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2011 Anime Study Haruhi Suzumiya’s Melancholia 第1話(11話)長門有希が朝比奈みくるを押し倒して  いきなり“仮構内仮構”のメタフィクションから始まりましたが、ミクルビームを放とうとしたみくるを長門が地面に押し倒して、、、 エッチしようとしてるのではなくて、実はハルヒは気がついてなかったけど、、、 原因はハルヒにあったのだけど、、、長門は何をしてたのでしょう? いきなり猫(しゃみせん君)がしゃべり始めて  長門の肩の上の猫が突然しゃべり始めてますね。 ハルヒは何とも思ってないようですが、やはり原因はハルヒにある筈。 ここでも長門がさりげなくフォローして場を収めてます。 第2話 (1話)ハルヒ髪型  曜日と髪型と関連がある。 “共感覚”の発想や“魔法陣”の理念等と対照して考えると、“魔法”の根本原理であるコレスポンデンス(万物照応)の発想が見えてくる。存在物の物理的特性だけでなく、その姿形やその折々の“見え方”にも深い意味と実質が反映されている。“科学”は魔法の有機的連関を持つ世界観を否定するところにその根本前提があるので、科学的世界観に従えばこのような関連性は全く無く、世界には基本的に意味はない。 おまけ コスプレと着替え 下着シーン  科学は何に対しても原理的な意味などは認めず、ただ偶然の結果があるだけの現象として全てを理解しようとする。だから感動や感謝は独りよがりの妄想に過ぎない。でもハルヒは神なので、色んなことで萌えさせてくれます。 テレビ放映順序と内容的順番  『涼宮ハルヒの憂鬱』ファースト・シリーズでは、テレビの放映順序が攪乱されていて、見事にストーリーの進行が破綻しています。番組末尾の「次回予告」でハルヒが語っているのが、内容からみた時の正しい順番です。キョンが訂正しているのが、実際の放映順に従ったエピソードの順番です。つまりどちらも正しいのです。ハルヒ・ヴァージョンとキョン・ヴァージョンと、全14話のエピソードを二通りの配列に従って観てみると、それぞれなりのクライマックスを迎えて印象的なエンディングとなる最終話が2通りあることが分かります。以下に放映順と内容順の対照表を示します。左が放映順です。  01ー11  02ー01  03ー02  04ー07  05ー03  06ー09  07ー08  08ー10  09ー14  10ー04  11ー13  12ー12  13ー05  14ー06 繰り返して観ると伏線がいっぱいあります  セカンド・シーズンから観始めた人もかなり多いでしょう。  作品の世界像が理解できてから最初から見直す作業を行ってみると、気付かなかった伏線をいくつも発見することができます。講義でファーストを検証しながら、改めてセカンドを観直してみると、さらに色々なことが判ってくるはずです。 第3話 (2話)科学  科学の前提仮説を客観的に捉えるためのキーワードが揃っていました。  謎(mystery)  自然(natural)  奇跡(miracle)  必然(inevitability)  ハイペリオンとゼウスとアポロ  情報統合思念体  インターフェイス  コンピュータ研究会での端末強奪事件とか、キョンにとっては色々大変そうなことばかりのようですが、実はハルヒとみくるのバニーガール姿も見られたし、何と言ってもキョンに訴えかけるみくるの魅力的な姿も、我儘勝手なハルヒの行動が引き起こした結果なのです。 奇跡と鏡  “miracle”も“mirror”も、実際に語源は同じなのであった。語源のラテン語“miraculum”は、“wonderful thing”あるいは“marvel”と同様の意を持つ言葉である。また“mirari”は、“to wonder at”の意となる。そして“mirus”は、“wonderful”の意味であった。だから“admire”(称賛する)も、“mirror”と同様の語源を持つ言葉となるのである。つまり“鏡”(mirror)は鏡面的対称物として自我の影の存在を際立たせる機能を果たし、魔法の顕現の優れた小道具として用いられ、“奇跡”(miracle)の到来を約束する鍵となるからである。このような深淵な原理機構を隠し持つ宇宙の本質に対する崇敬の念こそが“賞賛”(admiration)と呼ばれるべきものなのであった。  『最後のユニコーン』(The Last Unicorn)における魔法の原理についての論考ですが、主題的にぴったり重なるのでここに引用します。 