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2022年1月18日 (火) 05:14時点における版
アニメは、アニメーション(英語: animation)の日本語における略語である[1]。アニメーションを用いて構成された映像作品全般を指す。当記事ではとくにことわりがなければ主に日本の一般向け商業アニメーション(テレビアニメ、劇場アニメ、OVAなど)について記述している。
概要
アニメはアニメーションの略語であり、コマ撮りによる錯覚を利用した映像技法・映像表現全般を指し、実写作品の特殊効果や抽象映像などの実験的映像も含まれる。通俗的にはアニメと省略され、一般に商業作品として普及しているテレビアニメ、劇場アニメ、OVAなどを連想する人も多い。これらの特徴は、基本は商業作品であり、多くは絵で描かれたキャラクター作品であり、ある程度のストーリー作品である。更には、これら商業作品の強い影響を受けた自主制作作品も含まれる。また制作技法では分業のためにセルアニメが主流であったが、一部では人形アニメ等も使用され、近年コンピュータ・グラフィックによるアニメーション(CGアニメ)も普及している。
単に「アニメ」という場合は、セルアニメーション(セルアニメ)のことを指していることが多い。当記事では主に日本で製作された一般向け商業用セルアニメーションなど通俗的・一般的な意味での「アニメ」について記述している(デジタル化と3DCGについては記事内で後述)。
「文化芸術基本法」ではメディア芸術、関連法の「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」によるとコンテンツの一つと定義されており、いずれの法律においても「アニメ」と略されてはおらず、「アニメーション」と正式表記されている。別定義として、多角的芸術分類観点において、美術(映像を含まない)、映像、音楽、文学、芸能の総合芸術とされるときもある。
主な作品は、『アニメ作品一覧』を参照。
用語の変遷
日本では「アニメーション」の用語は時代にもよって変遷もしており、以下の訳語も使用された。
年代 | 訳語 | 内容 |
---|---|---|
1930年代 | 線画 | 1930年代の映画のクレジットは「線画」がほとんどであった。「線画」には「線」による「画」という意味があり、実写映画に使われる地図、グラフや図表などを意味することもあり、スタッフはアニメーションだけでなく、地図、グラフや表、字幕なども描くことがあった[2]。 |
1940年代以降 - 現在 | 動画 | 「動画」は政岡憲三が日本語訳として提唱。1941年に松竹動画研究所設立、1943年『くもとちゅうりっぷ』でクレジットされた。従来「線画」を使用していた朝日映画社も、1944年『フクちゃんの潜水艦』で「動画」のクレジットを入れた[3]。他にも日本動画(東映動画)、シンエイ動画、日本動画協会など、更には商業用アニメの製作工程の名称(原画と動画)を含めて業界内では「動画」が普及し、多くの辞書や事典でアニメーションの日本語訳として記載されている。 |
1950年代 - 1970年代頃 | 漫画映画(漫画) | アニメーション(アニメ)という語が普及する以前は、戦前戦後を通じて特に児童向けのアニメーション映画は「漫画映画」あるいは単に「漫画」と呼ばれていた。この名称を含む作品名・シリーズ名には『東映まんがまつり』、『カルピスまんが劇場』、『まんが日本昔ばなし』などがある。 |
1960年代 - 1970年代頃 | テレビまんが | 1964年の『鉄腕アトム』テレビ放映開始もあり、特に子供向け作品は広く(特にはテレビ以外も含めて)「テレビまんが」と呼ばれた。 |
1960年代以降 - 現在 | アニメーション(アニメ) | 「小型映画」(映像制作者向けの専門雑誌)で1965年6月号までは主に英語をそのまま片仮名にしたアニメーションという語を使用しており、アニメという略語を使用する場合はアニメーションとセットで用いられていた。7月号でアニメという語がアニメーションの略であるという断りなしで初めて使用された。絵本シリーズ『テレビ名作アニメ劇場』ポプラ社はタイトル名にアニメを使用した最初の書籍とみられる。1975年日本アニメーション設立、1978年のアニメージュ創刊、1985年の広島国際アニメーションフェスティバル開始などもあり、専門用語であったアニメーション(アニメ)が一般にも普及していった。 |
1968年 | アニメート | 絵本シリーズ『名作アニメート絵話』、偕成社。アニメーションを略したものではなく、animation の動詞形の animate を日本語読みにしたもの。一般向けにアニメを含む語をタイトルに用いた最初期の例である。 |
1969年 | アニメラマ | 虫プロによるアニメーション・ドラマ・シネラマ等による造語。映画『千夜一夜物語』(1969年公開)『クレオパトラ』(1970年公開)で使用された。『哀しみのベラドンナ』(1973年公開)では「アニメロマネスク」が使わたが、いずれも広くは普及しなかった。 |
製作会社と制作会社
作品制作数の増加に伴い分業化が進み、プリプロダクションの企画・製作会社と、プロダクションの作画・動画スタジオ、美術スタジオなどと、ポストプロダクションの撮影会社、音源制作など制作工程別に作業を請け負う専門スタジオと分業化されている。
また、グロス請けと呼ばれる、1話単位で制作作業を一括受注し制作業務全般を行う制作会社もある。
制作工程
テレビアニメ#制作過程も参照。 大きく分けると3つの工程に別れる。なお、制作資金調達に関しては多種多様な方法があるので本項では取り上げない。
- プリプロダクション
- 企画書をもとに、主要スタッフ編成と制作のフローを確定し、脚本・設定・絵コンテなど制作に必要な各種設定など行う作業。
- プロダクション
- 原画、動画、仕上げなどのアニメーションの作成作業。
- ポストプロダクション
- アフレコ・BGM・効果音を加える音作業やVTR編集などの作業。
さらに詳細な工程を経て制作される。制作会社、作品に投入される各部門のスタッフ数、技術の進歩などにより役職名や工程の違いもあるが、企画から完成までの基本的な工程は以下の通りである[注 1]。
複数にわたるシリーズ作品の場合、諸事情により主要スタッフや担当アニメ制作会社などが途中で変更されることも珍しくない。
- 企画
- 作品の企画意図や全体像にセールスポイントなどを記述した企画書などを作成、製作側(複数の社局が製作委員会を結成することも多い)がその採否を決定する。
- オリジナル企画と、漫画・小説など既存の著作物を原作とした企画とに二分される。後者の場合は著作権者の承諾を得るのに難航する事も珍しくない。
- スタッフ編成とワークフローの確定
- 脚本(シナリオ・本読み)
- 設定
- 脚本・原作・企画書を元にして、作品の主要な登場人物キャラクターデザインや舞台背景を設定する美術設定(美術監督)・メカデザイン(メカニカル設定)とクレジットされることが多い。
- 絵コンテ
- 原画(原図・作画・レイアウトシステム)
- 原画マン(原画家、原画担当者、レイアウトマン)と呼ばれる職制が担当する。絵コンテを元に完成画面を想定し背景の構図とキャラクターのレイアウト(画面構成)を作成する。原画作業もペンタブレットなどの進化で、デジタル制作に移行している。
- 演出(プロデューサー)は、レイアウトが絵コンテの内容、演出意図との差異を確認、修正指示を入れ作画監督に渡す。
- 作画監督は動きやキャラクターデザインを修正し、画面の統一を図る、作監修正と呼ばれる作業を行う。
- 動画
- 動画マンと呼ばれる職制が担当する。ラフに描かれた原画の清書作業を行い、原画の間の絵を描きおこし全ての動きを完成させる作業。中割りとも呼ばれる。
- 動画検査と呼ばれる職制が簡易撮影装置で動画をチェックし、修正を指示する。
- 原画と動画についてはアニメーターも参照。
- 仕上げ(色トレス、彩色、デジタル彩色):色彩設定(色彩設計)の指示・動画に指定されている色指定の通りに着色する作業。
- 背景
- 美術監督は、背景設定となる美術ボードを制作する。原画で指定された背景設定に合わせて、背景スタッフが背景を作成する作業。デジタルアニメも背景は絵の具で仕上げが多かったが、デジタル制作の背景も増えている。
- 撮影:撮影監督が作業を監督し、仕上げと背景を組み合わせる工程。透過光、マルチプレーン・カメラ、多重露光などのエフェクト処理を加える。
- セルアニメ : セル画と背景を撮影台にセットし1コマずつフィルム撮影する。
- デジタルアニメ : 仕上げと背景を合成して映像データにする。アンチエイリアス処理がかけられる。
- 楽曲作成
- 様々な場面に合わせた楽曲BGMを作成する作業。
- 音作業:音響監督は、声優のキャスティングと演技指導、ダビングなどの音響演出を担当する。監督や演出(プロデューサー)などが参加する場合が多い。
- フィルムまたはVTR編集
- オープニング、エンディング、CM前後のアイキャッチを組み合わせて完成させる作業。オブジェクトの最終調整、色彩調整も行われる。
ただし諸事情により企画段階[4] もしくは制作途中で中止になることもあり[5]、中にはアフレコも終えた段階でお蔵入りになったケースもある[6]。稀に一度は中止にされた作品が時を経て再起動するケースもある[7]。
