インテル(米Intelの日本法人)は6月23日、報道関係者向けのセミナーを開催した。このセミナーはIntelのビジネス状況とそれを踏まえた日本におけるインテルの活動方針を紹介するために四半期に1回のペースで行われる。
今回は、セミナー冒頭で行われた鈴木国正社長の講演の中から、特に注目すべき内容をピックアップして紹介する。
Intelは3月に「IDM 2.0」という新たなビジネスモデルを披露した。半導体の「設計/開発」「製造」「販売」を全て手がけるIDM(垂直統合型デバイス製造)を堅持しつつ、自社が設計した半導体を外部ファウンドリー(半導体受託生産者)でも生産したり、逆に他社が設計した半導体を自らがファウンドリーとして生産したりするという戦略だ。
IDMをメインに据えるIntelにとって、サプライチェーンは非常に重要な課題の1つである。半導体について世界からの遅れを指摘されがちな日本だが、日本の企業は半導体のサプライチェーンにおいて非常に重要な役割を果たしているという。
Intelでは毎年、半導体の製造に必要な資材のサプライヤーを表彰する「Intel SCQI(Supplier Continuous Quality Improvement) Program Award」を実施している。賞は上位から「SCQI(Supplier Continuous Quality Improvement) Award」「PQS(Preferred Quality Supplier) Award」「SAA(Supplier Achievement Award)」の3つが用意されており、SCQI AwardとPQS Awardの受賞企業31社のうち16社が日本企業だったという。
同社の半導体製造の品質向上に日本企業は欠かせない存在なのだ。
半導体生産において日本企業が大きな役割を果たしている一方で、ICT(情報通信技術)で使われる「先端半導体」において日本の存在感はそれほど大きくない。それを反映してか、日本はデジタル分野での取り組みが諸外国と比べて遅れがちと言われる。
鈴木社長はスイスのビジネススクール「IMD(International Institute for Management Development)」が毎年実施している国際競争力ランキングの結果を引用して、日本が「デジタル後進国」になってしまったと指摘する。
2019年調査では、日本は全体で30位、デジタル分野で23位となっていたが、2020年調査ではそれぞれ34位と27位に下がっている。経済全体だけではなく、デジタル分野でも「競争力が相当に失われている」状態なのだ。
競争力の低下に拍車を掛けうるものとして、労働者不足も挙げられる。パーソル総合研究所と中央大学経済学部が共同で実施した「労働市場の未来推計 2030」によると、2030年の労働人口は、ごく一部の産業において余剰が生じるものの、全体としては644万人の不足になることが見込まれるという。
労働力不足はデジタル分野も例外ではない。昨今インターネットを介した「サイバー攻撃」が増えており、その手口も高度化している。しかし、サイバー攻撃に対処するセキュリティ人材は慢性的に不足している。デジタル分野の出遅れは、人材面にも原因があるのだ。
このような課題にどう対処するのか――ここでIntelが提唱する「DcX(データセントリックトランスフォーメーション)」の出番となる。いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を日常から生み出される“データ”を中心に据えて進めていこうという考え方だ。
インテルでは既に、自治体や企業と協力して、データを使った省力化や社会課題の解決に向けた実証実験を実施している。その結果を、製品やソリューションに反映することで、社会全体の課題解決につなげていこうとしている。
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