「アンチ・ファンタシーの中の英雄─『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬」 https://www.academia.edu/7865408/Fabulous_Hero_in_Antifantasy_2 ハイペリオン(Hyperion)  長門有希が部室で読んでいた本は、ダン・シモンズの『ハイペリオンの没落』でした。ダン・シモンズには以下のハイペリオンの4部作があります。  Hyperion (1989年) 『ハイペリオン』  The Fall of Hyperion (1990年) 『ハイペリオンの没落』  Endymion (1996年) 『エンディミオン』  The Rise of Endymion (1997年) 『エンディミオンの覚醒』  この物語の中では“ハイペリオン”は一つの惑星の名ですが、イギリスの詩人ジョン・キーツの詩と、ギリシア神話に語られた神々の戦いの主題も複雑に絡んでいます。 ハイペリオンと科学  古代ギリシアの神々が人間達の信仰を支えとして展開していた、整然とした秩序のある理性的把握が可能なロゴス空間は、人々の信仰と神々の権能が失われた時には秩序の崩壊と“カオス”という無秩序の侵蝕を余儀なくされる不安を予知するものでもあった。ギリシア神話の神々は、タイタン族との熾烈な戦いの中でゼウスの開発した新兵器“雷”を武器に彼等の仇敵を駆逐し、かろうじて世界の支配権を手にすることになったのである。苛酷な抗争と必死の創意工夫の結果ギリシアの神々が打ち立てた内部秩序が“コスモス”と呼ばれるものであり、その整然とした安定性は人による信仰を土台として始めて維持されるものであった。当然の事ながら“コスモス外”には、他の神格の勢力圏であるコスモス的秩序とは別種の異次元空間が存在し、その敵対要素の反映はコスモス内においてさえも“カオス”の滲出としてしばしば認知されていたものである。理性の機能の保証された空間とは、実は普遍性の対極とも言うべき甚だしく閉塞的な場だったのである。結局のところ“科学”も、“全能”ならざるもの達の考案した制約ある権能を暫定的に増幅するために創出された、普遍的覚知の一断面に過ぎない不完全な仮説として理解されるべきものだろう。 アニメ『Ergo Proxy』に関する論考ですが、主題的に重なるので引用します。 『エルゴ・プラクシー』における神と人と“自分”(1) https://www.academia.edu/7892277/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_1 第4話 (7話)  みくるちゃんが淹れてくれるお茶ですが、キョンのと古泉のと長門のと、お茶碗は決まってるようです。文芸部なのに本棚にはかなり専門的な本が並んでます。どのアニメも、本棚は裏情報の隠し場所として要注意です。 局地的な環境情報の改竄は、  「惑星の生態系に後遺症を発生させる可能性がある。」いかにも長門らしいセリフが語られています。 鶴屋さん登場  ハルヒに負けないマイペースな人です。この人がいなかったら、主人公涼宮ハルヒの与える印象はもっと耐え難いものになっていたことでしょう。キャラクターの構成に厚みを与える、演出上の説得力を感じさせる優れた人材です。神は細部に宿るばかりでなく、全てが神秘を内包させていることを予感させてくれるのが、このようなキャラクター造形です。 閉鎖空間?  「まずい事になりましたよ。これまでにない規模の閉鎖空間が発生し始めました。あなたが前回あちらの世界に行った時、、、」 「呪文を唱えて、、、 属性情報のブースト変更」 第5話 (3話)長門有希が自分の正体を語る。  “情報思念体”によって造り出された“インターフェース” 朝比奈みくるが自分の正体を語る  未来人みくる 古泉一樹が自分の正体を語る  エスパー一樹 みくるちゃん萌えシーン集  サービス、サービス!胸元に見えるほくろについては、後に言及されることになります。 時空連続体  この世界の実相は時間と空間が次元として断絶することなく繫がっている、とするのが「時空連続体」の考え。立体図形を転がすことによって底面と側面が反転したり、押しつぶすことによって底面や側面の大きさを変化させることができるように、時間も空間を操作することによって変形させ得ることになる。そのように時間を意識した結果「時間平面」、「時間振動」「時間の断層」、「時間の歪み」等の、空間に当てはめていた概念を時間にも拡張する発想が生まれる。  時空は連続体ではあっても、世界の物理現象は“不連続”に生起する。その基本単位となるものとして発見されたのが“プランク定数”。さらに「固体—液体—気体」のように、物質の形状は特定の温度(エネルギー量)を境目にして全く異なった様相を具現する。このような“相転移”については物質の形状に限らず、物質を形成する要素となる“量子存在”や時間、エネルギー等の転移においても不連続的に跳躍的変転が起こることが知られている。