流通形態
- テレビアニメ
- 地上波放送局、BS局・CSチャンネルなどでのテレビ放送用に制作される作品で、さらに特殊ジャンル分けとして深夜番組の深夜アニメや、全国独立放送協議会加盟局主体で放送のUHFアニメ(アナログテレビ放送当時、特に日本の三大都市圏でのUHF局は独立局が主体だったことから)などの分類もされる。
- ネット配信は基本的に配信開始から1週間以内は無料配信、或いは特定配信サイト独占契約などによる有料配信の形態が主流となっている。
- 海外向けではCrunchyrollなどが著作権者の承諾を得て、台本を翻訳、字幕を付けて世界中に配信している。これらのサービスは基本的には日本国内からのアクセスは不可能となっている。
- パッケージ販売の頭打ちから、国内外問わずネット配信による事業収益に活路を見出す動きが活発となり、テレビアニメ配信を重視するネット配信業者も相次いで誕生している。
- 作品に関しては、『日本のテレビアニメ作品一覧』を参照。
- アニメーション映画
- 映画館などでの上映用に制作される作品。劇場用アニメーション映画、アニメ映画、劇場版アニメなどと呼ばれる。
- 作品に関しては、『日本のアニメ映画作品一覧』を参照。
- 映画館などでの上映用に制作される作品。劇場用アニメーション映画、アニメ映画、劇場版アニメなどと呼ばれる。
- OVA(オリジナルビデオアニメーション)
- Webアニメ
- インターネット配信用に制作される作品。国外では「Original Net Animation」(ONA)と呼ばれる。近年ではネット配信会社の伸長とともに増え、テレビ局のネット参入もみられる。
- 作品に関しては、『Webアニメ#Webアニメ作品一覧』を参照。
- インターネット配信用に制作される作品。国外では「Original Net Animation」(ONA)と呼ばれる。近年ではネット配信会社の伸長とともに増え、テレビ局のネット参入もみられる。
- CM
- 近年では企業が宣伝のためにアニメーションを活用する事例が増えている。
制作業界と環境
アニメ産業と呼べるほどの規模はなく、映像制作の一分野に留まり、業界の構造としては建設業の下請け制度に類似する構造を持っているとされ、「大手制作プロダクション(元請け)」→「中堅制作プロ(子請け)」→「零細制作プロ(孫請け)」と段階ごとに、制作費の「中抜き(ピンハネ)」が存在するといわれている[8][9]。
表現技法の発展と向上は、個人の感性と技術の熟練度に依存し、技量差が品質に反映される労働集約的作業に支えられているが、制作環境はアニメーターの場合、収入は新人で月額で約2 - 3万円。中堅で約7万5000円 - 10万円程度といわれ、約25%は年収100万円以下である(日本芸能実演家団体協議会、2008年調査)などの賃金や雇用環境、労働条件などの問題で、国内での人材の確保もままならない状態も恒常的に続いている。
その為、人件費の安い中国や韓国などの制作会社に外注され、日本国内でアニメ制作の根底を支えるセルの作画など制作現場と、それを継続させる人材育成の両面で空洞化が危惧されている。また、海外へ外注することにより日本の技術が流出する恐れもある。
製作工程の省力化とデジタル化
アニメーション製作のデジタル化に至るまでには、フィルム・アニメーションから、ビデオ・アニメーション、ビデオ変換装置など、さまざまなシステム開発が進められてきた。
1986年に池田宏(東映動画技術研究室長)は、「映像というメディアはこうした科学技術の基盤の上に構築されているものであり、このことは当然、これらの科学技術の発展に応じて新しい映像メディアの登場もあり得るのである。したがって映像関係者はこれら科学技術の発展にはたえず対応していかなければならないし、それを怠れば映像技術者として脱落さえ意味することになる」と語っている。[10]
1970−1980年代後半、ビデオの普及やコンピュータの導入によってアニメーションの製作過程は大きく変わり始め、デジタル化に向かって動き始めた。
省力化
1984年に東京中央プロダクション・高橋克雄の撮影現場から、VTRでコマ撮りができるシステムVTRアニメーションシステムが登場した。
現像するまで撮影結果の分からないフィルム・アニメーションから、現場で即時に撮影結果が分かるVTRアニメーション撮影は、撮影現場の撮影期間短縮による製作コストの軽減、画質の保持、映像メディアのコンパクト化とリテイクによる経済的損失からの解放となった。
アニメーション作品以外にも広く活用され、映画やカラオケの字幕(スーパーインポーズ (映像編集))やデパートやメーカーなどの映像カタログ制作にも使用されるようになった。また、画質を落とさずに大量複製が可能になったことからOVAが普及する契機ともなった。
1985年にフィルムからビデオへの変換装置、テレシネシステムの登場で、多くのフィルムアニメーション作品がビデオ変換されテレビで放映されたこともデジタル化への指針となった。
デジタル化と3DCG
1990年代、コンピューターの発達やソフトの開発が進み、アニメーション制作で使用される幅が広くなり活用するようになった。
1990年代後半から、セル画からデジタル彩色に移行し、1999年頃に全面的に移行し最後までセル画で制作されていた『サザエさん』の2013年9月29日放送分を最後に、全ての商業作品はデジタル方式に移行した。仕上げ工程に導入された、デジタルペイントは訂正が容易で塗料の乾燥を待つ必要がなく、傷・ホコリなどのセル画の管理の手間も省け、また画像データとしてネットワークに載せることが可能となり、日本国外などの遠隔地とのやり取りが可能となり、大幅な省力化・コストダウンが進んだ。
また、映像表現においては塗料による使用色数の制限がなくなり、精密なグラデーション表現が可能となった。撮影時にセルの重ね合わせによる明るさの減少がなく、カメラワークの自由度が広がる他、エアブラシによる特殊効果や透過光などが簡単に施せるなどの利点がある。ただ、ビデオ出力されるため、フィルムとビデオでは映像の質感が異なり、フィルムは柔らかい質感、ビデオはクリアな映像が特徴があり、クリアで明るすぎる発色に違和感もあったが改善されてセルアニメを凌ぐ美しさを持つ作品もみられる。
国外ではディズニー映画を多く手掛けるピクサー・アニメーション・スタジオなどでフル3DCGアニメーションが制作されているが、日本国内では自動車などの機械類や魔法のエフェクトなどを描写する補完的な利用からスタートした。完成した3DCGは作画崩壊することなく自由なアングルで描写でき、完成後もソフトウェアで変形・変色が可能であるなど品質安定と省力化に貢献した。一方で単にCGを配置しただけでは手描きとの質感の差から違和感があるため、色調などを調整し違和感を軽減する手法やフルCG作品に手描きの表現手法を再現するなど、双方の技術を融合する試みが行われている。
2010年代に入るとセルアニメの質感をCGで再現する『セルルック』と呼ばれる技法が発達し、キャラクターなどにもCGを使用する作品が増加した。一方で、プロレベルの3DCGソフトウェアはライセンス料が高額でコンピュータも高性能モデルを必要することに加え、複雑な操作を習得するため専門学校でトレーニングを受けた人材が必要になるなど、手描きに比べ作画コストが上昇するためフルCG作品は少ない。
実際の業務を行うのはアニメ制作会社の一部門やCG関連業務のみを受託する小規模なスタジオが多いが、ポリゴン・ピクチュアズのような3DCGの専門会社がアニメ制作に参入する例もある。
anime
ラテン文字のanimationの m の次は a であり e が含まれていないので、animeと略すことは出来ない。アニメーションをアニメと略せる言語は日本語に限られるため、日本国外の英語圏などで「anime」という場合は日本のアニメや日本風の表現様式のアニメに対して用いられる[11]。日本国内では、製作国や作風に関わりなくanimeが使用される[12][13][注 2]。
英語ではanimeと綴った場合の発音は「エイニム」あるいは「アニーム」のようになるが、日本語と同じ「アニメ」と発音している。animation(英)→アニメーション(日)→アニメ(日)→anime(英)として逆輸入されたものである。日本での「アニメ」読みが名詞として辞書に掲載される例もある。
フランス語には animer(動く)の過去分詞形の animé(アニメ、動いた、動かれた)があり[14]、同用途で英語でも animé と綴られるため、フランス語由来説も存在する。
- アメリカ合衆国での普及
- 1972年、ビデオデッキが発売されると、1976年2月にはファンサブ(無断で英語字幕をつけた海賊版。著作権侵害であり、アニメDVDの販売に悪影響も出ている)活動が始まり、1977年には専門のサークルが活動を開始した。既に日本製ロボットアニメーションを指す語としてanimeという語が用いられていたが、愛好家たちの隠語か専門用語のようなもので、一般には広まらなかった[15]。1991年、The Society for the Promotion of Japanese Animation(略称SPJA)が発足し、翌1992年から毎年「Anime Expo」が開催されると、OTAKU(おたく)が増加するなど[16]、animeは急速に普及していった[17]。ただし、彼らは対価を払ってから視聴する者よりも無料なファンサブなどの海賊版でアニメを視聴している者の方が多い。
