クワッドローター
クワッドローター/ロータ、クワドローター/ロータ、クアッドローター/ロータ(英: quadrotor)、クワッドコプター/コプタ、クワドコプター/コプタ、クアッドコプター/コプタ(英: quadcopter)は、離陸・推進に4つの回転翼を用いる航空機、ないし小型無人機の総称である。
なお、有人のものは実用化された例が無いため、クワッドローターといえば基本的に無線操縦する無人機タイプ、すなわち4モーターのマルチコプターを指す。
名称
編集「4」を意味する"quad-"または"quadro-"、「回転翼」を意味する"rotor"、そしてヘリコプターという言葉を組み合わせた名称となっており、「quad」の音写にはクワッド/クアッド/クワド/カッドなど幾通りかある。
英語ではquadrotor、quadrotor helicopter、quadcopter、quadrocopterなどの分類がある。
概要
編集無人タイプ
編集1980年代に名古屋大学で電動式のクアッドコプターの開発が進められた[1][2]。当時はまだ蓄電池の容量が少なかったので外部から電力を給電する有線式だった。
1989年7月、キーエンスは世界に先駆けて「キーエンス ジャイロソーサー E-170」を発売した。飛行時間は1分30秒だった[3]。北米ではそれから10年後「Draganflyer」が登場し映画に使用されるなど、徐々にクワッドコプターが普及し始める[4]。当時はジャイロスコープはモーターでコマを回転させる形式であったが、2000年代以降にマルチコプターが普及した背景にはスマートフォン等に使用されるMEMSジャイロスコープや加速度センサーが大量生産されて廉価になったことによる副次的な恩恵を受けたことが挙げられる。
2010年にParrot社が4モーターのクアッドコプター「AR.Drone」を発売した。それまで、もっぱら産業機器であったドローンが一般人でも簡単に入手、飛行させられるというインパクトは大きく、大ヒット商品となった。各社はクアッドローターに注目し開発に参入、DJI「Phantom」シリーズの登場で市場が拡大。クアッドローターがホビー用として確固とした地位を築く一因となった。6モーターや8モーターのマルチコプターと比べたとき、モーター数が少ないことによる機体軽量化のメリットが生じ、安価に製作可能であったり、少ないバッテリーで航続距離を伸ばすことが可能な利点から、今日のクアッドコプターはホビー用普及帯モデルに多い。
進行方向は、固定ピッチの回転翼の回転数を変えて、発生する推力とトルクを変更することにより制御するものが多いが、可変ピッチ回転翼によって推力を変更して制御するタイプもある[5]。
有人タイプ
編集4つの回転翼で揚力を生み出すため、マルチローター機、回転翼機に分類される。回転翼を用いるという意味ではヘリコプターに分類されることもある。
有人クワッドローターの歴史は古く、幾度となく軍事兵器として研究されてきた。ヘリコプターの黎明期である1907年にBreguet-Richet Gyroplaneの飛行が試みられた。1922年にはde Bothezat helicopterの飛行が試みられた。その後も1958年にカーチス・ライト VZ-7や1963年にX-19、1966年にダクテッドファンを装備したX-22が開発された。1994年3月7日に日本航空協会の公式試験で人力ヘリコプターであるYURI-Iが高さ20cm、滞空時間19.46秒の飛行に成功した。
今日でもクアッド・ティルトローターやクワッドローターに良く似た外観を持つ8ローターの有人機[6]が研究されている。
飛行原理
編集クワッドローターの赤いローター(プロペラ)は右回転、青いローターは左回転し、推力とトルクを生成する。全てのローターの回転数を上げることで機体は上昇し、回転数を下げることで機体は降下する。また、それぞれのローターの回転数を変える事で機体を前後左右、回転する事ができる。
クワッドローターのローター1と3は時計回りに回転し、ローター2と4は反時計回りに回転して、制御のために反対のトルクを生み出す。 | 4つのローターすべてに等しい推力を加えることにより、ホバリングを行う。 | 一方向に回転するローターにより多くの推力を加えることにより、ヨー(ヨーイング)を調整する。 | 1つのローター(または2つの隣接するローター)により多くの推力を加え、正反対のローターに少ない推力を加えることにより、ピッチまたはロールを調整する。 |
---|
安全性
編集ローター4つの内、一系統でトラブルが発生しただけで墜落に繋がる[7]ため安全性が要求される空撮分野等の産業用途では、ローター数を6つや8つに増やしたマルチコプターを利用するのが望ましい[8][9]。
しかし、どんなにローター数を増やしても、無線操縦である以上、ECMのような妨害電波を受けると墜落を避けられない[10][11]。これには、事前に設定したフェイルセーフの機能による自動着陸や、事前の機体の軽量化などで被害を抑えるくらいの対抗手段しか無い[10]。
主な用途と製品例
編集法規制
編集条例等
編集ギャラリー
編集脚注
編集- ^ 丹羽昌平, 杉浦一郎、「VTOL 実験機とその制御」 『計測と制御』 1986年 25巻 8号 p.729-736, doi:10.11499/sicejl1962.25.729, 計測自動制御学会
- ^ ダクテッドファン形VTOL実験機
- ^ 久保大輔「無人航空機システム(ドローン)の歴史と技術発展」『計測と制御』第56巻第1号、計測自動制御学会、2017年、12-17頁、doi:10.11499/sicejl.56.12、ISSN 04534662、2024年7月5日閲覧。
- ^ A Brief History of Quadrotors | Air & Space Magazine| Smithsonian Magazine
- ^ “スティングレイ500 フルセット”. CJ Youngblood Enterprises. 2016年5月17日閲覧。
- ^ “全自動飛行可能でパイロット不要の1人乗りマルチコプター「EHANG184」を中国のドローンメーカーが発表”. GIGAZINE. 2016年5月18日閲覧。
- ^ “4モーターが危険な理由”. 株式会社 0. 2016年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月17日閲覧。
- ^ “8モーターが安全な理由”. 株式会社 0. 2016年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月17日閲覧。
- ^ “6モーターは危険?安全?”. 株式会社 0. 2016年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月1日閲覧。
- ^ a b “マルチコプタージャマーについて”. 株式会社 0. 2016年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年5月17日閲覧。
- ^ “GPS Jammer の脅威”. PAUI 株式会社. 2016年5月17日閲覧。
- ^ “プレスリリース:レーサードローン製品発売のお知らせ(Adobe PDF)” (PDF). 株式会社ジーフォース. 2016年5月16日閲覧。
関連項目
編集- 無人航空機(ドローン)
- 一人称視点 (遠隔操縦)
- ドローン インパクト チャレンジ
- マルチコプター
- ヘリコプター
- 有人ドローン
- eVTOL(電動垂直離着陸機)
- 空撮
外部リンク
編集- DJI 公式サイト
- Parrot 公式サイト
- PowerVision 公式サイト
- Holy Stone
- GFORCE
- HiTEC
- Ryze Tech
- Holy Stone 公式サイト(英語・中国語)
- HUBSAN 公式サイト(英語)
- EACHINE 公式サイト(英語)
- Potensic 公式サイト(英語)
- SNAPTAIN 公式サイト(英語)
- tech rc 公式サイト(英語)
- Walkera 公式サイト(英語・中国語)
- QUADROCOPTER.com(英語) - アメリカの空撮会社