この“量子飛躍”の最も身近な例が、原子核の中の電子が保持するエネルギーに従ってその軌跡を変える現象。 粒子と波動と情報  ニュートンは世界の基本を質量を持った粒子の運動として捉え、引力という力の作用を数学的に計算して飛行や衝突という現象を力学的に統合して記述することに成功した。これが本来の「科学」の前提であった。  しかし物質原子を形成する量子段階で捉えた時、“延長性”を持つ単位物質としての“物質粒子”という記述モデルがもはや通用しないことが明らかになり、“離散的”な現象記述を可能にする“波動”という代替モデルが粒子モデルの変換記述として成り立つ事実が広く受け入れられることになった。  実は“粒子”も“波動”も意味を持った計算可能な概念なので、むしろこれら双方を成立させる“情報”そのものを宇宙の実際の基礎単位として捉え、これまで計算式の結果出現していた虚数の解や特定の振動数を持つ“ひも”(string)という仮想的な概念を新たに基軸にして世界の実相を捉えようとするのが、現在の“新しい科学”(new science)の傾向である。 長門のセリフ 聞き取れた分だけ、、、(受講生による書き込み)  涼宮ハルヒの事そして私の事あなたに教えておく。上手く言語化できない。 情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でも、聞いて。 涼宮ハルヒと私は、普通の人間じゃない。 そうじゃない性格に普遍的な性質を持っていないという意味ではなく、文字通りの意味。彼女と私はあなたの様な大多数の人間と同じとは言えない。 この銀河を統括する情報統合思念体によって作られた、対有機生命体コンタクト用・ヒューマノイドインターフェースそれが私。 通俗的な用語を使用すると、宇宙人に該当する存在。 私の仕事は、涼宮ハルヒを観察して入手した情報を統合思念体に報告する事。 産み出されてから3年間、私は、ずっとそうやってきた。 この3年間は特別な不確定要素がなくいたって平凡。 でも最近になって無視できないイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲に現れた。 それが、あなた。 情報統合思念体にとって銀河の辺境に位置するこの星系の第3惑星に特別な価値などなかった。 でも、現有生命体が地球と呼称する、この惑星で進化した二足歩行動物に、知性と呼ぶべき秘策能力が芽生えた事により、その重要度が増大した。 もしかしたら自分達が陥っている自律進化の閉塞状態を、打開する可能性があるかもしれなかったから。 宇宙に遍在する有機生命体に、意識が生じるのは、ありふれた現象だったが、報知の知性を持つまでに進化した例は地球人類が唯一だった。 統合思念体は注意深く、かつ綿密に観測を続けた。 そして3年前、惑星表面で他では類を見ない異常な情報触フレアを観測した。 弓状列島の一地域から噴出した情報爆発は、瞬く間に惑星全土を覆い、惑星外空間に拡散した。その中心にいたのが涼宮ハルヒ。 以後三年間、あらゆる角度から涼宮ハルヒという個体に対し調査がなされた。 しかし未だその正体は不明。 それでも統合思念体の一部は彼女こそ人類の、ひいては情報生命体である自分達に自律進化のきっかけを与える存在として涼宮ハルヒの観察を行った。 情報生命体である彼らは有機生命体と直接的にコミュニケートできない。 言語を持たないから、人間は言葉を抜きにして概念を伝達するすべを持たない。 だから私の様な人間用のインターフェースを作った。 情報統合思念体は私を通して人間とコンタクトできる。 涼宮ハルヒは自律進化の可能性を秘めている。 恐らく彼女には、自分の都合のいいように周囲の環境を操作する力がある。 それが私がここにいる理由。あなたがここにいる理由。   <なぜ俺に正体を明かす?>  ↓ あなたは涼宮ハルヒに選ばれた。 涼宮ハルヒは意識的にしろ無意識的にしろ、自分の意志を絶対的な情報として環境に影響を及ぼす。 あなたが選ばれたのには必ず理由がある。 あなたと涼宮ハルヒが全ての可能性を握っている。 <そんな話は直でハルヒに言った方が喜ばれるぞ>  ↓ 情報統合思念体の意識の大部分は涼宮ハルヒが自分の存在価値と能力を自覚してしまうと予測できない危険を生む可能性があると認識している。 今はまだ様子を見るべき。 <俺がハルヒに伝えるかもしれないじゃないか>  ↓ 彼女はあなたがもたらした情報を重視したりしない。 情報統合思念体が地球に置いているインターフェースは私1つではない。 情報統合思念体の意識の一部は積極的な動きを起こして情報の変動を観測しようとしている。 あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。危機が迫るとしたら、まずあなた。 (一部、聞き取りが困難なため漢字変換に確信を持つことができない箇所もありました。) 