私募リート
私募リート(私募REIT、しぼリート)やプライベート・リート(英: private REIT)は、非上場の不動産投資信託(REIT)や投資法人のこと。
概要
[編集]REIT(不動産投資信託)のうち、証券取引所に上場していない私募のものを指す。
日本において私募REITは、2010年(平成22年)以降、設立が増えている。
米国にはおいては、機関投資家向けで税法上のREITのうち、非上場または米国証券取引委員会に登録していないものをプライベート・リートと呼ぶ[1]。2019年には三菱商事100%子会社のダイヤモンド・リアルティ・マネジメントにより日系不動産運用会社として初の米国の私募リートが立ち上げられた[2][3]。
日本の私募REIT概要
[編集]日本では投信法に基づく。日本の上場REITについては、J-REITの項目を参照。
不動産証券化協会の「私募リート・クォータリー」[4]において、私募リートの定義は以下の通り。
- 非上場(証券取引所に上場していない)であること。
- 投資信託協会規則で定める「不動産投信等」であること。
- 投資信託協会規則で定める「オープン・エンド型の投資法人」であること。
- 運用期間の定めが無いこと。
スポンサー属性としては、当初は不動産会社(2010年の野村不動産プライベート投資法人が初)、金融系(2012年のジャパン・プライベート・リート投資法人が初)、総合商社(2012年のDREAMプライベートリート投資法人が初)による法人が設立されたが、その後、物流(2015年のSGAM投資法人が初)、鉄道(2016年の京阪プライベート・リート投資法人が初)、ゼネコン(2018年の鹿島プライベートリート投資法人が初)、電力(2019年の関電プライベートリート投資法人が初)、ガス(2023年の大阪ガス都市開発プライベートリート投資法人が初)など本業が不動産・金融以外の一般事業会社がスポンサーとなり財務・成長戦略に活用する例が増えている[5]。
2020年~2022年で、J-REITの新規上場は1法人(東海道リート投資法人のみ)に対し、私募REITの運用開始は12法人だった。また、2023年に運用開始の私募REITは10法人だった[6]。2024年6月で私募リートは58法人となり、法人数でJ-REITと並んだ。
上場J-REITと日本の私募REITの比較
[編集]- 個人も投資できる上場J-REITとは異なり、主に機関投資家向けであり[7]、非上場であるため投資口価格の変動が少ないため、地方銀行等の資金が流れているとされている。一方で、非上場であるが故、流動性は限定的である。
- LTVは、J-REITの平均が44.6%(2021年10月時点)[8]に対し、日本の私募REITは2021年9月時点で資産総額4兆2,740億円、出資総額2兆5,131億円[9]であることから41.2%と算定され、実際には資産は相応の含み益を有することを勘案すると、J-REITよりLTVが低いと云える。
日本の私募REIT一覧
[編集]不動産証券化協会の集計
[編集]2024年6月末時点で、58投資法人、資産総額6兆4,545億円、物件数1,766物件、出資総額3兆6,708億円[10]。
その他
[編集]金融庁に登録済みや法人設立済みであるものの、非上場かつ不動産証券化協会の私募リート・クォータリーに掲載されていない投資法人は以下の通り[54]。設立または登録済みだが運用開始前の状態、または上場(J-REIT)を目指しておりその前段階として私募で運用している状態、という傾向がある。
- ビーロットリート投資法人 - 2017年9月15日「ポーリー・プラス投資法人」として設立、2018年6月20日「メディカルアセット投資法人」に商号変更、2020年9月1日に「ビーロットリート投資法人」に商号変更。同年11月30日にビーロット江坂ビルを取得し運用開始。2023年上場目標。スポンサーはビーロット。
- 東祥東海リート投資法人 - 2020年3月に東祥リート投資法人として運用開始。スポンサーは東祥。東海地区初の投資法人。東証に上場を目指す。
- シノケン・レジデンシャル投資法人(旧「シノケンリート投資法人」) - 2020年6月登録。2020年7月31日運用開始。スポンサーはシノケン。[55]2021年12月以降に上場を目指しており[56]、2022年2月に3月の上場予定を発表したが、その後上場延期を発表。
- サムティ・ジャパンホテル投資法人 - 観光目的の入国者数が、コロナ禍前の水準に戻る見通しが立っていないことから、上場延期を発表。
- サステナブル・インベストメンツ投資法人 - リオ・アセットマネジメント
- オープンハウスリート投資法人 - スポンサーはオープンハウスグループ。2022年5月13日設立、同年6月14日登録、非上場クローズド・エンド型不動産投資法人[57][58]、同年9月1日運用開始[59]
- 東京建物ロジスティクスリート投資法人 - 東京建物がスポンサー、資産運用会社は株式会社東京リアルティ・インベストメント・マネジメント、主たる投資対象は物流施設及びインダストリアル施設、上場を目指す[60]。
計画中
[編集]- 戸田建設 - 2025年設立予定[61]
- 京浜急行電鉄[62]
- 相鉄ホールディングス、相鉄アーバンクリエイツ、相鉄不動産投資顧問[63][64]
- 東京地下鉄(東京メトロ) - 中期経営計画「東京メトロプラン2024」に記載[65]
- 西日本鉄道(西鉄) - 長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン 2035」に記載[66]
- 空港施設[67][68]
- 九州電力[69][70] - 2024年7月1日に九電都市開発投資顧問株式会社を設立予定[71]。
- アスコット[72]
- 名古屋鉄道[73]
- 琉球銀行 - 沖縄県内の物件を対象に2020年代後半以降の組成をめざす[74][75]
