「イタイイタイ病」の版間の差分
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'''イタイイタイ病'''(イタイイタイびょう)は[[四大公害病]]のひとつ。[[神通川]]下流域である[[富山県]][[婦中町]](現・[[富山市]])において、主に大正時代から昭和40年代にかけて多発した。 |
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このような症状を持つ病は世界にもほとんど例がなく、当初原因は全く不明であった。風土病と呼ばれ患者を含む婦中町の町民が差別されることもあったとされている。 |
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== 原因 == |
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裁判の過程で、神通川上流の高原川に鉱業廃液として排出された、三井金属鉱業神岡事業所(以下「神岡鉱山」)のカドミウム(cd)が原因と断定された。 |
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神岡鉱山から産出される亜鉛は不純物としてカドミウムを伴っており、亜鉛精錬過程でカドミウムは取り除かれる。このカドミウムが亜鉛の廃鉱液と共に河川に流出したことが原因とされた。 |
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神岡鉱山は鉱山開業から長きに渡り、廃鉱液をそのまま排出していた。しかし大正期に下流域で亜鉛被害が生じ、鉱山は沈殿池を設置した。その結果亜鉛による被害は減少したものの、大雨などによる沈殿池からの廃鉱排出、またカドミウムの処理自体が不十分だったことから、カドミウムはその後も河川に流出され続けた。 |
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水道の発達していなかった婦中町(当時)では神通川の水を農業用水として利用し稲作などを行っていた。川に流出することでカドミウムの濃度は薄まったものの、その水を長期に渡り利用したために水田、及び生産された米にカドミウムが蓄積。その米を摂取した農民にイタイイタイ病の症状が発生した。カドミウムは自然界にも一定の割合で存在するが、被害者のカドミウム濃度は数十倍から数千倍に達していた。 |
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体内に吸収されたカドミウムは骨の主成分であるカルシウムなどを対外に排出させ、結果として骨粗鬆症に類似した症状が生じる。重症者においては骨の強度が極度に弱くなり、身体を動かしたり、くしゃみ、医師が脈を取るために腕を持ち上げるだけで骨折。その段階では身体を動かすことが出来ず寝たきりとなる。 |
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骨の強度を強くする効果のあるビタミンDの大量投与によりある程度症状は和らぐとされるが、金銭的余裕のある者は少なく、結果として重症患者の多くが死亡した。 |
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== 被害 == |
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イタイイタイ病による死者は130人にのぼり、数百人以上の患者が発生したとされている。現在も数人の被害者が生存している。 |
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== 法制度 == |
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1970年に成立した農用地の土壌の汚染防止等に関する法律で、カドミウム等により土壌汚染が発生した地域を「農用地土壌汚染対策地域」として設定。同地域において汚染防止、汚染源除去などの対策を取るよう定められた。 |
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[[category:公害病|いたいいたいひよう]] |
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2006年9月1日 (金) 07:44時点における版
イタイイタイ病(イタイイタイびょう)は四大公害病のひとつ。神通川下流域である富山県婦中町(現・富山市)において、主に大正時代から昭和40年代にかけて多発した。
症状
骨が脆くなり、ほんの少しの身体の動きでも骨折し、患者が「痛い、痛い」と泣き叫んだ事から、地元の開業医である萩野昇により「イタイイタイ病」と名づけられた。被害者は主に中高年の女性であり、男性の被害者も見られた。ほぼ全員が稲作などの農作業に長期に渡って従事していた農民であった。 このような症状を持つ病は世界にもほとんど例がなく、当初原因は全く不明であった。風土病と呼ばれ患者を含む婦中町の町民が差別されることもあったとされている。
原因
裁判の過程で、神通川上流の高原川に鉱業廃液として排出された、三井金属鉱業神岡事業所(以下「神岡鉱山」)のカドミウム(cd)が原因と断定された。
神岡鉱山から産出される亜鉛は不純物としてカドミウムを伴っており、亜鉛精錬過程でカドミウムは取り除かれる。このカドミウムが亜鉛の廃鉱液と共に河川に流出したことが原因とされた。
神岡鉱山は鉱山開業から長きに渡り、廃鉱液をそのまま排出していた。しかし大正期に下流域で亜鉛被害が生じ、鉱山は沈殿池を設置した。その結果亜鉛による被害は減少したものの、大雨などによる沈殿池からの廃鉱排出、またカドミウムの処理自体が不十分だったことから、カドミウムはその後も河川に流出され続けた。
水道の発達していなかった婦中町(当時)では神通川の水を農業用水として利用し稲作などを行っていた。川に流出することでカドミウムの濃度は薄まったものの、その水を長期に渡り利用したために水田、及び生産された米にカドミウムが蓄積。その米を摂取した農民にイタイイタイ病の症状が発生した。カドミウムは自然界にも一定の割合で存在するが、被害者のカドミウム濃度は数十倍から数千倍に達していた。
体内に吸収されたカドミウムは骨の主成分であるカルシウムなどを対外に排出させ、結果として骨粗鬆症に類似した症状が生じる。重症者においては骨の強度が極度に弱くなり、身体を動かしたり、くしゃみ、医師が脈を取るために腕を持ち上げるだけで骨折。その段階では身体を動かすことが出来ず寝たきりとなる。 骨の強度を強くする効果のあるビタミンDの大量投与によりある程度症状は和らぐとされるが、金銭的余裕のある者は少なく、結果として重症患者の多くが死亡した。
被害
イタイイタイ病による死者は130人にのぼり、数百人以上の患者が発生したとされている。現在も数人の被害者が生存している。
法制度
1970年に成立した農用地の土壌の汚染防止等に関する法律で、カドミウム等により土壌汚染が発生した地域を「農用地土壌汚染対策地域」として設定。同地域において汚染防止、汚染源除去などの対策を取るよう定められた。