第6話 (9話)システム構造  システム構造の様式として“閉鎖系”、“解放系”、“循環系”の3つの異なる構造体があることが知られています。  詳しくは以下の論文を参照して下さい。 量子論理とパラドクスと不可能世界 ─アクチュアリズムとアンチ・ファンタシー2 https://www.academia.edu/9934010/Quantum_Logic--Paradox--Impossible_Worlds_Actualism_and_Antifantasy_2 手紙を破り捨てる少女  「孤島症候群」前編の本話の冒頭、フェリーのデッキで手紙を裂いて風に飛ばす少女の姿が映し出されています。しかし彼女は何者なのか、何故そのようなことをしているのか、理由や背景は分かりません。現実世界はフィクションのように大事な宝物を勝ち取ったり敵を倒したりなどという、作品の全体像を決定すべき価値原理が示されることもなく、さらに始まりや終わりがある訳でさえもなく、ただだらだらと無意味に夾雑物に溢れた事象が連続しているだけです。我々の生きる現実世界には一つ一つの行為の意味を判断するための根本基準も価値原理も定められていないのです。つまり、フィクションのように完結した“閉鎖系”になっていないという点で、あるがままの現実世界は意味的に“解放系”構造に基づくものであるといえます。そのような無目的的な世界像の反映が仮構としてのハルヒの世界に侵入しているのがこの場面です。  この主題は、新傾向のアニメ作品に見られる“ハイパーナチュラル”の要素として、『Madlax』や『グラスリップ』等の興味深いアニメ作品の演出手法を考察する際のキーワードとなりました。以下にこの理念について語った論文のリンクを示します。 アニメ『Madlax』におけるジャンル規定概念の撹乱:パースペクティブを解体した不定形の仮構と原型あるいは仮構内リアリティ(1) https://www.academia.edu/23192477/The_Annihilation_of_Genre_Axes_in_Madlax_Amorphous_Fiction_of_Dislocated_Perspectives_and_Archetypes_Fictional_Reality_1 第7話 (8話) 長門のSF的セリフがいっぱいでした。 部長の本棚  書名が部分的に改竄されています。修正前の正しい作品名を推測して下さい。 戦場ヶ原ひたぎの本棚  参考に、『化物語』のひたぎの部屋の本棚と比較してみて下さい。SOS団の部室の本棚も要注意です。 位相遷移と連続体  3次元立体であれば転がして側面の一つを底面に置き換えることにより、縦・横・高さの次元を変換することは容易になし得ます。4次元連続体として3次元立体と時間次元が繫がっているのであれば、同様に“転がす”操作を行って任意の一つの次元を他の次元に置き換えることが理論的には可能になるでしょう。長門有希の説明の多くが時間を3次元立体を語る概念で規定するなど、他の次元概念との接合という概念操作の結果となっていることが分かります。これに倣って類似の思考を行い、次元や観念の位相遷移の例を示すと思われる用語をでっち上げて報告してみて下さい。 古泉君と『ふもっふ』  カマドウマにアタックをかける小泉君は「ふもっふ!」とかけ声をかけています。第2弾は「セカンドレイド」の声と共に打ち込んでました。  『ふもっふ』は戦争ボケしたヒーロー相良宗介が活躍する『フルメタル・パニック』のギャグ版シリーズのタイトルですが、『フルメタル・パニック』のセカンド・シリーズは「セカンドレイド」と銘打たれています。小泉一樹はフルメタのファンだったのですね。『涼宮ハルヒの憂鬱』にはその他にも『マクロス7』ネタが結構あると噂されています。見つけたら指摘してみて下さい。 第9話 (14話)  ある日の部室風景 固定カメラによる反復映像、事実上の最終話 着替えシーンもあるのだが、   長門が、邪魔して、 カメラワークの妙  事件の無い日常を語る独特の演出効果 鶴屋さん登場と退出  鶴屋さん、ここでもいい味出してます。入れ替わりにキョンの帰還。 向かいの校舎の廊下を行く鶴屋さん。アニメ史上最高の構図でした。もしも実写だったら、撮影監督はしかられていた? 思わずうとうと  このエピソードの演出で、アニメ史上類を見ない傑作が誕生した。 幻の最終話 原風景の完成 いつのまにか眠り込んだキョンにカーディガンをかけてくれたのは、長門だけではない。思いがけない優しい態度を示したハルヒ。目を覚ました後は、いつも通りのハルヒ。 第11話 (13話)  コンピュータ研の挑戦を受けて電脳空間の模擬戦闘を行うSOS団です。CGを活用した宇宙会戦の画像が極めてリアルですが、実はこの世界もハルヒの無意識の中から現出した“実体化した妄想”だったのでした。