- フランスでの普及
- 日本製アニメーションは
anime ()と呼ばれる。英語から輸出される形で移入される。アニメーション(動画)はdessin animé ()(動く画) と呼ばれる。
ジャパニメーション(Japanimation)
- 北米
主に1970-1980年代に使用された日本製アニメーションを指す語。日本で用いられるようになった1990年代には、現地では既にほぼ死語と化しており、日本製アニメーションを指す言葉は「Anime(アニメ)」に取って代わられている。
音節的に Japan-animation から Japanimation の略語であるが、Jap(日本人の蔑称)の animation とも読めるため、日本人と文化に対する差別・偏見と、アニメーションへの偏見から、日本製アニメーションを指して「くだらないもの」あるいは「子供の教育上良くないもの」の意味を含めていた可能性もある。当時、北米に輸出された作品は、文化・習慣・表現規制の違いから、日本的・性的・暴力的な表現は削除されていた。また、アニメはまだアメリカではcartoonと呼ばれていた。
長期に渡り連続する複数の作品を1作品として編集し、制作者の意向と掛け離れた独自改変された作品を示すこともある[18]。2000年代以降、一部のアニメーション関連のオンラインショップ[19] で使用される場合もある。
- 日本
前述の北米での発祥を受け「海外(日本の外)で視聴される、人気を呼び且つ評判になっている日本製のアニメーション」という意味で1990年代に『AKIRA』『攻殻機動隊』の原作漫画出版元である講談社をはじめメディア上で度々使用されていたが、2000年代以降は減っているものの、未だに使用されているケースも見られる。2011年には同名のアメリカの人気テレビドラマをアニメ化したOVAシリーズ『スーパーナチュラル・ジ・アニメーション』において、海外ドラマを日本のアニメ制作会社マッドハウスがアニメ化し世界で発売されたということでジャパニメーションと銘打たれていた(テレビ放送時の宣伝でも使用された)[20][21]。「世界で通用する日本のアニメ」など、世界を意識した視点で作品を紹介する際に使用されている[22]。
業界団体
- 日本動画協会(略称:AJA)
日本におけるアニメーション業界の意思統一、関連団体との連携、アニメーション産業の持続的発展を目的とした一般社団法人。
声優のマネージメントを行うプロダクションなど事業者が加盟する[23]。
声優事業社で組織[24]。
- 日本アニメーター・演出協会(略称:JAniCA)
2009年12月3日に一般社団法人化した、アニメーター及び演出家の地位向上と技術継承を目的とした一般社団法人。
- 日本音声製作者連盟(略称:JAPA)
2003年4月1日に設立され、「内外関連文化団体との提携及び交流。映像文化発展のための事業」。「業界の社会的地位の向上のための広報活動および出版事業」。「音声製作物に関連する権利の確立及び擁護」。「再放送使用料」の徴収、分配業務を主な事業内容とした一般社団法人[25]。
テレビ局や制作会社に対して立場が弱い俳優が、一方的で不利な出演契約を解消を目的として結成された。声優の多くも加盟している[26]。
国による振興・保護政策
メディア芸術の創造と発展を図ることを目的に、文化庁とCG-ARTS協会が主催の祭典。1997年以降、毎年実施されている[27]。
2001年12月7日に施行され、映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術をメディア芸術と定義し、振興を図るための施策を行うようになった。
- コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(コンテンツ法)
2004年5月、アニメーションや漫画など、コンテンツ産業の保護・育成に官民一体で取り組むための法律が成立した。
- クールジャパン(Cool Japan)
日本政府が行っている対外文化宣伝・輸出政策で使用されている用語で、クールジャパン戦略担当大臣や海外需要開拓支援機構(通称:クールジャパン機構)が設立されており、アニメ・漫画・ゲーム・J-POP・アイドルなどのポップカルチャー・サブカルチャーも含まれている。
- 若手アニメーター育成プロジェクト(略称:PROJECT A)
文化庁の若手アニメーターなど人材育成事業の委託をうけ、日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が2010年(平成22年)より実施しているアニメーターの人材育成事業。
博物館・美術館
漫画やアニメ作品のセル画やフィルム、原画を展示する博物館・美術館。ミュージアムショップを設置したりアニメの様々なイベントや国際アニメーション映画協会公認の映画祭、インディーズのアニメーション映画祭などを開催している所もある。『ドラえもん』の作者が生活していた川崎市の藤子・F・不二雄ミュージアムや、『名探偵コナン』の作者ゆかりの地鳥取県東伯郡北栄町の青山剛昌ふるさと館など著名なアニメ作品やマンガの原作者の生誕地などに、地域おこしの観光拠点としても整備されることも多い。
ほとんどの博物館は特定の作家、クリエイターに特化した施設になっているが、杉並アニメーションミュージアムや秋葉原UDX内の東京アニメセンターでは制作会社や出版社などの垣根を超えた様々な企画展が行われ、アニメーションに使われる原画などの展示やグッズが販売されている。
見本市・映画祭
東京都と日本動画協会などのアニメーション事業者団体で構成される「東京国際アニメフェア実行委員会」が主催の国内アニメ業界最大の見本市であった。2002年から2013年まで3月末頃に東京ビッグサイトで開催されていた展示会。アニメ作品や関係者を表彰する「東京アニメアワード」の表彰式が行われた。
2010年に東京都青少年の健全な育成に関する条例に反対する形で大手出版社(角川書店、秋田書店、講談社、集英社、小学館、新潮社、双葉社、少年画報社、白泉社、リイド社)10社が2011年の東京国際アニメフェアについて参加協力を拒否する声明を発表した。その後角川書店とアニプレックス、アニメイト、キングレコード、ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン、フロンティアワークス、マーベラスエンターテイメント、メディアファクトリーの計8社が東京国際アニメフェアと同日に開催すると発表した。「アニメ コンテンツ エキスポ実行委員会」が主催し、千葉県千葉市美浜区の幕張メッセで開催する、アニメーションに関する日本の展示会であった。
2014年から東京国際アニメフェアとアニメコンテンツエキスポを統合する形で実現した展示会。東京都が不参加となり、KADOKAWA、アニプレックス、日本動画協会など19社が参加する。場所を東京ビッグサイトに戻し、東館全てを使うなど分裂前の東京国際アニメフェアより大型な見本市となる。
1960年にカンヌ国際映画祭からアニメーション部門を独立した、国際アニメーション映画協会公認の国際アニメ映画祭。フレデリック・バックの『木を植えた男』などがグランプリを受賞している。
併設で世界最大規模のアニメーション見本市、MIFA(Marché international du film d'animation)が行われている。映画祭開催期間中の3日間で、世界約60か国のアニメ関係者が参加している。
- その他
広島国際アニメーションフェスティバル(2020年を最後に終了)、オタワ国際アニメーションフェスティバル、ザグレブ国際アニメーション映画祭は、上記アヌシーを含めて世界4大アニメーションフェスティバルと称されていた。
表現の自主規制
アニメ映画では「映画倫理委員会」、テレビアニメでは、放送事業者が自主的に放送基準・番組基準(放送コード)を定めて運用することが電波法、放送法で規定され、民放連加盟会員各社による任意団体「放送倫理・番組向上機構」(BPO)による自主規制がある。
OVAやWebアニメには、自主規制に関する法的規定や任意団体などは存在しないが、放送権販売の為にテレビアニメ・映画と同等程度の自主規制が行われている。アダルトビデオに類するアダルトアニメ作品は「日本ビデオ倫理協会」の審査を受けている。
テレビアニメのパッケージ化販売には自主規制が無い為、お色気や流血など刺激の強い表現をテレビ放送で規制したものを本来の状態に戻したり、より過激な映像の追加や差し替えなどが行われているものもある。
歴史
- 1960・1970年代
- 1963年1月1日、手塚治虫による日本初の商業用連続テレビアニメ(週一アニメ)番組『鉄腕アトム』の放送開始。放送を見た当時のアニメーション映画の制作者などからは「TV紙芝居」などと罵られたとも云われる程、質の低いアニメーション作品でもあったが、視聴率は30%を超える人気を博し世界中で放映され、他の国のアニメーションと異なる方向に発展を遂げることになる。
- 1960・1970年代の国産アニメの少なかった頃には『トムとジェリー』、『ポパイ』など輸入作品も多数放送されていたが、国産アニメも増加し、1968年にカラー放送も始まり、1969年に『サザエさん』の放送が開始、テレビまんがとして認知されるようになった。
- 1970年代から1980年代
