「ピン (チェス)」の版間の差分
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2013年4月13日 (土) 14:28時点における版
チェスにおけるピン (pin) とは、敵の駒が動けないように「釘付け」にした状態を指す。チェスの最も基本的な戦術(タクティクス)の一つ。正式にはピン・アップ (pin up) というが[1][2]、普通は略して「ピン」と呼ぶ[1]。
ピンの基本
ピンに関する格言
- 「ピンは剣より強し。」 Fred Reinfeld (アメリカの著名なチェス作家)[3]
- 「ピンされた駒の防衛力は、単なる幻想に過ぎない。」 Aron Nimzowitsch (ロシアのグランドマスター)[4]
概説
- ピンを仕かける事ができる駒は、クイーン、ルーク、ビショップの3つである。これら直線で動ける駒で、敵のキングやクイーン等の価値の高い駒を間接的に攻撃する。
- 間接的に狙われた駒は、すぐに取られるわけではない。しかしその間にある守り駒は動きが制限された状態になる。
- この守り駒を「釘付け」にした状態を「ピン」と呼ぶ。攻撃を受けた側は、「ピンされた」と表現する。
図01 クイーンを使ったピン
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図02 ルークを使ったピン
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図03 ビショップを使ったピン
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チェスの駒の価値
ピンを理解するためには、あらかじめ敵・味方の駒の価値を知っておく必要がある。
キング | クイーン | ルーク | ビショップ | ナイト | ポーン | |
---|---|---|---|---|---|---|
駒の価値 | ∞(無限大) | 9 | 5 | 3 | 3 | 1 |
- この評価は絶対的なものでない。(キングだけは例外であるが、)局面によって駒の価値は変動する。
ピンを利用した攻撃
- あくまでピンは、駒を釘付けにした状態である。ピンできたからといって、すぐに局面が有利になるとは限らない。
- しかしピンを利用する事により、通常では予想もつかないような攻撃を繰り出す事ができる。
図04 ピンを利用した攻撃1-1
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図05 ピンを利用した攻撃1-2
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図05: 黒は白クイーンを取ることが絶対にできない。
図06 ピンを利用した攻撃2-1
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図07 ピンを利用した攻撃2-2
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図07: 黒が白ルークを取れば、自分のクイーンを取られてしまう。
ピンと串刺し(スキュア)の違い
大事な駒が利き筋の前面にあるのか背後にあるのかで、戦術の名称が異なる。
- ピン: 重要な駒が間接的に攻撃されている。攻撃側の目的は、敵の守り駒を動けなくすること。
- 串刺し(スキュア): 重要な駒が直接攻撃にさらされている。攻撃側の目的は、背後の駒を取ること。
図08 ピン
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図09 串刺し(スキュア)
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図10 ピン
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図11 串刺し(スキュア)
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ピンの解消方法(アンピン)
- ピンにはさまざまな形があり、その対処もさまざまである。中には、どう対処しても駒損になってしまう局面もある。
- しかし正しく対処すれば、ピンが解消できる局面も少なくない。
図12 ピンの解消方法
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初手から、
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Nc3 d6 4.Bb5 (図12)
黒ナイトが白ビショップにピンされていて、現在動く事ができない。すぐに不利になるわけではないが、ピンの状態は早めに解消した方が安心できる。
黒の対処例
- その(1) 4...Bd7
- その(2) 4...a6 5.Bxc6 bxc6
- その(3) 4...a6 5.Ba4 b5
ピンに関する用語
絶対ピン
- 敵のキングを的としてピンした場合、その威力は絶大となる。これは「絶対ピン」と呼ばれている。
- ピンを外さない限り守り駒は絶対に動く事ができない。
図13 絶対ピンの例(1)
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図14 絶対ピンの例(2)
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図14: 黒にはb5のナイトを守る方法がない。どんな手を指しても、次にナイトを取られてしまう。
相対ピン
- キング以外の駒を的としてピンする事は、「相対ピン」と呼ばれている。
- ピンされてはいるが、絶対に動けないという事ではない。しかし動けば、その背後にある価値の高い駒を取られてしまう。
- 絶対ピンよりも相対ピンの方が、実戦で目にする機会は多い。
図15 相対ピンの例(1)
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図16 相対ピンの例(2)
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図16: 黒は白ナイトを取る事ができない。白ナイトを取ると、自分のビショップを失う事になる。
- 相対ピンの場合、ピンされた駒が絶対に動けないという状況ではない。次の例は有名なゲームで「レガールのメイト」と呼ばれている。
図17 相対ピンの失敗例(1)
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図18 相対ピンの失敗例(2)
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図17: ここで黒がナイトをピンしたのは大失敗だった。
図18:黒は白クイーンを得た代わりに、チェックメイトにされてしまった。
クロス・ピン
- 二つのピンが重なって双方向(十字型、X型)の攻撃になっているものは、「クロス・ピン」(cross-pin)と呼ばれている。「ダブル・ピン」(double pin)と表記される場合もある。
図19 クロス・ピンの例(1)
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図20 クロス・ピンの例(2)
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ピンの応用
- チェスの戦法や戦局(序盤・中盤・終盤)を問わず、ピンはさまざまな場面で登場する。
- ピンとピンとを組み合わせたり、串刺しやフォークなどの他の戦術と組み合わせて行う攻撃は、実戦で非常に効果的となる。
図21 応用1-1
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図22 応用1-2
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図23 応用2-1
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図24 応用2-2
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参考文献
- 『Winning Chess Tactics』 Seirawan Silman Microsoft Press ISBN 1-55615-474-7
- 『挑戦するチェス』 権田源太郎 著 中央公論事業出版 ISBN 4-89514-159-4
- 『はじめてのチェス』 渡井美代子 著 成美堂出版 ISBN 4-415-02549-8