いられるようになった[2]。
アメリカ海軍初の揚陸指揮艦アパラチアンは第二次世界大戦中の1943年に戦時標準船を改造して竣工している。主に対日本戦(太平洋戦争)に使用するためのものであった。重要防御対象であったために、大戦中はその存在自体が秘匿されていた[2]。
アパラチアン級は1970年代まで用いられ、その後はブルー・リッジ級などに引き継がれた。なお、強襲揚陸艦の大型化に伴いタラワ級、ワスプ級は揚陸指揮艦任務を兼ねるようになっている。
ブルー・リッジ級では、通信機能を重視し電波干渉を避けるため、広い平甲板を持った船型を採用しているのが特徴である[2]。
第二次世界大戦中のイギリス海軍においては同種の艦を司令部艦(Headquarters ship)と称した。民間船改造のブローロを嚆矢として、北アフリカ戦線や西ヨーロッパ戦線での上陸戦において運用した[3] 。大戦中に合計4隻が運用された[4]。
中華民国海軍では、アメリカ海軍から供与されたLST-542級戦車揚陸艦デュークス・カウンティ(USS Dukes County, LST-735)に所要の改造を施し、1962年から揚陸指揮艦高雄として運用した[5]。
揚陸指揮艦一覧
編集アメリカ海軍
編集- アパラチアン級揚陸指揮艦:4隻
- アパラチアン(USS Appalachian, AGC-1)
- ブルー・リッジ(USS Blue Ridge, AGC-2)
- ロッキー・マウント(USS Rocky Mount, AGC-3)
- カトクティン(USS Cactoctin, AGC-5)
- マウント・マッキンリー(USS Mount McKinley, AGC-7/LCC-7)
- マウント・オリンパス(USS Mount Olympus, AGC-8)
- ワサッチ(USS Wasatch, AGC-9)
- オーバーン(USS Auburn, AGC-10)
- エルドラド(USS Eldorado, AGC-11/LCC-11)
- エステス(USS Estes, AGC-12/LCC-12)
- パナミント(USS Panamint, AGC-13)
- テトン(USS Teton, AGC-14)
- ビスケーン(USS Biscayne, AVP-11/AGC-18)
- ウィリアムズバーグ(USS Williamsburg, PG-56/AGC-369)
- バルカー(USS Valcour, AVP-55/AGF-1)
- ラ・サール(USS La Salle, LPD-3/AGF-3)
- コロナド(USS Coronado, LPD-11/AGF-11)
- ブルー・リッジ(USS Blue Ridge, LCC-19)
- マウント・ホイットニー(USS Mount Whitney, LCC-20)
イギリス海軍
編集中華民国海軍
編集- 高雄(ROCS Kao Hsiung, AGC-1)
脚注
編集- ^ a b US Navy. “AMPHIBIOUS COMMAND SHIPS - LCC The US Navy Fact File”. 2015年11月29日閲覧。
- ^ a b c d アメリカ揚陸艦史 世界の艦船 2007年1月号増刊 海人社 EAN 4910056040171
- ^ “WW2 HQ SHIPS”. 17 March 2024閲覧。
- ^ 「第2次大戦のイギリス軍艦」『世界の艦船』第839号、海人社、2016年2月、181頁、ASIN B01EYMD2LI。
- ^ “[https://www.navsource.org/archives/10/16/160735.htm NavSource Online: Amphibious Photo Archive USS Dukes County (LST-735) ex USS LST-735 (1944 - 1955)]”. 17 March 2024閲覧。