- 『宇宙戦艦ヤマト』・『銀河鉄道999』の松本零士、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季、『風の谷のナウシカ』の宮崎駿、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』の押井守、『トップをねらえ!』の庵野秀明など、後に日本アニメ界を牽引する著名なアニメ監督が多数登場した。
- この頃からテレビ局への納品や交通の便がいい練馬区や杉並区などの西武新宿線沿線に制作会社が集結するようになり、日本一のアニメ企業集積地となっている。
- 1980年代から1990年代にかけてフランスの子供番組で日本のテレビアニメが連続して放映され人気を博し、多くのアニメファンを育てた(この世代は、番組のパーソナリティーの名前を冠して「ドロテ世代」と呼ばれている)[28][29]。この人気を受けて、フランス以外でも日本のテレビアニメの放送が増えていき、日本アニメの国際的受容のきっかけとなった。
- 1990年
- アニメ番組の年間平均視聴率が9.7%と、1978年以後で史上最高(ビデオリサーチ調べ・関東地区)となった。
- 1990年代後半から2000年代
- 少子化による朝夕やゴールデンタイムのアニメ放送枠の視聴率低下により、ニュースや情報番組、バラエティ番組などに改変され、削減された放送枠を補う要に、以前から青年層向けに単発で放送されていた深夜枠へ移行した。
- 時間帯から従来のターゲットである少年、少女といった児童向けから、中高生や成人アニメファン向けにターゲットを絞った低予算の深夜アニメが爆発的に増加し、2000年には7本だったものが、2004年には60本制作されるなど粗製濫造された。
- もともと視聴者が少なく、低視聴率でスポンサーが付きにくい時間帯という事情もあるが、低予算の作品を乱発したことにより品質の低下(作画崩壊)などを引き起こし、視聴者離れを招き打ち切りなどが多発した。深夜帯ゆえの注目度の低さを補う為に人気のある声優に頼った作品が増え始め、後にアイドル声優などとと呼ばれる流れとなった。
- 一方で庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』は1997年に再放送が深夜帯に行われ、異例の視聴率5%台などの事例あったほか、『もののけ姫』では邦画アニメーション初となる興行収入100億円を突破し、最終的には193億円を記録した。
- また、宮崎駿監督、スタジオジブリ制作『千と千尋の神隠し』は国内興行収入が300億円を超え世界で評価され、第75回アカデミー賞長編アニメーション映画賞や第52回ベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞した。またスタジオジブリではこの頃から俳優やアニメーション監督など声優に頼らない作品が増加していった。
- 2002年公開『ほしのこえ』は、新海誠が監督・脚本・演出・作画・美術・編集をほとんど一人で行ったことでも注目を集めた、フルデジタルアニメーション個人制作では 他に類を見ないほどの出来として、大きく評価され世界中で様々な賞を受賞した。
- また、シャフトやピーエーワークスなど背景や演出が特徴的なアニメーション制作会社も登場し、『魔法少女まどか☆マギカ』で大きな注目を浴びることになる。
- 2005年頃から、民放5大キー局は様々な事情を抱える深夜アニメ放送枠を削減し、放送枠を失った深夜アニメは、テレビ神奈川やTOKYO MX(東京)、サンテレビ(兵庫)など首都圏や関西圏といった人口密集地域を放送地域とするローカル局に追いこまれた。
- 三大都市圏では深夜アニメが地上波で年間100本を超えるような地域がある一方で、1本も放送されない地方も存在する。その頃からインターネットの大衆化により、テレビなどマスメディアでは取り上げられない深夜アニメに関する情報が入手しやすくなり、じわじわとではあるが視聴者が増えていくようになった。
- また情報番組でも2005年放送のドラマ『電車男』ブームで『萌え』という言葉が新語・流行語大賞のトップテンを受賞したことに便乗して秋葉原やメイド喫茶などアニメやそれに関連する情報が批判的な物も含め出回るようになり、いわゆるオタクに興味を持つ者や偏見を持つ者が増えていった。
- 国民的アニメなどと呼ばれる長寿作品と子供向けアニメ以外を朝夕やゴールデンタイムで放送しても視聴率が取れないことから、ほぼ放送枠を失い深夜枠の放送時間が上回るようになった。
- 一部の深夜アニメの話題作がスマートフォンの普及によりインターネットでのアニメ配信やTwitterなどSNS上の口コミを通じてアニメに関心の無い若者や、アニメ好きの芸能人の熱烈な支持を集め、CDや書籍などのランキングに上位にランクインするようになった。
- また、アニメファン特有の購買力に目を付けたローソンなど様々な企業で深夜アニメとのタイアップキャンペーンが増加し、以前と比べると深夜アニメは身近な存在となりつつある。しかし深夜枠で1クール(3カ月・13週)と放送期間が短いことなどから全世代的な話題となるような作品もなく、『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』のように露骨な性描写で放送倫理・番組向上機構に指摘される作品もある。
- 一方で子供向けアニメでは社会現象となった『妖怪ウォッチ』なども登場している。また近年ではインターネット動画サイトで世界中でいつでもアニメを楽しめるようになり、電器店やアニメ、漫画などサブカルチャーが集結する秋葉原はオタクの聖地から世界的な観光地となりつつあり、外国人向けツアーのルート組み込まれるようにもなっている。
- 劇場アニメでは宮崎駿が2013年公開の『風立ちぬ』をもって長編作品からの引退を発表した。引退報道以降は庵野秀明や細田守、新海誠などが宮崎駿の後継者候補として取り上げられている。中でも新海誠の『君の名は。』では邦画アニメーション映画では宮崎駿に次いで興行収入100億円を突破し、200億円に迫る勢いとなっている。
- 世界的に日本のアニメーション需要が高まる一方で、アニメーターの労働環境や賃金など慢性的に抱える問題は解消されることもなく、少子高齢化による国内市場の縮小という問題にも直面している。特にアニメ制作会社であるA-1 Picturesでは、作画を担当者に依頼したり、完成品を受け取ったりする「制作進行」と呼ばれる現場の調整役を務めていた男性が2010年10月に自殺し、2014年4月11日付けで新宿労働基準監督署が過労によるうつ病が原因として労災認定した。通院した医療施設のカルテには「月600時間労働」との記載があったが、残業代が支払われた形跡は無いとされている。この事件がきっかけとなり、その劣悪な労働環境がマスコミに取り上げられ、『ブラック企業大賞2014 業界賞』を受賞することになった。
- 近年では独立テレビ局で放送され話題となった深夜アニメをNHKが購入して放送する事例も出ている。それにより話題の作品を年齢の低い層にも気軽に視聴できる時間帯に放送することが出来るようになった。また最近ではアニメの舞台となった場所を巡る聖地巡礼が注目され、地方創生の切り札としても期待されている側面がある。
- 2020年代
- 『鬼滅の刃』などのヒット作が登場している。
- DVDが登場した2000年代は制作費をDVDで回収するビジネスモデルであったが、海外でのインターネット配信による配信料が主な収入源となった[30]。
- 日本と中国のアニメーターの賃金格差により、日本が下請けとなる例もある。また労働環境の悪化により人材が集まらず、質の低下も指摘されている[30]。
物語的側面
アメリカではレイティングなどの規制が厳しいこともあり、子供向けの解りやすい物語を元にしたコミカル(喜劇的)な動画を楽しませる作品が多いが、日本では『鉄腕アトム』頃から子供向けではあるが、アンダーグラウンド (文化)の影響を受けていた漫画などと密接な影響を受けていたこともあり、単純に「ヒーローが必ず勝つ」という勧善懲悪の話では無く、社会風刺など含んだ多様で複雑な物語で、主人公に内在する様々な感情や心理を描く作品が多い[31]。
技術的側面
リミテッド・アニメーションが主流で、ウォルト・ディズニー・カンパニーなどのアニメ作品に見られるフル・アニメーションはあまり使われない。映画などと同様に24コマ/秒で撮影されるが、動画は、同一画で3コマ×8/秒の撮影となる。静止場面では、同一画で24コマ/秒の撮影となる。テレビ放送用の作品は演出により、1話ごとにセル画の使用量が決められている。
- 部分アニメ(口パク)
- 同一人物の口、目、手、足などを部分別のセル画にして撮影する手法。最近では口だけではなく、あごなども動かすようになっている。製作の手間を省くだけでなく、静止との対比で動きが鮮明になる。
- バンクシステム
- 動画を繰り返して使用する技法。連続作品あらすじの説明、ロボットアニメの合体、魔法少女等の変身、主人公などのセリフシーンで使用される。背景画を差し替え、全く別の場面として使用することもある。
- 止め絵
- 競技場の観客席やパーティ会場や街中の雑踏など、人が多く賑やかな状態を演出するために使われる。静止画が使われる場合も多い。出崎統がよく使用する。新房昭之やシャフトの場合止め絵の絵柄を独特にする作風で有名である。
