Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

LTE 【Long Term Evolution】

概要

LTE(Long Term Evolution)とは、携帯電話・移動体データ通信の技術規格の一つで、3G(第3世代)の技術を高度化し、音声通話のデータへの統合やデータ通信の高速化を図ったもの。当初は3Gと4G(第4世代)の中間の世代とされていたが、現在ではLTE-Advancedと共に4Gの一つとされる。

第3世代のW-CDMACDMA2000などの方式を置き換えるべく開発された方式で、主にパケット通信が高速化されている。通信事業者の設備や通信端末の仕様、電波の利用可能帯域や混雑具合などにより異なるが、下り(基地局→端末方向)が10~300Mbpsメガビット毎秒)、上り(端末基地局)が5~75Mbpsでの通信が可能となっている。

主な技術仕様

一つの通信路を複数の加入者で共有する多元接続multiple access)の手法として、下り方向はOFDMOrthogonal Frequency Division Multiplexing直交波周波数分割多重)を応用したOFDMAを、上り方向はFDMFrequency Division Multiplexing周波数分割多重)を応用したSC-FDMA(シングルキャリアFDMA)を採用している。

使用する周波数帯域幅は1.4MHz幅から20MHz幅まで何段階か用意されており、帯域幅が広いほど高速に通信できる。各国・地域の規制当局が通信事業者に具体的な周波数帯域を割り当てているが、概ね、700MHz~3.5GHzまでの間で3G向けに割り当てられたものから順次切り替えられている。

搬送波に信号を乗せたり取り出したりする変調方式QPSKQuadrature Phase Shift Keying四位相偏移変調)、16QAM(16-state Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM(64-state Quadrature Amplitude Modulation)のいずれかを選択して使用する。

独立した複数の周波数帯域を束ねて一体的に運用することで通信を高速化する「キャリアアグリゲーション」(CACarrier Aggregation)の仕組みが定められており、2つの周波数帯を束ねれば2倍、3つ束ねれば3倍の速度で通信できる。

FDD-LTEとTD-LTE(LTE TDD)

基地局端末の間の上り方向と下り方向の通信路の分割方式として、当初は割り当てられた周波数帯域を上り用と下り用に分割するFDDFrequency Division Multiplexing周波数分割多重)方式が採用された。これを「FDD-LTE」という。

一方、上りと下りが同じ周波数帯域を使い、極めて短い時間毎に通信方向を反転させるTDDTime Division Multiplexing時分割多重)を利用する方式を「TD-LTE」あるいは「LTE TDD」という。

分割した単位時間をどの方向にどのくらいの割り当てるかを変更することで、上りをある程度犠牲にして下りを高速化するといった対応を柔軟に行うことができる。ただし、タイミングのズレが起きないように各単位の間に無通信の隙間時間を挟む必要があるため、その分通信効率が下がる。

単にLTEといった場合はFDD-LTEを指すことが多く、TD-LTEは採用を強く主張した中国の通信事業者を中心に使われている。日本ではソフトバンクの「SoftBank 4G」が実質的にTD-LTEと同一のAXGPを採用している。

音声とデータの統合

3Gまでの仕様では音声通話用の通信方式とパケット通信データ通信)の仕様が別々に定められていたが、LTEでは音声信号をデジタル化してパケット通信で伝送するVoLTEボルテVoice over LTE)が標準となり、音声のみの通信仕様は廃止された。

LTEサービス導入当初はVoLTEが使用できない状況に対応するため、3G仕様による音声通話モードに自動的に切り替えるCSFB回線交換フォールバック)と呼ばれる仕組みが用いられた。

標準化

LTEの仕様は主要各国・地域の通信関連の標準化団体が集まる3GPP(3rd Generation Partnership Project)が策定した国際標準で、対応機器や端末は国をまたいで同じものが使用できる。

LTE規格は2009年に3GPP Release 8として発行され、追加仕様が2010年に3GPP Release 9として規格化された(Release 10以降はLTE-Advanced)。各国での商用サービスは2010年末頃から順次開始されている。

使用可能な周波数帯域が国ごとに異なるため、端末が対応している帯域で契約事業者や提携事業者のサービスが提供されていることを確認する必要がある。また、FDD-LTEとTD-LTEは通信方式が異なるため、利用したいサービスが採用している方式に対応した端末を用意する必要がある(両対応の機種もある)。

「4G」の呼称

もともと、3Gのデータ通信を高速化した拡張仕様のHSPAHSDPA/HSUPA)やHSPA+が「3.5G」(第3.5世代)と呼ばれており、第4世代はLTEを高度化した「LTE-Advanced」であると位置付けられていたため、LTEは両者の間を埋める「繋ぎ」の方式として「3.9G」「Super 3G」のように呼ばれていた。

ところが、LTEの商用化が近づくと一部のメーカーや通信事業者HSPA+やLTEを4G方式と宣伝し始めたため、国際電気通信連合・無線通信部門(ITU-R)が混乱を避けるためこれを追認し、2010年12月に高度化3G規格も4Gと呼称してよいとする声明を発表した。以後、なし崩し的に次々にLTEを4Gと呼ぶ事業者が相次ぎ、現在ではLTEが4G、LTE-Advancedが4Gと5Gの間を埋める「繋ぎ」のような位置付けになってしまった。

日本ではNTTドコモが他事業者に先駆けて2010年末にLTE方式の「Xi」(クロッシィサービスを開始し、「3.9G」「Super 3G」と位置付けていた。一方、auKDDI/沖縄セルラー)はLTEサービスを「au 4G LTE」の名称で、ソフトバンク(当時はソフトバンクモバイル)は「SoftBank 4G LTE」の名称で、2012年9月に相次いで開始した。

ドコモは2015年にLTE-Advanced方式の「PREMIUM 4G」を開始し、あくまでLTE-Advancedを4Gに位置付けていたが、翌2016年にはXiを「4G」、PREMIUM 4Gを「4G+」と表記するよう改め、事実上LTEを4Gとすることを認める形となった。

(2019.8.15更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

試験出題履歴

ITパスポート試験 : 平30春 問89

この記事を参照している文書など (外部サイト)

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。