ヴァーチャル・リアリティとリアリティの間には“リアル性”において何ら変わるところはないのです。これについては、エロゲー『Fate/stay night』について仮構世界と現実世界のシステム構造的比較を行い、その可能世界としての意外な類似性を指摘した以下の論考を参考にして下さい。 Identity of Summoned Heroes: Aspects of Psyche and Phases of Persona in Fate/stay night https://www.academia.edu/7884950/Identity_of_Summoned_Heroes_Aspects_of_Psyche_and_Phases_of_Persona_in_Fate_stay_night 第12話 (12話)  初回放映で我々が見たハルヒ超監督の学園祭自主上映作品の後を受けて、第12話目でようやく学園祭当日のエピソードが語られています。  エスパーの古泉一樹君は1−9クラス自主上演の劇に出演しているところです。演目はトム・ストッパードの「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」。「ハムレット」の中で主人公ハムレットに翻弄され、無様な最期を迎える哀れな端役の二人を敢えて主人公に据えて、世界の主軸となり得ない無目的的存在の意味性喪失の実態が描かれたのがこの現代劇でしたが、ハルヒのみが中心にあってその他は全て実は端役に過ぎない自分達の実態をよく理解しているのが、古泉君のようです。  古泉君が劇中で語っている台詞「蓋然性の現象としての収束」は、第13話でタクシーの中でキョンに語る“観測効果”と“世界の創成”にそのまま繫がっています。確率でのみ語られて現象としての結果を具現していない重ね合わせ状態は、意識の主体による“観測行為”との相互作用によって現象を確定することになります。この過程が“デコヒーレンス”(decoherence)状態からの“コヒーレンス”(coherence)の出現と呼ばれるものです。ちなみに第12話は内容順でも第12話、第13話は内容順では第5話に当たっていました。放映順序の攪乱の妙がここにあると言えます。 ハルヒの歌っていた歌詞 “God knows” というタイトルでした。下に書き写してみます。 乾いた心で駆け抜ける ごめんね 何もできなくて 痛みを 分かち合うことさえ あなたは 許してくれない 無垢に 生きるため 振り向かず 背中向けて 去ってしまう on the lonely rail 私 ついてくよ どんな 辛い世界の闇の中でさえ きっとあなたは 輝いて 燃える 未来の 果て 弱さ故に 魂壊されるように my way 重なるよ 今 二人に God bless   あなたがいて 私がいて 他の人は 消えてしまった 淡い夢の 美しさを描きながら 傷跡なぞる だから 私 ついてくよ どんな 辛い 世界の闇の中でさえ きっとあなたは 輝いて 燃える 未来の 果て 弱さ故に 魂壊されるように my way 重なるよ 今 二人に God bless  “God knows” の意味は、「神のみぞ知る」、つまり「神以外には分からない」、「どうなんだろう?」ということになります。 リフレーンの “God bless” は、 「神よ祝福をあたえたまえ」 重ね合わせと観測効果  観測効果による事象としての収束を得る前の量子的宇宙存在は、複数の相反する状態の重ね合わせです。ああであったりこうであったり、種々様々の全ての潜在的可能性が可能性のままで控えている状態です。プレイする前のディスクの中に用意された、全ての可能性を含むゲーム世界の原材料と同じと考えると分かりやすいでしょう。この事実を別の側面から語り直せば、「平行する多世界が無数に存在する」、という描像になります。物質存在と量子存在の違いは、従来の人間理性の理解の限界を超えたものだったのです。 “God knows” と “Lost my Music” 受講生の質問  「弱さ故に魂こわされぬようにmy way重なるよ」の部分、 去年までNHKで放送していた番組に出演した作詞の畑亜貴さん本人が、 「何が重なるんだ」と自分に突っ込みを入れてたのを思い出しました。  メロディーが先に出来た曲のため、ある程度嵌め込みで作ったそうです。 もうひとつの劇中歌 “Lost my music”にも何か意味があるのでしょうか? Lost My Music   星空見上げ 私だけの光教えて あなたは今どこで だれといるのでしょう 楽しくしてること思うと 寂しくなって 一緒に見たシネマ 一人きりで流す 大好きな人が遠い 遠すぎて泣きたくなるの 明日目が覚めたらほら 希望が生まれるかも Good night I still, I still I love you I’m waiting, waiting for ever I still, I still I love you 受講生の考察 あなたがいて 私がいて 他の人は 消えてしまった 淡い夢の 美しさを描きながら 傷跡なぞる   これは、閉鎖空間内でのキョンとハルヒのことを言っているのではないかと思います。   