- 動線・集中線・漫符
- 漫画の技法が多用される。
- カメラワーク
- セル画を、上下左右に背景の上でスクロール(パン)させる技法や、「引き絵」と呼ばれる、カメラのズームによる演出(実際は、固定カメラの下で絵の方を引っ張る)。作画枚数の節約になり、演出意図を明確にする技術である。
- パカパカ
- 背景を閃光の連続により激しく点滅させる手法で、費用をかけずに派手で見栄えのする演出効果として多用されていたが、1997年12月16日に放送された『ポケットモンスター』第38話を見た視聴者が体調不良を訴えたポケモンショックを契機に、NHKと民放各社がアニメーション等の映像手法に関するガイドラインを策定し、パカパカの使用に関しての自主規制が行われている。
商業的側面
ウォルト・ディズニー・カンパニーの販売戦略を真似たとも言われるが、それとは別の道を歩むことになった。
テレビ番組の場合、スポンサーから提示される予算の範囲で請け負うのが通常であるが、明らかに不足する制作費で請け負い、不足部分は本業の漫画の原稿料、海外への輸出と再放送、玩具・文具・菓子メーカーにアニメキャラクターの商品化権(版権)販売による制作資金の回収システムが誕生し、後々まで続くことになる。
輸出
日本での商業用アニメーションのテレビ放送と同時に、制作費を短期間で回収するため、安価で多くの国へ輸出する販売戦略がとられた。国内で流通を前提に制作されていたものを輸出するため、輸出先の国内法や文化的事情で内容に大きな改変が行われる場合が多い[注 3]。また、作品名・登場人物名やスタッフ名などは輸出先の各国に合わせて書き換えられたり、視聴者が日本製であることを知らない場合もある。
また著作権ごと(放棄した)の契約で販売された作品もある。アメリカで、『超時空要塞マクロス』・『超時空騎団サザンクロス』・『機甲創世記モスピーダ』の3作品をハーモニーゴールド USA 社(Harmony Gold USA)が翻案した『ロボテック』が制作され、さらに他国に輸出された事例も存在する[32]。
世界的な多チャンネル化でソフト不足の中、日本アニメは安さで世界各地に広がった[33]。現在では、北米、南米、ヨーロッパ、南アジア、東アジア、ロシア、オーストラリアなど全世界に及び、総務省の調査(2005年度)によるテレビアニメの輸出額は、国内のテレビ放送権料の412億円の15分の1程度、26億円から28億円の規模である[34]。輸出金額では過半数を北米向けが占めるとも言われる。
日本貿易振興機構は、地域、国別にコンテンツ調査しており、その中にアニメに関する統計や傾向などのレポートがある[35]。しかし、近年は海外におけるアニメ市場が拡大する陰で、日本製アニメのシェアは縮小傾向にある。また放映終了後に各国の言語字幕を入れて違法に配信する「海賊版アニメサイト」が増加している。
輸出の歴史
- 1961年 - 東映動画(現:東映アニメーション)の初期長編作品がアメリカへ輸出される。大川博が「東洋のディズニー」を目指し設立した東映動画は当初から国際市場を意識していた[36]。
- 1963年 - テレビアニメとして、初輸出された『鉄腕アトム』は、放送開始から8か月後に、アメリカのNBC系列のNBCエンタープライゼスによって、全米ネットワークでなく番組販売される形で放送された[37]。続く『ジャングル大帝』は初めからアメリカ市場を意識して人種差別等を考慮して制作された[38]。
- 1970年代前半 - テレビアニメの輸出が一般的になり、最初は香港と台湾向けに始まり[39]、北東アジア圏、東南アジア圏で放送されるようになる。
- 1970年代後半 - 最初はイタリア、次いでフランスに向けに始まり、1980年代にかけてヨーロッパに大量に輸出される。その背景には、ヨーロッパにおける、テレビの多チャンネル化による需要と、日本製の作品が廉価で、本数の多さがあった[40][41]。東映動画が制作したテレビアニメのうち全体の3分の2はヨーロッパ向けで、特にフランスとイタリア向けが多かった[42]。アメリカ、アジア圏同様、内容が改変されることもあった。イタリアでは、最盛期には1日計7時間、日本のアニメを放送していた[43]。
- 1980年代 - 中華人民共和国で放送される[44]。
- 2013年 - 情報通信政策研究所の発表によると、2013年の日本の放送コンテンツ海外輸出額は約138億円であり、このうち、アニメが62.2%を占める[45]。
- 現在、香港、タイ、台湾などでは、ほぼ1週間程度の差で日本で放送のアニメ作品が放送されている。またネットでは海外向けのアニメの配信が行われ、日本での放送の1時間後には全世界で日本のアニメが見られるようになった。
- 近年では海外を中心に「海賊版」と呼ばれる違法アニメ配信サイトが存在しており、海外への輸出展開を難しくしている。経済産業省の試算によると海賊版による損失は中国だけで年間5600億円、米国では2兆円を超えるとされ、2014年より海賊版を配信しているサイトへ削除要請をしていく取り組みがされている。
- 2020年代にはインターネットにより同時配信されるスタイルが普及した[30]。
日本国外の評価
「セクシャルと暴力」と認識されることが多い[46][47]。
文化の違いとして、『ドラえもん』など日本の生活風景が出るものや、『ベルサイユのばら』など特定の国を扱ったものは、受け入れられるかどうかは国によって大きく異なる。『ドラえもん』は、ヒーロー的な男性を尊ぶ北米では受け入れられず2014年まで放送されなかったが、東南アジア圏では人気がある。
東南アジア圏では性的な表現を除き、日本文化的な表現も受容されつつあり、再評価されている。好まれる作品は日本とあまり変わらない。また『超電磁マシーン ボルテスV』のように、特定の国で一部の人物の間(ファン)の中でヒットする作品も存在する。またキャラクターの人気も国によって異なる。
日本国外の規制等の事例
フランスでは、1983年にジャック・ラング文化相が文化侵略だと公言し、自国のアニメーション製作者へ助成金を出すことになった[48]。1989年には『キン肉マン』、『北斗の拳』が残酷だとバッシングされ放送中止となった。『聖闘士星矢』は暴力シーンをカットし世界中で放映されヒットし、アメリカを除き、ヨーロッパやメキシコ、南米で根強い人気がある[49]。また、欧州製の番組を6割以上放送することを放送局に義務付けたクォータ制度があり、残りの4割の中でアメリカと日本のアニメが放送されている[50]。
EU加盟国では、1997年にEU理事会が、ヨーロッパ製の番組が放送時間の50%以上になるように放送局に義務付けた「国境なきテレビ指令」を出してから外国製アニメの新規放送が難しくなっている。
ニュージーランドでは『ぷにぷに☆ぽえみぃ』は、登場するキャラクターの容姿が幼児に見え、幼児性愛好者を増長させているとされ、政府機関により発売禁止処分を受け、所持が確認された場合、児童ポルノ禁止法違反により罪に問われる。北米やオーストラリアなど多くの国でそれに準じた処分が行われている。
アメリカでは、日本のアニメは古くから名前を変えたりストーリーを編集したり改変されてアメリカ化され、非アメリカ的な発言は取り除かれるのと同時に元の日本の製作チームに関する言及は最低限しか残されなかった[51]。1970年代にアメリカで起きた子供向けテレビ浄化運動で、増加していた日本のアニメの暴力描写と性的内容は問題視され、アメリカのテレビネットワークはアニメ放送を平日のゴールデンタイムから土曜朝に移行するが、各種保護者団体はネットワークに圧力をかけてアニメの一層の浄化を求め、日本のアニメは流せなくなった。1982年には、東映が『銀河鉄道999』をアメリカのニューワールド・ピクチャーズに売ったが、アメリカに合わせて大幅に改変され、ストーリーも破壊されたため東映はアメリカ事務所をたたんで撤退している。改変は舞台を日本ではなくアメリカの架空の場所に変えたり、人物も日本人名からアメリカ風に変えてアメリカの文化・生活が反映されたり、日本円もドル紙幣に変えられるなど、ローカライズが行われている。アメリカでは、子供向け番組のアニメでも「健康的な食生活を推進すること」が放送基準の一つであり、食に関する表現も規制され日本版からアメリカ風に編集されたり加工・変更されていた。未だにアメリカ式に改変されることもあるが、視聴者の立場としては改変を好まない層が近年増えたため、喫煙や飲酒など放送コードに抵触する部分などの改変にとどめられてもいる。
ロシアでは、サンクトペテルブルク裁判所が2021年1月に、複数の日本製のアニメを「暴力や死など過激なシーンの描写が視聴する未成年者らの成長に悪影響を与える」として、ロシア国内での放映や配布を禁止する決定を出している。インターファクス通信によると、ロシア検察当局が複数の日本製アニメの配布を禁止すべきだとする請求を裁判所に行っていた。この規制について検察当局は「過激な内容を含むアニメが未成年者に自殺などの害を及ぼすということが認められた」というコメントを出した[52]。
中華人民共和国では、2006年に海外アニメの輸入・放送に関して、国産アニメの放送がアニメの放送全体の7割を下回ってはならない、国産アニメを制作した機関は国産アニメを制作した時間と同じ分まで海外アニメを輸入できる、17時から20時まで外国アニメーションの放送を禁止などいくつかの規定を定めた[53]。日本作品の放送シェアが8割を超えるのは、ダンピングによる日本の文化侵略であるとして締め出しを行った。同時に、自国のアニメーション産業の保護と育成に乗り出した[54]。内容についても検閲の対象であり、スタッフの発言により映画祭への出展が止められた事例もある[30]。