- りそな銀行 - りそな不動産投資顧問[76][77][78]
- 中止
日本のオープン・エンド型私募コアファンド
[編集]私募リート等同様に、主に機関投資家向けの長期投資を前提とし、日本の不動産を投資対象とするオープン・エンド型の私募コアファンドも登場している。
- ラサール・ジャパン・プロパティ・ファンド
- GLP Japan Income Fund
- 大和ハウスロジスティクスコアファンド - 大和ハウス・アセットマネジメントが投資助言[81]
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ Guide to Private REIT Investing | Nareit
- ^ 「DREAM USプライベートリート」組成のお知らせ | ダイヤモンド・リアルティ・マネジメントのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー 2019年11月19日
- ^ 米国私募リート事業 | 6つの事業領域 | 事業内容 | ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント株式会社
- ^ 私募リート・クォータリー(No.6/2017年3月末) 一般社団法人不動産証券化協会 2017年4月24日
- ^ 鹿島・清水・大成…ゼネコンの私募REIT運用が相次ぐ背景事情|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 2023年8月4日
- ^ 「土地持ち企業」が私募REIT - 日本経済新聞 2024年1月11日
- ^ 私募リート(私募REIT) | R.E.words 不動産用語集
- ^ 出典:LTVの分布、マーケット概況|J-REIT.jp | Jリート(不動産投資信託)の総合情報サイト | ARES J-REIT View
- ^ 私募リート・クォータリー No.24 (2021年9月末基準) 一般社団法人不動産証券化協会 2021年10月28日
- ^ 私募リート・クォータリー 一般社団法人不動産証券化協会
- ^ ゴールドマンが私募リートで日本の不動産投資を再開、4年で4000億円目指す=関係筋 | ロイター 2012年5月28日
- ^ 2024年4月1日に「ヒューリックプライベートリートマネジメント株式会社」から「ヒューリック不動産投資顧問株式会社」に商号変更
- ^ 2023年10月1日にMU投資顧問から商号変更
- ^ 安田不動産グループ 私募REIT「安田不動産プライベートリート投資法人」の運用を開始 安田不動産株式会社 2021年10月1日
- ^ 長谷工グループの私募REIT 「長谷工レジデンシャルプライベート投資法人」運用開始のお知らせ
- ^ )2024年1月1日付で「株式会社フージャースリートアドバイザーズ」から「株式会社フージャースキャピタルマネジメント」に商号変更
- ^ 農中JAMLリート投資法人の情報|国税庁法人番号公表サイト
- ^ 農中JAMLリート投資法人の運営開始について | JA三井リースのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー
- ^ 私募REIT「清水建設プライベートリート投資法人」の運用を開始 | 企業情報 | 清水建設
- ^ FJプライベートリート投資法人の情報|国税庁法人番号公表サイト
- ^ 私募 REIT「FJ プライベートリート投資法人」運用開始のお知らせ
- ^ 私募リート組成に向けた資産運用会社の設立について | 2022年度 | 大成建設株式会社
- ^ 大成建設が私募リート 1000億円運用、建設で広がる組成 :日本経済新聞 2022年6月3日
- ^ 大成建設プライベート投資法人の情報|国税庁法人番号公表サイト
- ^ 私募リート「大成建設プライベート投資法人」の運用開始について | 大成建設株式会社
- ^ 2023年4月20日設立。物流施設主体型で、2023年夏に資産規模約280億円で運用開始予定
- ^ 日鉄興和不動産グループ「日鉄興和不動産プライベート投資法人」の設立について
- ^ 総合型私募リート「SBIプライベートリート投資法人」の設立に関するお知らせ(SBIホールディングス, SBIプライベートリートアドバイザーズ)|ニュースリリース|SBIホールディングス 2023年5月8日
- ^ 総合型私募リート「SBIプライベートリート投資法人」の運用開始に関するお知らせ(SBIホールディングス, SBIプライベートリートアドバイザーズ)|ニュースリリース|SBIホールディングス 2023年8月18日
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- ^ 長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン 2035」の策定について 2022年11月10日
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- ^ 「株式会社りそな不動産投資顧問」の設立ならびに私募REITの運用開始について|ニュースリリース|りそな銀行
- ^ りそな銀行・岩永省一社長「不動産運用、関西に好機」 - 日本経済新聞
- ^ りそな銀 不動産投資顧問の子会社を4月設立 ファンド残高は5年後に2千億円見込む - 産経ニュース
- ^ 私募ファンドの組成及び匿名組合出資に関するお知らせ 1 2020年9月25日
- ^ 資産運用会社に対する行政処分に関するお知らせ
- ^ 「大和ハウスロジスティクスコアファンド」設立の検討を開始します|大和ハウス工業のリリース|会社情報 About Us|大和ハウスグループ 2020年8月28日