キョンとハルヒしかいない世界 ハルヒが望んだ、世界(閉鎖空間) 傷跡などは、何を指しているかわかりませんが・・・。 受講生の考察 2 あなたがいて 私がいて 他の人は 消えてしまった   これをハルヒとキョンだけの閉鎖空間だと解釈するとしたら   淡い夢の 美しさを描きながら 傷跡なぞる   「淡い夢」は閉鎖空間での出来事をハルヒが夢と認識していることを、 その夢の「美しさ」は夢の中でキョンにキスをされたことを(「sleeping beauty」?) 「傷跡」はハルヒが閉鎖空間を作り出す原因を指すのではないでしょうか。   ハルヒとキョン2人だけの閉鎖空間はアニメ放映順での最終話で描かれています。 この劇中歌が使用されたのは第12話。 続く13、14話(終)でハルヒのいらいらが溜まっていく様子と、二人だけの閉鎖空間が描かれていることから、この歌詞は次回に向けての暗示なのでは?と考えました。 解釈を様々当てはめて意味構築を計りましょう  順序をばらして攪乱してあるのだから、たぶん唯一の決まった解釈がある訳ではないのでしょう。観客の各々が様々に想いを巡らし新しい意味を見いだすことができることこそが、この演出技法のメリットのはずです。見直したり再考したり反芻作業を続けながら、自分にとっての『涼宮ハルヒの憂鬱』の世界の意義性を構築し、語ってみましょう。“観測者”としてハルヒとハルヒの創り出した世界に意味を与えるのは観客である“自分”なのです。 第13話 (5話)  放映順序を攪乱した結果、ようやくここに来てエスパー古泉君の能力と使命が具体的に語られることになります。タクシーの中で小泉君がキョンに語る“人間原理”は、“観測効果”による事象の発現として、意識の主体による時空連続体生成の根本原理を説明しています。人間存在としての自覚を持つ“意識”と全く無関係に、客観的物理存在として時間と空間の次元の延長の中に世界があるとしたならば、その存立原理を支配している物理定数がこれほどまでに厳密に人間誕生を導く条件を満足するように設定されていることを説明することが困難です。宇宙人や超能力者や未来人がハルヒの周囲に存在する理由が、古泉君の解釈によって明かされます。(タイムトラベラーもいますね。)“汎神論”と共に、現代では最も“科学的”な“神”解釈といえる理論がこれでしょう。  意識と時間/世界の関連を再解釈したウィリアム=ジェイムズの心理学や、ベルグソンの時間論などが、このような超科学的発想の許における意識研究の端緒となるものでした。ハルヒが発現する“閉鎖空間”には、背景的情報としてこのような哲学的主題に対する参照が見受けられます。 第14話 (6話)  シーズン1放映順の演出における固有の意味を持つ「最終回」でした。 セカンドシーズン第1話  「私、あんたと会ったことある?ずっと前に。」 第2回放映分第1話のハルヒのセリフです。 シーズン2、第1話で3年前の因縁が明かされます。 長門のセリフ 受講生の書き込み 一字一句同じとは限りません。 多少省いて長門のセリフシーンだけ。 見づらくてすいません…… ~~~☆~~~ キ 「長門有希さんのお宅でしょうか」 長 『…………』 キ 「あー。何と言ったらいいものか俺にも解らんのだが……」 長 『…………』 キ 「涼宮ハルヒの知り合いの者だ----って言ったら解るか?」 長 『入って』 (カシャンと音を立てて、玄関の鍵が開く。 おっかなびっくり状態の朝比奈さんを連れて、キョンはエレベータに乗り込む。 七階へと上昇、目指す部屋はかつてキョンが訪れた708号室である。(1期 第五話) ベルを押してすぐに、だが、ゆっくりと扉が開く。 長門有希がそこに立っていた。キョンは現実喪失感覚に襲われる。 俺と朝比奈さんが過去に跳んできたってのは本当なのか? そう思ってしまうほど、長門は何一つ違っていなかった。 ちゃんと北高のセーラー服を着て、無表情に俺を見つめる眼差しや、体温や気配を感じさせない無機質な姿も俺の知っている長門とまったく同じものだった。 ただ、最近の長門になくて、この目の前の長門にあるものがある。 キョンが長門と最初に出会ったときにかけていた眼鏡。) キ 「よお」 キ 「入れてもらっていいか?」 長 「…………」 (キョンはところどころをはしょりながら、一通りのことを説明する。) キ 「……で、だ。三年後のお前はこんなもんを俺にくれたんだ」 (キョンが提出した短冊を長門は瞬き一つせずに眺めて、奇怪な文字群に指を這わせる。 →バーコードを読み取っているような動き。) 長 「理解した」  (長門は簡単にうなずいた。本当かよ。いや待て、それより気がかりなことが発生した。  キョンは額に手を当てて考えて) キ 「俺はとっくに長門と知り合っていたわけだが、三年前……今日のお前……つまり今のお前だ。お前は俺たちと出会うのは今日が初めてなんだよな」 (長門は眼鏡の端を光らせながら答える。平然と。淡々と。) 長 「そう」 キ 「それでその……」 長 「異時間同位体の該当メモリアクセス許可申請。時間連結平面帯の可逆性越境情報をダウンロードした」  (何一つとして解らない。) 長 「現時点から三年後の時間平面上に保存する『わたし』と、現時点にいるこの『わたし』は同一人物」 (それがどうした。それはそうだろう。だからと言って、三年前の長門が三年後の長門と記憶を共有しているわけはない。) 長 「今はしている」 (どうやって?) 長 「同期した」 (いや、解らんけど。) (それ以上答えず、長門はゆっくり眼鏡を外した。無感動な瞳が二つ、キョンを見上げて瞬きする。 それは確かに見慣れた本好き少女の顔だった。キョンの覚えている長門有希だ。) キ 「何で北高の制服着てんだ? もう入学してんのか」 長 「してない。今のわたしは待機モード」 キ 「待機って……あと三年近くも待機しているつもりなのか?」 長 「そう」 キ 「それはまた……」 (えらく気の長い話だ。退屈じゃないのか?) (長門は首を横に振る。) 長 「役目だから」 (長門の瞳は、真っ直ぐにキョンに向かっている。) 長 「時間を移動する方法は一種類ではない」 長 「TPDDは時空制御の一デバイスでしかない。不確かで原始的。時間連続体の移動プロセスにはさまざまな理論がある」 朝 「あのう……それはどういう」 長 「TPDDを用いた有機情報体の転移には許容範囲であるがノイズが発生する。我々にとってそれは完全なものではない」 (我々ってのは情報思念体のことだろう。) 朝 「長門さんは完全な形で時間跳躍できるの?」 長 「形は必要ではない。同一の情報が往復できさえすれば充分」 (現在過去未来を行ったり来たりね……。 朝比奈さんにできるのだったら、長門にもできるのかもしれない。たぶん、長門のほうが余計に余分な力を持っているのだろうからな。それどころか長門と古泉を比べても、朝比奈さんは一番物が解っていないのではないかと実は疑い始めている。) キ 「それはいいんだけどさ」 (タイムトラベルじゃなくて、キョンと朝比奈さんがどうやったら三年後に帰れるのかが問題。) (長門は簡単にうなずく。) 長 「可能」 (立ち上がる→居間の隣の部屋へと続く襖を開ける。) 長 「ここ」 (長門は押入れから布団を取りだして敷き始める。それも二組。) キ 「まさかとは思うが……。ここで寝ろって言うのか?」 長 「そう」 キ 「ここで? 朝比奈さんと? 二人で?」 長 「そう」 (キョンが横目で窺うと、朝比奈さんは及び腰になって、ついでに真っ赤に顔を染めていた。が、長門は構うことなく) 長 「寝て」 (そんな単刀直入な。) 長 「寝るだけ」 ~~~☆~~~ 朝 「えっ? うそ……! えっ? ほんとうに?」 キ「どうしたんです?それがTPDDなんですか?」 朝 「違います。これはただの電波時計です」 朝 「よかった。帰って来れました。わたしたちが出発した七月七日……の午後九時半過ぎです。本当によかった……はぁ~ふぅ」 キ 「どうやったんだ?」 長 「選択時空間内の流体結合情報を凍結、既知時空間連続体の該当ポイントにおいて凍結を解除した」 長 「それが今」 朝 「まさか……。そんな……なんてこと……。長門さん、あなた……」 キ 「どういうことです?」 朝 「長門さんは----時を止めたんです。たぶん、この部屋ごとわたしたちの時間を、三年間もの間。そして今日になって時間凍結を解いたのね……?」 長 「そう」 朝 「信じられません。時間を止めるなんて……」 (どうやら俺たちは無事に三年後に帰ってきたらしい。朝比奈さんの反応を見る限りそれは確かだ。裏表のない人だからな。それはいい。三年前からもとの時間に帰還を果たした理屈が、時間を止めたってのも----信用しよう。今の俺は何が出てこようともだいたい納得できる包容力を体得している。それもいい。いいことずくめだ----が。 俺がこの長門宅を訪れたのはこれが初めてではない。一ヶ月あまり前にも招待されて上がり込んだことがある。ただしその時は居間止まりで、この客間には入ってもいないしこんな部屋があるとも知らなかった。だから、えーと、つまりどうなるんだ?)  (キョンは長門を見た。長門はキョンを見ている。)  (----つまり、俺が最初に訪問してこいつの電波話を聞いていたとき、この隣の部屋には別の『俺』が寝ていたのだ。