大韓民国(韓国)では、かつて韓国での日本大衆文化の流入制限があったが、1998年に解禁された。解禁以前から日本のアニメは放送されていたが、制限をかいくぐるため前述(輸出の節参照)のように地理の実在架空を問わず舞台・人物などの韓国仕様への改変版が放送されていた。解禁後は、以前から放送されていたものはそのままだが、日本の実在地理や登場人物の日本人など日本のオリジナルのまま放送されている。聖地巡礼を意識していない架空の舞台・人物などは未だにローカライズされているものもある[注 4]。
インドでは、日本でも問題視された子供への悪影響を中心とした社会現象が起きており、『クレヨンしんちゃん』を放送禁止処分にする動きもある[55]。
以上のような事例から、全ての日本のアニメが世界的に受け入れられているとは必ずしも言えないとする見解もある[56]。
商品展開とアニメ化
アニメと、漫画・小説・アニメ雑誌・アニラジ・ゲームソフト・フィギュア(玩具) 等は、販売戦略上不可分な密接な関係にあり、様々な媒体で展開するメディアミックスを前提として企画される。
題材の幅は広く、SFアニメ、ロボットアニメ(スーパーロボット・リアルロボット)、ギャグアニメ、魔法少女アニメ(変身ヒロイン)、ラブコメディ、スポ根、萌えアニメ、空気系(日常系)、セカイ系、ハーレムものなど多種多様に渡っている。
オリジナルアニメ
漫画や小説・ライトノベル・コンピューターゲームなどの原作が無いオリジナルアニメの場合、放送中ないし放送後(稀にアニメ化を見越して放送前に、と言う事例もある)に漫画化や小説化される。宮崎駿や細田守、新海誠の作品は最近ほとんどオリジナルアニメとして劇場公開している。近年ではゲーム業界の著名シナリオライターを脚本家として招いて制作する傾向も見られる。
映画化・テレビ化
映画の場合、人気テレビアニメの総集編や続編、スピンオフとして製作されることも多く、TV本放送を視聴していなくても解りやすい、単独で完結した劇場用作品として鑑賞できるものとして制作されることがほとんどであるが、事前にTV本放送を視聴していないと理解出来ない『新世紀エヴァンゲリオン』や『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』などの作品も存在する。また、『宇宙戦艦ヤマト2199』のように映画として先行上映後に、TVシリーズとして放送される作品もある。
実写化
漫画や小説などの原作の無い、アニメの企画を原作として実写映画・テレビドラマ化されたものでは、国内では、2004年『CASSHERN』(『新造人間キャシャーン』)。2009年『ヤッターマン (映画)』2010年『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(『宇宙戦艦ヤマト』)。国外では、2008年、『スピードレーサー』(原作:『マッハGoGoGo』)などがある。
詳細は「実写」を参照。
作品に関しては、アニメ・漫画の実写映画化作品一覧・アニメ・漫画のテレビドラマ化作品一覧を参照。
実写作品のアニメ化
実写作品の企画が原作(原案)で、アニメ化された作品では、『月光仮面』・『愛の戦士レインボーマン』・『ザ☆ウルトラマン』などがある。
漫画
かつては、劇場作品は「漫画映画」、テレビ作品は「テレビマンガ(漫画)」と表記や呼称されており、漫画とアニメは混同されたりほぼ同一視されていた。現在も漫画作品を原作とする作品は多い。
コミカライズ(漫画化)
漫画原作では無いオリジナル作品を漫画にすることで、漫画化という言葉が一般的だったが、2000年頃から小説化を意味するノベライズから派生した和製英語コミカライズ(comicalize)が普及している。本編の漫画化に限らず、複数の作家による本編から派生した外伝や番外編といったスピンオフのアンソロジーやオムニバス形式の作品も多い。
絵本
絵本原作でアニメ化された作品では、日本では『アンパンマン(それいけ!アンパンマン)』や、イギリスの『汽車のえほん(きかんしゃトーマス)』などがある。子供向けアニメなどでは、絵本化される作品も多い。また昔話を題材にした作品も黎明期から現在に至るまで作られている。
フィルムブック
アニメーションのフィルムのコマを並べて作った絵本で、講談社のディズニー絵本などが典型例である。
家庭用ビデオなどの映像媒体が普及するまでは、人気アニメ映画などのフィルムブックも販売され、ドラマ音声などを記録したSP・ LP・ソノシートなどと併せて静止画ではあるが楽しむことが、一般的なアニメファンに手の届く範囲ものでもあった。
小説
一般文芸やライトノベルのアニメ化作品も多く存在する。また、原作が小説の場合は深夜アニメや劇場アニメであることが多い。一般文芸では、過去に実写化されていた小説が新たにアニメ化されることが多い。
作品に関しては、ライトノベルのアニメ化作品一覧を参照。
ノベライズ(小説化)
TVアニメ・映画や漫画、ゲームソフトなどが原作となるノベライズも行なわれている。コミカライズと同様に本編から派生した外伝や番外編といったスピンオフを展開する作品も多い。
ミュージカル(2.5次元ミュージカル)
2.5次元ミュージカルとも云われ、アニメ、漫画、ゲームなどを原作にキャラクターや物語の設定を忠実に再現し舞台(ミュージカル)化されている。
1974年の『ベルサイユのばら』が始まりとされ、1993年に8日間、31ステージ公演された『聖闘士星矢』が37万人を動員したことがミュージカル化の契機となり、その後『美少女戦士セーラームーン』や『テニスの王子様』などの人気作品が多数ミュージカル化され、観劇者数も、2013年には延べ160万人を超えている。2014年には、日本2.5次元ミュージカル協会も設立されている。
映像媒体のパッケージ販売
流通における大きな変革として、家庭用ビデオデッキ(VHS・βマックス)の登場・普及により、1983年にはテレビ放送や劇場公開ではないOVA作品『ダロス』が登場した。OVAはビデオソフトの販売とレンタルビデオ店から支払われる使用料により、制作費回収が可能になった結果、登場したビジネスモデルである。
玩具メーカーなどのスポンサーの意向によらずに作品制作ができるため、比較的表現の自由度があり、購買層の大多数は特定のファン層であり作品の内容は偏っているが、購買層が特定されているため商品化、販売の面において容易である利点がある。当初は、60分から90分程度のアニメ映画と同様の1話完結の作品として制作されたが、後にテレビ局に放送権の販売のため、主題歌込みで24分程度を1エピソードとした数本単位で制作されたものが主流になる。
1980年代後半以降、家庭用ビデオデッキの普及により、テレビ用映画用の作品は放映後にパッケージ化され販売されるようになった。ビデオより後発のレーザーディスク(LD)は機器本体はビデオ本体ほど一般普及はせず、高級またはマニアックな機器であったが、その再生ソフトであるLDはビデオカセットのようにコアなアニメファンの間では浸透し、LDで発売された映像作品の多くはアニメや映画であった。1990年代までのビデオやLDの時代には、ビデオデッキ本体こそ一般に広く普及していたものの、パッケージソフトは販売店も少なく後のDVD時代より格段に小規模なマニアックな市場で、1本あたりの単価も高めでビデオカセット・LD自体も後のDVDより大きいサイズのため複数所持するにもかさばり、自分でテレビから録画したのでないアニメや映画作品等はレンタルビデオ店で借りて視聴するのが主流であった。
音楽CDと同じサイズのDVDが登場・普及した2000年代以降は、パッケージ化作品数や販売店数・販売スペースなど市場規模が飛躍的に増加した。
2000年代後半に入ると地デジの浸透と共にハイビジョン制作作品が増加し、Blu-ray Disc(BD)およびBDレコーダーの登場・普及と共にBDが主流となった(過去に既にパッケージ化された作品もデジタルリマスター(HDリマスター)版などとして再発売されることもある)。
OVAの流れを受け、放送権料の安い、深夜・早朝枠やケーブルテレビ、独立テレビ局、BS・CSチャンネルで、特定のファン層をターゲットにしたテレビアニメ番組が増加した。特に深夜アニメやUHFアニメは基本的に視聴率は低いことからスポンサー料は安く、それだけで制作費回収は難しいことから、各種パッケージ販売によって収益を得るビジネスモデルが主流となった。しかしネット配信(合法違法問わず)の普及により映像媒体の販売は減少傾向にあり、初回限定版として各種グッズ類やイベントチケットなどの特典を付けて販促を行っているのが現状である。
2010年代半ばに入ると内外問わずインターネット配信による収益で補完する動きが主流となり、2020年代には配信料が収益の柱となっている[30]。
雑誌
1977年、成年向け雑誌「月刊OUT」が『宇宙戦艦ヤマト』特集を掲載し大ヒットとなり、これがアニメ誌に発展する契機となった。当時、幼年向けのテレビ情報誌「テレビランド」を発刊していた徳間書店はテレビランド増刊『ロマンアルバム・宇宙戦艦ヤマト』を創刊し40万部を記録。この成功を受けて、月刊アニメ雑誌「アニメージュ」が創刊される。
