頭を空っぽにして、熱を感じるだけの映画。それがいい。はえー、やべー、あぶねー、しぬー。三歳児でも言わないような擬音語だけで感想が成り立つ空間は、色々なことを考えている日常から離れるのには最適。
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予告編から想像していた気軽な子ども向けアニメーションではなく、かなり暗い内容でした。社会から蔑まれ続けた少女グレースは、カタツムリのように外部との接触を閉ざしていきます。いずれの出来事も壮絶で、この積>>続きを読む
摩文仁の丘に渦巻く慰霊と顕彰の渦。沖縄戦の犠牲者の中には、島民、大日本帝国軍の兵士、連合国軍の兵士、動員された植民地の軍夫や慰安婦が含まれます。その全ての犠牲者の名前を刻むのが、大田昌秀沖縄県地知事が>>続きを読む
死を前にしても泣くことができず、家出願望を小学校の作文に書く「奇妙」な女の子。しかし彼女の周囲を見ていると、彼女が「奇妙」に映る世界こそ歪なのではないかと感覚していきます。彼女は少しの願望を抱きながら>>続きを読む
一瞬たりとも気が抜けない構成、完璧なカメラワーク、吉沢亮と横浜流星を筆頭に圧倒的な練習量に裏打ちされた演技、観客を離さないストーリー。どれをとっても超一級です。凄すぎて、下手な言葉を紡ぐのがバカらしく>>続きを読む
映像の質や美的な手法に特筆すべきものはありませんが、主人公のOKAさんの魅力が溢れています。貧しい幼少期での母の自殺未遂、心の支えとなった教会、中国大陸やヤクザとの関わりの中での挫折と、前半の人格形成>>続きを読む
魔改造された傑作でした。生まれながらにして徹底的に排斥されたエルファバ。彼女は自らの能力と存在価値を示し続けなければなりません。マジョリティは何も気にせずに参加できるパーティー、入学できる学校、作れる>>続きを読む
何かを書く仕事に就くと、学生の頃に「書け!」と言ってくれた人のありがたさを実感します。本作では「描け!」ですが。もちろんハラスメントは厳に慎まなければなりませんし、チンパンジーなど言語道断の喩えもあり>>続きを読む
恥ずかしながら彼女の存在を全く知りませんでした。もちろん私の不勉強ゆえなのですが、やはり女性の報道写真家が置かれてきた不遇を物語っている気がします。エンドロールに表示される写真はいずれも素晴らしく、戦>>続きを読む
普通のラブコメかと思いきや、社会派な内容も混ぜ込みつつ主人公たちの成長を描く王道の韓国映画だった。なにしろ主人公の二人が魅力的。家族、学校、会社。蜘蛛の巣のように張り巡らされた社会規範は、常に二人を侵>>続きを読む
大量生産を実現するためにミシンを高速で動かしながら、甘酸っぱい青春を謳歌する。一文にすると全く噛み合わない二つの要素が、王兵のカメラを前にすることで奇跡的に邂逅する。彼の撮る絵は常に優しい。鬼気迫る賃>>続きを読む
Queerの原義は「奇妙な」。異性愛者に囲まれた世界では、奇妙な者たちは常に自らの存在と相手がQueerであるか否かを確認しなければいけない。そうであることを確認するまで慎重に距離を詰めていくが、そう>>続きを読む
故郷で迎える春節と日常を生きる工場。二つの時空間が一人の中に重なりながら、若者たちは青春を謳歌している。結婚式のような伝統行事、春節の爆竹、庭を走り回る子どもたち。美しい風景と共に描かれる故郷は、職場>>続きを読む
若者たちの他愛もない会話は、鳴り響くミシンの音と止まらない作業の手とともにある。1枚60円(3元)の人件費で縫われるデニムのパンツや綿入りのジャケット。この低賃金を埋め合わせるために、彼らの作業は文字>>続きを読む
フジテレビ問題だけでなく、近年は芸能界における男尊女卑の問題が噴出しています。そんな世相を厳しく批判する、内容の濃い作品でした。パパ活、アルバイト先のカフェ、オーディション、ワークショップ。若き女優た>>続きを読む
虚実の皮膜を浸透するかのような熱気が台北の街を包み込む。何かを信じないと生きられないが、何かを信じたら生きられない。それぞれの愚かさを丁寧に眼差しながら、誰も置いていかない物語が一貫していた。
この>>続きを読む
当時のプロパガンダ映像と演説、さらに忠実に再現したドラマを組み合わせて、ユダヤ人への憎悪が煽られ、虐殺が行われたことを明確に伝える作品。まず驚くのは、ユダヤ人を虫けらのように扱い、絞首刑にして殺すシー>>続きを読む
壁の中にいるものたちに注がれる視線は、「反省を示せ、服従せよ」というものです。それに対して、「私はキングだ!私を見ろ!」と高らかに宣言できるのが、演劇プログラムだったのでしょう。彼らの心底にある絶望や>>続きを読む
