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「参謀」の版間の差分

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近代以降の軍事組織の合理化によって形成された組織システムであるが、古くは[[軍師]]、指南役がこの参謀に当たる職務を果たしていた。慣用句として企業経営者に助言する知恵袋のような存在を指すこともある。
近代以降の軍事組織の合理化によって形成された組織システムであるが、古くは[[軍師]]、指南役がこの参謀に当たる職務を果たしていた。慣用句として企業経営者に助言する知恵袋のような存在を指すこともある。


近代的な参謀制度は、[[プロイセン王国|プロイセン]]([[ドイツ]])の[[プロイセン参謀本部|参謀本部]]からはじまった。これはそれまで個々の指揮官の裁量に任されてきた指揮統制の機能を一般化・組織化することが理由であった。参謀としては、[[アルフレート・フォン・シュリーフェン|シュリーフェン]]、[[ヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケ|モルトケ]]などが有名である。この組織は有効性が認められて各国軍で採用されるようになった。
近代的な参謀制度は、[[プロイセン王国|プロイセン]]([[ドイツ]])の[[プロイセン参謀本部|参謀本部]]からはじまった。これはそれまで個々の指揮官の裁量に任されてきた指揮統制の機能を一般化・組織化することが理由であった。参謀としては、[[ゲルハルト・フォン・シャルンホルスト|シャルンホルスト]]、[[アルフレート・フォン・シュリーフェン|シュリーフェン]]、[[ヘルムート・カール・ベルンハルト・フォン・モルトケ|モルトケ]]などが有名である。この組織は有効性が認められて各国軍で採用されるようになった。


[[大日本帝国陸軍|旧日本陸軍]]では、独立した兵科(参謀科)まで専門化した。参謀部は[[旅団]]以上の上級部隊にしか設置されなかったが、これには[[陸軍大学校]]を卒業していない者は参謀となれなかった為[[連隊]]以下の部隊まで頭数が揃わなかった事による。指揮官との共同責任を執るドイツ陸軍の参謀制度を見習い、参謀に強大な権限を与え、<!--階級的には遥かに上である将軍 どちらも中将といった場合もあるのでコメントアウトします-->司令官の命令を無視して独断専行した例も多い。独断専行型の参謀としては、[[関東軍]]の[[石原莞爾]]([[柳条湖事件]]等)、[[辻政信]]([[ノモンハン事件]]等)などが挙げられる。また、一方では、[[沖縄戦]]の際の[[八原博通]]のように的確な作戦を立案しても司令官に無視された参謀や、その高い分析能力から[[米軍]]の侵攻パターンを的確に予測しマッカーサー参謀と評された[[堀栄三]]などもある。
[[大日本帝国陸軍|旧日本陸軍]]では、独立した兵科(参謀科)まで専門化した。参謀部は[[旅団]]以上の上級部隊にしか設置されなかったが、これには[[陸軍大学校]]を卒業していない者は参謀となれなかった為[[連隊]]以下の部隊まで頭数が揃わなかった事による。指揮官との共同責任を執るドイツ陸軍の参謀制度を見習い、参謀に強大な権限を与え、<!--階級的には遥かに上である将軍 どちらも中将といった場合もあるのでコメントアウトします-->司令官の命令を無視して独断専行した例も多い。独断専行型の参謀としては、[[関東軍]]の[[石原莞爾]]([[柳条湖事件]]等)、[[辻政信]]([[ノモンハン事件]]等)などが挙げられる。また、一方では、[[沖縄戦]]の際の[[八原博通]]のように的確な作戦を立案しても司令官に無視された参謀や、その高い分析能力から[[米軍]]の侵攻パターンを的確に予測しマッカーサー参謀と評された[[堀栄三]]などもある。

2009年11月30日 (月) 17:05時点における版

参謀(さんぼう)とは軍事組織において高級指揮官の幕僚として、作戦・用兵に関して計画・指導にあたる将校。

概要

軍隊において部隊の指揮系統は単一であるために、あらゆる決心は指揮官が単独で行われる。しかしながら高級指揮官は軍事作戦を指揮統制するために処理すべき情報や作業が膨大なものとなる。これを組織的に解決するために参謀組織が情報収集、情報処理などの面で高級指揮官を補佐することとなる。そのために指揮官に対する発言権は認められていたとしても、部隊の指揮権は持たない。

