③計画
③計画(まるさんけいかく)は、大日本帝国海軍の海軍軍備計画。正式名称は第三次海軍軍備補充計画だが、通称として○の中に数字を入れてマル3(まるさん)計画と呼ばれた。軍縮条約から脱退後、初の建艦計画であり、海軍国防所要兵力整備十年構想の前半四ヵ年計画にあたるものである。
計画内容
編集昭和十二年度より同十七年度までの六ヵ年計画(航空隊整備計画は同十五年度まで)だったが、後に完成予定が一ヵ年繰り上げられ、昭和十六年度までの五ヵ年計画に修正された。計画の内容は8億0654万9千円(昭和十六年度の追加要求により8億6421万8千円)の予算で艦艇66隻を建造、7526万7千円の予算で航空隊14隊を整備することである。
艦艇
編集- 戦艦 - 2隻(3万5000t、9800万円→1億0793万3075円×2)
- 航空母艦 - 2隻(2万4500t、8085万円→8449万6983円×2)
- 敷設艦(甲) - 1隻(1万1600t、2494万円→2605万9982円) ※ 後に水上機母艦
- 第5号艦(日進 [III])
- 敷設艦(乙) - 1隻(5000t、975万円→1048万1573円)
- 第6号艦(津軽 [II])
- 急設網艦 - 2隻(2000t、450万円→473万2622円×2)
- 海防艦 - 4隻(1200t、306万円→321万6528円×4)
- 砲艦(甲) - 2隻(1000t、330万円→347万4301円×2)
- 橋立型
- 砲艦(乙) - 2隻(270t、117万4500円→121万8111円×2)
- 駆逐艦 - 18隻(2000t、900万円→967万9191円×18)
- 陽炎型 ※ 第32〜34号艦は建造せず
- 潜水艦(甲) - 2隻(2600t、1456万円→1553万0044円×2)
- 潜水艦(乙) - 7隻(2100t、1218万円→1306万2460円×7)
- 伊十五型 ※ 第43号艦は建造せず
- 潜水艦(丙) - 5隻(2100t、1218万円→1306万2460円×5)
- 掃海艇 - 6隻(600t、213万円→223万0823円×6)
- 運送艦 - 1隻(1万t、440万円→473万6852円)
- 第55号艦(樫野)
- 測量艦 - 1隻(1600t、376万円→403万5745円)
- 第56号艦(筑紫)
- 敷設艇 - 5隻(700t、245万円→254万0064円×5)
- 駆潜艇 - 9隻(300t、150万円→157万8585円×9)
- 第62号艦(第7号駆潜艇)、第63号艦(第8号)、第64号艦(第4号)、第65号艦(第5号)、第66号艦(第11号)、第67号艦(第12号)、第68号艦(第10号)、第69号艦(第9号)、第70号艦(第6号)
注釈
編集計画策定の背景
編集帝国海軍は海軍休日の終了に伴って自主的国防に要する所要兵力標準の第三次改訂を行い、以下の兵力を今後十年で整備する方針を立案した。
艦種 | 所要定数 | 現有隻数 | 増勢隻数 | 代換隻数 | 前期整備分 | 後期整備分 | 単艦排水量 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
主力艦 | 12 | 10 | 2 | 2 | 2 | 2 | 60,000t |
航空母艦 | 10 | 6 | 4 | 1 | 2 | 3 | 20,000t |
甲巡 | 20 | 18 | 2 | 4 | 0 | 6 | 10,000t |
乙巡・旗艦巡 | 21 | 17 | 4 | 17 | 0 | 21 | 6,000t |
駆逐艦 | 96 | 80 | 16 | 46 | 14 | 48 | 2,000t |
潜水艦(旗艦) | 7 | - | 7 | 0 | 2 | 5 | 2,800t |
潜水艦(巡潜) | 27 | - | 19 | 4 | 11 | 12 | 2,000t |
潜水艦(海大) | 36 | - | 12 | 16 | 0 | 28 | 1,400t |
なお、潜水艦は各種合計33隻を現有隻数として扱う。
この整備構想は無条約時代突入後、最初の十年で整備するべきものとされ、前期計画(四ヵ年)、後期計画(六ヵ年)と予定された。③計画はこの内前期計画に相当するものである。実際に建造された数量と構想との差異を比較すると以下のようになる。
艦種 | 計画 | 実際 | 差異 |
---|---|---|---|
主力艦 | 2 | 2 | 0 |
航空母艦 | 2 | 2 | 0 |
甲巡 | 0 | 0 | 0 |
乙巡・旗艦巡 | 0 | 0 | 0 |
駆逐艦 | 14 | 15 | +1 |
潜水艦(旗艦) | 2 | 2 | 0 |
潜水艦(巡洋) | 11 | 11 | 0 |
潜水艦(海大) | 0 | 0 | 0 |
以上のように③計画は想定された整備構想を完全に実現したものであり、無条約時代最初の建艦計画としては上々の滑り出しであった。
追加・計画変更
編集昭和十三年度計画
編集③計画策定後、追加計画として昭和十三年度に練習艦3隻、給糧艦2隻が計画され、最終的に以下の3隻が認められ建造された。
- 練習艦 - 2隻(6000t、660万円×2)
- 給糧艦 - 1隻(1万t、400万円)
- 第74号艦(伊良湖)
計画完成時の戦時編成案
編集昭和16年度戦時編制案。昭和10年2月策定。防衛省戦史研究室所蔵資料。
- 同 第2艦隊
- 第3戦隊
- 第4戦隊
- 第7戦隊
- 第8戦隊
- 第9戦隊
- 第2水雷戦隊
- 神通・駆逐艦16
- 第4水雷戦隊
- 那珂・駆逐艦16(内14は③計画艦)
- 第2航空戦隊
- 第3航空戦隊
- 第4航空戦隊
- ③航母2・駆逐艦2
- 第6航空戦隊
- 同 第3艦隊
- 第11戦隊
- 第12戦隊
- 第13戦隊
- 砲艦6・③海防艦2・二等駆逐艦3(③計画で改装)
- 第5水雷戦隊
- 夕張・駆逐艦12
- 第5潜水戦隊
- 長鯨・巡潜3・機雷潜4・海大2
- 第7航空戦隊
- 第8航空戦隊
- 特水母6
- 第1根拠地隊
- ③駆潜艇5・③掃海艇6他
- 第2根拠地隊
- 朝日(工作艦)他
- 艦隊附属
- 第11航空隊
特記事項
編集③計画期間中、艦艇建造と並行して以下の事項が実施された。
なお昭和10年2月に策定された昭和16年度戦時編制案においては、後に大和型戦艦となる③戦艦2隻は重高速戦艦として第二艦隊に配属されていることに留意。
参考文献
編集- 戦史叢書 - 海軍軍戦備(1)
関連項目
編集- 戦備計画