いきおい

古典日本語 「いきほひ」

• (東京式) いきお​い [ìkíóꜜì] (中高型 – [3])
• IPA^(?): [ikʲio̞i]
• (京阪式) いき​おい

いきおい【勢い】 (歴史的仮名遣い いきほひ)

1. 発動しようとする力^[1]。ものが運動する際に生じる力。
   • 泉はまるで一つの灌漑の水路のように勢よく岩の間から噴き出ていた。（宮沢賢治『泉ある家』）
   • 対岸の火事が勢を増して来た。（原民喜『夏の花』）
   • 私は十銭の木戸銭を払って猛然と小屋の中に突入し勢いあまって小屋の奥の荒むしろの壁を突き破り裏の田圃へ出てしまった。（太宰治『黄村先生言行録』）
2. 他者を凌ぐ威力^[1]。威勢。気勢。特に、権力。権勢。勢力。
   • そして彼は、食卓の上の徳利を取りあげて、勢いよくいきなりラッパ飲みにした。（牧野信一『蝉』）
   • 「何をする。」私も死力を出して組みついた。傍（はた）で見ていた仲間は私の勢いに少しくたじろいだ。（宮地嘉六『ある職工の手記』）
   • 金も勢もないものが天下の士に恥じぬ事業を成すには筆の力に頼らねばならぬ。（夏目漱石野分）
   • 南方への進出も段々勢いをまして、日に日に戦果が大きく発表された。（林芙美子『瀑布』）
3. 弾み^[1]。成り行き。
   • 酒の勢で変な議論をしたものだから、肝心の一身上の話はまだ少しも発展せずにいる。（夏目漱石『それから』）
   • あわや、つかみ合いが生じそうになりそうな勢いです。（牧野信一『歌える日まで』）

• 複合語: 勢い掛かる、勢い口、勢い込む、勢い付く、勢い猛^{（いきおいもう）}
• 成句: 騎虎の勢い、旭日昇天の勢い、決河の勢い、飛ぶ鳥を落とす勢い、破竹の勢い、日の出の勢い

• イタリア語: forza ^(it) 女性, energia ^(it) 女性, vigore ^(it) 男性
• 英語: birr ^(en), energy ^(en), force ^(en), impetus ^(en), momentum ^(en), power ^(en), strength ^(en), vigor ^(en), vigour ^(en), vim ^(en), zap ^(en)
• スペイン語: fuerza ^(es)
• ドイツ語: Kraft ^(de), Energie ^(de)
• フランス語: force ^(fr) 女性, vivacité ^(fr) 女性, vigueur ^(fr) 女性

いきおい

1. 成り行きで。どうしても。必然的に。
   • 私は別に自分を吝嗇だとも思っていないが、しかし、どこの酒場にも借金が溜って憂鬱な時には、いきおいただで飲ませるところへ足が向くのである。（太宰治『メリイクリスマス』）