米Googleも、もう創業18年です。2015年には持ち株会社制に移行し、親会社のAlphabetともども大人になってきてはいますが、まだまだ人工知能(AI)や仮想現実(VR)など、IT企業の先頭集団でチャレンジし続けています。
海外ニュース担当の筆者は、2016年もGoogleについて250本以上の記事を書きました(ちなみにFacebookは130本くらいでした)。2016年のGoogleについて、幾つかのトピックにまとめて振り返ってみます。
GoogleのAI技術を世界に知らしめた囲碁プログラム「AlphaGo」。印象深いのは3月に行われた韓国トップ棋士の李世ドル九段との歴史的な対局ですが、1月にもプロ棋士と対戦して完勝しています。後から考えると、李世ドル氏が1勝できたのはものすごいことだったのかもしれません。
米Googleのスンダー・ピチャイCEOは4月、「Googleは“モバイル第一”から“AI第一”の世界にシフトする」と宣言しました。実際に2016年は宣言通り、AIやら機械学習やらディープラーニングやらニューラルネットワークやらに関連する取り組みがたくさん発表されました。
AIでトップ棋士と囲碁をしたり、気持ち悪い絵を描いたりするだけでなく、読唇(どくしん)など、すぐに社会で役立ちそうな技術も開発しています。
GoogleはAIにかなり前から取り組んでいますが、2016年は「Googleフォト」「Google Now」「Google翻訳」など、実際のサービスにどんどんAIを採用していったのが目立ちました。
極め付きは「Googleアシスタント」です。Appleの「Siri」やAmazon.comの「Alexa」、Microsoftの「Cortana」と競う技術なのに、この味気ない名前はちょっとかわいそうですが、ログインしたユーザーの全サービスでの行動履歴を把握しているのはGoogleアシスタントの強み。今後どこまで便利になっていくのか楽しみです。
GoogleでAIの中心になっている組織は、2014年に買収した英DeepMindです。ここは今のところ、かなり独立した運営でうまくいっているようです。
残念なのは、AR技術の「Google Tango(旧Project Tango)」や組み立て式スマートフォンの「Project Ara」など、とんがったプロジェクトを推進してきた先端技術開発チームのATAP(Advanced Technology & Projects)でカリスマ的なリーダーだったレジーナ・デューガン氏がFacebookに引き抜かれてしまったことです。
その後、Project Araは中止になりました。Google Tangoについては、2017年1月開催のCESで幾つか新端末が発表されるとのうわさもあるので、期待したいところです。
組織の問題については、もう1つ、スマートホーム企業のNest Labsがあります。2014年に買収したNestはGoogle傘下ではなく、Alphabetのいわゆる「その他」の1つです。普通に考えれば「Android Wear」や「Google Home」などIoT的な事業とNestを一緒にしたいところですが、そうはなっていないところがもやもやしていました。
そのうち、Nest Labsのトニー・ファデルCEOとNestが買収した企業の従業員との軋轢(あつれき)などのうわさが聞こえてきたと思ったら、結局ファデル氏はCEOを退任してしまいました。現在は元Motorolaのマルワン・ファワズ氏が後任を務めています。
Googleはロボット事業も順風満帆とは言えません。Alphabetは1月、Googleの“ムーンショット”部門「Google X」をAlphabetのその他部門「X」にし、ロボット事業もXに統合しましたが、不気味かわいいワンコ型ロボットでおなじみのBoston Dynamics(2013年買収)は別扱いでした。そして、3月には売却を検討しているといううわさが出ましたが、今のところ売却していません。
Xでの自動運転車プロジェクトでも、立ち上げメンバーの最高技術責任者が退社したり、大量に人が切られたりして、大丈夫なのかと思いましたが、Alphabetが12月になって自動運転プロジェクトを「Waymo」という独立子会社にしたと発表しており、当面は存続しそうです。
Android関連では個人的に「Nexus」ブランドの終了と「Pixel」ブランドの誕生、そしてPixelがなかなか日本で発売されないというのが一番残念なことでした。Chrome OSがAndroidに統合されるかも……といううわさも気になるところです。
Android TVやAndroid Wearについては華やいだ話がなく(というか、Android Wear自体が大丈夫なんだろうかという状態)、1年が終わろうとしています。こちらもCESに期待です。
12月になって、「Android Things」というGoogleにしては分かりやすい名前のOSが発表されました。名前の通り、IoT(Internet of Things)向けのAndroid OSで、「Project Brillo」がベースだそうです。
ここでGoogleの動向に詳しい方は、「あれ、OSプロジェクトのFuchsiaは? あれもIoT向けなのでは?」と思ったことでしょう。実はBrilloはNestのプロジェクトだったので、これまた社内調整が必要な案件なのかもしれません。
恐らく2017年にリリースされるであろう次期Androidは、アルファベットの順番でいくと「Android O」です。Androidの開発コード名に欠かせないお菓子の名前は、オレオなのかオレンジピールなのか、楽しみではあります(オレオになったら、2月にライセンス契約が終了になった山崎製パンは残念だろうなぁ……)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.