3月は私にとって日米の確定申告のシーズンだ。毎年期限ぎりぎりまで引っ張るのだが、今年は意を決して、2月中に全て終わらせた。今年はアメリカの証券会社の資料の不備で$15K近い追加納税を強いられそうだったが、ChatGPTやTurboTax(アメリカの納税ツール)のヘルプを得ながら、間違いに気付き、修正をして事なきをえた。怖すぎるだろう、証券会社の書類不備。アメリカあるあるだ。
日本では103万円の壁がしばらく話題になっている。維新の会と自民党の合意で、残念ながらかなり抑えられた金額に落ち着きそうだ。たまに、ニュースでアメリカの例も紹介されているが、Turbo Taxにお任せで、標準控除額(Standard Deduction)とかあまり意識してこなかったのだが、今年の金額を調べてみた。
アメリカの確定申告は、独身、世帯主、夫婦合算申告の3つがあるのだが、わが家は夫婦合算申告なので、今年は$29,920、IRSの年間平均レートで日本円に換算すると442万円くらいだ。日本と比較すると驚くような金額だが、物価の水準も給与も違うので日本とは一概に比較はできない。
なお、過去5年の推移をまとめると下記の通り。IRSの年間平均レートで年ごとに異なる日本円の金額も参考までに掲載する。なかなか面白い表なので、いくつか考察してみたい。
為替の影響でかすぎ問題
2020年から2024年でドルベースで18%増額しているのだが、円ベースも試しに計算すると67%増額となる。年間平均レートものせているので、為替の影響がわかるが、凄まじい円安である。わが家は、娘が日本に本帰国をして仕送りをしているので、大変ありがたいし、インバウンドの旅行客が増えるのもよくわかる。「今度、日本に旅行に行くのだけど、、、」という相談が最近多いのもうなづける。
年間平均の増額率4.19%
過去5年の平均増加額を均してみると4.19%となる。が、個別の年の増額率を見ると21年は1.2%で23年は6.9%とかなりばらつきがある。アメリカの標準控除額はインフレ率(特にCPI:消費者物価指数)と連動する傾向がある。なので、この増額はここ数年の凄まじいインフレ率の結果とも言える。日本もインフレと最近言われているが、「お客様の笑顔ために価格の据え置きを」みたいな店が一軒もないアメリカの物価上昇率は日本の比ではない。
実はトランプ減税の効果が高い
が、上記の表には少しからくりがある。実は2017年から2018年に標準控除は$12,700から$24,000に+89%の大幅改正があったのだ。これは前回のトランプ政権の目玉政策の一つで、レーガン政権以来の大幅税制改革と言われている。
大統領が変わるとこれだけのドラスティックな税制改革が可能というのは、103万円をいくらにするかで延々と揉めている日本とは大分異なる。まぁ、103万円の壁が話題として大きくなったのも、自民党が少数与党に転落したことによるので、日本でも今後大幅に変わる可能性は十分にある。
また、この減税は実は2025年で期限を迎えるため、2026年以降大幅に増税になる可能性は十分にある。が、少なくとも共和党政権の間は延長がされるだろう。
高いのか安いのか
標準控除が442万円と聞くと、「高い!」というイメージを持つ方が日本には多いと思う。が、冒頭で述べた通り、給与と物価の水準が全く異なるので、単純に比較はできない。
「低所得者層」の定義という視点で少しデータを見てみよう。その定義は色々あるが、4人世帯の貧困ラインはアメリカでは$31,200、そして貧困ラインの2倍以下を「低所得者層」とみなす傾向にあるので、$62,200以下は「低所得者層」と言うことができる。これを日本円に2024年のレートで換算すると940万円になる。日本の感覚からすると冗談みたいな数字かもしれないが、それほどアメリカの生活費は高い。
そして、私の住むカリフォルニア州は全米で最も物価も税金も高いと言われている州だ。私の住む地域はサンフランシスコ・ベイエリアのような天文学的に高い地域ではないが、米国住宅都市開発省の基準で言うと$91,100(1,380万円)が「低所得者層」のラインとなる。そう考えると442万円というのは決して高すぎる金額ではない。2026年以降に減税措置が解除されると結構しんどくなるだろう。
まとめ
色々話がとんだが、それだけ税金の話は奥が深い。今回のアメリカの確定申告では、システム任せにしていたら過払いしそうになり、税金の仕組みをきちんと理解するということが、自分のお金を守ることにつながると身にしみて感じた。また、標準控除の変遷を追うだけでも、アメリカの経済や政治の動きをみることができた。
日米の両方の申告をしないといけないので、確定申告の時期を「毎年くる憂鬱な時間」と捉えるのではなく、「税金という視点で社会を学ぶ期間」と捉えて、学習の期間として位置づけていこうと思う。