幕僚組織は全般的に高級指揮官、つまり師団長・連隊長・大隊長を補佐する。 米軍式幕僚組織としては幕僚はその専門領域から一般幕僚と特別幕僚に区分される。一般幕僚は情報、作戦兵站などに分類され、特別幕僚は総務、通信、工兵、補給、警務などに分類されている。旧日本軍に於いては、幕僚の中でも、特に作戦・用兵を担当する将校を「参謀」と呼称し、その他の幕僚と別扱いにした。 自衛隊においては、幕僚の職務内容が作戦・用兵(軍令)のみならず、防衛行政全般を含むようになった為、参謀という言葉は用いられず、陸上・海上・航空幕僚長のというように、幕僚が用いられるようになった。

歴史

近代以降の軍事組織の合理化によって形成された組織システムであるが、古くは軍師、指南役がこの参謀に当たる職務を果たしていた。慣用句として企業経営者に助言する知恵袋のような存在を指すこともある。

近代的な参謀制度は、プロイセンドイツ)の参謀本部からはじまった。これはそれまで個々の指揮官の裁量に任されてきた指揮統制の機能を一般化・組織化することが理由であった。参謀としては、シャルンホルストシュリーフェンモルトケなどが有名である。この組織は有効性が認められて各国軍で採用されるようになった。

旧日本陸軍では、独立した兵科(参謀科)まで専門化した。参謀部は旅団以上の上級部隊にしか設置されなかったが、これには陸軍大学校を卒業していない者は参謀となれなかった為連隊以下の部隊まで頭数が揃わなかった事による。指揮官との共同責任を執るドイツ陸軍の参謀制度を見習い、参謀に強大な権限を与え、司令官の命令を無視して独断専行した例も多い。独断専行型の参謀としては、関東軍石原莞爾柳条湖事件等)、辻政信ノモンハン事件等)などが挙げられる。また、一方では、沖縄戦の際の八原博通のように的確な作戦を立案しても司令官に無視された参謀や、その高い分析能力から米軍の侵攻パターンを的確に予測しマッカーサー参謀と評された堀栄三などもある。

一方、旧日本海軍では兵学校の教育もあり、司令官司令長官の補佐に徹した場合が多いが、勿論例外も存在する。海軍の参謀としては日本海海戦時の第1艦隊首席参謀秋山真之太平洋戦争開戦時の連合艦隊参謀長宇垣纏、真珠湾攻撃の発案者で山本五十六の懐刀と呼ばれた黒島亀人真珠湾攻撃ミッドウェー海戦の航空参謀源田実第一次ソロモン海戦捷号作戦等の奇抜な作戦立案から神懸かりと揶揄された神重徳などが一般にも知られている。

種類

参謀は国によって異なっているので一概には言えないが、しばしば以下のように区分されている。[1]参謀の組織については参謀本部を参照。

  • 幕僚長(参謀長)(Chief of staff) - 一般幕僚と特別幕僚を指揮し、幕僚部を統括する。
  • 幕僚(参謀)副長(Deputy chief) - 作戦担当(Plans and Operations)と管理担当(Administration)がおり、幕僚長(参謀長)を補佐する。
  • 一般幕僚(General staff) - それぞれの部門の長で構成され、幕僚会議で全ての分野に発言権を持ち、各分野を調整する。
    • 人事・行政幕僚(参謀)
    • 情報幕僚(参謀)
    • 作戦幕僚(参謀)
    • 後方幕僚(参謀)
    • 計画幕僚(参謀)
    • 通信幕僚(参謀)
  • 特別幕僚(Special staff) - 司令部の専門将校などから構成され、指揮官の指揮下で、一般幕僚の調整を受ける。参謀長の指揮統制で増員や減員を受けるため必ずしも一様ではない。
    • 工兵幕僚
    • 輸送幕僚
    • 監察幕僚
    • 広報幕僚
    • 会計幕僚
    • 法務幕僚
    • 憲兵幕僚
    • その他専門幕僚

補足

比喩表現として、組織において参謀的な立場の人物や、上司・主君・リーダーに対する補佐的な仕事をつとめ、忠実でいざというときに頼りになる、信頼のおける部下・家来のことを参謀参謀格参謀役などといい、「懐刀」などとほぼ同義で使われる。

脚注

  1. ^ J.D.ニコラス空軍大佐、G.B.ピケット陸軍大佐、W.O.スピアーズ海軍大佐著、野中郁次郎、谷光太郎訳『統合軍参謀マニュアル』(白桃書房、昭和62年)54項 - 76項

関連項目

参考文献

  • J.D.ニコラス空軍大佐、G.B.ピケット陸軍大佐、W.O.スピアーズ海軍大佐著、野中郁次郎、谷光太郎訳『統合軍参謀マニュアル』(白桃書房、昭和62年)ISBN 978-4561241409
  • 松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年)