その後、『機動戦士ガンダム』に続くアニメブームの間に、多数の出版社の参入と淘汰が繰り返された末、2015年現在、10日売りアニメ雑誌と称される総合誌は「アニメージュ」「アニメディア」「月刊ニュータイプ」の三誌がしのぎを削る状況にある。
その派生雑誌として萌えアニメ専門雑誌(「メガミマガジン」「娘TYPE」など)や声優専門雑誌(「声優グランプリ」「声優アニメディア」など)、アニメソング専門雑誌(「リスアニ!」など)なども登場している。
批評・研究
1917年の「活動之世界」9月号掲載の幸内純一の作品批評が、日本における初のアニメーションに関する批評とされる。以後、アニメーションの批評は「キネマ旬報」「映画評論」などが主要な発表の媒体となり、新作の批評という形で行われてきた。
1950年代に東映動画が設立され、年に1作のペースで長編作品が定期的に制作されるようになると、「朝日新聞」などの映画欄でも扱われるようになった[57]。
1977年には山口且訓と渡辺泰の共著による『日本アニメーション映画史』が刊行される。日本アニメーション史の基本文献として参考資料として挙げられることが多い。日本国外のアニメーションやアートアニメーションの評論については、1966年に『アニメーション入門』を著した森卓也やおかだえみこ等が活動していた[58]。『日本アニメーション映画史』『アニメーション入門』のいずれも『映画評論』誌の連載をまとめた単行本であった。
1970年代末にアニメブームが到来し、アニメ雑誌が多数創刊される。同人誌活動していたアニメファン出身のライターの力を借りて誌面を構成していた[59]。氷川竜介、小黒祐一郎、原口正宏、霜月たかなか、中島紳介らは学生アルバイトに始まり、2000年以降も活動している[60]。「アニメージュ」はクリエイターの作品歴を系統的に紹介することに力を入れ[61]、「アニメック」と「月刊OUT」においては、評論記事と読者投稿による作品評論が一つの売り物になっていた[62][63]。
批評と研究を中心とした専門誌には、1998年創刊の「動画王」、1999年創刊の「アニメ批評」、2000年創刊の「アニメスタイル」などがあったが短命に終わり、「アニメスタイル」はインターネットに活動の場を移した。
「月刊ニュータイプ」が登場した1980年代半ば以降、アニメ雑誌はクリエイターや作品研究などの記事から、キャラクターやグラビアを重視した作りに軸足を移していき、アニメ評論を積極的に掲載するアニメ雑誌は基本的に存在しなくなっている[64]。その一方、宮崎駿や押井守の活躍、『新世紀エヴァンゲリオン』がビジネスとして話題になるようになった1990年代から、人気作品や人気クリエイターを中心にした研究本は、継続的に発行されるようになった[65]。
1998年10月、日本で初めてのアニメの学術的研究を趣旨とする学会「日本アニメーション学会」が設立された[66]。
アニラジ
アニメラジオの略称。アニメ・ゲーム・漫画・ライトノベル・声優等のオタが主な聴取対象のラジオ番組。1979年10月、ラジオ大阪『アニメトピア』を皮切りに、多くは深夜放送番組として放送されているが、ネット環境の普及と共にインターネットラジオ番組も増えている。
黎明期にはアニメ雑誌やレコード会社による総合情報番組が多かったが、アニメやゲーム、漫画、小説(ライトノベル)などを原作にしたラジオドラマ番組、人気声優のパーソナリティ番組、アニメソングやゲームミュージック専門のリクエスト番組、アニメに関する話題をリスナーから募集して討論する番組など多岐にわたるようになっている。
音楽(音声媒体)
劇中で使用される音楽の主題歌(テーマソング)・挿入歌・イメージソング・インスト曲・BGMなどサウンドトラックの他、ドラマやアニメの世界観を背景としたドラマ音声などを録音したSP・ LP・ソノシートなどのレコード盤やカセットテープや、現在はCDなどで販売頒布されているほか、iTunesほかインターネット配信も増加している。
かつては、映像媒体は極めて高価だったこともあり、ドラマなどの音声を記録したSP・LP・ソノシートレコード盤、カセットテープ、CDなどの音声媒体が普通の愛好家の手の届く範囲であった。
公式サイト
インターネットの普及と共に、ほとんどのアニメ作品は公式サイトを設置し宣伝をする形態をとっている。内容は作品・あらすじの紹介、予告編やPVなどの宣伝素材の無料配信・関連商品のPRなど。デスクトップ・携帯電話用コンテンツを提供している場合もある。特に深夜アニメの場合視聴者はほぼ限られるため、インターネットでの宣伝に頼っている場合が多い。またSNSでの宣伝は安価で、リツイート機能により時に数万人へ作品情報を発信できるという強みがある。
制作テレビ局や制作会社のウェブサイトの一部としての場合が多かったが、最近では作品・シリーズ毎に独自のドメイン名を取得し制作会社が管理する独立サイトとして設置するケースも多くなっている。ブロードバンド環境の普及により、本編や公式ラジオの配信を行っているケースもある。
2010年代に入ると、SNSの普及を受ける形でTwitterやfacebookの公式アカウントを取得し情報の発信などを行うケースが増加している。またネットユーザー同士でアニメの情報交換することで作品が話題になる例(魔法少女まどかマギカ、琴浦さんなど)や、公式サイトが話題となり終了したアニメが再び話題となる例(キルミーベイベーなど)がある。
フィギュア(玩具)
テレビアニメの開始時から深い関係にあり、基本的に児童向けアニメのほとんどが玩具展開をすることが前提になっており、子供の興味を引く可動・合体・変形などの仕掛けがある手に取って遊べる玩具になる物を、主役として登場させることがスポンサー要望であり作品設定に影響を与えていた。素材は年代によりブリキ製、ソフトビニール製や超合金 (玩具)などの違いがある。
1960年代には、ソフトビニール製のキャラクター人形や、組み立て式のキャラクターモデルが存在していたが、1970年代後半、スケールモデルのように設定を元に忠実に再現した『宇宙戦艦ヤマト』のプラモデルがヒットし、その流れに続きバンダイを模型業界のトップに押し上げた日本プラモデル史上最大のヒット商品となるガンプラが登場した。
また、消しゴムとして用をさないキャラクター消しゴムなどのカプセルトイ(ガシャガシャ、ガチャポンなど)による商品も展開され、1970年代のスーパーカーブームに乗った『サーキットの狼』などヒットにより一大ブームとなったスーパーカー消しゴムやキン肉マン消しゴム(通称、キン消し)などが登場した。
1980年代、『機動戦士ガンダム』に続くリアルロボットブームの中で、玩具の主力商品はプラモデルとなり積極的な商品展開が行われるも、ガンプラブームを越えることも無く、また『蒼き流星SPTレイズナー』はプラモデルの販売不振でメインスポンサーが撤退し放送打ち切りになるなど、ブームは終了するが、ガンプラブームによる若年層へのスケールキャラクタープラモの浸透は、原型を少数生産するガレージキットの勃興にもつながり、怪獣や美少女フィギュアなどを中心にプラモデル化しても採算に合わないとされていたものが徐々に浸透していくようになる。
1984年12月、ゼネラルプロダクツ(ガイナックスの前身)主催のプロ・アマを問わない、後に世界最大のガレージキット、模型、造形物の展示販売の最大イベントとなる、「ワンダーフェスティバル」(略称、「ワンフェス」「WF」)が開催され、主要玩具メーカの撤退に合わせるように、同人誌の即売会的な手作り模型の展示販売会のイベントが開催される。
1990年代、高価で組み立てと塗装に高度な技術と労力を要するガレージキットの中で、『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイの完成品がマニアの間で高額で取引されるようになると、アニメ美少女のフィギュア化がブームとなり、他に海洋堂の精巧で安価な食玩や、バンダイがガレージキットの表現方法を吸収して従来のキャラクター消しゴムとは比べ物にならないほどリアルなカプセルトイから始まったフィギュアブームと相まってコレクションの対象となった。販売促進のため書籍・ゲームソフト・DVDなどの付録や購入特典に付属する場合もある。
深夜アニメ作品のフィギュアは、どれだけ精巧に作られているかに重点が置かれ、そのため価格も高騰している。
玩具商品のアニメ化作品
玩具の商品企画が原案(原作)でアニメ化された例では、『トランスフォーマー』・『ゾイド』・『超特急ヒカリアン』などがある。
ゲームソフト
アーケードゲーム、コンシューマーゲーム(家庭用ゲーム機)用のプログラムを記録した物理的メディア (媒体)(詳細はゲームソフトも参照)、オンラインソフトウェアで提供されるコンピュータゲームのソフトウェア。
1983年、後に社会現象となる大ヒット商品のファミリーコンピュータが発売され、プラモデルなどの玩具の販売不振に喘ぐ玩具メーカーは、主要商品を家庭用ゲーム機とゲームソフトの開発に移行する。過去の人気作品で、ゲームソフト化が比較的容易なシューティングゲーム(1985年 、『宇宙戦艦ヤマト』)、対戦型格闘ゲーム(1985年、『キン肉マン マッスルタッグマッチ』)、ウォー・シミュレーションゲーム(1987年、『SDガンダムワールド ガチャポン戦士』)などから商品展開が行われた。