黄金色に輝く小麦畑、煌々と輝く夕日、燃え盛る炎、イナゴの大群。どの描写も美しく、一枚のポートレートを見ているようだった。特別な説明もなく流れる時間は、大農場の理想化された日常だった。リアリティというよ>>続きを読む
とっ散らかりつつも無理なくまとめる、SFの要素を適度に散らしつつリアリティを守る、都合のよすぎる落とし所を作らない。全体的に納得感のある仕上がりでした。広瀬すず、杉咲花、清原伽耶の配役も的確でした。や>>続きを読む
陰謀や策略あり、右往左往あり、どんでん返しありの王道の権力を奪い合う者たちの非喜劇だった。テーマがコンクラーベだけに宗教的な知識がないと厳しいかと思ったが、上手くキャラクターの個性を配置することで、守>>続きを読む
ストリッパーの主人公がオリガルヒの御曹司を見つけて人生一発逆転という、男の願望が多分に含んだシンデレラ・ストーリーを反転させる試み。それ自体は興味深かったが、期待値を超えるほどではなかった。
前半は>>続きを読む
主人公の恵子の魅力的なライフストーリーがあまり生かされず、色々な点で過剰なドキュメンタリーになっていたのが残念でした。音響もそうですが、何よりも変な字幕や場面の切り替えが気になりました。監督が普段はド>>続きを読む
目の前に映し出される映像の凄まじさに、エンドロールの後も数分間立ち上がることができませんでした。イスラエル軍と入植者が銃剣とブルドーザーでヨルダン川西岸地区の田舎町を押し潰し、そこに住むパレスティナ人>>続きを読む
まずは監督が生還したことの凄さを感じる映像の数々でした。金を違法に採掘し、水銀を川に垂れ流す違法業者は銃で武装しています。彼らは邪魔者だと思えば拉致も監禁も辞さないでしょう。そのリスクを冒しながら撮影>>続きを読む
9割は心が苦しくなるミュージカルという珍しいジャンルでした。カタルシスらしきものは最後に少し置かれているだけで、基本的にずっと主人公の苦悩が描かれます。キャッチコピーやテザーの明るさを期待すると、肩透>>続きを読む
無理のない美しさと静かな時間の流れが心地よい短編でした。国際的な大会が終わった後の街は、レガシーが撤去されて静かな日常を取り戻していきます。そこで一瞥した二人。出会ったというほど濃厚な接触ではなく、か>>続きを読む
国際的なスポーツ大会では、しばしば国家による介入を目にします。その内実をうまく描き出した作品でした。本作に出演してもいる監督はフランスに亡命済み、もちろんイランでは上映禁止という背景を知ると、「ただ、>>続きを読む
心に深く刺さる名作でした。ネオンが輝くクアラルンプールの一角に住む忘れられた人々。身分証明書(ID)が受け取れない二人の若者は、必死に生きる側から生きる術を奪い取られていきます。二人を聖人君子にするの>>続きを読む
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルにて鑑賞。激動の沖縄史の中での石川さんの輝きが眩しく、一言ずつが重かった。彼女が人工肛門を見せながら「撮られなければならない」と語る姿は、痛々しさではなく神々し>>続きを読む
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルで鑑賞。花子の母親は彼女の介助者であるというよりも、彼女の制作行為を作品へと仕上げるディレクターのようだった。彼女が畳の上に食べ物を置いてしまうことを、「汚い」>>続きを読む
ルーマニアの田舎街で勤務する絵に描いたような小役人の警察官が主人公です。パートナーの若い警察官が細かいこと(道のゴミを拾うとかシーツ泥棒をちゃんと捜査しようとするとか)に気づこうとする一方で、主人公は>>続きを読む
主人公およびストーリーに共感できなかったので、劇中の曲も甘ったるく感じてしまいました。罵声を浴びながらも彼を許す兄、農場を売って彼をサポートできる中産階級の両親、彼の感情の浮き沈みを宥める感情労働に従>>続きを読む
法服を着た番人たちの顔写真が、ここまで残酷に映るとは。日本の刑事司法制度における裁判官の役割と、その権力の大きさをまざまざと見せつけられた。東海テレビが撮り溜めてきた映像を惜しみなく使って、名張毒ぶど>>続きを読む
全編を通じて不思議なドキュメンタリーだった。映されているのは新型コロナウイルスの感染拡大から日常を取り戻していくアムステルダムの風景。しかしナレーションはナチスに占領された時期のアムステルダムの記憶。>>続きを読む
1980年代から2000年にかけての激動の中国を生きた若者たちの物語。天安門事件からベルリンの壁崩壊、そして深圳を中心とする高度な経済発展へという荒波は、人々の生を飲み込んでいく。天安門事件の惨劇をト>>続きを読む