なんてこった、そういうことになるじゃないか。) 長 「そう」 キ 「……おい。要するに、じゃあお前は、あの時、大概の事情を知っていたんだな? 俺のことも、今日のことも」 長 「そう」 (俺にしてみれば長門との最初の出会いは、ハルヒがSOS団の樹立を思いついた新緑の季節のあの日だった。だが、長門はそれより早く、三年前の七夕の日に俺に会っていたことになる。それは俺にとってはついさっきの事なのに、もうそれから三年が経過しているのだと言う。頭がおかしくなりそうだ。 俺と朝比奈さんは仲良く揃って茫然自失の体であった。いつも器用な真似ばかりすると思っていたが、まさか時間まで止めてしまうとは思いもしなかった。無敵じゃないか、それって。) 長 「そうでもない」 長 「今回のは特別。特例。エマージェンシーモード。滅多にない。よほどのことがないと」 (そのよほどのことが、俺たちだったわけだ。) キ 「ありがとよ、長門」 (とりあえず礼を言っておく。それくらいしかやりようがないな。) 長 「別に、いい」 長門はキョンにあの幾何学模様の短冊を突きつける。よくみると、紙の質が歴然と劣化している。三年くらい放っておけばこんな感じになるだろうというまさにそんな感じ。) キ 「ところでさ。この短冊の模様なんだけど、なんて書いてあるか読めるか?」 長 「私は、ここにいる」 長 「そう書いてある」 キ 「ひょっとしてだが……その地上絵か記号みたいなの、どっかの宇宙人が使っている言語になってるんじゃないだろうな?」 (長門は、答えなかった。) ~~~☆~~~  シナリオアップありがとうございます。これは原作の記述の引用ですね。 要点の部分がはっきり読み取れるので、「科学」の考察には十分です。 大変お世話になりました。 セカンド・シーズン第2話  セカンド・シーズンは2話から繰り返しのループが始まりますが、反復される各エピソードの内容は少しずつ異なるものになっています。水着や浴衣など、服装にも明らかに違いが見られます。 2話 続き  挿入されている特徴あるシーンもそれぞれ異なります。 終結部のレストランの様子もそれぞれ比較してみましょう。 2話続き 浴衣のアップとヘラクレスオオクワガタ エンドレス・エイトとループと「永劫回帰」  セカンド・シーズン第2話から、『涼宮ハルヒの憂鬱』は堂々巡りのストーリーを延々と繰り広げる“エンドレス・エイト”に突入です。  「永遠の時間の流れの中では、宇宙に生起する事象は必然的に同一の繰り返しを反復し続けることになる」という描像は、古典力学的世界観に依るものです。全ての粒子の運動と衝突が決定論的に予測可能な定められたものであるならば、“自由意志”はあり得ず、機械的な力学作用の繰り返しが行われるだけです。このヴィジョンは実存主義の哲学者ニーチェによって“永劫回帰”という悪夢的イメージで語られることになりました。これに対して量子論理的世界観では、“同位体”が無数に存在する平行宇宙の分岐として、最大限に拡張した“世界”の姿が認識されることになります。そこでは事物と“私”の“同一性”が極めて曖昧な“多義的”なものとして再解釈されねばならないこととなり、“同一性”と“一意性”にこだわる論理思考の意識の主体にとっては、新たな悪夢が生み出されることになりました。 「閉鎖系」、「開放系」、「循環系」  宇宙の構造を時間次元を含めて統合的に考えるにあたって、システム理論的には“閉鎖系”・“開放系”・“循環系”などの異なったモデルがそれぞれ導入されてきました。ループ=循環系は、コンピュータ情報理論の拡充と共に採用されることとなった、新規の世界解式に基づく現象把握の発想です。これらの科学的知識が持つ芸術理論との重要な関係性については、以下の記述を参照してみて下さい。 (1)量子論理とパラドクスと不可能世界 ─アクチュアリズムとアンチ・ファンタシー2 https://www.academia.edu/9934010/Quantum_Logic--Paradox--Impossible_Worlds_Actualism_and_Antifantasy_2 レポート課題  アニメーション映画『涼宮ハルヒの憂鬱』の作品世界を構築する背景となっていると思われる科学的発想と、特有のフィクション世界を形成すると理解される特徴的な世界観について指摘せよ。量子理論・宇宙論・時空連続体理論・情報システム理論等の、現代の世界認識に多大な影響を与えている諸概念と用語を取り上げ、これらに対する解説を主軸に考察をまとめることが望ましいが、芸術作品の鑑賞と評価として『涼宮ハルヒの憂鬱』という作品全般について独自の見解を提示する用意があれば、自由に原作、アニメ、劇場版映画それぞれの作品について論じることも許可するものとする。その場合はレポート書き出し及びレポート題名にその趣旨を明示すること。 55