後に、ロールプレイングゲーム・アドベンチャーゲームが原作でアニメ化される作品も登場する。 『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』のような推理ゲームから恋愛シミュレーションゲーム、果てにはアダルトゲームを18才未満でも視聴できるように脚本を改編したものまでアニメ化され、作品の幅は広くなっている。また、近年では『Angel Beats!』の麻枝准や『天体のメソッド』の久弥直樹などゲーム会社のシナリオライターがアニメの脚本を手掛ける場合が増えている。
携帯電話向けゲーム
携帯電話の機能が拡大し、インターネットが簡単に利用できるようになってからGREEやMobageのような基本料金無料の携帯電話向けゲームサイトがヒットするようになった。様々なアニメ作品も携帯電話ゲームとなった。アイドルマスター シンデレラガールズでは携帯電話ゲームに登場するキャラクターを元にアニメ化し、大きな話題を収めた。
またスマートフォンが普及すると今までのゲームサイトに代わってアプリケーションでのゲームがヒットするようになった。特にラブライブ! スクールアイドルフェスティバルはアニメ放映中の2カ月間で登録者数が100万人も増え、異例の登録者数増加となった。2015年3月現在で登録者数は国内700万人、全世界で1000万人を突破している。
このようにアニメ作品を題材とした携帯電話ゲームがヒットすると知名度も上がることから、深夜アニメを中心にゲームアプリ開発が激化しつつある。
作品に関してはゲームソフトのアニメ化作品一覧を参照。
トレーディングカード
ゲーム・鑑賞用のコレクションカード。1990年代末-2000年代初頭に発生した社会現象のトレーディングカードブームで普及し「トレカ」と略されることも多い。
アニメ・漫画などの関連商品として古くから存在し、めんこと呼ばれる時代から存在する。
ゲーム専用カードを用いたカードゲームはトレーディングカードゲーム (略称、TCG) と呼ばれる。通常は対戦形式の2人プレイのものが多い。
キャラクターグッズ
子供向けアニメのキャラクターが描かれた文房具や衣類、駄菓子などの食品類など、スーパーやショッピングセンター、コンビニなどで気軽に買える商品がほとんどであるが、一部のアニメショップやイベント会場などでは生産量が少ないグッズも販売され、希少価値の高い商品は中古市場やネットオークションで高値で取引されている。
周辺文化
1970年代後期
- アニメファン
当初、アニメーションは子どものものであり、アニメを好んで見る成人がいることは知られていなかった。1977年8月、映画版『宇宙戦艦ヤマト』公開日に徹夜で並ぶファンの特異な行動をきっかけに新聞等が話題として取り上げ、成人にアニメを好んで見る趣味者がいることが一般にも知られ始めた。多くは中高生・成人であった。『宇宙戦艦ヤマト』公開の翌年にアニメ雑誌が創刊され、雑誌の文通コーナーなどを通じて連絡が可能になると、多数のファンクラブが誕生した。現在でも上の世代では、アニメは子どものものと言う印象が残っているが時代が進むにつれてその印象は薄れつつある。
本来は子供(児童)を対象としたアニメ・漫画・特撮ヒーロー番組などに夢中になっている大人のファン。
二次創作
法的には、著作物をたとえパロディとして改変したものであっても、権利者に許可を得ず、不特定多数に無償配布や販売するのは著作権法に反する行為である。
ただ、著作権侵害は親告罪で、違法行為を行っている者を告訴して訴訟にまで持ち込むまでには費用がかかり、勝訴しても賠償金の支払い能力の無い場合もあり、著作側が泣き寝入り、またはファンによる応援行為として黙認しているのが現状である。
ファンクラブの誕生にあわせて会報の発行や、またファンブックを自作するという趣味を持つ者の自費出版が始まり、アニメとの繋がりの深い漫画や、他の様々な文化を巻き込み成長する。が、コミックマーケット(コミケ)などの同人誌即売会や、専門書店等の委託販売で商品化が進んでいる(詳細は、同人誌#漫画・アニメ系同人誌を取り巻く状況と問題点を参照)。
同人誌で見られるイラストの代表的な手法として、輪郭や境界線をはっきり線で描き、色や影のグラデーションを単純化させ段階的に表現するアニメ絵(萌え絵)がある。
「仮装」とも呼ばれる。服や化粧により空想上のキャラクターなどに扮する行為。コスチューム・プレイを語源とする和製英語で、行う人をコスプレイヤー (Cosplayer) 、略してレイヤーと呼ぶ。単独イベントも開催され、自主制作のコスプレ写真集がコミックマーケットや、同人誌専門店で販売されている。しかし、近年は著作権の侵害としてコスプレ衣装販売業者が警察に摘発される例もある。
- 痛車(いたしゃ)
「萌車」とも呼ばれる。萌えアニメのキャラクターや関連する製作会社・ブランド名のロゴのステッカーを貼り付けや塗装を行ったファンの自動車。バイクは「痛単車(いたんしゃ)」、自転車は「痛チャリ(いたチャリ)」、電車の場合は痛電と呼ばれる。2008年、青島文化教材社がプラモデルの発売と商標登録に出願、同年6月27日に登録された。痛車オーナーの増加に伴いコミュニティも形成された。
近年では企業の宣伝目的でアニメ絵調のキャラクターが描かれたイラストの電車やバスが運行されることも多くなったが、それも痛車の部類に入ることが多い。
アニメ作品の舞台となった地域では、アニメファンをターゲットとした観光客誘致のために電車やバスにアニメのラッピングを施す会社も出ている。車内にはアニメのイラストやスタッフのサイン、声優による車内アナウンスを実施している所もある。
聖地巡礼
詳細な現地ロケ(ロケーション・ハンティング)による、映像演出と世界観を設定する作品の登場と共に始まった小説、映画、TVドラマなどの舞台を巡るロケ地巡り、舞台探訪などと同様の行為であるが、異なる点としてキャラクターのコスプレやアニメ作品のキャラクターが描かれた痛車で現地を訪れるファンがいることが上げられる。
ロケ地(聖地)を特定したファンがその場所を訪問(巡礼)し、現地の写真と劇中の場面(コスプレの場合、劇中の登場人物と同じポーズ)と比較する形でインターネットのファンサイトなどで公開、また同人誌形式のガイドブックが制作され同人誌即売会で頒布されるなどの形で広まった。
実写の映画やTVドラマなどと異なり、映像作品として使用された認識のない地元住民の一般住宅や学校などが含まれることも多く、日常生活に不安や迷惑を発生させる可能性を否定出来ないため、作品の発売元が聖地巡礼の自粛のお願いをした例や[67]、口蹄疫防止のため舞台となった牧場などに訪れることを自粛することをお願いをした例もある。
一方で『君の名は。』の舞台となった飛騨市では、作品を見た観光客が飛騨市へ殺到し、ニュースなどで大きく取り上げられたことから2016年の新語・流行語大賞トップ10に聖地巡礼が選出されるなど注目を浴びた。
作品に付随し広告費が不要で、観光需要が上がるため観光振興の一助として期待も大きい。そのためアニメ、漫画のロケ地の誘致活動に力をいれる自治体や萌えキャラを製作する地域もある。しかし、ほとんどのアニメ作品のブームは一過性であり、しかも作品が話題になるかどうかも分からないことから自治体が見込んだアニメファンの観光客数を大きく下回った所もある。
詳細は巡礼 (通俗)を参照。
脚注
注釈
- ^ 『ボンバーマンジェッターズ』 シナリオ打ち合わせ アニメ ボンバーマンジェッターズ 制作現場レポート とテレコム・アニメーションフィルムの アニメ業界の基礎知識〜アニメーションの制作の流れ〜、アニメーション産業に関する実態調査報告書(PDF)-2009年1月,公正取引委員会を元に記述している。
- ^ アメリカのディズニー製作作品も日本では「ディズニーアニメ」と呼ばれ、講談社ディズニーアニメブック、偕成社ディズニーアニメ小説版など、ディズニー公認の絵本やノベライズ版にも「アニメ」が使用されている。
- ^ アメリカ版の『カードキャプターさくら』(現地タイトルは『CardCaptors』)は主人公の姓がAVALONになっている、フランス版の『めぞん一刻』(現地タイトルは『Juliette, je t'aime』)は舞台がミモザ・ペンションでヒロインの名前がジュリエットになっている、韓国版の『クレヨンしんちゃん』(現地タイトルは『짱구는 못말려』)は舞台がソウル特別市となっている、など色々。
- ^ 解禁以降は架空の地理あるいは日本の実在地理が舞台ではあるが架空の施設が主な舞台のものは、原作の名称のままだったり、地理や人名のみローカライズされたりしている
出典
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参考文献
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- JAniCA講義 井上俊之さん小黒祐一郎さんと一緒に『もっとアニメを観よう!』配布資料:井上俊之の作画史観に基づく年表(PDF)
- アラブ社会における日本のアニメ・マンガの影響 保坂修司、国際日本文化研究センター, 2007.12.20.
関連項目
- テレビアニメ
- アニメーション映画
- アニメーション産業
- アニメ制作会社
- アニメーター
- アニメ監督
- 制作進行
- アニメ関係者一覧
- アニメの話数一覧
- アニメ専門チャンネル一覧
- アニメの歴史
- 全国総合アニメ文化知識検定試験
- アニメソング