【大人向けおとぎ話】
チェコのアニメ作家ヤン・シュヴァンクマイエルが監督を務めたファンタジー作品
〈あらすじ〉
雑然とした部屋で、人形を使って「アリスごっこ」を始めたアリス。すると突然、ガラスケースの白ウサギの剥製が動き出し、慌てた様子で机の引き出しの中へと消えていく。アリスはウサギを追い、いつしか奇妙な世界へと迷い込んでいく…。
〈所感〉
原作の『不思議の国のアリス』すらまともに見たことがなかったが、恐らくシュールでダーク寄りな作風でとても楽しめた。先入観が全くないからこそ純粋に映像としてファンタジックでアーティスティックな摩訶不思議な世界観を楽しむことができた。登場するキャラクターや建物、小道具はすべてありふれた日用品で構成されており、その雑然さが非日常への扉を開き、絵本の中の小道具として変貌している点が興味深い思った。ウサギの破れたお腹からおが屑がボロボロと落ちてくる表現が写実的で不気味さもあって好み。少女アリスの幼い故の危険と隣り合わせの無邪気さが次々と邪悪な展開を産んでいき、話が進むにつれ加速度的にエントロピーが増大してカオスが増していく感じが堪らない。子供だもの、そりゃなんでも口にするよな。そんで人形になったり、また戻ったりしてちょっとずつ学んでいるようで学んでいないような見えにくい成長。アリスを演じた女の子がまさにメルヘンなおとぎ話の中からそのまま出てきたように可愛いのでずっと見ていられる。